No.533902

真恋姫†夢想 弓史に一生 第六章 第八話 神医

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

リアルはまだまだ忙しいですが、少しずつマシにはなっているので少しずつですが時間を見つけては書いていってます。


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2013-01-20 00:49:16 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1666   閲覧ユーザー数:1521

~○○side~

 

 

穴に落ちて、さらに怪我までするとは……。

 

果たして、袁家との関わりを絶つとその身に不幸でも訪れるのだろうか…。

 

 

 

人通りの少ない道ではあったが、まだ日は高く人の往来が無いわけではない。

 

 

声の出る限り助けを呼んでいると、声に反応して助けに来てくれた人が要るではないか。

 

まだまだ私にも運が残っているようだ。

 

 

しかし、袁家を出たことの不運はまだまだ続く。

 

 

私を助けに来たのは……男だったのだ…。

 

 

 

 

 

よりによって、男が助けに来るとは思わなかった。

 

私がこの世で一番嫌いなもの……一番汚く、卑しく、下品だと思っているもの…。

 

そんなのが助けに来たというだけで、背筋には悪寒が走り、鳥肌が治まることはない。

 

そんな状態の私の口から出る言葉は、男をただひたすら罵倒するもののみ。

 

小さい頃から今まで吐いてきた悪態は、相手の心を折ることに関しては特化していた。

 

せっかく助けに来てくれているというのに………その慈悲深き行為を一蹴するようなそんな言葉しか吐けない自分が少し恨めしい……。

 

しかし、そうしなければ自分の身を守ることが出来なかったのだから………仕方ないだろう。

 

 

 

 

 

その男は私の罵倒を意に介せず、私を小脇に抱えて縄を引くように指示を出している。

 

男に触られると蕁麻疹がでる私……それなのに、稀有なことに何も体に変化が起きていない。

 

それでも、気色悪いことこの上ないのだが…。

 

 

 

 

 

何とか耐え忍び、地上に戻った私。

 

一秒でも早くこの男から離れたかったが、足の怪我の所為で思うように動けない…。

 

思った以上に酷い怪我のようだ…。

 

 

「さて、お嬢さん。怪我の程は??」

 

 

男は再度近付いてきて、私の足に触る。

 

その瞬間に全身に鳥肌が立ち、掻痒感が駆け抜ける。

 

 

敵意むき出しの視線で男を睨みつけ、男の頭を蹴ろうとした時。

 

 

「良いから、見せろって言ってるだろ!!」

 

 

……っ!!!???

 

 

そんな……馬鹿な………。

 

 

……今この男から感じた威圧感は……。

 

かつて……一度だけ会い見え……。

 

憧れ続けた……。

 

曹操様と同じ覇王のものだった…。

 

 

 

それからしばらく、何が起こっていたか覚えていない…。

 

気づいた時には、私は草原で腰を抜かしていて、手には粉が入った袋が握られていた。

 

そしてふと、

 

 

「あっ………名前を聞き忘れた……。」

 

 

この時は、自分がその男と再び会い見えるとは予想していなかった私であった。

 

 

 

 

 

~聖side~

 

 

少女を草原に放置してしまったが……まぁ、何とかなるだろう…。

 

そう言えば、急にあの子の罵声が止まったな……流石に罵倒しすぎて疲れたのか……??

 

 

静かにしてれば可愛い子だとは思うが……いやっ、あの子はああいう子なのかな…。

 

名前を聞かなかったから分からなかったけど、多分あの子も有名な武将の一人だろう…。

 

ならばきっと、近い内にまた会い見えることになる。

 

だが、次はきっと戦場で……だな……。

 

 

 

「……なぁ、聖…。」

 

「……なんだよ? 人が折角、一期一会の精神のありがたさを感じ取っていると言うのに…。」

 

「……そろそろ……許してあげたら??」

 

「…何を??」

 

「……何をって。」

 

「許すも何も、あいつ等が自分の罪を償いたいと言ってきたんだろ? 自業自得だな…。」

 

「……お頭…その…あっしらの目の保養には良いんすけど……姉さん方、大丈夫なんで??」

 

「……大丈夫じゃないか?」

 

 

目線を彼女達の方に向けると、皆が皆、顔を真っ赤に上気させ、目が据わり、荒い息を弾ませている。

 

 

……その体を縛られ、馬に括りつけられた状態で…。

 

 

「んっ……はぁ……しぇ……しぇんしぇえ~~……( ///)」

 

「はぁ……はぁ……お兄ちゃんは……はぁ……やっぱり変態です……。( ///)」

 

「……でけん……もうでけん……。限界ばい……。( ///)」

 

「…………。(ピクピク)( ///)」

 

「……あっしには大丈夫に見えやせんが……。」

 

「あぁ~…………そろそろやばそうだな……。馬を止めて解いてやれ……。」

 

 

流石に精神的に逝きかけていたので、ここら辺で終わりにする。

 

精神的に壊れられてもこの先困るしな……。

 

因みに何故縄で縛るのが罰かと言うと、初めは俺と同じ痛みを受けるのが道理だとか言っていた面々。

 

流石に、女の子にあばら二本折れるような衝撃を与えるのは酷だと考える俺は、それを拒否した。

 

そうすると、次は縄で縛られ、身動きが出来ない恐怖がどうとかって話になって、麗紗が「私を…縛る気ですか!? …お兄ちゃんは……変態です!!」とか言うぶっ飛んだ発想をしてきたので、お望みどおりにしたらこうなったと言うわけ…。

 

決して、俺がしたくてしたわけじゃないんだからね!!

 

 

「…………先……生……。」

 

「どうした、橙里?」

 

「何か………変な感じ……なって……。」

 

「おい!! 馬を止めろ!! 早く縄を解かないと橙里が新たな趣味に目覚めちまう!!」

 

「………あは……気持ち……良いかも……。」

 

「いかん!! 既に手遅れになりかけてる!! 早くしろ!!!!」

 

 

素早く縄を解き、全員への罰を終わらせる。

 

皆の顔はどこか物足りなさそうな顔をしていたが……俺はそれを見なかったことにする。

 

 

えっ?? 一刀たちの罰??

 

勇は最後まで手を離してないから、罰は与えてない。

 

一刀は………その場で瞬○殺をくらわせたので終わってる。

 

しばらくの間、一刀が肉塊と化していたのは記憶に新しい…。

 

 

「………ん?? 音流、お前だけまだ顔が赤いな…。」

 

「き……気んしぇいじゃなか…?」

 

「ん~……。他の皆が治まってる中で……ちょっとこっちに来てくれ。」

 

「な……なしても無かっち……。」

 

「ほらっ、じっとしてて…。」

 

「……ぁ……。」

 

 

おでこ同士をつき合わせて、音流の体温を測る。

 

……やはり、熱があるようだ…。

 

 

「……何時からだ?」

 

「……朝、起きよった時がら……ちょこっと……。」

 

「何で早く言わなかったんだ!?」

 

「……ばってん……うちん所為で行軍の邪魔してからは悪う思っち…。」

 

「……馬鹿…。その所為で音流の体調が悪化したらどうすんだよ…。」

 

「うちは丈夫やけん…。」

 

「ふざけたこと言ってんな!!」

 

「(ビクッ!!!)」

 

「一将として、自分が軍に与える影響を考えたことがあるか!? 音流…お前は既に俺たちの軍の中核を担ってる…。そんなお前が抜けたら……どれだけ下の者に動揺が走るか…。」

 

「っ……!!」

 

 

音流にもそろそろ自覚して欲しい…。我が軍の中核であるということを…。

 

 

「それにな……俺もやだよ…。音流が傍にいてくれないのはな…。」

 

「………。( ///)」

 

「分かってくれたか?」

 

「……。(コクン)」

 

「よし…。 洛陽まであと少しだ…それまでは、俺の言うことに従ってもらうぞ。」

 

「……分かっとー…。」

 

「じゃあ……よいしょ!!」

 

「ひゃあぁ!!!?」

 

 

顔を真っ赤にして俯く音流の体をお姫様抱っこし、陽華に跨る。

 

 

「全軍に通達!!!! 行軍速度を速め、洛陽に日が高い内に入るぞ!!!」

 

「「「「「応っ!!!!」」」」」

 

 

行軍速度を速め、急ぎ洛陽へと向かうことにした。

 

 

 

 

そこから一刻半後。

 

普段の行軍なら二刻半ほどの距離を移動した面々は、疲労困憊といった形である。

 

 

「皆、ご苦労だった。今日はここで野営を張る。準備していてくれ!! ただ、まだ設置はするなよ。あくまで準備だけだ!!」

 

 

俺の合図で、息の整ったものから天幕を張る準備をしていく。

 

 

そんな中、俺は音流と橙里を連れて月のとこに挨拶に行くことにする。

 

野営の設置許可と音流を医者に見せるためだ。

 

 

城の門へ着くと、俺のことを覚えていた兵がこのことを伝えるために城の中へと走っていく。

 

しばらく待っていると、先ほどの兵が戻ってきて、玉座の間へと俺たちを連れて行ってくれた。

 

玉座の間には、先日まで一緒にいた董卓軍の面々が揃っていた。

 

 

「…………で…?? 何でそんなことになってる訳??」

 

 

何故か不機嫌な詠が俺に尋ねる。

 

 

「………あんちゃん……恥ずかしか…。」

 

 

俺の腕の中で俯きながら頬を赤く染める音流。病人なんだから大人しくして無いとね。

 

 

「実はこの太史慈なんだが、ちょっと病気みたいでな…。この町の医者に見せたいんだが、良い医者を知らないか?」

 

 

俺がそう尋ねると、董卓軍の一部からほっと安堵の溜息が聞こえた………様な気がした。

 

 

「……まったく、紛らわしい…。」

 

「何か言ったか?」

 

「な……何でもないわよ!! で?医者だっけ? ……あんたツイてるわよ。」

 

「何? どういう意味だ??」

 

「今、ここ洛陽には神医が来ています。」

 

「神医?? 誰だそれは?」

 

「名前は華佗と言います。病人を放っておけない心優しい方ですよ。」

 

 

その名前を聞いて思い至る人物がいた。

 

華佗

 

中国後漢末期の薬学・鍼灸に非凡な才能を持つ伝説的な名医。

 

麻沸散を使った腹部切開手術を行ったとされ、麻酔を最初に発明したといわれている。

 

医療に関わるものとして、彼の存在を忘れることは出来ない…。

 

 

「……その……華佗と言う医者は何処に…??」

 

「今は城下で怪我人の治療をしていらっしゃいますよ。呼びましょうか?」

 

「いやっ、診察を受けるのはこっちだから、俺が会って連れてこよう…。音流をここで待たせても良いか?」

 

「はい。太史慈さん、お部屋へ案内しますね。」

 

「……お世話になるたい…。」

 

「月、これを湯に溶かして音流に飲ませておいて。」

 

「……この粉は??」

 

「元気になるもの!! 頼んだよ!!」

 

 

音流を月たちに任せ、俺は橙里と共に城下にいるという華佗を尋ねに行く。

 

 

「え~っと……行けば分かるって月は言ってたけど…。」

 

「……どういうことなのです??」

 

「う~ん……目立つ格好をしてるのか、それとも見た目に特徴があるのか、それとも…。『元気になぁぁぁああ~~~れぇぇぇぇぇぇ~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!』……あんな感じに大声出してるかだな…。」

 

「えっ!? じゃあ、あの人が!?」

 

「……まぁ、聞いてみるか…。」

 

 

見た目的には二十五歳前後の若めな男だが、この男が本当に華佗なのか??

 

 

「すいません。今、人を探してるんですが…。」

 

「ん?? 君たちは……ここら辺では見ない顔だな…。」

 

「ちょっと遠方から来ていまして……あなた、華佗さん……ですか??」

 

「あぁ。華佗は俺だが……そういうお前は??」

 

「申し遅れました。私は徳種聖と言います。」

 

「そうか。で、俺を探していた理由は??」

 

「実は私の仲間が病気でして……月たちに腕の良い医者がここ洛陽に居ると聞き、探していました。どうか、見ていただけませんかね?」

 

「病人だと!? 何処にいる!!」

 

「城の一部屋で休ませています。お連れしますので着いて来て下さい。」

 

「分かった!! 早く行こう!!」

 

 

華佗は真剣な表情のまま、俺たちに続いて走り出した。

 

 

「患者はどんな状態なんだ??」

 

「熱が高いです。それ以外は今のところ何も…。」

 

「そうか……。何か心当たりはあるか?」

 

「……連日の行軍での疲れや精神的な圧迫が原因かと…。」

 

「ふむ。疲れから来る感冒かもな…。よしっ!! 急ごう!!」

 

 

華佗は走りのギヤをあげて、城へとまっすぐに向かっていく。

 

俺たちも遅れないように、急ぎ彼の後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「患者は!?」

 

「この部屋です。」

 

 

侍女に案内されて、俺たちは音流が待っている部屋にたどり着いた。

 

扉を勢いよく開けると、寝台に横になっている音流と、音流の額の汗を拭いている月がいた。

 

 

「華佗さん。お待ちしていました。」

 

「患者はこの子か…。」

 

 

華佗は音流の傍に行くと、腰から針を取り出した。

 

 

「はぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

華佗は目を瞑り、集中して音流の体を全身くまなく、何かを探すように見回す。

 

 

「病魔は………ここか!!!!」

 

 

次の瞬間、華佗は持っていた針を天にかざす。

 

 

「我が身、我が鍼と一つなり!!!」

 

 

華佗の周りには目には見えない何かが渦巻き、それは鍼の先に集中していく。

 

 

「行くぞ!! うおおおおおおおっ!! 全力全快!! 必察必治癒!! 五斗米道ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!げ・ん・き・に・な・れぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

ピシャーン!!!! ゴロゴロ!!!!!!

 

 

どこかで雷の落ちるような音がすると、華佗は鍼を引き戻した。

 

 

「病魔退散!!!!」

 

 

どうやら華佗の治療は終わったらしい。

 

 

そして俺は思う。

 

今の治療を見て、一切ツッコミを入れなかった自分を評してあげたい……と。

 

斜め上を行き過ぎていて、ツッコミが間に合わなかったわけじゃないんだからね!!

 

さて、あれで治療が終わったというなら音流の病気はもう治ってるはずだが………。

 

音流の表情を見ると、赤みも大分引き、すやすやと寝息をたてて寝ているようだ…。

 

どうやら、本当に病気が治っているらしい………。まったく持って原理は分からないが……。

 

 

「華佗さん、音流……太史慈を助けていただいてありがとうございます。」

 

「何…これが医者の役目さ…。ところで、徳種と言ったか…聞きたいことがあるんだが…。」

 

「はい、私に答えられることなら…。」

 

「おいおい……見たところ歳も離れていないようだし、俺には敬語なんて要らないからな。普通に話してくれればいい。」

 

「……分かった。これで良いか?」

 

 

気さくで話し易い感じのする華佗に、少し好感を覚える。

 

 

「あぁ、そうしてくれ。さてと、質問なんだが…。 お前、医者か?」

 

「……どうしてそう思う??」

 

「この娘の病魔は、残ってはいたが弱りきっていた。これは、つまり何らかの処置がなされていたことによるものだ…。そして、彼女の寝台の傍にこの粉が落ちていた…。 そこから、俺はお前が医者で、この薬を処方していたと考えたのだが……。」

 

 

流石神医と呼ばれるだけのことはある。

 

あの薬を見ただけでそこまで読んでしまうとは…。

 

 

「……ご明察通りと言えばそうだが、違うと言えば違う…。 俺は医者ではなく、薬師だ…。音流の様子を見て、気虚の症状があると感じた俺は、華佗を呼びに行く前に音流に補中益気湯を飲ませて、華佗の治療に耐えうるだけの体力をつけさせようとした。」

 

「補中益気湯??」

 

「人参、生姜、柴胡、甘草、陳皮等を混ぜたものだよ。」

 

「成程……。それなら、確かに……。」

 

「どうやら、診察が間違っていなかったみたいで良かった。」

 

「補中益気湯か…。なぁ、徳種。お前の知っている薬なんだが……俺に教えてくれないか?」

 

「勿論だ。俺もより多くの人を救ってほしいからな。」

 

「助かるよ…。礼と言っては何だが…。」

 

「俺は既に音流を救ってもらった…。お互いに礼は無しにしようぜ。」

 

「ありがとう……。改めて、俺は華佗だ。五斗米道の教えを布教するため、流れの医者をやっている。」

 

「俺は徳種聖。聖って呼んでくれ。」

 

「じゃあ、聖。これからよろしくな。」

 

「あぁ、よろしく。」

 

 

こうして、神医と薬師の友情が芽生えたのだった。

 

 

「五斗米道か……。まさか、ここで見ることが出来るとは…。」

 

「っ!? 聖、今なんと……??」

 

「ん?? 五斗米道を見ることが出来て……。」

 

「違う!! ゴッドベェイドーだ!!!!」

 

「……そんなカナ発音なのか…。」

 

「さぁ、もう一度言ってみろ!!」

 

「分かったよ…。ゴッドベェイドーだな。」

 

「そうだ。聖、お前は筋がいいぞ!!」

 

 

華佗に褒められるが、この何処ぞやかの勇者王みたいなこいつは何故そんなにも発音にこだわるのか……。

 

悪い奴ではないのだが、そこの所が理解できない聖なのであった。

 

 

 

 

 

後書きです。

 

 

怪我をした少女は果たして誰なのか………。

 

名前は結局出しませんでしたが、まぁ皆さんなら分かりますよね??

 

 

 

え~っと……罰ですが………。

 

私は知りません。私は悪くありません。私は無罪です。

 

 

 

そして、我等が医者王が登場!!

 

やはり彼は発音を気にするんですよね………。

 

 

 

次話はまた日曜日に上げます。それではお楽しみに!!

 

 

 

↑*訂正 次話なんですが、作者の都合上土曜日に上げます。すいません。1/22


 
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