「おい、詠!あれはどういうことだよ?」
話し合いが終わり、俺と月と詠を残して、皆が高順に対して痛ましい視線を向けながら、
高順に続いて部屋を出ていった。
その機を見計らって俺は詠に問いかける。
「どういうことって、アンタも聞いていたでしょ?そういうことよ」
何を当たり前のことを。といった様子だ。
「ふざけないでくれ。高順を死なせるつもりか?詠だって知ってるだろう?
あの馬がどれだけ……」
俺の言葉を打ち消すように詠が言葉を被せる。
「そこまでよ。誰かが聞いているかもしれない状況で、軽々しくそんなことを言うものじゃない」
「だけど……!!!」
月が俺を擁護するように言う。
「ご主人様の言うとおりだよ、詠ちゃん。あの馬は危険すぎる。
今まで幾人の乗り手を死なせたあの『凶馬』は、高順さんにはの手に負えない。
それは詠ちゃんだって分かってるでしょう?」
月が詠に質問する。
月の言うことには、余程の事がない限り、月の言うことを聞いてしまう詠だが、首を縦には振らない。
いや、振れないように見えた。
「ダメなのよ、月。彼を見極めるにはどうしても、あの凶馬をあてがうしかないの」
一瞬の間を開けて、詠は言った。
幾人の下僕が乗れば客死し。
幾人の主が乗れば刑死させた、その凶馬の名前を。
「そう。『的盧』をね」
賈駆ちゃんの話が終わり、自室へと戻ることにする。
すると、心配そうな顔をした恋ちゃんが僕に声を掛けてくれる。
「……高順、大丈夫……?」
?
何を心配しているのだろう。張遼さん達にも、そんな顔をされたけど。
「何を心配しているのか知らないけど、大丈夫だよ。
君達の仲間と認めてもらえるなら、この条件は好条件だと思うし」
「……普通の軍馬なら、そうかもしれない。けど、あの馬は別格。気をつけて……」
気をつけて?どういうこと?
賈駆ちゃんが話していた軍馬は、そんなにすごいのかな?
「……うん分かった。気をつけるよ……」
この恋ちゃんの忠告をしっかりと受け止めるべきだった。
僕は、侮っていた。賊三人を倒し、華雄さんと張遼さんを相手にし、
思い上がっていたのかもしれない。
ここが、『死』というものが、僕が生きていた世界より、よほど鮮明である世界だと。
気付けなかった。あんなに『死』を求めていたのに。
僕は明日、それを。
まざまざと、思い知らされる。
こうしたらいいんじゃない?というような要望がありましたら、
匿名でも構いませんので、コメントお願いします。
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第二十四話です。