No.532728

そらのおとしもの 馬鹿と(・3・)と阿頼耶識 黄泉比良坂編

水曜定期更新

(・3・)と阿頼耶識編第二話。
そう言えばここ何年も(・3・)の人間だった頃の名前を記していないことに気づいた。
新しいパソコンだと彼女の名前が辞書登録されていない事実。

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2013-01-16 23:49:35 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1569   閲覧ユーザー数:1523

そらのおとしもの 馬鹿と(・3・)と阿頼耶識 黄泉比良坂編

 

前回のあらすじ

 

『吹き飛んで、アストレアお姉さまっ!』

『『『シナプス・エクスクラメーションッ!!』』』

 

『沙羅双樹の花が……散りましたぁ~』

 

 アストレアはカオス、ニンフ、そはらの攻撃により冥界へと飛ばされた。

 この世とあの世を自由に行き来できるというエイト・センシズ(阿頼耶識)に目覚める為に。

 

 

 

「ここが……冥界なの?」

 アストレアは目の前に広がる光景に目を大きく見開いていた。

 彼女の目の前を数多くの朽ちかけた亡者たちが通過していく。亡者たちはみな一様に巨大な坂を登っていく。

 その巨大な坂の先には底の見えない深い穴が存在していた。亡者たちは何かに導かれるように穴の中へと落ちていく。気が狂ってしまいそうな叫び声を上げながら。

「あの穴に落ちたら……本気で危ない気がする」

 穴の正体は分からない。けれど、あの穴に落ちることは生者たちの世界と縁を切ることと同義であることは想像がついた。

「それにしても……ここは一体どこなのよ~~っ!?」

 アストレアは曇天模様の天を見上げながら大声で叫んだ。

 

「ここは黄泉比良坂(よもつひらさか)というこの世とあの世の境界線だ。そんなことも知らぬとは高貴な証であるそのブロンドの髪が泣くぞ」

 頭上から声がした。

「誰っ!?」

 アストレアが振り返りながら見上げると、巨大な岩の上に腰掛け坂を眺めているカソック姿の金髪男がいた。

 その男にアストレアは見覚えがあった。

「アンタはっ! え~~と………ロード・エロメロン?」

 けれど名前を覚えるほどに親しくもなかった。

「魔術の名門アーチボルト家の9代目頭首、ロード・エルメロイだ。私を間違うとはこの愚か者が!」

 名前を間違えられて男は怒った。狭量ぶりを見せ付ける態度はシナプスのマスターを彷彿とさせている。

「ああっ! その小物っぷり! 思い出した。アンタ、ケイネスよね! ケイネスケイネス♪」

 アストレアはポンッと手を叩く。ケイネスの名前を思い出してちょっと気分が良くなった。つっかえていたものが取れた思いだった。別に会えたことが嬉しいわけでもない。

「天才魔術師ケイネス先生と呼ばないかっ! 魔術師でない俗世の娘よ!」

 ケイネスは今度は呼び捨てにされてまた表情をムッとさせた。

 

「それで、ケイネスは何でここ……よっつもひらたい坂に来ているの?」

 アストレアはケイネスのことをよく知らない。

 知っているのは、重度のロリコンで仲間内からはペドネスと呼ばれていること。エンジェロイドにも匹敵する強大な魔術を行使できること。その魔術を更に強大にする為にシナプスについて嗅ぎ回っていることぐらいだった。

 そんなケイネスが何故この世とあの世の境界線だというここにいるのか。アストレアにはまるで分からなかった。

「フッ。そんなことも分からないとは所詮は一般人の娘。羽が生えていようとも天才魔術師である私の思慮深さは到底推察できないということか」

「ごたくはどうでも良いから、さっさと理由を教えなさいよ」

「フッ。貴族でもない一般人はせっかちで困る。だが、特別に教えてやろう」

 ケイネスは岩から飛び降りてアストレアの前へと立った。長身男のドヤ顔にムッとする。

「私はある貴婦人への究極の愛の為にここにいるのだ」

「貴婦人への愛?」

「秋風こすもすという御年9歳の妙齢のご婦人への愛を貫く為に私はこの世を旅立ったのだ」

「9歳が妙齢って……アンタ、本当にペドなのね」

 嫌悪感丸出しの表情でケイネスを侮蔑する。

「フンッ。女性は12歳を過ぎたらBBAという世の当然の理も知らぬとは……これだから一般人は困る。胸が出ている女など最悪だ。つるぺたな小学生は最高なのだよ!」

 ケイネスは両手を広げて天を仰いだ。アストレアはそんな彼を見ながら唾を吐いた。

 

「で、何でケイネスはここにいるのよ? ペド撲滅法に引っ掛かって死刑になったとか?」

「私が国家の犬どもに捕まる謂れはない。まして、官憲どもに裁かれる道理などない」

「じゃあ、何で死んだのよ?」

 目を更に細めてケイネスをより一層胡散臭い瞳で眺める。

「私は今日も日課である聖少女こすもすの自主警備を彼女に悟られぬようこっそりと行っていた」

「ストーカーはみんなそうやって自分を正しく見せようとするわよね。死ねば良いのに」

「そして私は最も無防備となる入浴中を狙われぬように細心の注意を払って窓の外へと近づいた時だった」

「女子小学生のお風呂覗こうだなんて最低を更に突き抜けたゲスね」

「私は落ちていた女児用パンツを踏んづけて転倒。頭を強く打ってここに来たという訳なのだ」

 話し終えたケイネスはどこか誇らしげだった。

「少女パンツを踏んづけて頭打って死亡って……最悪最低の恥ずかしさの上に屑よね」

 アストレアはカオスの顔を思い浮かべながら睨みつける。妹分のカオスは自分が守らなければならないと心に誓う。

 もう死んでいるけれども。アストレアを殺したのはカオスだけれども。

「確かに、幼女が身につけるものを踏んでしまうとはこのケイネス・アーチボルト一生の不覚。死んで詫びるしかないと一心に願いここへと辿り着いたというわけだ」

「ペド野郎も極めると一層清々しく……ならないっての!」

 一瞬良い話の雰囲気を醸し出した気配を打ち消しながらアストレアが剣を抜く。

「全世界の幼女たちを守る為に……ペド野郎は成敗~~っ!!」

 アストレアがクリュサオルを振り回してケイネスを懲らしめに掛かった。鋭い踏み込みで剣を大きく振りかぶって男に向かって振り下ろす。

「馬鹿めっ! そんな攻撃がこの天才魔術師に通用するか。スカルプッ!!」

 しかしケイネスは鉄壁の水銀防御壁でアストレアの攻撃を防いでしまう。

「コイツ……どうしようもない変態の癖に、やっぱり強いっ!」

 剣を弾かれた反動でジンジンする手に涙を浮かべながらアストレアはケイネスを睨む。

「天才魔術師である私に斬りかかろうとは無駄なこと。凡人が天才に勝てる訳がないのだ」

「変態の癖にムカつくわね」

 アストレアは不満を抱きながら一旦剣を収める。

 

「まあ良いわ。今の私はケイネスと争っているほど暇じゃないの」

 黄泉比良坂を見上げながらアストレアは険しい表情を見せる。

「あの世とこの世の境界線まで来てしまった身で何をほざくか」

「私は……エイト・センシズに目覚めるっていう大事な使命があるのよ!」

「ほぉ~。見るからに馬鹿そうな癖に阿頼耶識を知っておるとはな」

 ケイネスが感心したような声を上げる。しかし次の瞬間にはまたいつもの人を小馬鹿にする表情に戻る。

「だが、阿頼耶識はこの天才魔術師ロード・エルメロイでさえいまだ至っていない究極の魔術領域。貴様如きに扱えるものか」

「でも、ケイネスはここにいるじゃない」

 周囲を見渡す。すぐ側を亡者たちの行進が延々と続く。

「アンタ。本当に死ぬつもりでここに来たの?」

「フッ。冗談を申すな。私には全世界の幼女たちの美を未来永劫語り継ぐという崇高な使命があるのだ」

「だけどケイネスは阿頼耶識に目覚めていない。どうやって生き返るつもりなのよ?」

「言ったであろう。ここはこの世とあの世の境界線だと」

 ケイネスが黄泉比良坂の穴を指差す。

「あの穴に落ちれば冥界行き。完全な死人となり二度と現世に戻れなくなる」

「完全な死人」

 坂から穴の中へと落ちていく亡者たちを見ながら息を呑む。

「ここから現世に戻ればただの臨死体験だ。阿頼耶識とはあの穴の先にある冥界の中からも自由に現世との行き来ができる能力を指す」

「冥界を自由に行き来するって……これはちょっと無理な気がするわね」

 視覚的な情報が手に入ったことで自分の手に余る能力であることを再認識する。

「阿頼耶識はとりあえず良いわ。ここから戻って臨死体験ってことで手を打つ。で、どうやったらこの不気味な所からこの世に戻れるの?」

「ああ。それはだな……」

 ケイネスの目が鋭く激しく光る。

 そして──

 

(#・3・)「ひゃっほぉ~~~っ!! 種籾をよこせぇ~~~~っ!!」

 

「ぶっはぁ~~っ!?」

 ケイネスの後頭部に(・3・)な顔をした(・3・)のジャンプキックが炸裂した。

「ああ~~っ! アンタはさっきテレビに出ていた空気が読めない女~~っ!」

 アストレアは死ぬ直前まで見ていたテレビ番組の内容を思い出す。空気嫁で死亡フラグを立てまくっていた(・3・)が目の前にいる。

 彼女に向かって指を差しながらやはり殺されたのかと納得してしまう。

(#・3・)「あの世に行くと時間のロスだからね。ここでアンタたちを葬ってさっさとこの世に戻らせてもらうさ!」

 (・3・)は一方的に言い放つと手をわしゃわしゃと回して動かしながら拳法の構えらしきものを取る。

「何で私たちを葬ると、アンタがこの世に戻れるのよ?」

(・3・)「そんなことも知らないなんて本当に馬鹿な娘だね。詩音並みに馬鹿な娘だよ。生きている価値がないね。もうほとんど死んでるけどさ」

「アンタにだけは馬鹿って言われると本気でムカつくっ!」

 アストレアの怒りの視線が(・3・)へと向けられる。(・3・)は本能的に人をイラつかせる。

(・3・)「この大きな穴に活きの良い亡者を自らの手で放り込むことにより、おじさんは現世に復活できるんだよ」

「そっ、そうなのっ!?」

(#・3・)「百戦百敗のおじさんが言うのだから間違いないよ! おじさんを倒して100人の人間が生き返ったのだから!」

「弱っ!!」

 アストレアは大声でツッコミを入れてしまう。と、そこでふと思いが至る。

 何故ケイネスは自分に声を掛けて近寄ってきたのかと。

「アンタっ! 私を殺して自分だけ生き返ろうとしてたんでしょ!」

 ケイネスにムッとしながら指を突き刺す。

「フッ。そのように醜悪な脂肪の塊を2つもぶら下げたBBAと私を比べれば、私の命の方が価値が大きいに決まっているだろう」

 ケイネスはアストレアの推測を否定せず代わりに杖を構えて戦闘態勢を取った。

「所詮この世は焼肉定食。強ければ生き、弱ければ死ぬ。ケイネスも(・3・)も私の敵ってことですね」

 クリュサオルを構えて2人を牽制する。

 文字通り命を賭けた3人の馬鹿の戦いの刻が近づいていた。

 

 

 

(・3・)「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ。おじさんに勝てると思うなんて……本当に馬鹿な金髪コンビだよ! 妹と同様の馬鹿が世の中にまだこんなにいたなんて驚きだよ!」

「肺と心臓だけを魔術で再生しながら全身をじっくり切り刻んでくれる」

「アンタたちを葬れば、少しは世の中が平和になるっ!」

 黄泉比良坂の頂上に場所を移して三つ巴の睨み合いをするアストレア、(・3・)、ケイネス。

 自分だけ生き残る為の熾烈を極める戦いが今始まろうとしていた。

 

(・3・)「天に輝く極星は一つ! 即ち、雛見沢のおじさん、北斗七星の横にひっそりと蒼く輝く死兆星、おじさんだよっ!」

 最初に動いたのは(・3・)。フルフェイスの黒いヘルメットを被ると拳法の構えを取った。手が素人丸出しの動きでわしゃわしゃと動く。そして目標を見定めるとダッシュを始めた。

(・3・)「おじさん羅漢撃~~っ!! ぶっひゃっひゃっひゃ。見ろぉっ! このおじさんの速い突きがかわせるかあっ!!」

 (・3・)は手をわしゃわしゃと動かしながらアストレアに迫ってくる。亀の歩みのような超高速の突き。

(・3・)「死ねっ! 巨乳美少女キャラは古今東西おじさんだけで十分なんだよっ!」

「アンタの突きなんて……そはらさんの突きの1万分の1の速さもないわよっ!」

(・3・)「ぶべらぁっ!?」

 アストレアの蹴りが(・3・)の顔面に直撃する。強敵(とも)との戦いが、一方的な虐待の歴史が彼女の危機対処能力を高めていた。

(・3・)「ぶっぴゃぁああああああああぁっ!!」

 蹴りの衝撃はヘルメットへと伝わって(・3・)の体を後方へと吹き飛ばす。

 10メートルほど宙を舞って(・3・)は地面に叩きつけられた。後頭部から地面に落ちて首の骨が良い音を奏でた。

 残り (・3・)×3

 

(#・3・)「お、の、れぇ~~~~っ!! おじさんは怒ったんだよっ!!」

 立ち上がった(・3・)は肩に装備していたホルダーから拳銃を抜いた。

(#・3・)「馬鹿だねっ! おじさんは勝てば良いんだよっ! 何を使おうが勝ち残りゃあそれでいいんだよっ!」

 (・3・)は再び余裕を取り戻しながらケイネスに向かって銃を構える。

「馬鹿めっ! そんなものがこの天才魔術師ケイネス・エルメロイ・アーチボルトに通じると本当に思っているのか?」

 ケイネスは呆れた白眼で(・3・)を見ている。そんなケイネスの余裕ぶった態度が(・3・)には我慢ならなかった。

(#・3・)「この至近距離からでは逃げようがないんだよ! 命乞いするなら今の内だよっ!」

「さっさと撃ってみせよ」

(#・3・)「死にさらせってんだよっ!」

 (・3・)は拳銃の引き金を引いた。

「スカルプっ!」

(・3・)「ぶっぴゃぁああああああああぁっ!!」

 跳ね返った弾丸は(・3・)のメットを突き破って脳天を貫通した。

  残り (・3・)×2

 

(・3・)「ぶっひゃっひゃっひゃ。思ったよりもやるじゃないの。だが、今倒したおじさんはおじさん四天王の中でも最弱の存在。金髪如きに遅れをとるとは。おじさん四天王の面汚しなんだよっ!」

 復活した(・3・)は何事もなかったかのようにピンピンして挑発しながら負けフラグをビンビンに立てている。

 だが、(・3・)の真骨頂は死亡フラグという空気さえも読めずに流してしまうことにあった。

(・3・)「こうなったら仕方ない。最終奥義で一気に2人とも葬ってやるよっ!」

 (・3・)は銃を捨てて胸の谷間から2枚の写真を取り出した。

 片方の写真には栗色のショートカットをした発育の良いプリティーな少女が写っている。

 もう片方の写真には長い黒髪の発育が将来絶望的そうなにぱ~な少女が写っている。

 写真を取り出した途端に(・3・)の周りの空気が荒ぶり始める。ハァハァという荒い息遣いとメガネ的な無機質が冷たさが感じられそうな大気の変動だった。

(#・3・)「空気嫁なおじさん最終奥義っ! 空気(Air)だよっ!! ぶっひゃっひゃっひゃ」

「何なのだ!? あの、如何なる魔術を駆使しても計測不可能な空気の流れはっ!?」

「まさか(・3・)は新手のスタンド使いだとでも言うのっ!?」

 ケイネスの魔術、アストレアの野生の勘をもってしても(・3・)の最終奥義のカラクリが分からない。

 ぽっちゃりとメガネ的な何かを感じるはするのだが、それが何なのか全く認知できない。

(#・3・)「さあっ、富&岡っ! 写真が欲しければおじさんに逆らうそこの馬鹿な金髪どもを捕えるんだよっ!」

 (・3・)の号令と共に空気が唸る。

「ばっ、馬鹿なっ!? この天才魔術師ロード・エルメロイの防御障壁を掻い潜るって私を拘束しただとっ!?」

 さしもの天才魔術師も全く感知できない相手に対しては有効な防御を取れなかった。

 やたら汗臭くてハァハァ言っている何かに全身を掴まれて身動きが取れなくなる。

「ちょっとっ!? 一体、なんなのよっ!? 離しなさいってば!」

 アストレアもまた捕らえられてしまった。やたらとメガネがチクチクと体に当たる感触がする空気だった。

 

(・3・)「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ。これでおじさんの勝ちは決まったようだねっ!」

 大声を上げながら(・3・)は楽しげに笑っている。

「フンッ。動けなくなった程度で貴様に負けるものか。天才魔術師を舐めるなっ!」

「キックの一発でアンタなんかギッタンギッタンにしてやるんだから」

 拘束されてもなおケイネスとアストレアは自身の優位を疑わない。

 だが、(・3・)にはまだ切り札が残っていた。

(#・3・)「本当にお馬鹿な金髪どもだねっ! ここがきいずみくらべよしさか、あの世とこの世の境目だってことを忘れるなんてっ!」

 (・3・)は唇を大きく突き出して馬鹿にした笑いをしてみせた。

「貴様に一体どう私たちにとどめをさせると言うのだ?」

「アンタなんか99.9%死んでても負けないわよっ!」

 だが、それでも2人は自信を崩さない。

 そんなアストレアたちに対して(・3・)は遂に最終攻撃に入る。

(#・3・)「さあ、富&岡っ! 写真が欲しければおじさんに付いてきなっ!」

 (・3・)はアストレアたちに向かって話しかけると走り出した。

 黄泉比良坂の頂上へと向かって。

「えっ? 逃げた………………って、きゃぁあああああああああああぁっ!?!?」

 突如アストレアは強い力で体を引っ張られた。足が宙に浮き上がり体は坂の頂上へと一直線に向かっていく。

「まさか……あの(・3・)の狙いはっ!」

 ケイネスもまた坂の頂上目掛けて引っ張られていく。

 2人の体はまたたく間に穴の目前とする坂の頂上へと運ばれていった。

 

 坂の上では(・3・)が(・3・)な表情で写真を掲げて(・3・)っていた。

(・3・)「おじさんのライフ節約の為に2人にはここで消えてもらうよ~」

 とても軽いノリだった。

 そして軽いノリのまま持っていた写真を穴の中へと落とした。

(・3・)「2人には穴の中に落ちて完全消滅してもらうさ。おじさんに歯向かったんだから死ぬのは当然だよね?」

「「なっ!?」」

 気づいた時にはケイネスとアストレアの体が地面を離れ、穴の中へとダイヴし始めていた。

 そしてそれと同時に──

(#・3・)「なんでおじさんまで穴の中に落ちているのさぁ~~~~っ!?!?」

 (・3・)の体もまた穴の中へと落ちていく。

「そんなもの、天才魔術師であるこの私が貴様の行動を読まないと思ったか? スカルプは攻守一体の最強の魔術。貴様の体を捕らえて一緒に引きずり落とすぐらいはわけがない」

「私だって(・3・)の行動ぐらい読めるわよ。そしたら、クリュサオルの柄にアンタを引っ掛けて一緒に落ちるぐらいはできるんだからっ!」

 

 3人+2空気は冥界へと繋がる穴へと落ちていく。

「クッ! この穴に落ちてしまえば……阿頼耶識に目覚めている者以外は消滅し、二度と現世に戻るチャンスがなくなってしまう……」

「まだ年越しソバも食べてないのに死んじゃうのは嫌ぁあああああああぁっ!」

(・3・)「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ。エイト・センシズはねえっ、おじさんみたいに愛されキャラで死んでしまうのが惜しまれて惜しまれて死んだままにはしていられない感動と涙を誘う人間にのみ与えられる聖なる力なのさ。お前たちみたいな、妹並みに馬鹿で愚かで生きている意味が全く感じられない駄目人間に与えられるもんじゃないんだよっ!」

 (・3・)は馬鹿笑いを奏でながら穴の中を落ちていく。

「クッ! 神はこのイケメン天才魔術師の美貌と才能に嫉妬して夭逝させようと言うのか! それとも私が神よりも幼女への愛を無限大に示してしまったから憎んでのことか!」

「どうせ死ぬならドッグフードをお腹いっぱいに食べたかったよぉ~~~~っ! 後、ニンフ先輩に胸ちっちゃいですねぷすすって笑ってやれば良かった~~~~っ!!」

 アストレアとケイネスは空気に囚われたまま志半ばで散ってしまうことを嘆いていた。自分勝手な理屈を述べながら嘆いていた。

 

 そして3人+2空気は穴を落ちきって冥界の地面に頭から突き刺さった。

 

 

 

「あらあら~。アストレアちゃんじゃな~い。冥界まで人の形を保ったままくるなんてすごいじゃな~い」

「それじゃあ、(・3・)の他にこの金髪の2人も死んでしまっても心が痛まず、かつ微妙に微笑ましい気持ちになれるゴミクズってこと? にぱ~★★」

「この3人どうします? 冥界の汚れになるようだったらクスクス笑ってゴーゴーしますけど」

 

 

 つづく

 

 

 


 
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