第十章「前進!地霊殿へ!-後編-」
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お燐「ほいで、何で人間がここに居るんだい?」
心持冷ややかにこちらを睨み付ける宙に浮いた少女。
先程仲裁に入ってくれたヤマメさんに名前を火焔猫 燐と聞いた。
見た感じおばさんっぽい(失礼)濃い緑な服を着た赤いおさげの少女である。
彼女はどうやらこの辺りを仕切っている妖怪の様だ。
俺の方といえばこのキャラは所見で、見たことすら無いキャラクターであるのだが。
・・・・聞いている限りだと『お燐』とか呼ばれているようだから、俺もこう呼ぶ事にしよう。
まぁ、さん付けは必須だろうが。
ヤマメ「実はな、かくかくしかじか・・・・」
パルスィ「かようかようなのよ・・・」
燐「ほうほう」
そのお燐さんなる妖怪にやられた未だ熱く疼く背中を擦りながら二人の会話を見守る。
・・・・・・・さっきの炎はきっと俺を焼き殺さんとせんばかりの炎だとお見受けしてしまった。
どうやら地獄に住んでいるとはいえ、人間に友好的でない妖怪も存在するのだろう。
お燐「・・・・で、地上に戻る為に地霊殿の間欠泉を使いたいと・・・・」
ヤマメ「そうなんだよ」
光助「そうなんです」
話はいつの間にやら進んでいて、地霊殿の間欠泉の話になっていた。
俺が地上から出られる唯一の出口と聞いた地霊殿の間欠泉。
パルスィ「そうそう、世話が焼けるクズ人間でねぇ」
光助「うっ」
だってさ。
パルスィさんの罵倒はいつもの事とはいえ、直撃だと流石に心にくるものがある。
燐「ふぅ~ん・・・・・んま、キスメがその調子だと案外悪い人間でもなさそうだね」
お燐さんが空中から降りてきて、唐突にこちらをちらりと見てふふんと鼻を鳴らした。
光助「へ?キスメ?」
あの桶妖怪のキスメの事だろうか?
記憶している限りでは、キスメは旅館に置いてきた気がするが・・・・。
光助「・・・・・・・・・ぉうわ!!!」
キスメ「ようコウスケ」
後ろを振り向くと、地霊殿で貰った背嚢から顔を出す緑色の髪を持つ妖怪少女が中からこちらを見ていた。
いつの間に。
ヤマメ「あれまキスメ、来てたのかい」
パルスィ「・・・全然気付かなかったわ」
二人とも気付いてらっしゃらなかったようだ。
妖怪って基本的に相手の気配を読んでコミュニケーションを取るものだと思っていたのだが。
隠れている相手には利かないのだろうか?
「においがする」っていうのもつい最近見たことがある様な。
光助「お前、一体何処にいたんだ・・・・」
まさかずっと俺の背中の背嚢の中に隠れ続けていたというのか。
キスメ「いや、上から降りてずっと中に入ってた」
光助「へ?」
彼女が指さす上を見上げると、細いロープが俺の背嚢から伸びて上に繋がっている。
その先には・・・・・・・・ハッ!
キスメ「ご察しの通りだ」
光助「うぉおおおおおおおおおお!!」
悟った瞬間には遅かった。
ヒュ~・・・・・・・コォオオオオオオンン!
光助「グワァ!!」
横っ飛びに避けようと踏ん張った足は間に合わず、勢いよく降ってきたドリフ的な桶が頭に直撃した。
何度か食らった攻撃だが、今回は頭にフラッシュが飛ぶほどひどかった。
キスメ「私をよく探しもしないで置いていった罰だ」
光助「い、いや、だって何度呼んでも来なかったじゃないかい・・・」
キスメ「うるさい」
コォン!!
光助「へうっ!!」
落ちてきた桶を背嚢の中からキャッチし、更に俺の頭に打ち付ける。
これまた痛い。ハゲが出来てまう。
キスメ「男なら根気よく待て」
光助「へ、へぇ・・・・(無茶苦茶じゃ)」
何とも勝手な言い分であるが、裏を返せば寂しかったのだろうか。
もう少し優しく接しようと思った・・・・・十分優しくしている気もするというのはかき消された。
お燐「ふふふ・・・」
先程から冷たい目線を送り続けていたお燐さんだが、今は何だか暖かい穏やかな目になっている。
すると突如、ふわりとこちらに歩み寄って来てじろじろとねめつけ始めた。
何だか近過ぎ・・・・・。
暫くしてその身を離し、全員を見回す。
そして何か考えたように頷いた後、一言漏らした。
お燐「まぁ悪い事出来そうな奴には見えないね・・・」
悪くない様で何とも言えないコメントを頂いた。
まぁ"悪そうな奴に見える"よりかは幾分かマシではあるのだが・・・。
ヤマメ「ふっ、そうさね・・・」
パルスィ「元々度胸なさそうだものね」
キスメ「だな」
そのコメントに対する御三方の様々な意見。
・・・何だか随分な言われ様である。
お燐「・・・まぁそういう事なら通りな」
ひらひらと手を振るお燐さん。
ヤマメ「じゃあ通らせて貰うよ」
光助「ありがとうございます」
そういうとスタスタと傍を通り過ぎた。
案外あっさり通してくれた事に意外性を感じながら先を急ぐ。
そして最後に手を振って別れた。
それを見て取ったお燐さんが手を振り俺達に分からない声で小さく呟いた。
お燐「あぁ・・・命あったらまたおいで・・・」
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光助「ここが地霊殿・・・?」
赤く燃える洞窟を抜けた先は、また違った雰囲気を醸す場所であった。
床一面を紫色に鈍く光るタイルの様な大理石がそこかしこに埋められており、奥の方は霧掛かっているのか暗くてよく見えない。
こんな場所に誰が居るんだろうか・・・・・?
妖怪ならばこの様な暗い場所でも生息出来そうであるが。
ぱっと見た感じではあるが、「人」が生きていける場所では無い様に感じられる。
・・・・勇義さんが出掛ける前に話していた『人間には恐ろしい場所』というのはこの禍々しい雰囲気の事だったのだろうか。
いや、どうもそうは思えないが・・・・
?「誰・・・・光助って・・・」
光助「ギャッ!!!」
いきなり背後から聞こえた声に驚き、無様に尻餅をついてしまう。
・・・・一応、毎回毎回こんな風に無様にコケたりするのだが、普段はこんな事殆ど無いのだ。
人間、本当に驚くと体が言う事を聞かなくなるのだなとしみじみ思う。
そんな事よりこの環境下で『誰か』が居ることに驚いてしまった。
何度も言い聞かせるが、ここは幻想郷であるのだ。
常識に囚われてh
?「・・・何を一人語りしてるのかしら、光助」
光助「ッ!?」
今度は名指しで呼ばれた!?
そんな事を思っていると、後ろからスタスタと歩いてくる音がした。
タイルの紫色の光を頼りに遠くを見ると、薄い紫色の少女が立っている。
先程の声は彼女であr
?「・・・だから何を一人語りしてるんだって聞いてるのよ」
見た所、幼稚園児の様な小学生の様な風変わりな格好をした少女である。
一見すると普通の女の子の様であるが、その周囲にまとわり付く不可思議な赤いチューブの様な物体が彼女を際立たせていた。
あのチューブが通っている一ヶ所だけ丸い何かが見える。
それをじっと注視していると「パチッ」と音を立てんばかりに開いたのだ。
そう、あれはどう見ても"目"である。
一見で判断したが、この子も妖怪なのか・・・
まぁこの場所この空気なら人間の方が不自然であろうが。
・・・・・ふと、嫌な予感がした。
さっきからこの女の子が言っている"一人語り"とは?
まさかとは思うが・・・・この子、俺の心を・・・・?
?「察しの通り、読めるわよ」
光助「なんッ!?」
やはりそうか!
嫌な予感はしたけれど、この子は俺の心を読んでいるっぽい。
う、迂闊な事は考えられないな・・・。
先程の尻餅から立ち上がると同時に身構えると、目の前の少女は俺の後ろに目を遣った。
ヤマメ「この子は古明地さとり、地霊殿全体の管理人みたいなもんさ」
後から来たヤマメさんが小さく駆けつけながら説明する。
その後に続くパルスィさん、そしてカランコロンと跳ねてくるキスメ。
古明寺さとり。
そこまでゲームを進めた事が無いので、正直知らない妖怪(か?)だ。
・・・・・・・しかし、昔読んだ本に出ていた"さとるの怪物"なら知っている。
確か相手の心を読んで、読み終えたら食べてしまうという妖怪だった気がする。
・・・・・・名前似てるよな。
この少女の様な外見でも人間をムシャコラと食べてしまうんだろうか。
こう可愛い顔して油断させておいて、ガァアア!っと・・・・恐ろしい。
幼い頃にゲゲゲ関係の挿絵で恐怖を植え付けられた俺は、もはや妖怪の価値観が圧倒的に恐怖に近いのかもしれない。
この間、"さとり"なる少女がこちらをじと目で睨んでいる事に俺は気付いていなかった。
ヤマメ「ほいで、今回ここに来た理由なんだけども」
早速ヤマメさんが事の経緯を"さとり"なる妖怪に説明しようとしていると・・・
さとり「・・・・・・・・ん?」
光助「な、なんでしょうか」
さとり・・・・さん、が何やらこちらに近付き、睨めつけてきた。
恐らく妖怪なんだろうけれども、突然近付いてきた意外にも愛くるしい表情に少しドギマギする。
何だろうか。
さとり「ふぅーん・・・・・へぇ・・・・・」
光助「!?」
おもむろに何かを悟った様にニヤニヤと静かに笑いを浮かべるさとりさん。
先程の考えが正しければ・・・
まさか俺の心の奥のを見通してほくそ笑んでいるのでは!?
と、そう思えば思う程まずい記憶が鮮明に浮かび上がってくる。
思い出したくも無いあれは中学2年生辺りの頃。
・・・・ッまずい!!
光助「ファアアアアアアー!!!!」
俺は耳を両手で塞ぎながら奇声に近い大声をあげた。
ナイスアイディアとは思ったのだがが、人前(妖怪前)、しかも女の子達の前でやるのも気が引ける・・・・
が、そんな事思っている場合でも無く俺は軽く錯乱状態。
こんな場所で俺の恥ずかしい記憶が白日の下に曝け出されては困るのだ!
が、しかし
さとり「中学三年の頃の・・・・」
バレてる!
そんな俺の心など省みず、さとりさんはぶつぶつと読心を始める。
アカン!!
さとり「俺のターン(笑)」
光助「ギャ!」
さとり「デストロォオオオオイ(笑)」
光助「ギィ!」
さとり「エターナルフォースブリザー・・・」
光助「うぉっウォアアアアアアアアアアアアア!!!」
--------10分後(クルッポー -----------
光助「・・・・・・・・・・・」
あれからずっと心の中を淡々と読まれてその場で"何もかも"朗読されてしまっていた。
目の前のヤマメさんやパルスィさん、キスメまでもが何とも言えない微妙な表情でこちらを見ている。
そりゃそうだ、人の過去なんて良い事ばかりでは無いのだから・・・。
モザイク無し無修正な俺のザ☆忘れたい風呂場ならもれなく思い出してああああする過去。
これぞまさに心素っ裸のネイキッド・俺。
地霊殿に来て早くも心の神殿の崩壊が始まってしまいそうになる。
読心・・・・なんて恐ろしい能力なんだ。
パルスィ「ぷっ・・・い、いいから本題に入りなさいよ」
悶絶して動けない人間(俺)と、暫くしてそれを嘲笑う(特にパルスィさん・・むしろ彼女だけ)妖怪達を見兼ねてヤマメさんが説明をしようとする。
何とか息を吹き返した俺はむくりと立ち上がり、涙を拭きながら赤い顔を上げた。
光助「・・・・心読めるなら説明とか要らなくないですか」
さとり「概要ぐらい耳で聞くわよ」
ヤマメ「そうさね・・・・・実は」
そんな俺を横目で見ながらヤマメさんがこれまでの事を軽く説明する。
紫さんに連れられて幻想郷にやって来た事。
そこで5日間滞在しなければ元の世界へは帰ってこれない事。
・・・未成年である事(ここは要らないんじゃないだろうか)。
ふと思ったけど地底に来てからヤマメさんに凄く説明させてるなと思う。
心持、全く申し訳ない気持ちになる。
・・・これ何度目かな。
さとり「へぇ、あの隙間妖怪がねぇ・・・・・・」
ヤマメ「それで出口を探してこの先の間欠泉に来たって訳さ」
暫くして説明が終わり、ヤマメさんがさとりさんに意見を聞く。
俯いて考える素振りを見せていたさとりさんだが顔を上げて言った。
さとり「わかったわ、じゃあ案内するからついてらっしゃい・・・・スーパーマンさん?」
光助「いや!もういいでしょう!というかすいませんでした、マジで!マジで!!」
さとり「フフフ」
早くも良いように扱われてしまっているザ・ネイキッド俺であった。
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暫く歩いた後、また一回り大きめの洞窟に入った俺達は広く長い一本をひたすらに歩いていた。
時折聞こえてくる大きな風鳴りと、その大きな風に吹き飛ばされないように進む。
他のメンバーはというと、そんな風なぞ何処吹く風・・・のんびりと会話しながら歩いていた。
やっぱり土地に慣れてるからかな。
そんな事を思いながらヒーコラ歩いていると、ふいにさとりさんがこちらに振り向いた。
さとり「・・・で、何であんたさっきからずっと一人で何か喋ってるのよ」
光助「人の心を喋った扱いしないでくださいよ!」
・・・さっきからずっとこの調子である。
事ある毎に此方に顔を向け、俺の心を読心しに掛かってくるのだ。
お陰で俺の思っている事が全て会話と化し、ふと思った事でもやれどうだのこうだのと言われ続けるのだ。
しかし、一つだけ分かった事がある。
あの不可思議な赤いチューブに付いた目玉がこちらに動かない限り、心は読めないものと気付いたのだ。
それさえ分かれば彼女のあの目玉部分に注視していれば心を読まれる前に別の事を考えt
さとり「じゃあ私がこの子を私側に向けて開いたら見えないでしょう?」
光助「なんてこった!」
言っている傍から俺の策略が読まれ突破されてしまっていた。
最早成す術無しである。
さとり「・・・しかし本当に面白いわね、暫く置いておいても暇潰しぐらいにはなりそう」
ヤマメ「フフフ、でもまぁ上の事情も本人の希望もあるからねぇ」
パルスィ「何言ってるのよ!あんな人間置いておいたら腐って捨てるのが面倒なだけじゃない」
ヤマメ「そうはいうけどパルスィ、あんたもこんな所まで付いてくるなんて光助を気に入ったって事じゃないのかねぇ?」
パルスィ「は、ハァ!?んな訳ないでしょ!私はあの人間が居たら・・・」
さとり「・・・みんなと地霊殿がおかしくなっちゃうかもしれないでしょ!!・・・でしょ、意外に仲間思いなのよねぇ」
パルスィ「ちょ・・・・こ、心読むんじゃないわよ!!」
キスメ「ふっ」
さとり「ふっ」
パルスィ「何よ!!」
ヤマメ「ははは、まぁまぁ」
・・・・何やら俺の先の方で皆が集まって何かを話している。
この台風の様な風のせいで何を喋っているのかが聞き取れないのだが。
あれかな、ガールズトークって奴なのかな。
いや、妖怪なら俺をどう料理して食うかみたいな会話なんだろうか。
パルスィさん辺りがこう俺を錯乱させてヤマメさんが俺を糸で結わってお燐さんが火を起して・・・・丸焼き!!
キ、キャァアアアアア!人殺しぃ。
パルスィ「誰が食うかっ!!」
スパコォオオオーン!
と、恐ろしい想像をしていると不意に頭に強い衝撃が走った。
光助「うべぁ!!」
キスメ「天誅」
どうやらキスメの入っていた桶で本人毎、俺の頭に打ちつけたようだ。
本日2度目の強烈なダイレクトアタック・ジ・ドリフ。
光助「いててぇ・・・・・」
パルスィ「フンッ」
しかし何故彼らが俺の心を読んだのだろうか。
実はそんな力がありつつも黙っていたとでもいうのか・・・。
さとり「・・・フフフ、筒抜け」
いや、この人のせいか。
気付けば皆がこちらに振り向き、ニヤ付き笑いを浮かべている。
当のさとりさんは右手で輪っかを作りそれを覗くなんとも嫌なジェスチャーをしていた。
パルスィ「私が錯乱させるですって・・・?」
ヤマメ「で、あたしが縛って・・・・」
キスメ「燐が火を燃やして丸焼きと」
さとり「盛り付けはわたし・・・」
朗読会かッ!
さとり「朗読会かっ・・・・」
ちくしょう。
ヤマメ「まぁ、食べたりしないから大丈夫さ」
キスメ「そうだ、最初から食べる気ならここまで連れて来ない」
ははは、と皆が笑い合う。
・・・・まぁ笑いを誘えたなら悪い気はしない。
そんな彼女らと共に俺達は地霊殿の先にあるという間欠泉を目指した。
・・・・・そういや風呂場で『食ったほうが早い』とか聞いたような。
パルスィ「何?」
光助「あ、いや、なんでもないです」
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そんなこんなで洞窟の最奥へと着いた訳だが・・・・
さとり「さて着いたわ、ここが間欠泉よ」
光助「・・・・・・高ッ」
そこにあるのは確かに間欠泉であった。
が、その太さと大きさは予想外のものであり、とても登れる様には見えない。
恐る恐る覗き込むと、下から上へとズォオオオオと空気を巻き上げる音が聞こえてくる。
光助「こんな長い縦穴・・・どうやっても昇り切れませんよ」
すっと出していた頭を戻し、呟く。
見た感じだと、ざっと数100キロ近くはありそうな長い間欠泉である。
ここを登れば帰れるにしろ、人の力で登るのは流石に無理があるだろう。
登っている間に水分が抜けて干乾びてしまう。
さとり「そりゃ『人間』はそうよね・・・・空!」
そうさとりさんが叫ぶと、穴の中から大きな黒い影が遮った。
バサッ!
光助「え?・・・・うわっ!!」
思わず叫んで飛び退いてしまった。
あの影の大きさからすると相当大きな・・・・妖怪だろうか。
こう、鷲の様な・・・どちらにしても恐怖である。
空「お呼びですかー、さとり様」
が、振り向くとそこに居たのは少女であった。
バサッという先程の音は彼女の背中のマントだろう。
さとりさんの隣に佇んでにこやかに笑っている。
さとり「この子は霊烏路 空、私の使いでここら一帯を管理しているの」
霊烏路 空。
頭部に付いている緑色のリボンが特徴的な少女である。
友人宅の本棚で、ゲームパッケージで見た事のある姿だ。
その程度の知識だけだが・・・。
ふと、気になったのだが・・・・片手に『謎の筒』を装備している。
あれどっかでみたことあるな、ロックマ(ry
空「どうもー・・・・・ってさとり様、この子は?」
さとり「ええ、この人間を地上まで連れ行って頂戴な」
俺を一瞥し、その片腕筒の少女がこちらに駆け寄ってくる。
空「・・・・・ねぇ」
光助「うぇ!?は、はい・・・?」
空「人間?」
光助「は、はい、一応」
空「へぇ~」
ジロジロと俺の体をなめ回す様に見てくる空、さん。
空「んね、おいしい?」
光助「おいしくないよッ!!」
即座に答えた。
今あのルーミアな感覚が甦るとは思わなった。
まさか彼女も人食妖怪なのか。
久し振りに妖怪らしい妖怪に会ったと少しまた緊張する。
これ油断したらいつの間にか腕無くなってるタイプのやつじゃ・・・
さとり「・・・・まぁ多分大丈夫よ」
そんな俺の心情を読んだのか、さとりさんが肩に手をポンと当てた。
早くも心配になってくる・・・。
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光助「色々とお世話になりました」
ヤマメ「あぁ、無事に元の世界へ帰れるといいね」
パルスィ「・・・・・ま、この世界じゃ無事なんて無いけどね」
俺は、さとりさんの使い魔(だろうか)の空さんに地上まで送って行って貰う事になった。
ヤマメさんの糸とかキスメのロープとか考えたのだが、やはり効率的には空さんに連れて行って貰う方が良いとなったのだ。
先ほどの件は『半分聞かなかった事に』した事で合意した・・・心で。
空「しっかりつかまっててね、準備はいい?」
光助「あ、ちょっと・・・・・・・」
ふと振り返れば・・・
この地底、「地獄」での思い出も色々あって何だか感動が込み上げてくる・・・・・
穴に落っこちた事。
それをヤマメさんが助けてくれた事。
パルスィさんに攻撃された事。
キスメにドリフされた事。
祭りで色々な妖怪達と知り合えたこと。
その会場で勇義さんと一緒に太鼓を叩けた事。
旅館で大騒ぎした事。
そして何より、皆がなんだかんだ言って色々協力してくれた事。
思い出が億っ千万な状態で、微妙に涙ぐんでしまいそうになってしまう様n・・・
と、ふと目が合ったパルスィさんが言う。
パルスィ「まぁ死んでも誰か食ってくれるでしょ・・・・物好きな奴らがね」
折角の感動が恐怖で薄れた。
・・・でもまぁ、これもパルスィさんなりの俺の緊張を解き解してくれているという事なのだろうか。
彼女の事をちょっとだけ分かってきた気がする。
最後にジョークを飛ばしてみる事にした。
光助「え?ほいじゃ、パルスィさんが食べてくれるんですか?」
パルスィ「はぁ!?だ、だから食べる訳ないでしょこのバカッ!・・・というかどういう意味よっ!」
顔を赤くして即座に返してくるパルスィさん。
期待を裏切らない突っ込みであった。
それが合図だった様にヤマメさんとさとりさんがクスクスと笑い、キスメもニヤニヤと静かに笑う。
・・・これでもうやり残した事はない(謎)。
光助「準備OKです、いけます」
ずっと待機状態だった空さんに一言声を掛け、出発を促した。
空「うん・・・・ほんじゃ、しっかりつかまっててね!さとり様行ってきまーす!」
さとり「気を付けるのよ・・・特に人間に」
空「はぁい!」
バサッ!!
そう言うと空さんは俺を抱きかかえたまま、その雄大なマントを大きく広げた。
光助「皆さん!本当にありがとうございました!」
最後に大声でお礼を叫ぶ。
これは4人に対してと、地霊殿の奥つまり地獄街道にも届くようにと声を張り上げた為である。
それを聞き届けてくれたのか、下に見える4人(?)の妖怪達がそれぞれ手を振ってくれた。
若干一名が恥ずかしそうにヒラヒラと手を振るのが見えてまた少し緊張が解れる。
そして、それを最後に翼の様にマントがうねると、地面を叩き、空さんに抱えられた俺の体は物凄い速度で宙に浮き上がった。
まさに『鳥類の飛翔』である。
空「そぉおおぃりゃぁあああああああ!」
光助「う、うぉあああああああああああああああ!!」
こうして空さんと俺(特に俺)は、地上に向かって帰還を試みるのであったのだ。
-続くッ!!-
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第十章の後編です。