その後一刀と司馬懿は屋敷へ戻り、先の曹操のことについて話していた。
司馬懿の話によると、どうやら元々二つの家は交流があり、
司馬家の優秀な人材たちに曹操が興味を持ったことが二人の関係の始まりだったらしい。
曹操は優秀な人材を好んでいた。
ただ、それだけならば司馬懿に固執する理由としては弱い。
そう、曹操には秘密があった。
彼女はなんと、美しい女性が大好きらしいのだ。
ライクではなくラブ。
L・O・V・Eのあのラブだ。
同性愛というのは深く立ち入り辛い領域だが、この際そこは置いておこう。
問題なのは司馬懿の方にはその気が全くなく、曹操は一度目を付けた女性は手元に置くまで決して諦めないという点だった。
「私が姉妹たちと離れて暮らしている理由がこれなのです。
毎日のように私を籠絡しようとあの手この手で屋敷を訪れるものですから、
いつ姉妹たちにもその関心が行ってしまうか分かりませんでした」
「なるほどね。家族に気を遣って家を出た訳だ」
こくんと頷く司馬懿はどことなく疲れた表情をしていた。
どうやら曹操に付き纏われているのは1ヶ月とかそういうレベルではなさそうだった。
「何度言っても、一度閨を過ごせばその考えも変わるでしょうの一点張りでして…」
「こればかりはね…女性としても完璧で、更に軍師としても完璧となれば曹操が放っておくはずないもんなぁ」
「……っ///」
「ん、どうかした仲達?なんか顔が赤いけど」
「い、いえ、何も」
どこか挙動が不思議めいた司馬懿を眺めつつ、一刀はどうしたものかと考えていた。
司馬懿は一刀の恩人だ。
できることならば彼女を助けてやりたいが今の自分はただの居候の身。
対して相手はここ陳留を治める刺史だ。
説得どころか、同じ机を挟んで話して貰えるかどうかすら怪しい。
「効果的なのは俺が噂の御使いだって言ってみることだけどそれもなぁ。
証明するには証拠が足りないし、曹操って妖術とかその類って嫌いなんだろ?」
「はい。そのような根拠のないものが民を惑わせるのだと」
全く持って仰る通りで。
宗教などはいつの時代も戦争の引き金となることが多かった。
人の弱さに付け込み、神なんて言う居もしない妄想に縋らせる。
全ての宗教がそうだと否定するつもりはないが、そのような悪意が根底にある教えがあったのも事実だ。
「そういえばさ仲達。広場で言ってた俺の傍に居るってあれ一体どういう意----」
「”一刀様”お茶の御代わりは如何ですか?」
「うんありがとう。それであの言葉の----」
「お茶の御代わりは如何ですか?」
「意味--------」
「如何ですか?」
「はい、頂きます。それより曹操のことを何とかしなくちゃね!!」
なんなんだよ畜生。
司馬懿の笑顔がこんなに怖いと思ったのは始めてだった。
なんか曹操と会って以降、呼び方が一刀様に変わってるし…いや別に良いんだけどさ。
「いっその事、乗ってみちゃうってのはどうなのかな?」
「……一刀様は私に傷物になれ、と。そう仰るのですね」
一転、急に悲しそうな表情で俯いた司馬懿。
「嘘ですごめんなさい。仲達にも好きな人くらい居るもんね。始めてはその人とが良いよね」
「そ、それは…」
ジッと一刀を見つめてくる司馬懿だったが、当の一刀にはその視線の意味が伝わらない。
というより、司馬懿自身もこの胸の高鳴りを理解し切れていなかった。
まだ会って間もない男にこんな感情を抱くなんて、と。
今まで異性、同性を含めて人との関係を絶ってきたことが、ここにきて祟ってしまっていた。
「あ」
「どうしましたか?」
「いや、なんでもない。流石にこれは普通過ぎる」
湯呑に口を付け、それ以上は言葉を濁す一刀の姿に司馬懿は希望を見出した。
「あの一刀様、もし何か案があればお願いします。お教えくださいませんか?」
「いやでも……」
「お願いします」
じわじわとにじり寄ってくる司馬懿の顔から逃れるように後ろに身体をずらす一刀だったが、
それもすぐに壁に阻まれ退路を断たれてしまっていた。
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あさぎ、まだよ!!もういっちょぉおお!!!
エヴァパチ第8使徒逆転演出にて。
分かる人どんくらいいるんだろ……?