No.531084

真恋姫†夢想 弓史に一生 第六章 第七話 毒舌

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。


もうすぐですが、お気に入りクリエイター数が200に達しそうです。

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2013-01-13 01:35:50 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1635   閲覧ユーザー数:1492

~蛍side~

 

 

「……聖兄ちゃん、行っちゃうの?」

 

「あぁ。」

 

 

……翌朝……見つからないよう朝早くに出て行こうとした私たち。

 

……だが…村の入り口で待っていたのは許緒と呼ばれている少女……私たちは見つかった。

 

 

「ねぇ、聖兄ちゃん。兄ちゃんたちがこの村を守ってくれるって言うのは……。」

 

「……それは無理なんだよ。」

 

「……何で??」

 

「この村は俺の管轄ではない……。他国の村を俺が治める権利なんて何処にもないんだよ…。」

 

「じゃあ……この村は……。」

 

「……まだしばらくは、今のままで耐えることになると思う…。」

 

「そっか…。」

 

 

……少女は…悲しそうな顔で俯いた…。

 

 

「許緒……。君一人でこの村を守っていけるか?」

 

「大丈夫だよ。 この村にはね、もう一人ボクと同じくらい強い子がいるんだから!!」

 

「そうか。じゃあ、この村を任せたぞ…。」

 

「うん!!」

 

 

 

……少女に別れの挨拶をして……私たちはその村から出て行った。

 

 

 

 

……私の少し前……馬に揺られるご主人様はどこか浮かない顔…。

 

 

 

……ご主人様…苦しそう…。

 

 

 

 

……ご主人様…優しい…だから…あの村ほっとけない…。

 

……でも…何も出来ない…。

 

……それが辛い…それが苦しい…。

 

 

 

……乱世ではよくあることと割り切る考えも大事…。

 

……ご主人様は分かってる??

 

 

 

 

 

 

 

「…………。(ギュッ!!)」

 

 

 

 

 

 

……ご主人様の服の裾…掴んでれば気付いてくれる…。

 

 

「……どうした、蛍?」

 

 

……気付いてくれた…でも不思議そうな顔…。

 

 

「……ご主人様……これも乱世だから仕方ないこと。」

 

 

……ご主人様…一瞬驚いてたけど……優しい笑顔を見せてくれる…。

 

 

「……呪いの様に生き、祝いの様に死ぬ…。」

 

「……えっ??」

 

「俺は人を見捨てることは出来ない…。これは俺の呪いのようなもの…。そして、この呪いに生き、自分の人生に悔いなく、死ぬことを祝事として死にたい…。  だから、蛍。割り切るだなんて悲しいことを言うな。 この村に関しては守れないことは凄く悲しい…。だが、それは今の話だ…。何れ必ず、俺はこの村も守るさ…。」

 

 

……さっきまでと雰囲気が変わる……何とも温和で何とも心強い……そういう雰囲気が今のご主人様からは見て取れる…。

 

 

 

……ご主人様の考え………少し人と変わっている…。

 

……この世の常識にとらわれない…甘い甘い理想論…。

 

……でも…それを叶えるだけの力を持っていれば……それは理想論などではなく……。

 

……もっともっと……ご主人様の考えを教えて欲しいな……。

 

 

「ありがとな、蛍。心配してくれてるんだろ?」

 

 

……うぅ……そんな笑顔で見つめるのは反則……。

 

……顔が熱い…。

 

 

「……別に…。」

 

「ふふっ…。素直じゃないな、蛍は…。」

 

「……あっ…。」

 

 

……頭を撫でるその手は…大きくて…温かくて……。

 

……ついつい、夢中になってしまう…。

 

 

ズキッ!!

 

 

……胸に広がる痛み…一体何…??

 

……私……この痛みを知らない…。

 

 

 

 

 

 

 

~聖side~

 

 

翌日の行軍は滞りなく行われていた。

 

 

「今どの辺だ、勇?」

 

「へい。今は頴川郡ですぜ。」

 

「と言うことは…洛陽まではあと少しだな。」

 

 

俺たちは洛陽へと向かっていた。

 

 

と言うのもここに来るまでに、黄巾賊について十分な情報を手に入れることが出来ていなかったのである。

 

 

黄巾賊についての情報は各諸侯、数多く手に入れることは出来ていた。しかし、首謀者とされている張角の情報は、姿はおろか、居場所さえ掴めていない状況である。

 

これは、高度な情報隠蔽が行われているのか、それとも単に知らないだけなのか…。

 

戦端の賊を潰したところで手に入る情報はたかが知れていた。

 

 

この世界の中心である洛陽なら情報があるのではないか…。

 

俺たちはそう考えて、月たちのいる洛陽に向かっている。

 

 

その道中、

 

 

「ちょっと~!!! 誰か居ないの!!!!」

 

「ん?? 声が聞こえるな…。」

 

「どうかしたんですか、先生。」

 

「いやっ…人の声が聞こえた気がしたんだが…。」

 

「声?? 俺には何にも聞こえなかったけど??」

 

「私も……聞こえてません…。」

 

「音流、蛍、二人はどうだ?」

 

「うちもなんも聞こえやなか…。」

 

「………何も……。」

 

「う~ん……。」

 

 

辺りを見回してみるが、声の主らしき人は見つからない…。

 

 

「……気のせいか…??」

 

 

幻聴が聞こえるとは…俺も疲れてるのかな…。

 

 

「誰か助けなさいよ!!!」

 

「っ!! 今度は確りと聞こえたぞ!!」

 

 

今度こそ幻聴でなく、確りと女の子の声が聞こえた。

 

 

「皆にも今度は聞こえたよな?」

 

「はい。先生の言うとおり、声が聞こえたのです!!」

 

 

他のみんなも首を縦に振って肯定の意思を見せる。

 

 

「でも、何処から聞こえたんだろう??」

 

「辺りには……人影は何処にも……ありませんが…。」

 

 

麗紗の言うとおり、辺りには人が隠れていそうな茂みはおろか、高い木さえない平原なのである…。

 

はたして何処から聞こえているのか…。

 

 

「あんちゃんなら、どっからか分かるんじゃなかと?」

 

 

音流がそう言うと、皆は俺を見つめてくる。

 

……止めろよ…照れんだろ!!

 

 

「大体の距離と方角は分かるんだがな……。どうも、何かで音が反響していて分かりづらい…。」

 

 

……何かの中にいるのか?? そしたら、見つけるのは困難だが…。

 

 

「……困っている人を助ける……それがご主人様の理想………。」

 

「とにかく、行ってみやしょう!!」

 

「…だな!!」

 

 

まったく……こいつらも俺に負けず劣らずのお人好し共だ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「声の出所は……こっちの方だな……。」

 

 

人工的な道をはずれ、野原の草花を掻き分けて進んでいく。

 

 

「お~い!!! 何処にいるんだ~!!!!」

 

「聞こえてたら返事をして欲しいのです~!!!!!」

 

「お~い!!!」

 

「き……聞こえてたら……。」

 

「………返事……して……。」

 

「……二人っちも…そげな声じゃ聞こえやないんじゃなかかいな……。」

 

「「……ぁぅ……。」」

 

 

音流の適度なツッコミが決まったまさにその時。

 

 

「ここよ!!! 早くここから出して!!」

 

 

と言う声が聞こえて、慌てて声のする方へ急ぐ。

 

 

そこには、生い茂る草に隠されるようにして存在する穴が……。

 

まさか……この中に……??

 

 

「誰か来たのね!? 早くここから出して!!」

 

 

どうやらその様だ…。声は間違いなくこの中から聞こえてくる…。

 

 

「今助ける!! 中に縄を入れるから、それに掴まって出てきてくれ!!」

 

 

救助用に縄を投げ入れて、皆で引き上げようと思ったのだが…。

 

 

「足を怪我していて登れないの!! 誰か寄こして!!」

 

 

どうやら声の女性はこの穴に気付かず、落ちて足を捻挫してしまったらしい…。

 

 

「分かった。人を遣わすから、その人に抱えられて出てくると良い。」

 

 

俺がそう言うと、穴の中の女性も納得したみたいだ…。

 

 

「さて、中には軽くて、力持ちの人が入ってくれると助かるんだが………まぁ、音流しかないか…。」

 

「うち!!?」

 

「俺や一刀は重いからな……。他の子達じゃ力不足だろうし…頼めるのは音流だけなんだよ…。」

 

「……分かっとう。うちやるばい!!」

 

「よしっ。残りの皆は音流を引き上げるから手伝ってくれ!!」

 

「「「「「はい!!!(応っ!!!)」」」」」

 

 

こうして、草原での女性救出劇の幕があがる…。

 

 

 

 

 

 

まずは、穴の入り口を大きくし、人二人が通れるくらいにする。

 

 

「じゃあ、ゆっくり降ろしていくからな。」

 

 

その後、音流に縄を巻きつけ、ゆっくりと穴に降ろそうとするが……音流が尋常じゃなく震えている…。

 

 

「……音流??」

 

「ひゃい!!!??」

 

 

明らかに普段…と言うかいつもと違う音流。

 

 

「……一体どうした??」

 

「……実な……うちは暗うて狭い所、苦手なんじゃ……。」

 

 

ほう…。音流の弱点が一つ分かったな…。

 

 

「どうしても無理か?」

 

「……あんちゃんが…一緒やったらよか…。( ///)」

 

「う~ん…。二人だと重いからな……。 しょうがない、俺が行くよ…。」

 

「……むぅ……。あんちゃんな手強か…。」

 

 

音流の呟きも知らず、平常運転な聖でした。

 

 

 

「よ~し…。じゃあ、ゆっくり降ろしてくれ。」

 

 

引き上げる時用に縄を体に回してから、皆が縄の先を持っているのを確認し、穴に体を入れる。

 

 

縄からはギシギシと軋み音が上がり、俺の体が落ちる度に穴の入り口に縄が擦れ、ズリッズリッと言う音が鳴る。

 

 

穴の中は意外と深く、地面までは推定で7メートル…。

 

天然で出来た穴だとしたら、何とも危険なものである。

 

こんな所に落ちたら、そりゃ怪我もするだろうな…。

 

 

 

俺の体はゆっくりと穴の中を移動し、入り口から5メートルくらい降りてきた。

 

 

「あと少しで地面だから頑張ってくれ!!」

 

 

縄を持つ仲間に励ましの声をかけて、助けを待つ女性を見ると、猫耳フードを被った少女が俯き、膝を折って座っていた。

 

 

「大丈夫か? もう直ぐ助けるからな。」

 

 

俯き顔をあげて俺を見つめた少女は、安堵の表情を見せるかと思いきや…。

 

 

「いや~!!!! 来るな!!!! あっち行け!!!!」

 

 

……いきなり嫌悪感マックスの表情で罵ってきた…。

 

 

「えっ…?? 助けに来たn『喋るな!!! 動くな!!! 息するな!!!』…。」

 

 

……つまり、俺に死ねと???

 

 

「一体……何がどうして……。」

 

 

その頃、穴の上では…。

 

 

「聖からの指示が止んだな…。」

 

「もう、地面に付いたのですかね??」

 

「お兄ちゃんなら……そう言ってきそうなものですが…。」

 

「何かあったとね??」

 

 

穴の上で待っている人たちは、聖からの指示がない為に考え込んだ…………縄に力を入れることを忘れて…。

 

 

「ちょっ!!? 姉さん方!! 縄を持つ手の力を抜いたら……。」

 

「「「「あっ………。」」」」

 

 

ドシーン!!!!!!

 

 

穴の中からは、何かが地面に落ちる音が響いてきた……。

 

穴の上にいた人々は思う。

 

あ~……やってしまったと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃穴の中では……。

 

 

「ぐっ……は………。」

 

 

流石に二メートルくらいの高さを胸から着地すると負うダメージは計り知れない…。

 

 

「……あばら二本ほどいったかな……。」

 

 

先ほどから胸に走る痛みを自己診察し、他にも怪我が無いか調べる…。

 

 

「手は……どちらも動くな……。足も……大丈夫そうだ……。」

 

 

どうやら、あばら以外は大丈夫そうだ…。

 

 

「あいつら……後で覚えてろよ…。」

 

 

俺を落としたことを後悔させてやるからな…。

 

 

「……っと…。 大丈夫かい、お嬢ちゃん。」

 

「……なんで生きてんのよ。」

 

「意外に頑丈に出来てるみたいでね…。」

 

「そのまま死ねば良かったのに…。」

 

「いやいや、良くないだろ…。」

 

 

とりあえず、穴の底には着いたし、後は少女を抱えて出れば良いだけだな…。

 

 

「さて、まずはここから出ようか…。」

 

 

俺が体を起こして少女に近付くと、

 

 

「来るな!!! 触るな!!! 近寄るな!!!」

 

 

……またもや苛烈な悪態が…。

 

俺何かしたっけ??

 

 

「……でも、出るためには俺が君を抱えないと…。」

 

「いや~!!!! 来るな!!!! 触れるな!!!! 妊娠する~!!!!」

 

「するか~!!!!!!」

 

 

まったく、どんだけ偏った知識を持っているんだか…。

 

 

「ここから出るためだ…。我慢してろ…よっと!!!」

 

「いや~!!!! 離せ~!!!!」

 

 

少女の言葉を無視し、小脇に抱きかかえてから、縄を引いて引き上げの合図を送る。

 

その合図の後、ゆっくりとだが俺の体は地面から離れ、穴の入り口目掛けて浮上していった。

 

 

「離せ~!!!! 触るな~!!!!」

 

「痛っ!! 痛いから!! とにかく、じっとしてて!!!」

 

「ちょっ!!! 何処触ってんのよ!! この色欲魔!!!!」

 

「何処も触ってないってば…。」

 

「いや~!!! 犯される~!!!!」

 

「……はぁ~…。とにかく、じっとしててくれ…。」

 

 

この後も少女は悪態を吐き続けたが、俺はそれをひたすら流し続けた…。

 

いやっ、流し続けなければ俺の心が折られていただろう……。

 

それくらい、彼女の悪態は酷かったのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……。ようやく出られたな…。」

 

 

胸一杯に空気を吸い込むと……先ほど怪我したあばらが痛む…。

 

 

「あ…あの…先生??」

 

「だ…大丈夫…でしょうか…??」

 

 

痛みに顔をゆがめていると、申し訳なさそうな表情をした二人が俺の傍にやってくる。

 

そしてその後ろに続くように、残りの皆も近寄ってきた。

 

 

「おぉ、橙里、麗紗。」

 

「聖、あのな…別に悪気があってやったわけじゃ…。」

 

「少し気ぃ抜いとーたい。そいぎ、あんちゃん……。」

 

「………ごめんなさい…。」

 

「そうか。皆、悪い事をしたとは思ってるんだな。」

 

「「「「「……はい。」」」」」

 

 

俺は皆に笑顔を向ける。

 

その笑顔を見て、一刀以外がお咎め無しだと喜ぶ。

 

しかし、一刀は分かっていた。俺の目が笑っていないことに…。

 

 

「うん。お前達許さんからな。後でキツイ罰を与えるから覚悟しとけよ?」

 

 

その笑顔のまま告げられた言葉に、彼女達の顔から笑顔が消え、代わりにさぁーっと血の気が引いたのが分かる。

 

一刀のみ、「ですよね……。」と零していた。

 

 

 

「さて、お嬢さん。怪我の程は??」

 

 

助けた少女の怪我の具合を確認しようとするが、

 

 

「来ないでって言ってるでしょ!!!」

 

 

とまぁ、助けてあげたのに、あいも変わらず悪態をつく。

 

少女に何があったのかは知らないし、深く詮索する気も無いから、このままほっといても良いのだが…。

 

しかし、怪我をそのままにしておくのも良くない。

 

 

「良いから、足を見せて。」

 

 

少女の近くに膝を着いて座り、足を掴んで患部を確認する。

 

 

「触るなって言ってるでしょ!!!!!」

 

 

触る足と反対の足で、俺の顔を蹴ろうとする彼女に、

 

 

「良いから、見せろって言ってるだろ!!」

 

 

と、少し強い物言いで怒鳴ってしまう。

 

 

「っ…!!」

 

 

少女はびくっと一度震えた後、抵抗する事無く素直に足をさし出した。

 

見たところ少し腫れてはいるが、折れたりしている様子はなく、軽い捻挫であろうと診断できる。

 

 

腰の竹筒を取り出し、少女の足を軽く洗ってから、手拭いで拭き、懐から粉の入った袋を取り出す。

 

 

「……?? 聖、その粉なんだ??」

 

 

いつの間にか俺の真後ろには皆が立っていて、事の成り行きを見ていた。

 

 

「これか? これは、楊柏散。楊梅皮と黄柏、犬山椒を混ぜたやつだよ。」

 

「何に使うものなのですか??」

 

「捻挫や打撲に効くんだよ。こいつを水で溶いて……。」

 

 

竹筒から少量の水を取り出して楊柏散を練り、軟膏様にしてから患部に塗布する。

 

その上から手拭いを巻き、処置は完了だ。

 

 

「よしっ、出来た。しばらくは痛むと思うけど、この薬をさっきやったみたいにして塗ってればすぐに良くなるから。お大事にね。」

 

 

俺がそう言って立ち上がると、少女はぽけーっとした顔のまま一度だけ頷いたのだった。

 

 

 

 

後書きです。

 

 

今話で悪態を吐く少女が出てきましたね~………。

 

 

将来的にどうしようかまだ考え中ですが、この子をこのままにしておく気は無いですよ(笑)

 

 

 

また、聖の懐から漢方薬が出てきましたね……。

 

 

何でこんなのを持ってるのか……と言うか作れるのか……。

 

 

それも今後話しますね…。

 

 

 

次も来週の日曜日に投稿します。

 

それではお楽しみに…・・・。


 
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