No.528581

学園の守護者~白騎士事件編~最終話

BarrettM82さん

本編より十年前に起きISを一躍に有名にさせた事件、それが『白騎士事件』だった。日本に向け発射されたミサイル、その数は二千三百発以上。
この世界の日本の国の国防を担う『国防軍』やその他の組織の最前線で戦う男達、そしてこの国最後の男性首相直井慎三を中心に描いた作品。
今回はその後の世界を箇条書きに近いですが描きました。

2013-01-06 18:13:15 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1112   閲覧ユーザー数:1067

最終話 IS研究所襲撃事件

 

東シナ海海戦におけるISの勝利は世界の常識を覆した。

あの戦闘のあと日本政府と国内の関係企業が全面的な資金援助を開始した。

国防省技術研究所も協力してISの機体と武装の開発に着手したが、その動きに隣国中国が反応した。

首脳部はこの兵器を日本が実戦投入すれば、中国の戦略構想である『第一列島戦』構想に影響出ることが必死だった。

そのために首脳部が考え出したのはISの奪取又は破壊並びに開発者の拉致だった。

すぐに中国海軍に命令を下し、北海艦隊の商型原子力潜水艦一隻に海軍陸戦隊特殊偵察部隊の一個小隊四十名を乗せIS研究所のある石川県に送り込み奪取を計画した。

東シナ海海戦から一ヶ月経ったある日、夜陰に乗じて特殊部隊を乗せた潜水艦が出航した。

石川県には巨大なIS研究所があり、篠ノ之束の指導で全国の関連企業から集まった研究者等が研究開発に勤しんでいた。

周囲にはこの研究所を警備する為の国防省警備司令部隷下に『臨時IS関連警備隊』が編成された。

この部隊は中央即応展開連隊から一個中隊百名の隊員が引き抜かれて警備任務についていた。

この部隊こそが後に名前を変えて死傷率一五〇%を数え、五十嵐裕也少佐が所属する『IS学園警備大隊』の前身の姿だった。

そしてこの部隊を構成している部隊のひとつ、第一歩兵小隊の指揮官は市村翔太中尉でのちに学園警備大隊強襲中隊の指揮官になる男だ。

ある日の夜、第一歩兵小隊は夜間の警備担当となり市村中尉も個人用暗視装置を88式鉄帽に装着して部下と共に談笑しながら施設を囲むフェンスの外側に沿って歩いていた。

 

「あのISという兵器は女性にしか扱えないらしいぞ。」

 

市村中尉は関係者から聞いた話を部下に話した。

 

「そうなんですか!それでは女性兵士の採用枠が増えるんですかね?」

 

「そうかもな、大韓帝国の脅威で少しは装備が新しくなったが俺達が担いでいるこの銃も更新されないままだ。もしかしたら予算がISに流れたら更新がもっと遅くなるだろうな。」

 

この時彼らが所持していた小銃は、開発から二十五年経った89式小銃だった。

技研では先進軽量化小銃の研究を進めていたが、残念ながら研究予算はアメリカ製の兵器購入に当てられた為に製造まで行かなかった。

 

「あのISが実戦投入されれば大韓帝国の空母艦隊は一瞬にして蹴散らせるが、何時出来るかが問題だよな。」

 

「そうですよね、それまでは我々がこのド田舎で銃を担いで見回りをしなければならないと行けない。早く帰りたいですよね?」

 

「・・・任務の重要さを忘れていないか?」

 

市村中尉は部下の発言に反応して、部下を睨んだ。

 

「このISを狙って諸外国の特殊部隊が乗り込んで来るかも知れないんだぞ!一番酷いのはそいつ等と戦闘になって民間人に被害が及ぶことだ!それを起こさない為に我々がいるんだ、肝に銘じとけ!」

 

「すみません、以後気をつけます!」

 

「それでいい、正門が見えてきたぞ。」

 

正門にはバリケードが設置され十名ほどの一個分隊が立っており、二門の機関銃座と一両の96式装輪装甲車が鎮座していた。

 

「曹長、交代だ。休んでいいぞ。」

 

「了解しました。」

 

正門の詰所で部隊の交代を済ませると、第一歩兵小隊が警備任務についた。

 

 

 

 

石川県沿岸に数隻のゴムボートが上陸して、海軍陸戦隊特殊偵察部隊の隊員達がすぐさま防風林の中にゴムボートを隠して集合する。

 

「総員集合したな?これから三km先の目標に移動する。」

 

彼らは静かに林を移動して道に出ると、ヘッドライトの光が見えた。

隊長がハンドサインで停止命令を出して隊員達は林の中に身を潜めた。

道路の路肩に白と黒の二色で塗装された一台の車両が止まり、二人の制服警官が降りて懐中電灯を林に照らした。

 

「こんな時間に人影が見えただと?本当か巡査。」

 

「はい、先に人影が大勢動いていたのが見えました。」

 

「一応特別警戒中だしな、調べるだけ調べよう。」

 

二人は林の中に足を踏み入れた、中に四十名の隊員が息を潜めていることも知らずに。

隊長は二人が林の中ほどでハンドサインで殺すように部下に命じた。

突然草むらから飛び出してきた隊員に押さえられ、抵抗するがナイフで素早く首筋の血管を切られて絶命した。

そして部隊はIS研究所へ向けて進撃する。

 

 

 

 

市村中尉は正門ゲートで警備していると個人用暗視装置を通して森の中に影が動いたのに気がついた。

 

「一等兵、森の中に何かいないか?」

 

近くでM2重機関銃の機関銃手を務める兵士に聞いた。

 

「この森には色々な生物がいるらしいです。動物では?」

 

「そうか?」

 

すると突然ロッケト弾の発射音が聞こえて、次の瞬間には96式装輪装甲車が吹き飛んだ。

 

「敵襲!」

 

森の中から発砲音が聞こえ、市村中尉はすぐに土嚢を積み上げたところに飛び込んだ。

土嚢に小銃弾が命中して中から土が出る。

 

「森の中を機銃でなぎ払え!」

 

「了解!」

 

一等兵は慌てて12.7mm通常弾を装填しようとするが、初めての実戦で手順を間違えて発射するのに時間が掛かった。

他の隊員も初の実戦という緊張と不安に支配されて、思うように戦闘ができない。

散発的に89式小銃を射撃、装填をするのを忘れる、そして次々と隊員が地面に倒れていく。

この時の国防陸軍高射科以外の隊員は実戦はしたことがなかった。

 

「早く撃って!撃たないと殺されるぞ!」

 

市村中尉は部下を叱咤しながら電話で襲撃を伝える。

施設内にサイレンが鳴り響き、やっとのことで重機関銃の十字砲火を開始した。

12.7mm通常弾が木々を薙ぎ倒し、中国兵の95式小銃の発砲音を掻き消した。

 

「射撃中止!」

 

市村中尉が命令して隊員達が一斉に射撃をやめる。

森の中から銃声が途絶えて、その場に静粛が訪れた。

 

「小隊長、敵は全滅したんでしょうか?」

 

おかしい、ここを襲撃しといて簡単にやられるとは。

市村中尉の感が何かを伝えていた、そして答えが頭の中で飛び出した!

 

「やばいぞ・・・襲撃者は中央研究室に向かっている!」

 

中央研究室にはISのコアや装備の設計図などの研究成果が大量にある。

すぐに動ける隊員と応援に来た一個分隊を率いて中央研究室に走った。

その頃特殊偵察部隊の隊長は非常灯が顔を真っ赤に照らす中、サイレンサー付きの拳銃を構えて部下と共に通路を突き進んでいた。

だが、長い通路をいくら歩いても誰とも遭遇することもなくここまで来たのに不信感を抱いた。

 

「隊長、あそこに光が。」

 

先頭を進む部下が拳銃を向ける方向には、ドアから光が漏れていた。

ハンドサインで突入を伝えるとすぐに部下達が突入態勢に入る。

一人がドアを蹴り飛ばして突入して次々と入っていくとそこは真っ白い天井の高い倉庫のような場所だった。

棚には等間隔に透明のケースが置かれ、中に菱形のクリスタルらしきものが入れられていた。

他には小銃の形をした試作の武器が置かれていたり、よく分からない電子装置が置かれていた。

 

「これが目標のコアか、すぐに回収しろ。」

 

部下たちがバックのチャックを開けて、コアの入ったケースに触った。

その瞬間に高圧の電気が流れて部下の悲鳴が響き渡り、その場に倒れて体が痙攣していた。

 

《君たち、私の作品に手に触れるとどうなるかわかる?》

 

スピーカーから女性の声が聞こえて全員が警戒して小銃を構える。

 

《脅しても無駄そうね~、じゃあこれにしよ!》

 

すると床に電気が流れて一斉に隊員達は銃を捨てて、その場に倒れた。

体中に電気が流れて筋肉が痙攣を起こして一分間感電させられると電気を止めた。

それと同時に市村中尉が率いる部隊が突入、その場を制圧した。

 

「95式小銃、中国軍か。」

 

武装を解除させ、動けなくなった中国兵を移送していく。

ケースに触った中国兵は高圧の電気を感電した為に心停止を起こして死んだ。

 

「しょーちゃん、お仕事御苦労!」

 

すると後ろから奇妙な服装の女性が声を掛けて来た。

彼女がこのISというものを開発して、この研究所の主任研究員篠ノ之束だった。

 

「ありがとうございます、ですが倉庫に電流が流れているのを言って下さい。」

 

「ごめんね~でも直前にきったからグットタイミングでしょ!」

 

「はい、そろそろ中に戻ってください。まだ森の中に生き残りが潜んでいるかもしれません。」

 

「わかったよ~、そうだいい事教えよう。」

 

束は市村中尉に向かって言った。

 

「もう軍隊も使い物にならなくなるから、再就職先探した方がいいよ~」

 

「・・・・なに。」

 

市村中尉は彼女の言葉に物凄い形相で睨みつけたが、それを気にせずに研究室に戻って行った。

 

 

 

 

首相官邸では襲撃事件についての報告が行われていた。

 

「午前三時頃に汎用駆逐艦『鈴波』が中国海軍の商型原子力潜水艦を撃沈した模様です。」

 

「こんな簡単に警戒網を潜られるとは何事だ!」

 

直井首相は拳で会議室の机を殴り、部屋に音が響いた。

 

「すみません。」

 

「まあいい。それよりだ、これからの警備体制について意見はないか?」

 

すると警視庁次長が手を上げた。

 

「なんだ?」

 

「はい、今回の襲撃は開発者篠ノ之束を狙っていました。今回は厳重な警備体制で拉致や暗殺を阻止できましたが、次は家族を拉致して脅してくる可能性があります。ここは親類を全国に分散させて公安警察による保護下に置きたいと思います。」

 

「いいだろう、他には?」

 

すると会議室に二人の職員が入ってきて駆け足で国防大臣と外務大臣にメモを渡した。

 

「首相、緊急事態です!米海軍の三個空母戦闘群が日本に接近しています!」

 

「在米大使から連絡で、米大統領から書簡を受け取ったそうです。」

 

報告に首相は驚いた。

 

「書簡の内容は!」

 

「はい、『日本国の保有するISに関する条約の締結』だそうです。」

 

「条約?すぐにホットラインを開こう。」

 

すぐに職員にホワイトハウスと回線を繋ぐように命じると、数分後に回線が繋いだ。

受話器を手に取り、耳に当てた。

 

「そろそろ掛かって来ると思いました。」

 

「大統領、どういうことでしょう。この書簡は?」

 

「それはですね、あなた方が所有している兵器ISを世界にプレゼントして欲しいのです。」

 

「意味が分かりません。」

 

「簡単にいますと、日本が開発した兵器のせいで世界のパワーバランスが崩れました。その謝意を表してもらいたい。」

 

「そうですか、もしそれを断った場合は?」

 

「答えはわかっていますよね?現在日本に向かって航行している三個空母戦闘群と中国、韓国、ロシアが日本を“テロ支援国家”として攻撃します。罪状は『大量破壊兵器ISによる世界侵略を計画した罪』です。」

 

大統領の言っている事は無茶苦茶だったが、現にも空母戦闘群は向っている。

もし言っていることが本当であればこの国は太平洋戦争敗戦時をもう一度経験しなければならない。

 

「大統領、国内の世論を統一しなければなりません。時間を下さい。」

 

「いいでしょう、二週間ほど。」

 

期限を伝えると大統領は一方的に電話を切った。

 

「国防大臣、アメリカと戦争になった場合勝算は?」

 

「ありません、今の軍事力はアメリカを頼っています。偵察衛星からの情報や巡航誘導弾などなど、これらはすべてアメリカの協力があって動かしている現状です。」

 

この時の日本はすべてにおいて劣っていた。

直井首相は心に誓った『アメリカに頼らない国防力』を作ることに。

二週間後、日本国内の反対を押し切り一路アラスカに行きアラスカ条約、通称“IS条約”を締結する。

この時、直井首相は各国に軍事利用を禁止する条文を盛り組むことを認めさせて締結した。

日本に帰ると国民に非難されながら内閣総辞職した。

だが直井元首相は政治活動をやめずに、後継者に女性議員を立てこれを当選させて史上初の女性首相を登場させた。

これはISの発展で女性中心の社会が形成されるのを見越して、それの先駆けとして就任させた。

内閣を裏で操り女尊男卑を加速させる原因となる女性優遇制度を次々と行う中、裏では国防予算を増額や法改正を行った。

アメリカに頼らない国防力の構築として全装備の国産化と戦力増強を行った。

国産化には全種類の誘導弾の国産化、96式装輪装甲車の後継である15式装輪装甲車の開発、次期主力戦闘機の開発、日本独自のイージスシステムの開発、次期主力小銃の開発、弾道誘導弾の開発、核兵器並びに同等の兵器の開発などが行われた。

戦力増強には赤城型空母三隻の建造と三個機動艦隊の創設、それに伴う駆逐艦の増産、現有艦艇へのミニ・イージスシステム搭載、戦車や戦闘ヘリなどの各種装備の充実、航空戦力の強化が行われた。

だが戦力増強には予算も必要だったが人員を大量に必要になった。

それは女性優遇制度のひとつ『女性就職優先雇用政策』により就職がなくなった男性を集めたがそれでも足りずに新たな陸軍と海軍では『臨時兵候補生』、空軍では『臨時航空搭乗員課程』を設けた。

これは男性で試験に受かれば陸海軍では二等兵、空軍ではパイロット候補生として任用される制度。

この制度には年齢は関係ないため、のちに五十嵐裕也少佐のように小卒で空軍士官まで登り詰めた兵士まで現れた。

彼の場合は訓練と平行して中等教育も施して、記録上では中卒で軍隊に入隊したことになっていた。

外交面では逸早く第一世代ISを多数配備して国防の任務に就かせ、周辺国のIS戦力と均衡を保ち平穏を保つことに成功した。

だがアメリカでは多数の投資銀行が倒産に伴う大企業の倒産、そして大量の失業者が発生し財政危機を迎えた。

ISの研究開発と財政の建て直しを優先して行う為に軍事力の大幅削減が行われた。

海外に駐留する部隊をすべて本土に撤収させ、部隊を解散させ全戦力の半数を削減した。

空母戦闘群も十年で十個から五個空母戦闘群に削減され、総兵力は一四〇万人から五〇万人まで削減された。

このように世界の警察である米軍がいなくなったことで世界各地で紛争が勃発した。

ISの登場から二年後の二〇一七年に第五次中東戦争が発生、アメリカの援助がなくなったイスラエルは時間が経つに連れアラブ連盟軍の攻勢に苦戦を強いられがなんとか押し返した。

他にもアフリカ諸国では紛争の激化、欧米諸国でイスラーム過激派によるテロ攻撃が発生した。

イギリスではイギリス同時爆破事件が発生、英国国会議事堂とタワーブリッチなどのイギリスの象徴を各地で爆破され、女王陛下も自爆テロに巻き込まれて死んだ。

また中南米では一部地域が国ではなくマフィアが統治している状態になり、周辺国に難民が大量に発生した。

この情勢の見て、直井元首相は二〇二〇年に日米安保を一方的に破棄させた。

このときには軍事力は整いアメリカ以外の国と対等に戦争できるまでの戦力を整えた。

そして二〇二五年、日韓戦争勃発。

 

 

 

 

【後書き】

 

残念ながらこの先受験勉強もあり、本編の更新は遅れると思います。

時々関連する短編でも投稿しようと思いますが、『小説を読もう』にメッセージを読みましたが日常系は難しいと思います。

なにせ五十嵐のキャラからして、一夏や女子とは遊ばす放課後はISの訓練に赴き休日は軍の訓練に参加する生活です。

また彼の価値観では普通の学園生活は非日常であり、戦場こそが日常となっているため彼のイメージが崩れてします可能性もあるのでやめときます。

ですが学園生活は本編の次話で投稿しようと思いますが、少し時間が掛かり為それまで待って欲しいと思います。

あと一回五十嵐についてのプロフィールと経歴、人間関係図、日本の組織図などを纏めた物を投稿したいと思います。

 


 
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