主な登場人物
芥子頭治(からし とうじ)
主人公、男性。18歳。黒髪短髪。
忍者の任務中に唯衣と出会ってしまい、執事をやることになり、執事をやっている。ほぼ万能だがどこか抜けている。
何故万能かと言うと、彼が世界忍者の一人だからである。
世界忍者としての実力も本物。忍者の格好をしている時は「ヤグラ」と名乗っている。
忍者の流派は「日隠流(ひがくれりゅう)」
凪村唯衣(なぎむら ゆい)
ヒロイン、女性。16歳。銀長髪。
大富豪の凪村家の令嬢。頭脳明晰、スタイル抜群のほぼ万能だがどこか抜けている。
忍者に興味を持ったために頭治を執事に迎え入れる。
ユリア
女性。17歳。紫色の長髪。
頭治が執事をやる前から唯衣の専属メイドとして働いてる女性。スタイル抜群。
外国の大学を飛び級で卒業している。そのため学校に行っていない。ほぼ万能だが頭治と唯衣同様、どこか抜けている。
世界忍者ではないが、実力は世界忍者に匹敵する。
凪村友里(なぎむら ゆり)
故人。享年25歳。茶髪長髪。
唯衣の母親。唯衣と似たような顔立ちでスタイルも抜群だったが、成績はそうでもなかった。そして天然。
カイル・ハイム
故人。享年20歳。銀髪短髪。
唯衣の父親とされる人物。何らかの事情で友里の前からいなくなってしまった。
実はある物が目当てで凪村家に侵入した泥棒だが、友里に見つかってしまうものの、そのまま友里と恋に落ち、唯衣が生まれる。
何やらその死や泥棒したのにはとんでもない理由があるとか……。
ミヤコ・ハイム
カイルの弟、レオン・ハイムの娘。15歳。銀髪短髪。
父のレオンが死んだのでカイルの娘である唯衣を頼ってきた少女。
しかし何やら秘密がある様子。
頭治や唯衣の友人達
織田巽香(おだ せんか)
女性。17歳。黒髪セミロング。
頭治と同じ世界忍者。忍者時は「セン」と名乗っている。
忍者の流派は「織田流」
山本和樹(やまもと かずき)
男性。16歳。茶髪短髪。
頭治と同じ世界忍者であると同時に唯衣の同級生。忍者時は「レッパ」と名乗っている。
忍者の流派は「邪滅流」
賀上梁(かがみ りょう)
男性。17歳。黒髪短髪。
頭治と同じ世界忍者。忍者時は「シシガ」と名乗っている。
忍者の流派は「獅子流」
宮木葵(みやき あおい)
女性。16歳。青長髪。
唯衣の同級生で生徒会長。頭脳明晰で武道全般の達人。
かなりしっかりしているためによく唯衣などのフォローをする。
凪村號(なぎむら ごう)
男性。58歳。白髪短髪。
唯衣の祖父で唯衣の母である友里の父親。
凪村家を大富豪にした人物。
16年前に一度起こったことをきっかけに烈山(頭治の父親)と出会い、仲良くなる。
そのことは頭治と唯衣は知らない。
芥子烈山(からし れつざん)
男性。58歳。白髪短髪。
頭治の父であり「日隠流」を教えた師父でもある。
若くして現役を退いてはいるが、実力は今でも一級品であり、世界忍者最強とも謳われている。
頭治が唯衣と会うきっかけを作った人物でもある。
魔血(まけつ)一族
正体不明とされる悪の世界忍者の集団。物語開始前から世界をまたにかけ、暗躍している(らしい)。
一族と言っているが血の繋がりがあるのは一部の者だけで、部下(もっぱら戦闘員)は妖術で生み出された鴉天狗の化身。
魔血一族の長は魔血潔斎。黒い鬼の仮面をかぶっている。幹部はその娘、魔血霞。潔斎の被っている仮面を半分にしたような仮面をかぶっている。
頭治がどこかに行ってから、既に数時間が経ち、次の日の昼になっていた。
唯衣達はホテルにいた。
「頭治さん、見つかりませんね」
「…………」
唯衣は銀嶺を強く握りしめていた。
「なあ、凪村、それが原因じゃないよな?」
「原因って……」
「それがあるせいで頭治は帰ってこないんじゃ……」
「そんなはずはないわ」
「なんでそう言えるの?」
「そんな気がするの……」
「……?」
そんな時部屋の電話が鳴る。
「もしもし」
『凪村様、日本からお電話が来ています。ロビーまでお願いします』
ユリアは受話器を置く。
「唯衣、電話が来てるらしいわ。ロビーまで来てくれって……」
「?」
唯衣達はロビーまでやって来る。
「凪村唯衣様ですね?」
「そうですが、お電話の相手は?」
「芥子烈山と言う方です」
「頭治のお父様から……」
唯衣はフロント係から受話器を受け取る。
「もしもし……」
『凪村唯衣か。儂だ。芥子烈山だ』
「先ほどフロントの人から聞きました」
『頭治の携帯に何度も電話しているのだが、繋がらん』
「頭治の携帯は何故か電池が切れて、使えないらしいです」
『それで頭治は近くにいるか?』
「いえ……」
『なら後で頭治にも伝えておいてくれ。今から儂の話すことは重大なことだ。
銀嶺についてのな……』
烈山は唯衣に銀嶺の真実を伝えた。
「……やっぱり」
『……やっぱりって何じゃ?』
唯衣は受話器をフロントに置いて出ていってしまう。
『どうした? どうしたんじゃ?』
「お電話代わりました、ユリアです」
『凪村唯衣はどうした?』
「出ていきました……」
『何があったんじゃ?』
「わかりません。それで烈山お爺様、唯衣になにを伝えたのです?」
『銀嶺の秘密じゃ』
「私達にも教えてください」
『もちろんじゃ。あれはただの懐中時計ではない。呪いの剣だ』
「呪いの剣?」
『あれは刺した者の魂を一時的に保管し、そして別の者を刺した時に入れ替えると言う魂入れ替えを目的とした剣だ。
懐中時計の姿をしているのはそれをごまかすためのカモフラージュにすぎない』
「じゃあ、長針と短針が8の字で重なった時の幸運と言うのは……」
『それについては書いていない。だが剣に変わる時はわかっている。
長針と短針が10の字に重なった時だ』
「え? 待ってください。10の字もどうやっても重なりませんよ?」
『そうじゃ。普通に考えても8の字も10の字にも重ならない』
「だったら……」
『そこに何かからくりがあるようじゃ。あの時計は普通の懐中時計のように長針と短針を動かすことはたやすい。
だが普通にやってはダメなようじゃ」
「普通にやってはということは意図的に動かさず、自然に重なるのを待てと?」
『そういうわけでもない。自然に重なるのこともないのじゃ』
「? ではどうすれば……」
『そこまではまだ分からん。ところで凪村唯衣は何故飛び出した?』
「実は……」
ユリアが烈山に昨日の夜、頭治が銀嶺に刺されたことを伝えた。
『何!? 頭治が刺された?』
「はい……」
『となると今の頭治には別の人物の魂が入り、銀嶺の中に頭治がいる!』
「ええええ!?」
『こうしてはおられん。儂も現地に向かう!』
「でしたら、凪村家の自家用ジェットをすぐに手配します! それでお願いします!」
『すまぬ! それと大事なことが少しある。もしも頭治と入れ替わる前に誰かの魂とが入れ替わってない場合は頭治の体の中に入っているのは魔の王と呼ばれる者だ』
「魔の王!?」
『その名は『デルダーン』。1000年以上前に存在し、世界を闇から支配したと言われる存在だ』
「そんなに前から……」
『魔血潔斎はそのデルダーンを何らかの形で利用しようと思っているはずだ』
「そんなことが……」
『魔王と言えど相手は魔血一族、それも長が相手となると魔王も支配されるかもしれん』
烈山は懸念していた。
『そして銀嶺を狙うその霊的女は恐らくはデルダーンの正妻とされる魔女『レディア』。
そいつも1000年以上前の人間だが、デルダーンを守るために悪霊として存在しているはずだ……』
「悪霊ですか?」
「悪霊……道理で俺の攻撃が効かないわけだ」
「悪霊が相手なら邪滅流が相手を……」
「ちょっといいか? だったらなんであいつの閃光神堂剣は効くんだ?」
「そう言えばだいぶ前にも山本君と芥子さんが一緒に霊退治に行った時も、芥子さんが閃光神堂剣で普通に退治してたような……」
「それだけじゃない。閃光神堂剣は頭治じゃないと扱えない刀。烈山先生、これはどういうことですか?」
『…………頭治が着ているヤグラスーツに閃光神堂剣、あれは元々は遥か昔にこの星にやって来た宇宙人が使用していたものだ。
そしてそれを扱えるのはその血を受け継いだ者だけじゃ……』
「ということは、頭治は……」
『その末裔じゃ。だが儂の家系じゃない。今は亡き儂の妻の家系から流れた血じゃ……』
「奥さんの……」
『だが仮にデルダーンが頭治の体に入っていても閃光神堂剣は使えんじゃろ』
「どうしてですか?」
『あれは肉体だけでなく魂もその子孫でないと使えない。デルダーンがその子孫であるとはないからまずない』
「なるほど……」
「もしも、今の頭治に入ってるのがデルダーンとは違う全く別の魂でその魂がその宇宙人の末裔だったら……」
『閃光神堂剣は使える。だが100%は使えんじゃろうな。あれの今の持ち主は心身ともに芥子頭治と認めておるからな……』
「……とりあえずはわかりました」
『とにかく、頭治を頼むぞ。儂もすぐにそっちに行く。ヤグラスーツを強化する物を持ってな……』
烈山は電話を切った。
「とにかく唯衣と頭治さんの体を探しましょう!」
『はい(ああ)!』
全員が散らばって唯衣と頭治に肉体を探すことにした。
頭治の肉体は何者かが使っていた。
「くそ……どうすればレディアを見つけることが出来る……」
頭治の肉体を使っているものは焦っていた。
「待てよ……あの時計って誰が持ってた?」
頭治の肉体を使っているものはよく思い出してみる。
「え~と、刺されてこいつの肉体に移動したまでははっきり覚えてる。
そこから…………」
そして思い出していく。
目を開けた時にふと目に入った銀嶺、それを握ってい人物は……。
「唯衣だ!」
その人物は思い出す。
「唯衣が危ない!」
その人物はとりあえず街に戻ることにした。
それとほぼ同じころ、唯衣は……。
「私の推測が正しいのだったら……」
唯衣はホテルの上に備え付けられてる教会にいた。
(早く来て……)
唯衣は握りしめている銀嶺を見てつぶやく。
「頭治……」
それから夜になる。
「はあ……はあ……」
唯衣のいる教会に辿り着いたのは頭治の体を使ってる者であった。
「唯衣…………」
頭治の体が唯衣に近づく。
「あの日……」
「うん?」
「16年前、ある男は事故を起こした。
けどその男の人の肉体は死んだけど、魂だけはまだ残っていた。
何故なら銀嶺の剣で魂が入れ替わってその中に入っていた魂と入れ替わり、生き延びた。
そして死んだのは銀嶺の剣に入っていた魔王。その魔王は普通の肉体と共に滅びた。
そうでしょ……」
唯衣は頭治の体の方を向く。
「カイル・ハイム…………父さん」
唯衣の片方の目から涙が流れていた。
「理解してたのか……」
頭治の声色が少し変わる。
「その体の本当の持ち主のお父様から聞いたのよ」
「随分知識のある親父さんだな、隣いいか?」
そうは言いつつもカイルは唯衣の隣に座る。
「いきなり座るなんて……」
「今さら父親面するなって思ってるかもしれない。けど、少しでもいいから父親面させてくれ」
カイルは少し寂しそうに言う。
「父さん……」
「なあ、母さん……友里はどうしてる?」
「死んだ」
「死んだ?」
「私が5歳の時に病気で死んだ」
「そうか……」
カイルは悲しむ。
「……それで母さん、俺のことどう言ってた?」
「突然いなくなった白状者だって言ってた」
「……だろうな」
「でもね…お父さんは優しい人だって言ってた。いなくなったのも本当は何か大事な理由があるんだろうって言ってた。
でも自分になにも言わずに去ったのは白状者だっても言ってた……。けれど母さんは『私は何がってもカイルを信じてる』って何度も言ってたよ」
「そう…なのか……」
カイルは涙を流す。
「父さん……どうして母さんの……私の前から姿を消したの?」
「それにはまず、俺と友里の出会いから話した方がいいな」
カイルは語る。
「俺がなんで友里と出会ったのかと言うとな……、俺が世界忍者だったからだ」
「父さんが世界忍者……」
「俺はその時殺人に関すること以外ならどんな仕事もこなしてた。
そんな時だった。レディアから依頼が来たんだ。『凪村家にある懐中時計の銀嶺を盗んで来い』と。
俺は何か裏があるとは思いつつも、もしかしたら本当の持ち主はレディアではないのかと思った。
そんで凪村家に侵入した。そんで探している最中にばったり会ったんだ凪村友里に……。
友里は明らかに他人……泥棒に入った俺を見て怯えもしないし、驚きもしなかった。むしろ、嬉しそうな顔をしていた」
「嬉しそうな?」
「友里は元から体が弱いから屋敷の外に出たことがほとんどないと言ってたな。
そんで外の人間だった俺から外の話を聞かせてくれとせがんだ。
俺は脱出しようと最初は考えたけど、それをすぐにやめた」
「なんで?」
「早い話、……一目惚れ」
「…………」
「俺から見たら友里は今までに出会ったことのない絶世の美女に見えた。……唯衣、お前はあの時の友里ほどじゃないが、面影があるな……」
カイルは唯衣の顔を優しくなでる。
「父さん、その体……」
「ああ、俺の体じゃなかったな。悪い悪い」
カイルはすぐに手を放す。
「それでな……、友里は盗みに入った俺を庇った。
まあそれでも条件があったな。『私の執事になれば許してあげるわよ』って……。
それから俺は世界忍者でありながら友里の執事をやることになった」
「まるで頭治みたい……」
「この体の持ち主だな。こいつも世界忍者で執事なのか?」
「うん」
「何の因果かな……」
「え?」
「いや、なんでもない。とにかくそんな日々を俺と友里は過ごした。
だけど、友里の父だった號にバレテ、號の親父さんは俺と友里の絆を試した」
「お爺様は一体何を……」
「二人の結婚指輪……それもかなり高価なダイヤモンドで出来た指輪だ。
號の親父さんは俺が金目当てで友里に近づいた不逞の輩だと思ってたんだ。
……まあ、最初の依頼を考えると間違ってないんだけどな。
けど、俺は指輪を売る気はこれっぽっちもなかった。
だけど、レディアは……」
カイルは拳を振るわせる。
「俺が依頼を断ろうと何とか直接会った時に、あいつは俺が持ってた結婚指輪を奪ったんだ。
『こいつを返してほしければ銀嶺を持ってこい。さもなければ、こいつだけでなくお前の大事な人の命も奪うぞ』って……」
「そんな……」
「それで俺は何とか見つけ出した銀嶺を盗んだ。しかし銀嶺が何の秘密があるのか俺は知らなかった。
それで銀嶺を持って指定されていたアメリカの土地まで運んで車を運転してる時だった。
ふいに銀嶺をいじって運転してたら、トラックと正面衝突。俺の完全な前方不注意さ。
まあけど、そのおかげで俺の魂だけはこうやって生き延びて、銀嶺に封じられていた魔王は俺の肉体と一緒に死んだ。
ようやく魔王は死ねたんだ。1000年以上生きてる魔の王だ。もう死んでもよかっただろっと俺は思う」
「それって……」
「自分勝手だって? そうだろうな。けど、俺は本来娘が生まれた直後に死んだ超子不幸者だったのをようやくだが大きくなった娘と出会えた。
俺にとっては嬉しいことさ。友里が死んだって事実は悲しいことだけどな……」
カイルは再び涙を流す。
「やっと会えたな、唯衣」
「お父さん!」
唯衣は涙を流し、カイルに抱きつこうとしたが、その体が頭治のものだと思いだし、やめた。
「……唯衣、この男が好きか?」
「……うん」
「多分、この男もそう思ってるぞ」
「え?」
「なんとなくさ。同じ世界忍者であり、執事であり、そして、お前の父親である俺の勘だ……」
カイルは何かを悟ったような顔をする。
「それで父さん……」
「ああ、この体返さないとな」
唯衣がカイルに銀嶺を手渡そうとした時であった。
「! 唯衣!!」
カイルは何かに気づき、唯衣の体を覆いかぶさる。
すると教会の道から木の根のようなものが現れる。
「これは……レディア!!」
カイルが教会の入り口を見る。
そこにはレディアがいた。
「返せ! 私の大切な人を返せ!」
レディアの姿は大人の女性から木の化け物のようなものへと変化していく。
「悪いがお前の大切な人は16年前に死んでいる! 諦めろ!」
「嘘だ!」
「いいや、それは本当だな」
「!」
すると教会の窓から別の人物が現れた。
そこにやって来たのは魔血潔斎だった。
「お前は……」
「魔血潔斎だ」
「魔血……魔血一族の長、魔血潔斎か!」
「その通り。霞から話を聞いた時はもしやと思っていたが、デルダーンの魂は死んでいたか」
「嘘だ! 嘘だ!」
「我も嘘だと信じたいが、その男のそぶりと雰囲気、ヤグラのものでないのはすぐにわかった。
デルダーンの魂がない以上、もはやその懐中時計には用はないと思ったが、その中にヤグラの魂がある以上、その懐中時計もろとも始末してくれる!」
「させん! 私の大切な人のために!」
「邪魔立ては許さんぞ、魔女レディア!」
「たあっ!」
そこに霞や鴉天狗達がやって来る。
「父上!」
「よくぞきた。あの魔女の足止めをせよ!」
『ははっ!』
「悪いことはさせないぞ!」
レディアの後ろから巽香、和樹、梁がやって来る。
「みんな!」
「ユリアさんと葵は今、他の人の避難誘導をしているわ」
「いくぜ!」
三人は忍装束に変わる。
「織田流正統、刀忍(とうにん)セン」
「邪滅流正統、巫忍(ぶにん)レッパ」
「獅子流正統、牙忍(がにん)シシガ」
三人の姿を見て唖然とするカイル。
「こいつの装備、使わせてもらうぞ!」
カイルは頭治の体を使い、ヤグラスーツを着用した。
「幻狼流元正統、怒忍(どにん)改め死忍(しにん)ルワド!」
カイルはルワドと名乗った。
「幻狼流のルワドって……」
「父上から聞いたことがある。16年以上前に世界に名を馳せた世界忍者、その名がルワド……」
「まさか頭治の体にそんな忍の魂が入ってるなんて……」
「だけど、あの体は頭治のもの……」
「それに閃光神堂剣も……」
「閃光神堂剣? この刀の名前だな?」
ルワドは閃光神堂剣を抜く。
「閃光神堂剣!」
すると閃光神堂剣は光り輝く。
「嘘!」
「まさかルワドも……」
「父さんも宇宙人の末裔……」
「……みたいだな」
「その刀……まさか!」
レディアが驚きを隠せない。
「800年前に私とデルダーン様を殺そうとやって来た忍者……、貴様か!」
レディアがルワドに向かって木の根で襲い掛かろうとする。
しかしルワドはその木の根を閃光神堂剣ですべて斬り落とす。
「娘には手を出させんぞ」
「娘って……」
「今の頭治の体に入ってるの、私の父さんよ!」
「ええええええ!?」
「凪村ってルワドの娘!?」
「そっちの方が驚きだぞ」
「邪魔するか。……ミヤコ!」
すると次に天井を突き破ってミヤコが現れる。
「ミヤコ!」
「邪魔者を排除しろ!」
「……わかりました」
ミヤコも戦闘態勢に入る。
「ミヤコ!」
「ミヤコ……まさか、……お前、レオンの娘か?」
「父さん、知ってるの?」
「いや、詳しくは知らん。だが、レオンは娘が生まれたら『ミヤコ』と名付けるとずっと前から言っていた……くっ、なんということだ」
ルワドは自分の弟の娘とも戦わないといけないとなると心苦しくなる。
「あの子のことなら私に任せてください」
センがミヤコを任せてくれと言う。
「頼むぞ、刀忍セン」
「ルワド、俺もあなたのお手伝いをします」
「邪滅流は霊退治などに長けている流派だったな。頼む」
「魔血一族は俺に任せろ!」
「ええい、かかれ!」
『ききい!』
こうしてレディア陣、魔血一族、ルワド達と言った三つ巴の戦いが始まる。
「きぇえええい!!」
「ふりゃああああああ!!」
鴉天狗達をシシガの爪が切り裂く!
「せやああああ!」
「くぅ!」
シシガの爪の攻撃を霞は刀で防ぐ。
「ふ!」
霞は口から毒矢を吹く。
「ちぃ!」
シシガは紙一重で避ける。
「しゃああらああああ!!」
シシガは、足技で霞を攻撃。
霞もその足技を紙一重で避ける。
「「はあ(ふん)!!」」
シシガと霞はぶつかり合って、距離を取る。
「ふぅう……」
その一方ではセンがミヤコと戦っている。
「やめなさい!」
センは複数持っている刀でミヤコの攻撃を防ぎ、その複数の刀で上手く衝撃を分散させる。
「!!」
「!?」
ミヤコの蹴りがセンに当たろうとした時、センは頭巾に隠していた短刀を出し、ミヤコの蹴りを防ぐ。
「はあああ!!」
センは空いた片方の手とその手に持っていた三本の刀でミヤコを襲う!
「!」
ミヤコはその攻撃をバック転で避けたが、服が少し切り裂かれる。
「…………」
「なんとかしないと……」
その一方でもルワドとレッパがレディア、そして魔血潔斎と戦っている。
「邪滅札(じゃめつさつ)!!」
「消えろ!」
レッパの数十枚の札がレディアに向かって飛んで行くが、レディアは木の根でそれを防ぐ。
「ふ」
しかし邪滅札を防いだ木の根は消滅する。
「何?」
「俺が除霊するプロだってこと忘れてないか? 通火札(つうひさつ)!!」
レッパが新しく札を投げ、レディアはそれを思わず素手で弾いてしまう。
「っう!」
「そいつは素手で弾くものじゃない。そいつは俺以外が触ると火に焼かれるような痛みが走る」
「ちぃ……」
レディアは掌からエネルギー波を出し、レッパはそれを札を自分の周りにばらまき、エネルギーを拡散させて、防いだ。
「危ない危ない」
「とああああ!」
「うりゃああああ!」
ルワドと潔斎の武器がぶつかり合う。
「でやあっ!」
「ふん!」
ルワドが足を当てようとしたが、潔斎は拳を当てて攻撃する。
「ぐおおおお!!」
ルワドはもう片方の足でわずかに飛び、体を回転させる。
そしてそのまま潔斎の後ろに回り込む。
「てやあああ!」
「ふおおお!!」
後ろに回ったルワドが刀で攻撃するも、潔斎はすぐに体の向きを変えて、刀を自分の刀で防いだ。
「ふん!!」
潔斎もそのまま体を回転させ、ルワドと距離を取る。
「さすがはルワド。だが……」
(ちぃ、さすがは魔血一族の長だ。これだけでも強いな。
おまけにこっちは本当の俺の体じゃない。
その上、下手に怪我とかしたら、こいつだけじゃない。唯衣が悲しむ……)
ルワドは頭治と唯衣のことを考えてしまい、捨て身の攻撃が出来ないのだ。
「どうした? ルワド、貴様の実力はそんなものではあるまい。
まあ、それが貴様の真の肉体でない以上、実力が発揮できないのであろうがな…」
「やっぱばれてる……」
「だが儂にとってはそれは好都合。このまま実力の発揮できないまま、ヤグラの体と共に死んでいけぇ!」
潔斎が突撃していく!
「狼刃閃!!」
襲い掛かる潔斎に向かって、素早い刀の振りで潔斎を襲う!
「ぬぅう!!」
潔斎はその素早い攻撃を紙一重で避ける。
「ちっ!」
「トドメだ、ルワド!!」
潔斎が自分の刀を振り下ろす!
「狼煌波!!」
ルワドは閃光神堂剣を放し、両手を狼の形にしてその手から狼を象った氣を放出!
潔斎は吹き飛んだ!
「ぐおおおお!!」
「これでも幻狼流だ。狼の技は使えるつもりだ」
「きゃああああああああ!!」
「!!」
ルワドが悲鳴をする方を見る。
そこにはいつの間にかレディアの木の根に縛られている唯衣がいた。
「唯衣!」
「動くな! 動けばこの娘の命はないぞ!」
「…………」
「貴様ら武器を捨てろ!」
「我らには関係ない!」
そう言って魔血一族はルワド達を襲い続ける。
「…………」
そんな中、ミヤコは動かない。
「ミヤコ! どうした!? 動け! 誰が貴様を助けてやったと思っている!?
両親を亡くしたお前を拾ったのは誰だと思っている? その後、逃げ出しおって……」
「逃げた? もしかしてその後に魔血一族に会ったんじゃ……」
「ミヤコ!」
「…………あああああああ!!」
ミヤコは頭を抱えて苦しむ。
そして……。
「お姉ちゃん!」
ミヤコは捕まっている唯衣のところまで走り、唯衣を縛る木の根をわずかにだが、緩ませた。
「おのれ、裏切り者が!」
「危ない!」
ミヤコをセンが庇う。
「唯衣! その銀嶺を動かして剣にしろ!」
「え? どうやって?」
「念じてみろ! それは本当は重ならない10の字に重ねさせる方法は動かしてる人間が何かしらの念を込めればいい!」
ルワドは閃光神堂剣を拾い、唯衣の元に走っていく。
「…………!!」
唯衣は一生懸命に銀嶺の長針と短針を動かす。
そして銀嶺は剣へと姿を変えた。
「父さーーーーーーーん!!」
「唯衣ーーーーーーーーーーーー!!」
ルワドはその剣に刺された。
銀嶺の中。
「…………」
頭治の目の前には本当の姿のカイルがいた。
カイルは銀髪に執事服だった。
「あんたが、唯衣の親父さんか」
「よく分かったな」
「なんとなくだ。そんで外の事情はわかってる。うるさいからな」
「悪かったな」
「まあいいさ。ようやく帰れる」
「ああ」
「…………あんたの肉体はもうないけど、どうにか魂を留まらせるように考えるさ」
「別にいいさ。俺は本当はもう死んでる人間だ。今更この世に残る必要なんてない」
「だがあんたは唯衣の父親だ。父親なら子供の為に残らないとダメだろ」
「もう……満足してるさ」
「もっと満足してから死ねよ。とにかく俺はあんたを救う気だ。
その前に唯衣を救ってやるけどな」
「頼むぞ、娘を。お父さんは許してやる」
「……どうも」
そして頭治は銀嶺から去って行った。
「救ってやるか……、俺としては早く友里に会いたいんだがな……」
頭治の体が刺さってからほんの一瞬だったが、周りにいる皆はそれが何分も何時間も経ったような感覚がした。
「どう……なんだ?」
最初に言葉を口にしたのはシシガだった。
「…………」
頭治の体が動き始める。最初に動いたのは口だった。口がにやりと笑ったのだ。
「っ!」
頭治の体を刺した銀嶺は元の懐中時計に戻る。
そして頭治の体は閃光神堂剣を強く握り、唯衣を縛る木の根を完全に切り裂き、唯衣を助けた。
「貴様は一体……」
レディアが尋ねる。
「俺か? 俺は……」
頭治の体は唯衣を離し、閃光神堂剣を振り回す。
「日隠流正統、ヤグラだ!!」
頭治の体はヤグラと名乗った。
「頭治……!」
「なん……だと……?」
「ルワドっていう忍者から聞いただろ? お前の大切な魔王はもう死んでるんだ。
いくら魔王でも死ぬ2,3秒前の人間の肉体に入ったんだ。いくらなんでも時間が足りずに死ぬだろ。諦めな」
「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!」
レディアは暴れ、木の根も暴走するかのように周りを破壊し、レディアの体からも禍々しい氣が放出され、その氣も周りを破壊し続ける。
「騒がしい魔女だな。どれ、ある意味蘇った記念に永遠の眠りにつかせてやるか」
「頭治!!」
そこに父の烈山が現れる。
「親父! 俺だって分かるのか?」
「自分の息子かどうかの判断くらいできるわ!」
「貴様は芥子烈山!」
潔斎が烈山の姿を見て、先ほどまで以上に気を張る。
「本来ならお前の相手は儂がするところだが、それは頭治に譲るとしよう」
「邪魔をするのか、貴様も!」
レディアが烈山に向かって襲い掛かる!
「烈山先生!」
「大丈夫だ」
「なんで?」
「俺の親父だぞ」
ヤグラの言うとおりだった。
「ふん」
烈山は巧みな身のこなしで、レディアの攻撃を全て避けただけでなく、やられた鴉天狗が落とした刀を拾い、その刀で木の根をさばく。
「すごい……」
「これが芥子烈山……」
「やはり、衰えておらんか」
霞は驚くが、潔斎は予想の範囲内と言う様子を見せる。
そして気が付くと烈山はヤグラの目の前にいた。
「はっ!」
「いつの間に……」
「頭治、これを……」
烈山はヤグラにある物を渡す。
「何だこれ?」
「ヤグラスーツを強化する物だ。銀嶺を調べるついでにヤグラスーツを強化する文献も見つけてな。
號に頼んで作ってもらったものだ。そのプロテクターをつければ、それに連動して閃光神堂剣の力も上がる」
「ありがとよ、親父!」
ヤグラはプロテクターをつける。
そのプロテクターは肩当てに胴巻きに手当て、バイザーの4点であり、ヤグラはそれを装着した。
「……………」
「それがどうした!? 今度こそ貴様を滅ぼし、あの人と生きるのだ!」
レディアとその木の根が襲い掛かる!
「閃光神堂剣!!」
ヤグラがその名を叫ぶと閃光神堂剣は今までにない光を放ち、その光が木の根を蒸発させる。
「ぐあああああああああ!!」
レディアは苦しむ。
「永遠の世界に消えろ! 魔女レディア!!」
ヤグラがレディアを横一文字に斬った!
「ぎゃあああああああああああ!!」
「日隠十文字斬り!!!!!!」
最後の縦一文字でレディアにとどめを刺した!
「っしゃああああああ………………」
レディアの体は消滅した。
「…………」
ヤグラは閃光神堂剣を鞘に納める。
「やったな、ヤグラ」
「確かにあいつは倒したし、これで俺の祖先が追ってた相手もいなくなった。
だがまだ終わってない」
ヤグラは銀嶺、そして魔血潔斎を見る。
「そうだ。我らとの決着はまだついていない。だが、こうなってしまった以上、もうこの場で争う理由がない。
霞、退くぞ!」
「はっ!」
潔斎と霞は逃げて行った。
「追わなくてもいいのか?」
レッパが尋ねる。
「いいんだ。俺も少し疲れてるしな。それにまた会うだろ。
あいつらが悪さとか世界忍者してる限りな……」
ヤグラは唯衣に近づく。
「頭治?」
「後はこの銀嶺にある親父さんだな」
「お父さんをどうするの?」
「助ける。せっかく魂だけでも生きてたんだ。娘の側にいさせてやろうと思ってな……」
「でもそのためには人の体が……」
「ああ、必要だな。そこが今のところの問題だ。このまま銀嶺の中ってわけにもいかないが、勝手に誰かの体を使うわけにもいかない。
仮にロボットの体に入れるにしてもそれじゃあ、娘に先立たれるのを見るだけだからな。事故とか以外でそれを見るのはつらいだろうし……」
「どうしたもんか……」
「諦めるって選択肢は?」
「俺にそれはない。あの親父さんは本来死んでる人間だから、残る必要はないと言ったが、俺はせっかく娘と一緒にいられる機会があるなら、その機会を逃したくないと思ってる」
「でもこのままじゃ……」
そんな時であった。
(芥子頭治、…いやヤグラ……)
「うん?」
「どうした、頭治?」
「誰か俺の名前呼ばなかった?」
「いや」
「じゃあ今の声は……」
(ヤグラ……)
「まただ! 皆には聞こえないか? 俺の名前を呼ぶ声を……」
「全然」
「だったらこの声は俺にしか聞こえない声? それとも幻聴か?」
(これはお前にしか聞こえない声だが幻聴ではないぞ、ヤグラ)
(…仕方ねえ、それであんたは?)
(私はお前が今着ているヤグラスーツに宿っている魂だ)
(宿ってる魂……まさかあんたが……)
(どうやって事情を知ったが知らないが、私を知っているようだな。
ヤグラ、お前の察している通りだ)
(それで俺に何の用だ?)
(あの呪われた時計にいる男の魂を解放したいのだろう?)
(その言い方だと殺しての解放だろ? 俺の解放は違う、時計から出して唯衣と一緒にさせる。それが俺の解放だ)
(やはりその信念は揺るぎないか)
(揺るがねえよ)
(ならば教えよう。お前の思う解放をする方法を……)
その声の主はヤグラに解放方法を教える。
「わかったぜ!」
「ヤグラ?」
「わかったって何が?」
「いや、俺にしか聞こえない声と会話してたんだが、親父さんを助ける方法を聞いたんだ」
「それでどうやるんだ?」
「こうするんだ!」
ヤグラは閃光神堂剣を抜く。
「え?」
「閃光神堂剣!!」
ヤグラは閃光神堂剣の名を叫ぶ。閃光神堂剣はレディアを倒した時のような光とはどこか違う光を銀嶺に向かって放つ。
すると銀嶺はその光を浴びて、光りはじめる。
「銀嶺が……」
「唯衣! それを上に投げてくれ!」
「う、うん」
唯衣は銀嶺を上に投げた。
「でりゃああああ!!」
ヤグラは光り輝く銀嶺をそれ以上に光り輝く閃光神堂剣で斬った!
「斬った?」
斬られた銀嶺はまだ光り輝く。
それどころか斬られたことで半分になった銀嶺は斬られた部分は閃光神堂剣の光以上に光り輝いた。
「くうっ……」
皆が思わず目を伏せる。
そして光がやむとそこには……。
「え?」
そこには肉体を取り戻したカイルがいた。
「お父さん?」
「え?」
「ほら、鏡代わりだ」
ヤグラが光止んだ閃光神堂剣を鏡代わりにして、カイルに自分の姿を見せた。
「これは……俺? 俺の体? しかも死んだ時のままだ……。どういうことだ? ヤグラ」
「このヤグラスーツに宿る魂が教えてくれた。
閃光神堂剣は持ち主に強い思いがあればその魂を蘇らせることが出来ると……。
そして蘇らせたい魂が残っていればその魂の情報から肉体を蘇らせてくれるってな……」
「頭治、その魂とはもしや最初にそのスーツを着て地球にやって来た……」
「だと思うぜ。じゃなかったら、そんな力の秘密はまず知らないだろうしな」
「お父さん!」
唯衣がカイルに抱きつく。
「唯衣」
「お父さん!」
唯衣の目には涙が流れる。だがそれはカイルも同じだった。
「お父さん。もう勝手にどこかに行かないよね?」
「ああ、約束する。俺は勝手にどこかに行くことはしないって……」
「約束だよ」
「ああ」
その感動の再会に思わず涙が出てくるセン、レッパ、シシガ。
「これでよかったよな、親父」
「それはあの二人が決めることじゃな」
「ひとまず退散しますか」
「……ミヤコは大丈夫?」
「ミヤコ」
「うう……」
ミヤコは意識を取り戻しかけていた。
「ミヤコ……」
「とりあえず手当てとかいろいろしないとな……」
五人はひとまずミヤコを連れてその場を後にし、ユリアと葵と合流。数分後、唯衣とカイルも戻って来た。
「あら? あなたは一体……」
「初めまして、唯衣から話を聞いています。ユリアさんですよね。
俺はこの子の父親のカイル・ハイムです」
「で、では、唯衣のお父様……」
「なんで? 唯衣のお父さんって魂だけで体は死んだんじゃ……」
「もろもろの事情で体も蘇った。それでいいだろ」
頭治が葵にそう言う。
「まあそうだな」
カイルの指にはダイヤの指輪があった。
実はレディアが消滅すると同時に指輪が落ち、カイルは戻る最中に指輪を発見、指に付けたのだ。
「…………帰ろうか」
「うん」
そして一同の銀嶺をめぐる争いは終わり、日本に帰った。
それから数日が経つ。
頭治、唯衣、カイル、ミヤコは唯衣の母の友里が生前好きだった場所の丘にある墓に来ていた。
「友里、かなり遅くなっちまったな……」
カイルは墓の前に座る。
「こんな旦那で悪かったな。これからは何とか唯衣が大人になるまで見守っていくよ。
いや、大人になっても見守るさ。なぜなら俺とお前の娘だもんな」
カイルは笑う。
「だからお前も俺達を見守っていてくれよな……」
カイルの声色は悲しそうなものだった。
「……それとな、俺、お前が死んじまったから唯衣の執事やろうかと思ったけど、もう唯衣には専属の執事がいるんだよな。
だからさ……」
カイルがミヤコを呼ぶように顔を向け、ミヤコはカイルの横に立つ。
「ここにいる俺の姪の執事をすることにした。許してくれよな……」
「お願いします……」
カイルとミヤコは頭を下げた。
「許してくれるかな?」
「許してくれると思うよ。…お前のお袋さんだからな」
頭治は唯衣に向かっていった。
「さてと、俺から言うことはこんなものかな。あ、一つだけあった。とりあえず俺は仕事は執事と世界忍者の兼任にするよ。ただ世界忍者の方はあっちの芥子頭治君のお手伝い程度だけどな。
俺からは以上だ。……二人とも交代だ」
カイルはそう言い、頭治と唯衣がカイルとミヤコと交代するように墓の前に出る。
「お母さん、この人がお父さんの言ってた私の専属執事。芥子頭治だよ」
「旦那さんと御嬢さんからご紹介された芥子頭治です。執事としてはまだまだ未熟ですけど、頑張りたいと思いますよ」
「それでね、お母さん、私この人のことを……」
「おっと唯衣、それは俺の前で言うことじゃないし、まだ早いと思うぜ」
「頭治……」
「……なんだか緊張してるのか、これ以上は言うことが思いつかないな。すみませんね、お袋さん」
頭治は墓の前で謝る。
「お母さん、この人こんな感じだけど、いざって時は頼もしいよ。だからね、この人のことも見守ってあげて」
そして後ろに下がっていたカイルとミヤコも墓の前に戻ってきて、四人で黙祷する。
「それじゃあ、帰るか」
「はい」
「友里、また来るからな」
「じゃあね、お母さん」
そして四人は墓から立ち去ろうとする。
「またね、カイル、唯衣……私にとっても姪のミヤコ、そして頭治君」
四人がそんな声を聞こえたので、後ろを向くと墓の前に友里の霊らしきものが見えた。
「あれって……」
「お母さん……」
「幽霊か?」
「どちらにしても見守ってくれそうだ。……ありがとな、友里」
友里の幽霊(?)は笑顔で微笑み消えた。
「……またな」
そして四人は帰った。
だが世界忍者である頭治達の戦いは続くのだ!
戦え、頭治! 行け! 日隠流正統、ヤグラ!!
ひとまずおわり
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この作品は「ハヤテのごとく!(アニメ3期)」と「世界忍者戦ジライヤ」を見た影響で作った作品で両作品を足して2で割った作品となってます。割合としてはハヤテ7:ジライヤ3くらいになってます。