No.526490

学園の守護者~白騎士事件編~第一話

BarrettM82さん

本編より十年前に起きISを一躍に有名にさせた事件、それが『白騎士事件』だった。日本に向け発射されたミサイル、その数は二千三百発以上。
この世界の日本の国の国防を担う『国防軍』やその他の組織の最前線で戦う男達、そしてこの国最後の男性首相直井慎三を中心に描いた作品。

2013-01-02 00:08:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1162   閲覧ユーザー数:1054

 

第一話 世界の始まり

 

西暦二〇一五年七月二十五日、日本が運用する早期警戒衛星が大韓帝国から発射された大陸間弾道ミサイルから巡航ミサイルまでの発射が確認されたのがすべての始まりだった。

発射情報は横田にある国防軍の宇宙空間防衛司令部に上がるとすぐに首相官邸に上がり、全国の町に一斉に警報が鳴り響いた。

時の首相直井慎三は首相官邸の地下にある危機管理センターで上がってくる情報に耳を傾けていた。

 

「現在日本列島に向け約三百以上の飛翔物体が向かっています。」

 

「大韓帝国からの攻撃は予想済みだ。予定通り空軍に報復行動開始を伝えろ。」

 

この時、日本と大韓帝国は日本海にある大規模な資源の為に衝突が起き開戦はまじかだと思われていた。

待機していた戦略爆撃機B-1『富嶽』が大韓帝国の発射基地に向けて出撃して行き、各地の巡航誘導弾部隊が大韓帝国への巡航ミサイル攻撃の準備を始めた。

 

「日本海に展開した海軍が迎撃を開始しました。」

 

「うむ。」

 

日本海には最新鋭のイージス艦を含む日本国防海軍の艦隊が多数展開していた。

その中には世界最大のイージス艦、イージス戦艦『信濃』も迎撃任務に出ていた。

信濃のSPY-1レーダーが弾道ミサイルの飛行を探知した。

 

「目標探知!一、二、三、・・・・二十を越えました!」

 

「すぐに各艦に目標を振り分けろ!」

 

砲雷長の指示もあり戦術データ・リンクを介して目標が振り分けられる。

一隻につき二十の目標に振り分けられ、信濃の戦闘指揮所では乗組員が忙しく動いて目標のデータを入力する。

 

「VLS一番から二十番、目標データ入力完了!」

 

「SM-3、撃ち方始め!」

 

信濃の最上甲板に敷き詰められたVLSの蓋が開き、二十発のSM-3が発射された。

他に展開していたイージスBMD搭載艦である防空駆逐艦も一斉にSM-3を発射した。

SM-3は高速で弾道ミサイルに向かって飛翔し、大気圏を抜けるとキネティック弾頭は複数の噴射口からガスを噴射しながら軌道を修正して激突した。

 

「目標一番を撃破!続いて二番、四番、八番、十番撃破!」

 

「他の艦も迎撃に成功しています!」

 

「まだ喜ぶのは早いぞ!」

 

艦長は喜ぶ乗組員を一喝して任務に戻した。

大型ディスプレイには数え切れないほどの光点が日本に向かって来ていた。

汎用駆逐艦は防空駆逐艦が弾道ミサイルに迎撃している間、彼らは日本海沿岸で低空を飛行してくる巡航ミサイルを迎撃していた。

 

「接近する飛翔体を探知!数は五!」

 

「まだ来るか・・・あとESSMは三発しかないぞ。」

 

「砲雷長!指示を!」

 

「ESSM攻撃始め!」

 

「発射!」

 

三発の発展型シースパローは大韓帝国の巡航ミサイルに命中した。

すかさず砲雷長は主砲による迎撃を命じた。

艦首の五インチ単装砲が空に向かって毎分二十発で発射してなんとか迎撃に成功した。

 

「さらに目標探知!数は十!」

 

「もう無理だぞ!」

 

すると戦闘指揮所の大型ディスプレイに九州方面から多数の航空目標を探知した。

 

「IFFに反応!空軍のF-4A『疾風』です。」

 

小松飛行場から飛来したF-5A『飛龍』の一世代前のF-4A『疾風』はF-22と同じ第五世代戦闘機に数えられ、五年前から配備が始まった日本の主力戦闘機であった。

室伏大尉はAWACSの誘導を頼りに巡航ミサイルに向かい、一発の巡航ミサイルを発見した。

巡航ミサイルの後方につき、ヘルメット搭載型ディスプレイに緑色のシーカーが現れる。

 

「発射!」

 

一発の巡航ミサイルにロックオンして、機内に電子音が響くと同時に発射ボタンを発射した。

右翼に吊り下げられた十二式空対空誘導弾が勢い良く飛び出て行って、数秒後に命中した。

その時、首相官邸にある電話が鳴り響いて秘書官が電話に出る。

首相は秘書官の顔が青ざめていくのが分かり、声を掛けた。

 

「君、どうした?」

 

「首相緊急事態です!中国、ロシアからも弾道ミサイルの発射を探知!」

 

「なに!くそ、あいつらも便乗してこの国を滅ぼす気か・・・。」

 

すると首相の目の前にあるホットラインが鳴り、出てみるとそれはアメリカ大統領だった。

 

「直井首相、落ち着いて聞いて下さい。」

 

「なんでしょうか?」

 

「現在我が国を含め中国、ロシア、イギリス、フランス、そしてあなた方が攻撃しようとしている大韓帝国などの国々に“何者かによる”ハッキングにより貴国に北アメリカ航空宇宙防衛司令部の情報で二千三百発以上の弾道ミサイルが発射されました。中には核弾頭搭載の物も・・・・。」

 

直井首相は言葉を失い、その場に倒れてしまった。

 

「首相!」

 

すぐに職員が駆け寄ったが、首相は自力で立ち上がって受話器を拾った。

 

「突然のことで何がなんやら・・・・。」

 

「すみません、現在沖縄から第七艦隊のイージス艦を日本周辺に配備して迎撃に当たらせます。」

 

「・・・わかりました。」

 

首相は受話器を置くと椅子に倒れ込むように座った。

 

「この国は終わりなのか・・・国防大臣、米海軍と我が軍で二千三百発以上の弾道ミサイルを落せるか?」

 

「二千三百発・・・無理です。現在でも韓国からの弾道ミサイルは終末航程に入り日本全国にあるペトリオット部隊が迎撃していますがすべてを防げていません。地方都市からは弾着報告と被害報告が・・・・。」

 

国防大臣がそこまで言うと突然地面が揺れ立っていた職員が倒れ、照明が点滅した。

すぐに非常灯に変わり、総理大臣官邸警備隊の隊員が入ってきて報告した。

 

「国会議事堂に着弾!見た限りでは衆議院側が倒壊しています!」

 

「首相、ここでは危険です。すぐに国防省の中央指揮所に。」

 

「しょうがない、中央指揮所に移るぞ!」

 

直井首相は階段を登っているとまたもや轟音と共に揺れ、頭を階段にぶつけた。

起き上がると床には点々と血が落ちているのに気づいて、顔を触るとヌルとした感触を感じた。

掌を見てみると血がベッタリと濡れていた。

 

「首相、大丈夫ですか!?すぐに医務官を呼べ!」

 

「呼ばんでいい、それよりも早く車に乗り込むぞ。」

 

首相は立ち上がって一気に階段を駆け上がり、公用車が待機している正面玄関出る。

だがそこで見た光景に愕然とした。

 

「霞ヶ関が・・・・燃えている。」

 

燃え上がる警視庁本部庁舎、倒壊した法務省旧本館が目に入った。

首相は職員に支えられ公用車に乗せられるとすぐに国防省に向かった。

その頃、日本海沿岸では海軍の総力を挙げて、残った艦砲と短距離ミサイルでの対空攻撃で巡航ミサイルを迎撃する。

それを通り抜けて本土上空に入ったのを陸軍の高射部隊が迎撃していた。

SM-3は半数を撃ち尽くしていたが、これから来る二千三百発以上の弾道ミサイルへの迎撃に温存していた。

空軍の戦闘機の中には危険を犯して、超低空で巡航ミサイルを機銃で迎撃する有様だった。

するとCIWSを乱射する汎用駆逐艦『秋月』の艦首を越えて巡航ミサイルが本土に向かって行った。

それを見た海上保安庁の巡視船『しきしま』の船長が命令を出した。

 

「全速力で突っ込め!」

 

「船長!」

 

「副長、俺達の船では迎撃出来ん。なら体当たりで止めてやる、韓国の野郎共に見せ付けるんだ!」

 

「了解しました!総員衝撃に備え!」

 

巡視船が高速で巡航ミサイルの前に突っ込んだ。

巡航ミサイルはマストの付け根に突っ込み、炸薬が爆発して艦橋は吹き飛んで船長と副長を含む船員が即死だった

しきしまは軍艦構造で簡単に沈まなかったが、航行不能になり全速力で沿岸に座礁した。

その頃、太平洋に展開した米海軍イージス艦『シャイロー』はSPY-1レーダーに自国から飛来してきた大陸間弾道ミサイルを探知して、迎撃準備に入っていた。

ある一人のオペレーターがレーダー画面を見つめていた時、弾道ミサイルの光点の前に一点の光点が現れたのに気付いた。

彼は疲れているのだろうと思い目を擦ってもう一度見ると、やはりそこに光点が光っていた。

詳細を調べると彼は驚いた、なぜならその光点は丁度弾道ミサイルと同じ高度・・・すなわち宇宙空間にいた。

オペレーターは砲雷長の方を振り返って報告した。

 

「砲雷長、報告します!弾道ミサイルの前方に未確認の飛行物体が・・・・な!」

 

目をレーダー画面に戻すと未確認飛行物体が高速で弾道ミサイルに向かって行き、好転が重なり合うと弾道ミサイルを表していた光点が消滅した。

 

「日本艦のSM-3か!」

 

「いいえ、違います!日本艦からの発射は確認されていません、それに映っているのはひとつのみです。」

 

砲雷長の問いに他のオペレーターが答えている間にも未確認飛行物体が次々と弾道ミサイルを撃墜していった。

 

「目標群β、全滅!我が艦に振り分けられた目標がすべて撃破されました・・・・。」

 

その報告に戦闘指揮所にいた乗組員は唖然とした。

艦長はすぐに立ち直り、他の目標を迎撃するように命じた。

再度弾道ミサイル監視艦『ラッセン』から目標が太平洋に展開する米駆逐艦に振り分けられてSM-3を発射した。

その報告を聞いた第七艦隊司令官はすぐに琉球本島沖にいる原子力空母『ジョージ・ワシントン』から二機のF/A-18E『スーパーホーネット』が派遣された。

その頃、国防省の中央指揮所に直井首相と閣僚やその他の職員が入った。

中では軍のオペレーターが飛んでくる弾道ミサイルへの迎撃状況や各地の被害状況を随時報告していた。

それを望むような場所に会議室にがあり、そこに閣僚が入っていた。

直井首相は頭に包帯を巻いた姿で外務大臣の報告を聞いた。

 

「在日大韓帝国大使から『今回のミサイル発射は外部からのハッキングにより発射されたもので、我が国の責任ではないと。』言ってきました。」

 

「そうか、すぐに出撃した戦略爆撃機を戻せ、巡航誘導弾部隊には攻撃中止を。」

 

「了解しました。!」

 

すぐに空軍士官が会議室を飛び出して行くと国防大臣が立ち上がって報告した。

 

「首相、統合参謀本部の試算によると主要都市並びに重要軍事施設に核攻撃が行われた場合生存者は最大で我々を含めて二十万人ほどと・・・。」

 

「我々は来る対韓戦争に向けて核攻撃を想定して、国民保護の一環として全国に核シェルターを作ったが、それでも二十万人。しかも放射能の脅威に怯えながら過ごさなければならいとは。」

 

「はい。」

 

会議室には重い沈黙が支配したが、空軍長官がポツリと小声で言った。

 

「他の国々も我々を潰そうとしていたのか・・・・。」

 

「どうした、空軍長官。」

 

首相は空軍長官に聞くと突然笑いながら立ち上がって言った。

 

「ハハハッ!首相聞いて下さい、弾道誘導弾や巡航誘導弾というものは『日本に向けて発射しろ!』と命令が来てすぐに発射できるものではありません。あらかじめ膨大な計算と準備が必要なのです、それらをいちいち命令が来てから計算をするわけではなくあらかじめ一発ずつ目標を設定されています。それから導き出された答えは、“主要国は何時でも日本を滅ぼす”準備をしていたと言う訳なんですよ。笑うしかありませんよ!」

 

「空軍長官!今そんな事を行ってもどうにもなりませんよ。」

 

隣に座っていた陸軍長官がなだめると空軍長官は首相に謝り、着席した。

 

「私はアメリカには絶対的信頼を置いていた。だが実際は我が国も仮想敵に含まれていたという事だ。そして我々にはその反撃手段は無きに等しい・・・・。」

 

首相が閣僚の前に嘆いていると一人の空軍士官が入って来た。

 

「失礼します!見て頂きたいものがあります!」

 

すると空軍士官が機器を操作して会議室の壁にかけられている大型ディスプレイに日本列島を含む東アジア全体の地図らしき画面が映し出された。

そこには日本に向けて一斉に発射された弾道ミサイルの軌跡が一本の線で表され、現在の位置が光点で映し出された。

首相がよく見ると太平洋側、アメリカから発射された弾道ミサイルの光点が次々と消えて行き残り少なくなっていた。

 

「米海軍の迎撃が成功しているのか?」

 

空軍士官にそう聞くと、首を振ってこう答えた。

 

「いえ、第七艦隊戦闘部隊司令部からの情報で『未確認飛行物体が弾道ミサイルの半数以上を撃破した』と。」

 

「未確認飛行物体?UFOが弾道誘導弾を撃破したとでも言うのか!」

 

「わかりません、ですが未確認飛行物体は日本本土に向かったと報告が。」

 

するとオペレーターの声が会議室に繋がれ、スピーカーに報告が流れた。

 

《根室のレーダーサイトが未確認飛行物体を探知!》

 

「どれでもいい、すぐに戦闘機に追跡させろ!」

 

空軍長官がマイクを取り叫んだ。

 

《どこの戦闘部隊も巡航誘導弾の迎撃に・・・いえ、小松基地のF-4A『疾風』がいます。》

 

「すぐに飛ばして、未確認飛行物体を追跡させて姿を暴け!」

 

こうして世界で始めてのISとの接触が行われた。

 

 
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