No.526281

武装神姫「tw×in」 第二十二話

風麦梟さん

初戦×調理戦術=

2013-01-01 18:10:00 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:393   閲覧ユーザー数:393

Pluto杯。この大会はそんな名前だった。

Plutoとは、ローマ神話における黄泉の国の神、または、今では太陽系から外れてしまった冥王星という意味である。

「コレ……分かる人には分かるんじゃないですか?」

「うん、多分ね」

きっと名前付けが面倒だったんだと思うな、冥王ミルート。

参加人数は32人。1ブロック4人のトーナメント形式で、もしも引き分けの場合は両者負けとなるらしい。

会場に行くと、すでにブロック分けがされていたので、確認すると、

Bブロックに天野

Dブロックに真南

Eブロックに木部

Gブロックに東太

そしてHブロックにオレと、見事にバラけていた。

「俺達が当たるのは、早くてもブロックを抜けた後だな」

「でもそうなったら誰かが優勝出来る確率が上がるね!」

場合により、残った8人の内5人がオレ達で埋まることがあるのか。

「それじゃ、行ってくるわ」

「頑張ってね〜かなちゃん」

「カナユメさん、頑張ってくださいなのです」

「フンッ、言われなくてもそのつもりだ。キサマも勝ち残れよ」

Aブロックが終わり、Bブロックが始まるため天野が会場へ向かった。

オレ達の番はまだまだ先だ。

「それにしても、色々な神姫が揃ってるよね〜」

「? オレの話?」

「それもだけど、わたし達もだし、この大会でもだよ」

あぁ、確かに。

オレ達5人で十一人という神姫を持ちながらも誰も被らず、更に会場内を見ればまた異なる神姫の姿がある。

「それだけ、神姫が沢山いるってことだよ」

ぱっと見た感じだが、ここにはライドバトルに適した神姫の姿しかなく、適していない昔からの神姫を合わせれば、その種類は凄い数になる。

「凄いよね〜いったいどれくらいの数がいるんだろう」

「それは……分からないかな」

正式な数は、エンルのアーンヴァルMk.2型やスレイニのアーク型、ミズナのゼルノグラード型にもあるリペイント等の組み合わせもあって多種に渡り、さすがに知らない。

「みるちゃんなら知ってるかな……? あ、そういえばこの大会の名前って…」

真南、ミルートの主催って気付いたのかな?

「ぷると、ってどういう意味? 宗哉知ってる?」

……うん、真南は気づかないな。

 

 

 

 

天野、真南、木部、東太と順当にブロック突破を決め、ようやくオレの順番となった。

「頑張ってね下さいねマスター、コナユキ」

「応援してますよ!」

「気を張らずいつも通りに頑張って下さい」

「ありがとうございますなのです、必ず勝ってくるのです!」

エンル、ルミア、スレイニの三人と、真南達4人に見送られて、オレとコナユキは会場に向かった。

筐体の前に付くと既に他の3人は集まっていて、オレを見て大会の司会らしき人が名前と使用神姫を確認。その後くじを引いて最初のバトル相手を決めた。

「それでは、準備が出来た筐体から始めて下さい」

オレは筐体の前に立つと、前にいるバトル相手を確認した。

「ハッハッハ! 若者よ、悪いが手加減は出来ないぞ!」

三十代位の男性。その肩に彼の神姫が座っている。

「シェフ、今回の相手はこの方ですか?」

エンルと同じアーンヴァルMk.2型で、赤紫色の髪に緑色の瞳をした種類だ。

「あの男の人、シェフという名前なのです?」

「違うよコナユキ、そう呼ばせてるんだ」

神姫を起動した時、名前の登録と共に自分をどう呼ばせるか決める。基本はマスターだが、中には他の呼び名を付ける人もいて、あの人もそんな1人なんだろう。

しかし、シェフとは、少し変わっているような。

「若者とその神姫、残念だか勝ちは頂くぞ」

「むぅー、わたしたちだって負けはしないのです!」

「ハッハッハ! 威勢がいいな、だが、こちらにも負けられない理由というのがあるのだよ!」

それって……

「優勝商品ですか?」

「む!? な、何故分かった!?」

いや、他に思い当たらないし。

「だが、分かったところで私とムースのコンビには勝てないぞ!」

「勝てませんよ!」

あのアーンヴァル、ムースって名前なんだ。

「我が調理戦術、とくとその身に刻むがいい!」

 

 

Ride on!

 

 

フィールドはコロシアム。この大会ではブロック戦は全てこのフィールドらしい。

『コナユキ、武装の具合はどう?』

「ばっちりなのです、何だか皆さんに守られているみたいで、とっても安心出来るのです」

まぁ三人の武装を合わせた物だからね。

へッドとボディはスレイニ、アームとリアはエンル、レッグはルミアから借り、前とは少し違う組み合わせになっている。

武器はまず大剣:ジークリンデ

小剣:カットラス

そしてライフル:LC5レーザーライフルと、こちらはあまり変わりがない、けれどバランスの取れた組み合わせだと思う。

対戦相手であるアーンヴァルmk.2型のムースは、右斜め前に見つけた。その身は色んな神姫の武装で固められていて、固有レールアクションは使えないみたいだ。

「はっはっは! 残念ですけど、勝利はわたし達が頂きますよ!」

腰に手を当てて先ほどのマスターのように高笑いをする。かなり信頼しているんだな、マスターのこと。

「わたしたちだって負けないのです! ね、マスター?」

『うん、皆に合わせる顔もあるしね』

ここでオレだけ負けた、とかはさすがに避けたい。

『よし、勝ちにいくよ』

「はいなのです!」

 

 

Ready…………Go!

 

 

開始早々、コナユキとムースは互いに突撃した。

 

「たぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ガキィン!!

 

互いの武器が交錯した。

コナユキはジークリンデ、一方ムースは、銀のナイフ。名前の通り銀色で、普通のナイフの形状をしている、ぱっと見では武器には見えないが、コレは一応大剣に分類されている。

 

ガキィン!!

 

再度交錯、スーパーアーマーのある武器なので他の武器に入れ換えたら押し負けてしまう。

 

ガキィン!!

 

三度目の交錯の後、二人は同時に後ろへ下がり間合いを開けた。

「まだまだ行きますよ!」

ムースは止まらずに新たな武器を取り出した。

それは、銀のフォーク。銀のナイフ同様見た目は食器そのものだが、分類は槍。なので空いた間合いを詰めながら一突を放つ。

『大剣で受け止めるんだ!』

コナユキは再び大剣を構え、槍を防ぐ。そのまま攻撃を加えるが、

「甘いですよ!」

ムースはアタックチェインで武器を変えて対抗してきた。

銀のナイフ、ではなく、銀のスプーン。分類はハンマーだ。

ムースの武器は……大剣:銀のナイフ、槍:銀のフォーク、ハンマー:銀のスプーンか……

え? さっき言ってた調理戦術って、まさかそういう意味?

何か独特な戦闘方法か、そういう名前のついた技を使うものだと思っていたけど……まさか、武器が全部食器シリーズなだけとは……いや、まだそうとは言い切れないか。

きっと何か、秘密が……

「てぇぃやぁぁ!」

「きゃぁぁ!?」

コナユキの大剣がムースを吹き飛ばした。

秘密が……ある……

「決めるのです!」

 

ズバァ!

 

「うわぁぁぁ!」

小剣からアタックチェインのレールアクション『ATK:大剣』が炸裂、

「うぅ……悔しい、です……」

そのまま勝負がついてしまった。

「やりましたよマスター! 完全勝利なのです!」

『……』

「マスター? どうかしたのです?」

『え? あぁ、ごめん、何でもないよ。勝てて良かったね、コナユキ』

「はいなのです!」

 

 

 

……多分、何かあったと思うんだ調理戦術……きっと、多分、うん。

 


 
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