高町なのは side
あれからすぐにノワールを除いたあの場に居た人は全員、管理局の船へ連れて行かれ。
フェイト・テスタロッサは手枷を付けられつつも高町なのは達と一緒に行動し
船の艦橋へと揃って集まった。丁度その時、管制官の一人の声が艦橋に響く。
「武装局員!玉座の間に侵入!」
大きなモニタースクリーンには大魔道士プレシア・テスタロッサを囲む武装局員の姿が映し出されていた。
「母さん・・・」
逮捕される母の姿を見せるのは忍びないと艦長であるリンディ・ハラオウンがなのはへ念話を繋ぐ。
【逮捕の現場を見せるのは忍びないわ。なのはさん、彼女を別の部屋に】
そうしてフェイトちゃんを借りている部屋へ連れて行こうとしましたが。
すぐにフェイトのお母さん。プレシア・テスタロッサに管理局の人が罪状を並べます。
「プレシア・テスタロッサ!時空管理法違反、及び管理局艦船への攻撃行為容疑で貴女を逮捕します!」
「武装を解除してこちらへ」
長い灰色の銀髪に紫の冷たい瞳...デバイスで武装した局員さん達に囲まれても
眉一つ動かさずに椅子に座ったまま肘を付いて余裕を見せるフェイトのお母さん。
わたしにはそれがものすごく冷たく見えます。
そして、プレシアさんを囲んでいる局員とは別の局員さん達がさらに置くの部屋。
丁度、プレシアさんの後ろにある部屋へ向かうと
その紫の冷たい目が。ぎょろりと後ろの部屋を向きます。
その瞬間、部屋に紫色の稲妻が落ち。プレシアさんを囲んでいた局員さん達が倒れ。
後ろの部屋へとプレシアさんは走って行きます。
そこには想像もしていなかった光景が映し出されていました。
「な、なんだこれは・・・」
その部屋に入った局員さんの呟きとわたしの心。いえ、多分この場に居る人の殆どがそう思ったと思います。
そこにはフェイトちゃんとそっくりな女の子が薄い緑の液体に包まれ
巨大なカプセルに入って浮んでいたのです。
「私のアリシアに近寄らないで」
そして、次の瞬間にはその部屋に居た局員さんもプレシアさんの放った稲妻で倒れてしまいます
「いけないッ!早く局員達の送還を!」
リンディさんが慌てて命令を出し。すぐに倒れていた局員さん達は、光に包まれ、時の庭園からアースラに戻りました。
プレシアさん。フェイトの母親はというとそのカプセルに抱きつくように凭れかかり
アースラで見ているわたし達に向かって説明するように話し始めます。
「もうダメね....時間が無いわ....たった10個のジュエルシードでは
アルハザードに辿り着けるか分からないけど・・・でも、もういいわ。
もう終わりにする....この子を亡くしてから暗鬱な時間も。この子の身代わりの人形を娘扱いするのも」
「ッ!?」
その言葉にフェイトちゃんは肩を震わして身を竦ませます。
「・・・聴いて居て?...あなたのことよフェイト!
折角、アリシアの記憶を与えたのに。似ているのは見た目だけ。
役立たずでちっとも使えないわたしのお人形」
そして、管制官のエイミィさんからわたし達に分かるように
プレシア・テスタロッサ。フェイトのお母さんがして来た実験の話。
その実験の事故で巻き込まれたアリシアというフェイトから見ればお姉さんのお話。
それからその子供を蘇らせようと自らの研究で娘をアリシアを蘇らせようとしていた話。
フェイトという名前はその時の開発コードから来ているとまで説明された。
「良く調べたわね。でもダメねぇ。ちっとも上手く行かなかった。
作り物の命は所詮作り物。失った者の代わりにはならないわ。
アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。アリシアは時々、我が侭も言ったけど
あたしの言う事をとてもよく聞いてくれた」
「・・・」
プレシアさんの声が聞えるたび見る見る内にフェイトちゃんの目から
光が失われていって。自分で立って居られなくなって・・・。
倒れそうになったフェイトちゃんをわたしとアルフさんで支えます。
「やっぱりフェイト?あなたはアリシアの偽者よ!」
「やめて!やめてよぉ!」
次々とフェイトちゃんを悲しませる言葉に私が悲鳴を上げます。
でも、プレシアさんは止まってくれません。
「アリシアを蘇らせる間にあたしが慰みに使うだけのお人形。
だから、貴女はもう...いらないわ。どこにでも消えなさい!」
「もうやめて!もうやめてよ!フェイトちゃんを苛めないで!」
「....」
ついにはフェイトちゃんから体の力が完全に抜けてしまいます。
そんな時でした。あの人が現れたのは
『お前にフェイトどうこう言う資格なんてないッ!!』
side out
やはり優秀なのだろうアリスは
管理局の船へ潜入し、時の庭園の座標を割り出したばかりか。通信の傍受まで行ってしまった。
【わたしって優秀な使い魔ですから!】
いや、優秀で片付けられるほど簡単なものじゃないが・・・。
転移を開始し。光に包まれての移動中には傍受している通信が聞え。
局員が倒され。プレシアが自らの計画の内容を聞かされ。
胸の奥が熱くなり。これを聞いているフェイトの悲しみと
俺が感じる怒りが込み上げ。頬が引きつる。
そして、時の庭園の入口へ転移が終わるとクローシュも分かっていたのか。
通信に割り込み。俺は声を上げた。
『お前にフェイトどうこう言う資格なんてないッ!!』
「あら?まだなにか用かしら?高いばかりで役たたずの傭兵さん」
俺をまるで相手していないような。プレシア・テスタロッサへ叫ぶ。
「ああ、俺は封印魔法とか全然ダメで役たたずかもな。
だけど俺は!フェイトがどれだけアンタを好きだったか知ってる!
死人を生き返らせようとしてコピーを作った?それが本物と違うから責める?消えろ?巫山戯るなよッ!
アンタはただ過去から逃げようとしているだけだ!!フェイトはアリシアと違う?違って何が悪い!
フェイトはフェイトだ!それ以外の誰でもない!フェイトはこの世に一人しか存在しない!
アンタの大好きなアリシアだって一人しか居ない筈だ!それをアンタは誤魔化して...逃げているだけだ!」
「・・・逃げている?」
「ああ、逃げてるね!死人はどうやっても生き返らない!
例えアリシアが生き返ってもアンタは受け入れられる筈がない!
お前はとっくの昔に理解してる筈だ。アリシアは死んだ!自分の起こした実験で殺したと!」
そうさ・・・俺だって昔(前世)とは違う人間だ。
考え方、倫理、体から至る所まで違う。精神でえそれはもう
他人と言ってしまっていいほど変った・・・。
「黙りなさいッ!」
プレシアの悲痛な叫びと共に時の庭園が揺れ始める。
大きな魔力の渦も感じる。次元震か?
「アンタは死者蘇生の幻想に囚われて自分を失っている。今ならまだ」
「違うわ!アルハザードには死者を蘇らせる秘術が!」
「例え有ったとしてもその為に幾つもの世界を滅ぼすつもりか?」
「ええっ!アリシアに比べれば安いものよ。いくら人が死んでも構いやしないわ!」
本当に狂ってやがる・・・俺も人様に迷惑を掛けることばっかりであまり強く言えないが。
他人に責任押し付けるようなことは絶対にしないし。近くにいるやつにさせるつもりもない。
「そんな間違ったことは俺がさせない・・・それに雷の礼はたっぷりとさせてもらう!!」
「フフッ来れるなら来てみなさい。もうジュエルシードの暴走は始まってるし
こんなおもちゃも用意してあるのよ?ここまで来られるかしら?」
すると時の庭園の地面からまるで水面から浮かぶように地中から傀儡兵があらわれる。
魔力等を動力に動くロボット兵だ。簡単に言えばだが。
無数に現れた傀儡兵が道を塞ぐ。手には剣やハルバードなど様々な武器が握られていた。
傀儡兵は人よりも数倍大きく。2mはあり。大きいものだと5mを超えていた。
「ならお言葉に甘えるとしよう。ブリッツ!ブースト!ザドーシュ・ブラード!」」
『ブリッツアクション!ブースト!ザドーシュ・ブラード!』
魔法で加速しながらクローシュを抜刀し。同時にカートリッジが2発排莢された。
分厚いバリアジャケットに身を包んだ体に魔力の補助が入り軽くなる。
クローシュの刀身に黒い魔法刃が纏い。傀儡兵に俺は一瞬で近づき。
人形である傀儡兵の股下から頭に向かって真っ二つにクローシュで両断する。
防御力や数は多いが俺の速度に傀儡兵の反応速度は追いつけない。
真っ二つに切り裂いた傀儡兵の左右に居た遅れて反応した傀儡兵がハルバードを横凪に振るうが
俺はそれを空にジャンプして交わし。ザドーシュ・ブラードの長く伸びた刃で
空中で回転しながら地上に降り。ハルバードを振るった傀儡兵を斜めに何度も切り裂く。
着地した瞬間にブリッツアクションを発動させ。その場から飛び退き
魔導動力炉が暴走した傀儡兵が爆散した。
だが、まだ周りを囲んでいる傀儡兵は無数にいる。
「クローシュ」
『ミストラル・ミシィール』
再びカートリッジを排莢し。今度は魔法誘導弾ミストラル・ミシィール8つ発動させる。
自分の前を扇状にそれを放ち。それを炸裂させる。
爆音と轟音が鳴り響き。放った方向に居た傀儡兵は大破もしくは体の一部を損傷して地面に倒れた。
巨大な傀儡兵が只の鉄屑へと姿を変える。
するとミストラルに耐えた大型の傀儡兵が一体、道を塞ぐように立ちふさがるが
「ブリッツ」
『ブリッツアクション!』
高速で傀儡兵に肉薄し。巨大なロボットの胸部に左手を当てる。
「ATブリッツ」
『ATブリッツアクション!』
左手から相手に向けて瞬間加速魔法であるブリッツアクションを最大出力で発動させる。
すると巨大な傀儡兵は魔法で生まれた強力な反重力場に吹き飛ばされ、
時の庭園の外壁に埋まり。鉄くずへと姿を変えた。
「人形如きで俺を止められると思うなよ?」
そして俺は傀儡兵を蹴散らしながらプレシア・テスタロッサの元に歩みを進める。
「フェイトさんを医務室へ!」
「は、はい!わかりました!」
「しっかりして!フェイト!」
(ああ、フェイトが心配です。本当は今すぐ飛び出したいですが
力なく倒れた割にはマスターの言葉のお蔭か目に光が戻っていましたし
今はそのマスターが大暴れしてますから少し待ちましょう。それにしてもなぜ....)
アースラ艦内の通気口内に猫の姿で息を潜めるアリスは心の中で呟いた。
(なぜあの人は未来予知に似た力にこんな抜け道を知っているのでしょう?)
アリスは事前に船の内部構造をある人物に教えられており。
猫や子供ほどの大きさなら通り抜けられる抜け道を辿って
艦内で情報を手に入れ。座標データなどをノワールへ送り
艦橋でフェイト達の様子を隠れて眺めていた。
フェイトはなのはという少女に連れられて医務室へ向かうその後を追う。
(まあ、今は措いておきましょう。それよりあのなのはという少女達がどう動くかで
私のすることも変って来ますし。とりあえずは彼等について行きましょうか)
しなやかな猫の四肢を動かし狭い通気口を悠々と歩いていく。
(プレシア・・・もう、貴女は戻れないのですね。いえ、過去から未来に進むことが)
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神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。