~~アリサ視点~~
「ハア~…」
今、私はバニングス家の娘として社交界用のドレスを身に纏い、パパ、ママと共にパーティーに出席している。
このパーティーには色々な人がいる。
有名な政治家や大財閥の当主、大企業の社長や大物芸能人など様々だ。
でも私と同年代の子供がいないので私は一人だけ浮いている様な気がする。私と同じように親に着いて来てパーティーに参加してる者は多数いるのだが誰もが皆年上だ。この中では私が一番年下。私に一番近い歳の人でも二十歳だったりする。
個人的にはあまり気乗りしないけど私はバニングス家の一人娘だ。将来こんなパーティーに参加する事が今まで以上に増えるだろうから今の内にしっかりと慣れておかないといけない。
「でも話し相手がいないのはどうなのかしらね…」
壁に背を預けながら思わず呟いてしまう。まあ、仮にいたとしても『お宅の経営状況は?』とか『是非今度、ウチの企業と提携を…』等々の会話ばっかりで私が普段学校でなのは達と喋ってる様な楽しいモノではない。そもそも小学生の私にそんな会話をどうやってしろと?まだ働いてすらいないのだから分かる訳がないじゃない。
「ハア~…」
また溜め息を吐いてしまう。
「さっきから溜め息ばかり吐いているね」
そんな私に声を掛けて来る人物がいた。
「ごきげんよう、バニングス嬢。前回のパーティー以来だね。元気にしてたかい?」
「…ごきげんよう、ミスター・東条」
彼は父親が百貨店のオーナーを務めている御令息、
「僕で良ければ話し相手になるよ?」
「いえ、結構です。少し一人で考えたい事もありますので」
「遠慮する事はないよ。悩み事なら相談に乗れるし、君の力になれるかもしれないからね」
そう言って両手で私の手を包み込むように優しく握ってくる。
…正直、良い気分がしない。というよりも気持ち悪い。私は全身の肌が粟立つのを抑えるので必死になっていた。
「そこまでにしておきたまえ。彼女が嫌がっているだろう?」
そこへ新しい人物の声。
「こんばんわ、ミス・バニングス。いつ見ても綺麗だね」
「…こんばんわ、ミスター・大森」
この人は
「やあ大森君。君の所の不動産は相変わらず景気が良いみたいだね」
「そういう東条君の百貨店も他の百貨店と違って黒字続きだと聞いているよ」
「
「でもいずれは継ぐのだろう?」
「まあね。君こそそうなんだろう?」
「勿論さ。そのために色々勉強中だからね」
…そういう話なら私のいない所でしてくれないかしら?
「…ところで君はいつまでミス・バニングスの手を握っているのだい?」
大森さんが私の手を握っている東条さんの手を見ながら言う。
「君は先程『彼女が嫌がっている』と言ったがそんな事はないよ。バニングス嬢、そうだろう?」
「この手を離してくれるとありがたいですね」
「……失礼」
そう言ってやっと手を離してくれる。
「ところでバニングス嬢。以前、君に聞いた件は考えてくれたかい?」
以前…
「申し訳ありませんけれど貴方と
「どうしてだい?君の家柄と僕の家柄では問題無いと思うんだけど?何が不服なのかな?」
「私は家柄なんかで好きになる人を決めるつもりはありませんから」
「じゃあ容姿?それとも性格かな?自分で言うのもなんだけど僕はどちらもそれなりに良いと思うよ?」
ホントに自分で言う事じゃないわね。確かに見た目も中身も悪くは無いんだろうけど、だからと言って私が好きになる理由にはならない。
「…とにかく、私は別に貴方の事を好きでも何でもありませんので」
そう言って私はこの場を離れようとするが
「なら僕はどうだろうか?」
今度は大森さんが私の手を掴む。
…さっきから私と『仲良くなりたい』『付き合いたい』と言ってくるけど十歳以上も年が離れている事には何とも思わないのかしら?世間一般だと『ロリコン』の分類に入ると思うのよね。
「ごめんなさい。東条さんと同じで大森さんの事も別に何とも思っていませんので。それと一人になりたいのでこの手を離してもらえますか?」
この場を離れたい私としては引き留めてくる彼等に対して少しずつイライラが募る。
「じゃあもう少し親睦を深めると言う意味でもっとお話しないかい?」
イライラ…
「それは良い案だね。バニングス嬢。向こうに空いている席があるからそこで話をしよう」
イライラ…
「「僕の事をもっと知ってくれれば君の見解も変わる筈だ」」
ブチッ…
「うるっさいわね!!私は一人になりたいって言ってるでしょうが!!」
「「っ!!?」」
さっきから私の意見を聞こうともしない馬鹿二人に大声で怒鳴る。
「それにアンタ達に興味なんかこれっぽっちも無いんだから!!」
突然の事に驚いてる二人の顔が、それどころかパーティー会場にいるほとんどの人達がこちらを見るが私の口は止まらない。そして…
「私にはもう
とんでもない爆弾発言を残してからその場を離れた………。
~~アリサ視点終了~~
「……という事がこの前あったのよ」
「「「「「「「「「「へ~~~」」」」」」」」」」
現在俺達長谷川家と亮太、椿姫の七人は聖祥組と共に翠屋で先日、アリサが参加したらしいパーティーの内容について聞いている。
というよりも『用があるから翠屋に来なさい』っていうメールがアリサから届いたから来たんだけど、その用ってのが俺達に愚痴を零す事だったとは。ちなみに注文したケーキやジュースはどれだけ食ってもアリサの奢りらしい。…金持ちだねえ。
「アリサちゃんも苦労してるんやな~」
「お金持ちの中にも
はやて、レヴィが同情している。
金持ちの銀髪トリオを想像してみる。
……権力が有る分
「でも意外でした。アリサに彼氏がいたとは…」
シュテルの言葉に皆頷く。
「何言ってんのシュテル?私に彼氏なんていないわよ」
「えっ?じゃあ『彼氏がいる』って言うのは…」
「勿論嘘に決まってるじゃないフェイト」
「「「「「「「「「「何だ~…」」」」」」」」」」
残念そうにする俺、亮太、椿姫を除く一同。皆、他人の恋愛事には興味津々なんだな。
「でもちょっと問題が起きてね…」
「「「「「「「「「「問題?」」」」」」」」」」
「その後にその御令息の人達が『その彼氏に会わせてくれ』って言ってきたのよ」
『ハア~』と溜め息を吐き、アリサが答える。
「でもアリサに彼氏はいないんですよね?」
「そうよユーリ。でも今更あの時の発言を撤回する事なんて出来ないし、したらしたらでまたパーティーの度に付き纏われそうなのよ。だから…」
アリサの視線が俺に向く。何だろう?
「勇紀、アンタに私の彼氏役をやってほしいのよ!」
ビキイッ!
瞬間、空気が裂ける様な音がした気がするが
「は?」
俺はただそう聞き返す事しか出来なかった。
彼氏役とな?俺が?アリサの?
「何で俺?」
「アンタ以外に彼氏役をこなせそうな男の子がいないのよ」
「すぐソコにいるぞ」
俺は亮太の方を顎で差す。アリサは亮太の方を向くが亮太は
「アー、ボクハキミミタイナカワイイコガカノジョデウレシイナー」
「ホントー?ワタシモアナタミタイナカッコイイカレシデシアワセヨー」
椿姫とワザとらしい棒読みで会話していた。
「あんな棒読みじゃすぐにバレるじゃない!!」
「待てい!アレどう見てもワザとじゃねえか!!」
お前、それぐらい見抜けねえのかよ!!
「そんな事どうでもいいの!!それにアンタにはもう前払いで払ってるんだから!!」
「前払いって…んなモン貰ってねーぞ?」
「それよ!」
ビシッと指差す先には俺の手にあるシュークリーム。
「…コレはお前の奢りじゃないのか?」
「
……詐欺だ。俺は再び亮太と椿姫の方に視線を移すと
「「《彼氏役、頑張って♪(頑張れ♪)》」」
念話で話してきた。椿姫の奴は明らかにこの状況を楽しんでやがるな。スッゲエ笑顔なのがムカつく。
「…ハア~」
思わず溜め息を吐いてしまう。
「何よ。溜め息吐く程嫌なの?」
「…アリサ、『口は禍のもと』もしくは『身から出た錆』って言葉知ってるか?」
「う…し、仕方ないじゃない。あの時はああ言えば連中ももう関わってこないと思ったのよ」
「気持ちは分かるが結局お前が嘘吐いたのが原因だろ?」
ぶっちゃけ自業自得ですやん。
「…分かってるわよ。自分が悪いって事ぐらい。でもホントに私も困ってんの。だからお願い!今回だけ私に付き合って」
そう言って頭を下げるアリサ。
「(ハア~)…分かったよ。その人達が突っ掛かってこなくなったらいいんだな?だったら手伝う」
「「「「「「「「っ!!?」」」」」」」」
「ホント!?」
「…あまり気乗りはしないけどな」
「それでも感謝するわ。ありがとう」
頭を上げ、礼を言うアリサは良い笑顔だった。
「それで、彼氏役って言ってm「「「「「「「「駄目ーーーー!!!!」」」」」」」」……」
シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、フェイト、アリシア、はやて、すずかが突然叫び出した。何ですかいきなり!?
「な、何で勇紀が彼氏役やんの!?他の人でいいじゃん!!」
「アリシアちゃんの言う通りだよアリサちゃん!!大槻君とかが適任だよ!!」
「いや、すずか…。大槻の演技力じゃ絶対に彼氏じゃないってバレるから…」
「ならば別の人物で良かろう!!……そ、そうだ!!あの塵芥共を使えば良いではないか!!」
「そ、そうや。あのアホ共のどっちか使おうやアリサちゃん!」
「ディアーチェ、はやて、それ本気で言ってる!?アイツ等に頼むなんて絶対に有り得ないわよ!!」
「だって、もしアリサまでがユウキに…その……」
「ななな何言ってんのよシュテル!?彼氏役を頼むだけでアンタが思ってる様な事になんてなんないわよ!!」
……一気に賑やかになったなあ。
「アリサはああ言ってるけど亮太、折角だから私と賭けをしない?」(ヒソヒソ)
「賭けって何の?」(ヒソヒソ)
「今回の一件で勇紀がアリサを堕とすかどうか」(ヒソヒソ)
「それ、賭けにすらならないよ椿姫」(ヒソヒソ)
…何だかあそこでヒソヒソ話をしている亮太と椿姫を殴りたくなってきた。いや、アポロンぶちかますか?
賑やかに言い合ってる連中とアワアワしているなのは、そしてそんな状況を面白そうに見ている亮太と椿姫。俺はカルピスを飲みながら言い合ってるアリサ達を眺めていた………。
アリサに彼氏役を頼まれた翠屋の出来事から数日経った土曜日…。
俺は『ホテル・ベイシティ』という大型高級ホテルの前にいる。時間は夕方の6時前。ここでアリサと共に例の御令息の連中に俺が彼氏(役)だと紹介するためだ。
何でも俺を紹介するのにホテルのレストランで夕食の場を設けたらしい。
『6時にホテル・ベイシティの前で待ち合わせね』とメールで連絡を受けたから俺は現在アリサを待っているという訳だ。
そして携帯の画面に映っているデジタル時計が『18:00』と表示されたと同時に見た事有るリムジンがホテルの入り口前に停車した。リムジンから出てきたのは言わずもがな…
「あら?勇紀の方が早かったのね」
アリサ・バニングス当人だった。
「そりゃ、遅れる訳にはいかんだろ?」
「殊勝な心掛けね。じゃあ入りましょうか」
「そうだな」
俺とアリサは肩を並べ、ホテル内に足を踏み入れる。
「それにしても…」
アリサが俺の方を見ながら口を開く。
「中々様になってるじゃない。その服装」
「そうか?普段こんな服なんて着ないから自分じゃよく分からんが…」
「自信持って良いと思うわよ(少し見とれてしまったわ)//」
アリサが言ってきた俺の服装…
今回の夕食には普通の服装で行くのはどうかと思い、デパートで俺のサイズに合うタキシードを買った。
今の俺は黒いタキシードと蝶ネクタイに革靴、白いカッターシャツを着用している。
「ありがとな。アリサもそのドレス、似合ってるぞ」
対してアリサもドレスを纏っている。赤を基調とし、肩を大きく露出させたドレスだ。
「ありがと(悪い気はしないわね)//」
足を止める事無く会話する俺とアリサ。
それからホテルのエレベーターに乗り込み、最上階のレストランを目指す。
エレベーターを出た途端、俺の腕に自分の腕を絡め、組んでくるアリサ。
「???」
疑問符を浮かべる俺に
「こうやって行けば恋人同士に見えるでしょ?」
と言われて『ああ』と納得する。
そしてレストランに入り、奥の方にある席へと向かう。そこには三人の御曹司が既に席に着いていてレストランに入ってきた俺とアリサを見る。
「お待たせしました皆さん」
アリサが御曹司達に一礼する。
「早速だけど紹介させていただきます。彼が私と付き合っている長谷川勇紀さんです」
「どうも、長谷川勇紀です。今紹介がありましたようにアリサさんの恋人です」
俺も頭を下げて挨拶するが相手側からの反応は無い。というよりも俺を見る目だが明らかに『庶民』というかのように見下した目をしている。
「勇紀、左の方から紹介するわ。百貨店オーナーの御令息、東条孝之さん。不動産会社社長の御令息、大森幸助さん。貿易会社社長の御令息、本田栄一さんよ」
…本当に上流階級の御曹司達だな。
「こちらこそこんな素敵なレストランで貴女と晩餐を共にできて光栄ですミス・バニングス」
「それに今日の貴女もまた一段と美しいですよバニングス嬢」
「ええ。そのドレスも貴女に似合っていて素敵です」
……俺の事は無視かい。褒められているアリサも全然嬉しそうじゃないし。一応作り笑顔で対応はしてるな。
「ありがとうございます。早速ですけど食事にいたしましょうか」
そう言ってアリサが御曹司達の対面の席に座るので俺もアリサの隣の席に腰を下ろす。それを見た御曹司達は一瞬不機嫌そうな表情を浮かべたがすぐアリサに笑顔を向ける。
こうしてレストランでの夕食が始まった………。
~~第三者視点~~
ここはアースラのブリッジ。とある集団がサーチャーを使い、ある一組の行動を監視していた。まず…
「「「「「「「「(ユウキ(ユウ)(勇紀)(勇紀君)のタキシード姿…格好良い)//////」」」」」」」」
言わずとしれた勇紀に惚れているシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、フェイト、アリシア、はやて、すずかの八人。、
「ふええ~、勇紀君が別人みたいなの//」
高町家の末娘、なのは。
「勇紀さん、カッコイイですぅ~//」
「確かに、あの姿も様になっているな//」
「ああ、見事にスーツを着こなしている//」
「そうねえ。今日の勇紀君は凛々しい雰囲気が漂ってるわね//」
「ま、まあ似合ってるっちゃー似合ってるな//」
「流石は勇紀といったところか」
はやての守護騎士であるリイン、リンス、シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ(獣人形態)。
「服装が変わると印象も変わるわね//」
「そうですねプレシア//」
「(ポーー)……//」
テスタロッサ家のプレシア、リニス、アルフ。
「今の彼、何だか大人っぽいわねえ…//」
「ですねえ。何か意識させられるというか…//」
「(僕もあんな服をきたら大人っぽく見えるんだろうか?)」
アースラの艦長リンディに管制官のエイミィ、リンディの息子であるクロノ。
「何か凄い事になってるね椿姫」(ヒソヒソ)
「ええ、ここに居る私以外の女性陣がほぼ見とれてるわね」(ヒソヒソ)
転生者の亮太と椿姫。
…計二十三人が勇紀とアリサの様子を窺っていた。
始めは勇紀とアリサを監視するのが目的だったシュテル達と『面白そうだからついでに見よう』という理由で映像を見ていた他のメンバー。だが、普段と全く違う雰囲気の勇紀を見て皆それぞれの感想を口にしていた。
「…シュテルさん達は当然として、他の女性陣の皆も頬を若干染めてるんだけど、どう思う?」(ヒソヒソ)
「…これは間違い無く『ニコポ』『ナデポ』に続く新しい魅了技……その名も『ミタポ』ね」(ヒソヒソ)
「…『ミタポ』って何さ?聞いた事無いんだけど?」(ヒソヒソ)
「今、私が考えたもの。普段と違う姿や雰囲気で見た者を魅了するから『ミタポ』よ」(ヒソヒソ)
「じゃあ、ここにいる女性陣は皆もう勇紀に惚れたって事?あのプレシアさんやリンディさんでさえも?」(ヒソヒソ)
「シュテル達はともかく、他の人達はあくまで『今の勇紀の姿に少し意識してる』ってだけでいきなり惚れてはいないでしょ?……ショタコンの気があるなら話は別かもしれないけどね」(ヒソヒソ)
「……この晩餐会が終わったら勇紀、どうなるんだろうね?」(ヒソヒソ)
「さあ?普段の服装や雰囲気に戻ったら皆元に戻るんじゃないかしら?私としては修羅場になったら面白いから皆このまま意識しといてもらいたいけど(ここにメガーヌさんやルーテシアもいれば皆と同じ反応したかもしれないわね。後、那美さんや久遠にナンバーズの子達も。ここにいないのが悔やまれるわ)」(ヒソヒソ)
椿姫は面白がり、亮太は『勇紀、全て終わったら大変かもしれないよ』と画面越しに彼に同情しているのだった………。
~~第三者視点終了~~
…夕食を食べ始めてから1時間程。三人の御曹司は俺の事などここにいないかのように無視し、ひたすらアリサに話し掛けている。アリサ本人は鬱陶しそうにしているが。俺とアリサが会話するとすぐさま別の話題を振って会話を中断させてくる。アリサが嫌がるのも理解出来るわ。
そんな時、不意に尿意を感じたので俺は席を立つ。
「失礼。ちょっとトイレに」
立ち上がった俺をアリサが『私を一人にする気?』と言う様な視線を俺に向けるが我慢したら身体に悪い。
アリサに軽く謝ってからレストランの外に出てトイレへ向かう。
…レストラン内にトイレ設けておいてくれよ。
「「「……………………」」」
レストランから少し離れた所にトイレはあった。
「…ふい~……」
出すもの出して爽快感が沸いてくる。手を洗い、ハンカチで拭いてからトイレを出たところで
「やあ彼氏君。少し顔を貸してもらえるかな?」
御曹司の三人が立っていた。
「(穏やかな雰囲気じゃないな)…何ですか?何かあるなら別にアリサの前で言ってくれても構いませんが?」
「彼女には聞かれたくない事なんでね?男同士の内緒話ってやつさ」
「それならここでも良いのでは?周りに誰かいる訳でもなさそうですし」
「いいから顔を貸したまえ」
「…アリサを一人にさせたくはないのですが?」
「すぐに済むから問題無い。君は黙ってついて来ればいいんだ」
やや荒い口調になってきてる。アリサの前で見せなかった本性が出始めてきたか?
…ここで言い合ってても仕方ないし、この人達の言う通りにしてとっとと解放してもらうか。
「いいですよ」
そう言うと『ふん』と鼻を鳴らしてスタスタ歩いて行くのでその後を追う。
そのままエレベーターで3階程下のフロアに来る。
そしてある程度歩いた所で三人は立ち止まる。
…周囲にかなりの人数が隠れている感じがする。
「さて、僕達が言いたいのは一つだけだ。バニングス嬢と今すぐ別れたまえ」
「ちなみに拒否権はないよ。君の様な庶民なんて僕等の権力でどうとでもなる」
「勿論タダとは言わないさ」
そう言って大森さんだったよな?…その人が内ポケットに手を入れて何かを取り出し
バサッ…
俺の足元に投げる。
「……何のつもりですか?」
足元に投げつけられたのは一万円札の束だ。パッと見て百万円程か?
「君に進呈しよう。僕等にとっては端金だが庶民である君には大金だろう?それをあげるからミス・バニングスと縁を切りたまえ」
コイツ等、ナメてんのか?
「別にいりません。アリサと別れるつもりはありませんから」
「君に拒否権は無いと言った筈だが?それともまだ欲しいのかい?なら…」
バサッ…バサッ…
更に同じ厚みの束が2つ足元に放り投げられる。
「これで満足だろう?」
『早くソレを拾って別れを告げてきたまえ』とか言ってるが
「いくら積まれても俺の返事は変わりませんよ」
ハッキリと否定する。
「やれやれ、これだから庶民は嫌なんだ」
首を左右に振った後、指をパチンと鳴らすとホテルの客室から大勢の人達が出てきた。彼らの護衛をしているボディーガード、SPといった所だろう。
「…何のつもりです?」
「素直に従わないのならその身体に教えてあげようと思ってね。ちなみにこのフロアと一つ上、一つ下のフロアは僕達が貸切りにしているから人が来ることも無いし、ここで君をどうしようと僕達の権力で揉み消す事も出来る」
「君みたいな庶民が彼女の側にいるなんて不愉快極まりないんだよ。バニングス家に取り入るには彼女と親しくなるのが一番手っ取り早いんだから」
実力行使って訳かよ。それにしても
「取り入るってどういう意味ですか?」
「そのままの意味だよ。世界的にもそれなりに知名度があるバニングス家に婿入りする事が出来れば僕達の地位や権力が更に増す事になる」
「そんな影響力を持つ立場の彼女に彼氏がいると聞いた時は『何処の御曹司か?』と思ったけど君みたいな庶民というのが腹立たしくてね」
本田さん、大森さんが口を開くが
「じゃあ貴方達がアリサにアプローチしているのはバニングス家の権力が目的なんですか?」
「当然だろう。まあ、彼女も見た目は悪くないし5~6年も待てば良い女に成長するだろうからね。見逃す理由は無い。もっとも僕等はバニングス家と繋がりを持てるなら彼女がメス豚のような女でも構わないさ」
ブチッ…
俺はキレた。正直コイツ等の口にした言葉を聞いて大人しくしてられる程、俺は我慢強くない。
「さて、いい加減きm『バキイッ!』…ぐはっ」
何か言おうとしてたみたいだがそれより先に俺は大森の顔面にパンチをかました。まともに受けた大森は鼻から血を出し、一撃で沈んだ。
「「なっ!?」」
俺の突然の行動に驚いた様子の東条と本田。護衛の連中も咄嗟の事に反応できなかった。
「正直に言うと…」
そんな連中に対し俺は淡々と喋り始める。
「俺はアリサの彼氏でも何でもない。ただ、アイツに付き纏う連中を無くすために彼氏役を頼まれただけだ。それでもアリサの事を本気で想っている人がいるなら俺はその人にアリサを任せるつもりだったよ」
俺が軽く怒気を込めて睨むと御曹司達は『ひいっ!?』と悲鳴をあげて汗をダラダラと流し始め、護衛の連中も俺の気迫に呑まれている。
「でもアンタ等はアリサの事を自分の地位を上げるための『道具』としか見ていない。そんなアンタ等がアリサと結ばれてもアイツは不幸になるだけだ。大切な友達として、今日一日だけの『彼氏』としてアイツにそんな人生を歩ませたくないし、見過ごすわけにはいかない」
俺が一歩近づくと、連中は一歩後ずさる。
「だからこれ以上アイツに近付くと言うのなら俺はここでアンタ等を叩き伏せる」
そう言って更に怒気をぶつけるが
「しょ、庶民の分際で生意気な事を!!君達!!彼を叩きのめせ!!」
一斉に護衛の連中が襲い掛かってくる。
「それが答えか。なら…」
俺は構え大きく息を吸い込んで
「テメエ等全員、地獄行き決定だーーーー!!!!」
叫ぶと同時にホテル内での戦闘が始まった………。
…二日後の月曜日。
翠屋に呼び出された俺。呼び出した張本人アリサは…
「……//////」
顔を真っ赤にしたまま一言も発さずに俺を見ていた。
「…なあ」
「な、何よ!?///」
「俺を呼び出した理由って何さ?」
一応聞いてみるが何となく予想はつく。一昨日の事だろうな。
「お、一昨日の事よ///」
やっぱりか。
…あの後だが、いくら相手が多数いるといっても俺があの程度の実力しかない護衛連中に後れを取る筈が無い。御曹司の坊ちゃん共も含め完膚なきまでに叩き潰した。もっとも入院させる程やり過ぎてはいないがそれなりに痛めつけた。その後レストランに戻り、アリサには『彼等は急用が入ったらしく帰った』と伝えて俺達もすぐにレストランを後にした。流石に訝しんでいたが特に理由を追及してこず、そのままアリサのリムジンで家まで送ってもらった。家に入る前に鮫島さんに『今日はありがとうございました』と礼を言われた。そこまで大した事はしたつもりは無かったんだが…。むしろ相手をボコってしまって『バニングス家の人に迷惑掛かる事したなあ』と罪悪感が沸いたぐらいだ。
「勇紀には凄く感謝してる。パパもママも『直接お礼を言いたいから今度家に連れてきなさい』って言ってたし///」
「お礼って…」
「と、とにかく!!今度私の家に来なさい!!いいわね!?///」
「ラ、ラジャー…」
アリサの剣幕に呑まれ、思わず頷いて行く事を了承してしまった。
とりあえず恋人の振りするのは終わった訳だし後は…
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「「「「「「「「……………………」」」」」」」」
ドス黒いオーラを撒き散らし、瞳から光を消している連中をどうするかだろう。さっきから俺とアリサの方を見てるんだが何でだ?
「ねえ勇紀。ちょっとコッチ来てくれないかしら?」
椿姫が『来い来い』と手招きするので俺はそそくさとその場を離れ、椿姫のいる席に来た。他に亮太となのはがいる。俺が来た瞬間、椿姫が防音の結界を張り、周囲の音が一切聞こえないようになった。
「…何で結界?」
「向こうは女の子同士の秘密の話があるでしょうから男の貴方が聞く訳にはいかないでしょう?(もっとも私と亮太は聞こえるようにしてるから聞こえないようにしてるのは貴方となのはだけだけど)」
そう言って椿姫はアリサ達の方に視線を向けるので俺も向こうを見る。
~~アリサ視点~~
翠屋に来る前、私は椿姫にメールで頼み、魔法を使って私達の会話を勇紀に聞こえないようにしてくれるよう頼んでおいた。椿姫が首を縦に振ってくれたのでどうやらもう魔法は発動してるみたい。
「ねえ…アリサちゃん。アリサちゃん言ってたよね?」
「な…何よすずか」
「アリサちゃん、勇紀君に対して恋愛感情を抱く様な事なんかにはならないって、そう言ってたよね?」
「う……///」
た、確かに言ったけど。
「アリサ、嘘を吐くのは悪い事ですよ?」
「そうやでアリサちゃん。嘘吐きはドロボーの始まりなんやで?」
ユーリとはやて、それに他の連中も相当ご立腹みたいだ。
「わ、悪いとは思ってるわよ!悪いとは!でも…///」
~~回想シーン~~
あの夕食会が終わった次の日、御令息の三人が親を連れて私の家にやってきた。何でも勇紀が一方的に自分達を殴る蹴るして怪我を負わせたとか。
確かに御令息達の頬は腫れ上がり、痣も残っていた。『しばらくは人前に顔を出すのも憚られるんじゃないだろうか?』と思うぐらいに。
彼等は『勇紀を連れて来た私に責任がある』と言い、その事実を利用してバニングス家と深いパイプを繋げようとしてきたのだ。『もし断るなら息子を傷付けた少年に代わりに責任を取って貰う』と脅迫めいた事を告げて。自分達から『彼氏に会わせろ』と言ってきたのに酷い言い草だ。
でも勇紀が彼等を傷付けたのは事実だし『どうしたらいいのだろう?』と思っていた時、鮫島が『彼は悪くない』と証言し、その時の勇紀達の会話と映像を全て撮っていた。……鮫島に『良くやった』と言ってあげたいけど、これ実際は盗撮よね?
とにかく、その映像を見た瞬間に彼等の親子は顔を真っ青にし、パパが低い声でこう告げた。
『今後、貴方達との付き合い方を止めさせて貰う』と。
これはもうこの親子達の会社と『取引を止める』と言ってるようなものだ。
パパが怒るのも無理は無い。実の娘である私を利用して私腹を肥やそうとされたり、自分の娘を『メス豚』呼ばわりされたのだ。
御令息の親子は土下座をし涙を流してまでパパに許しを請うていたがパパは謝罪の言葉に耳を傾けず、『丁重にお引き取り願いなさい』と鮫島に命じ、そのままお帰り頂いた。
それから私に
「長谷川勇紀君といったね?アリサ、彼に直接お礼を言いたいから今度ウチに来てもらいなさい」
と言っていた。
私はその後、自室に戻ったのだが頭の中では鮫島が見せてくれた映像が何度もリピートされていた。
私のために真剣に怒ってくれ、大勢の大人相手に向かっていった勇紀の姿が映った映像…。
『でもアンタ等はアリサの事を自分の地位を上げるための『道具』としか見ていない。そんなアンタ等がアリサと結ばれてもアイツは不幸になるだけだ。大切な友達として、今日一日だけの『彼氏』としてアイツにそんな人生を歩ませたくないし、見過ごすわけにはいかない』
『だからこれ以上アイツに近付くと言うのなら俺はここでアンタ等を叩き伏せる』
「~~~~~~っ!!!//////」
ベッドの上でゴロゴロと身悶える。
…駄目だ。今の私の顔は茹蛸の様に真っ赤になってるだろう。自分で鏡を見る事も出来ない。
恥ずかしいけど凄く嬉しかった。
ただの友達だと思っていたのに、こんなに意識させられるなんて…。
…駄目だ。シュテル達が好きになるのも分かる気がする。
皆に申し訳ないとは思うけど認めなくちゃ。…私も勇紀に惚れたんだって。
勇紀が鈍感だってのは分かってる。だからこれから私が参戦しても充分間に合う。
私にとっての初恋。絶対に勇紀を私に振り向かせてやるんだから!!
~~回想シーン終了~~
「…アンタ達には悪いけど好きになったモンはしょうがないわ。だから私も勇紀の争奪戦に参戦するからね!!」
「「「「「「「「む~~~~!!!(また
皆に宣戦布告する。
私の敵は皆、仲の良い友達だ。それにお世辞抜きで可愛い子達だと思う。手強いけど絶対に負けられない!最後に勝つのはこの私、アリサ・バニングスなんだから!!!
~~アリサ視点終了~~
Tweet |
|
|
37
|
13
|
追加するフォルダを選択
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。