チャンチュン
「朝か~」
県令から州の牧となった俺達は日々、書類に追われていた。
元いた世界で実施されていた治安法や法律などをこの世界風に変えて実行してみたら最初の方は慣れてないものがあったのか問題は起きたが、今ではその効果が出てきている。
「ん~」
ヤァバァイ、最近デスクワークが多かったせいか、腰が固まってる。
背伸びしたらバキバキいうもん(涙)
「今日は非番だし、誰か誘って鍛錬でもするか」
寝間着から着替えていると扉がいきなり開いた。
「ご主人様、失礼します・・・キャア!」
「アンタ、早く起きなさいよって・・・」
「へ?」
入ってきたのは月と詠。俺の専属侍従だ。
知っての通り、董卓と賈クである。
「なに変なもん見せてんのよ!!!」
「ブケラァ!!!」
見事な蹴りを腹部にもらってしまった。
「きゃぁ!詠ちゃんダメだよ!!ご主人様大丈夫ですか?」
「うぅ、月は優しいな~」
「なによ!私がアンタを虐めてるみたいじゃない!」
「え?間違ってるの?」
「クッ、殺す!!」
「わー!!待て待て!」
二人には身の回りの世話をしてもらってるんだが、いかせん詠が攻撃的すぎる。
まぁ別に構わんのだが、一撃が意外と重い、軍師より武将の方が向いてるんじゃないのか??
「アンタ、何か変な事考えてない?」
「滅相もございません」
「もう詠ちゃん!」
「うっ、分かったわよ!というか、早く着替えなさいよ!」
そうだった。
今はパンツいっちょだったんだ。
「じゃぁ、着替えるから外で待っててくれる?」
「いえ、私達も手伝います!」
「ちょっ月!?」
「えっ悪いからいいよ!」
「いえ!それも侍女の役目です!!」
グッと拳を胸の当たりで作り何かに燃えてる。
「な、ならお願いしようかな」
「はいっ!」
「あっ・・・も~アンタ!変な事したらただじゃおかないからね!!」
二人に、普段着とは違う練習着。
この世界にきて作ってもらった元世界で言う胴着と袴。
上は剣道の時の様に分厚くは作れなかったがそこそこだ。袴も同じく。
「あれ?くっ難しいわねこれ」
「あぁ、これはこうやるんだよ」
「ご主人様これってなんと言うお召し物なんですか?」
「これは袴って言ってね、上に着てる胴着と一セット、あぁ~一緒に着て練習する為の服なんだよ」
袴を二人の前で教えながら結ぶ。
「何ども巻いてから結ぶの面倒じゃない?」
「そうでもないよ。まぁ慣れかな」
「へぅ、ご主人様、カッコイイですぅ」
「ありがとな月」
ナデナデ
「へぅ~///」
「あっ月に触るなぁー!!」
「ハハハッ」
月と詠は朝食の用意があるとかなんとかで厨房の方へ向かっていった。
俺は、昨日市場のおばちゃんに貰った桃を食べてから鍛練に向かった。
まだ早いので、城には人の気配が少なかった。
「いっちに~さんっしっ」
寝ている筋肉を起こすため柔軟はしっかりとしておく。
「くっ、しばらくしてなかったから、身体少し堅いな」
風呂場とかで、少しだけしてたんだけどなぁ~
やっぱ数分じゃあんまし効果なしか・・・
30分後
「ふぅ~よし大分ほぐれたな」
筋肉も起きたし始めるか・・・・
特注で作ってもらった木刀。
中に鉄が入っており、重さを倍増。
普通の上下素振りを思い描いた軌道に乗せて只管振る。
徐々に徐々にスピードを上げながら。
「よし、次」
素振りを一通り終え、型をはじめる。
ゆっくり、見ている者がいるならばただゆっくりと振っているように見えるが違う。
筋肉の使い方、呼吸、剣筋、全てを繰り返し繰り返しすることで身体に馴染ませ、実戦でその威力を発揮する。
大体、1時間ほど経っただろうか、空想の敵を作り戦っていると横から何かが飛来した。
カンッ
木刀で防ぐ。飛来したのは石のようだ・・・
「流石は主、隙がありませぬなぁ~」
「星か、いきなりなにやってんだよ」
「いえ、あまりにも熱心にされておるので邪魔をしたくなりましてな」
「・・・・」
「冗談です」
まったく星は本当に言ってるのか冗談なのか偶に分からん時がある。
「さて、と主。私も鍛錬に参加させてもらえませぬか?」
「ん?別にいいぜ。俺もちょうど相手がほしいって思ってたんだ」
星は槍を水平に構える・・・・って
「真剣じゃね?」
「ハァッ!!!」
「ちょっ!」
俺は木刀だぞ!?
「どうなされた主!動きが鈍いですぞ!!」
「ばっ、俺は木刀だぞ!」
「主なら問題なかろう!現に見事に捌いておるではありませぬか!」
そう言いながらもドンドン星の突きは速さをます。
「全くッ・・・まぁ良いや今度は此方から行くぞ!」
「なっ・・・ッ」
突きを繰り出した所を避け、星の懐に入り込む。
其処から木刀を斬り上げる。
「良く防いだね」
「中々危なかったですぞ」
引きつった笑みで此方を見る星は直ぐに俺との距離を取った。
いや、取ろうとした
「そう簡単に距離を離すと思うかい?」
「チィ!」
斜めからの斬りに対してガードをするが
「残念、そっちはフェイントだよ」
「ッ!!!」
「おぉ!!」
地面を転がる事で回避した。
「ハァ・・・ハァ、まだまだぁ!」
「嫌いじゃないよ、その姿勢は!」
それから、月が呼びにくるまで星と稽古をしていた。
やはり、趙雲。簡単には倒せない。うん。いい稽古になった。
星の突きは確かに速いのだが、その分重さが足りない。
その事を伝え、こうやれば。と少し助言してみると先程よりも重く速い突きが出た。
恐ろしい吸収力だ・・・まぁ本人も喜んでいたので良しとしよう。
毎日の日課―――――仕事をちょくちょく抜けて―――――である市場の散策を終えて城に戻ってくると何か皆騒がしかった。
「ご主人様!探しましたよ!!」
「愛紗、どうしたんだ。そんなに急いで」
「どうしたんだ。じゃありませんよ!至急玉座までお集まりください!」
愛紗に引っ張られるがまま行くとすでに皆集まっていた。
「おいおい、どうしたんだこれ?」
「先程、袁紹が討たれたと報告がきました」
朱里がいきなりその様な事を言い出す。
「袁紹が?確か、曹操と戦っていた筈。ということは曹操が勝ったのか」
白蓮が言う。
と言うか居たのか・・・
「おいっ!!!」
曹操が袁紹を討ったって事は官渡の戦いだよな?
あっ因みに、白蓮は袁紹の奇襲にあって俺達の所まで落ち延びてきたんだ。
「あわわ。そ、それが・・・」
「雛里、どうした??」
「そ、その袁紹さんを討ったのは・・・呂布さんなんでしゅ」
「は?・・・えぇぇぇえええ!?」
焔が!?なにやってんだ!?
「他の情報は無いのか?」
愛紗が朱里に聞く。
「はい、どうやら呂布さんは途中から参戦したそうです。そして袁紹軍を蹴散らして袁紹と主な武将を討ったと・・・報告ではその・・・」
「ん?どうしたのだ朱里」
「いえ、その遺体には拷問を受けたような後があったと」
「うそ・・・呂布さんがそんな事」
ありえない。焔がその様なことをするはずが無い。
きっと理由があるはずだ。
「朱里、詳しい情報は無いのか??」
「いえ、詳しくは・・・」
その言葉に俺は立ち上がる。
「ご主人様!?」
無言で玉座から離れ歩く俺を皆が止める。
「ご主人様どうしたの!?」
「お待ちくだされ!」
「退いてくれ!」
「にゃにゃ!お兄ちゃん何処行くのだ!?」
「焔のとこにだ!」
アイツが何もなくこんな事をするはずが無い。
分からないのなら俺が直接聞きに向かうまでだ。
「あわわ、行っちゃ駄目です」
「はわわ!そうでしゅよ!今ご主人様が居なくなられると政が!」
「主、落ち着かれよ。その身は既に主一人のものではないのですよ」
その一言に俺は一気に頭が冷えた。
「くっ」
そうだ。俺一人の考えで動いてはいけない。
玉座まで戻り、深く座る。
「すまない」
「あわわ。もうすこし調べて見ましゅ」
「あぁ、ありがとう」
焔、本当に何があったんだ・・・・
よほどのことなら俺を頼ってくれても良いんだぞ。
「はっくしょん!いっくし!!・・・・うぅ誰か噂してんのか?」
「・・・風邪?」
「父上、うつさないでくださいよ」
「うわっ息子がグレた!!」
「何を言っているのです」
「殿、大丈夫ですか?」
あの戦闘の後、俺達は故郷に戻り。墓の前にいる。
「母さん、父さん、羽生さん。敵はとったよ・・・まぁそんな事望んでない!って言うかもしれないけど、それじゃ俺が区切りがつかないんだ」
そこで、言葉を区切り、花束を置く。
「じゃぁな、しばらくこれないかもしれないけど・・・必ずまた来るよ」
振り返らず、俺は赤兎に跨り進む。
「殿、次はどこへ向かいますか?」
「う~ん。しばらくは戦場から離れたいな。どっか拠点になるとこ探すか」
「御意」
一刀には申し訳ないが会えるのは、しばらく後だな。
あとがき
これを持って今年最後の投稿にさせていただきます!!!
それでは皆さん、良いお年を!!!!!!!!!!!
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よいおとしを!!!