No.524770

真・恋姫†無双 ~胡蝶天正~ 第一部 第03話

ogany666さん

第3話です。
今年最後の投稿となります。
ノロウィルスやインフルエンザなどが流行しておりますので皆様もお気お付けください。
それでは、良いお年を。

2012-12-29 17:51:01 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:8331   閲覧ユーザー数:6064

 

 

 

 

 

 

この作品は、北郷一刀の性能が上方修正されています。はっきり申しましてチートです。

 

また、オリジナルキャラクターやパロディなどが含まれております。

 

その様なものが嫌いな方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

自室へ戻り、次の試験のために待機していると韓鄒(かんすう)が部屋に入ってきた。

「郷様、次の試験を始めますのでこちらへどうぞ」

「うん、有難う(すう)

韓鄒は姉の後始末や俺の世話役だったこともあり仲が良く、鄒と呼んでいる。

正直言ってあのショタコン絡みで本当に世話になっている彼女には頭が上がらない。

「それでは、ご案内いたします」

鄒は俺に向かって一礼すると、智力試験を行う部屋まで案内してくれたのだが、部屋に行く途中の廊下でふと立ち止まり、こちらのほうを向いた。

「どうしたんだい?鄒?」

「郷様、武力試験の結果お見事で御座いました。智力試験でも良い結果を出せますよう、お祈りしております」

「鄒・・・・ありがとう」

俺は鄒に対して礼を言った後、半ば確信を持って問いかけてみた。

「鄒、君は俺が今回試験を受けた真意に気付いているのかい?」

「はい、長年郷様の身の周りのお世話をさせて頂き、聡明な郷様のお考えに触れる機会が多くありましたので、この度試験をお受けになった郷様の御心の内を読み取る事が出来ました」

「流石だね、やっぱり鄒には隠し事は出来ないな」

「郷様、鄒は公には北家の侍女ですが、個人的には郷様にお仕えしているつもりです。郷様がどのような道を歩まれようと付いていく所存です。今後、何かお考えになられましたら遠慮なくこの鄒にお申し付けください。鄒の出来る範囲でしたら、どのような事でも遣って御覧に入れましょう」

本当に出来た侍女だ・・・。

俺の心の中に華琳が居なければ、速攻で抱きしめて結婚を申し込むほどだ。

「心遣い感謝するよ。そのときが来たら存分に頼らせてもらうよ」

「はい、心待ちにしております」

鄒は微笑みながら一礼すると、また案内をしながら歩を進めた。

途中、手拭を取り出し顔の辺りを拭いていたのだが、嬉し涙でも流したのだろうか?

そんな事を考えているうちに母上がいる智力試験の部屋へとたどり着いた。

「それではこれより北家智力試験を開始します。一刀、準備はいいですね?」

「はい、ただ一つお聞きしたいのですが、父上の姿がお見受けできませんがどちらに居られるのでしょう?」

「あの人でしたら武力試験の後、急に体調を崩されて今は自室で寝込んでおりますよ♪ニッコリ」

無茶しやがって……

窓から青空を見上げながら父上の顔を思い浮かべた。

「ですので、今回の試験監督はわたくし一人になります」

これは少し不味い、母上は俺に文官になって欲しくないから難癖をつけて不合格にする可能性がある。

だが、そんな懸念を汲みとってか鄒が母上に進言した。

「奥様、旦那様が不在のため鄒を立会人とさせて頂きたいのですが」

「あら、わたくしは公平に試験を行うつもりだったのだけれど、信用されていないのかしら?」

立会人を申し出た鄒に対して余り良い顔をしない母上であったが、臆することなく鄒は話を続ける。

「いえ、そのような事は御座いません。ただ、この度の試験は奥様と旦那様お二方が合意の上でお決めになられたことと聞き及んでおります。旦那様がいらっしゃらないので奥様だけで試験をされては旦那様ご本人がご納得なさらないでしょう」

「確かにそうね」

「そこで、鄒が立会人となりまして公平な立場から試験を見届けさせて頂き、その結果を旦那様へご報告させていただきたいのですが、如何でしょうか?」

「・・・・解りました、韓鄒なら職務に忠実ですし心配は無いでしょう。立会人の件、お願いしますね」

「畏まりました」

母上も納得したのか鄒の申し出を受け入れ、試験監督一人と立会人一人という形で試験が開始される事になった。

グッジョブ!鄒!君のおかげで不戦敗にならずにすんだ!

「それでは改めて智力試験を開始します。本来はあの人が貴方に問い、それを自分なりの答えで説破するというものでしたが、当の本人が寝込んでいる以上わたくしが貴方に問う事とします。いいですね?」

「はい、承知しました」

俺は何を問答するのかと少し緊張しながら母上の問いを待った、すると……。

「貴方はある地方の県令で、洛陽と同規模の街を治めていたとしましょう。そこは治安が悪く、改善のための案を自分で出す事になりました。どのような方法で改善すればよいか答えなさい」

「・・・」

一瞬、問いを聞いて固まってしまった。

まさか華琳が俺を試したときと同じ内容を問いかけてくるとは・・・。

それにしてもこの問い、警備の経験もない六つかそこらの子供が即答できるような問題ではないだろう・・・・。

俺はそう思いつつも昔の記憶を思い出し、今の自分なりのアレンジを加えて答える事にした。

「洛陽と同規模、詰所の数は四町毎に一箇所という前提で答えさせていただきます。先ず、四町に対して一箇所の詰所しかない計算ですと騒ぎが起きたとき、直ぐに対応する事が不可能です。故に一町毎に詰所を作り、兵を常駐させるようにします」

「その場合、人材、経費が四倍以上掛かる計算になります。それらを何処から捻出するのですか?」

「平時は街を守護する軍隊の中から兵を回し、残りを兵役免除などの待遇をつけて雇い入れの募集をかけ、必要となれば希望者を正式に軍隊へと組み込むなどといった予備部隊の役割も与えます」

「なるほど・・・・その為に掛かる経費はどうやって捻出するのですか?」

「はい、経費は警備兵が広告塔となることで商人たちに払ってもらいます」

「広告塔?それはどのようなものですか?」

聴きなれない言葉に母上は首を傾げている。

この時代には、まだ広告という概念が無いため、一から説明する事になった。

「広告塔とは、特定の人物や商品などを宣伝する役割を担う建物や人間の事です。警備兵には宣伝するモノの名前が書いてある鎧を装備し、警備をしてもらいます。また、町人に道を聞かれた場合、自分が宣伝している商人が扱っている物なら優先的にその店に案内するようにし、その代わりに商人からは警備に掛かる費用を広告費という名目で支払ってもらうという仕組みです。そして、詰所には多く広告費を払っている商人や団体の名前を上から順に掲示し、一番多く払っている者は詰所の壁を使い、大々的に宣伝できる様にします」

「なるほど、商人とは自分の名や取り扱う品物を売る為に日夜奔走する者、それを街に常駐している警備兵が遣ってくれるのですから、こぞって出資するでしょうね」

「はい。それにこの方法ですと、職が無く街中に溢れる浮浪者も雇う事が出来ますので、飛躍的に治安は良くなるかと」

母上は口元に手を当て暫し考えた後、鄒に対して問いかけた。

「・・・・韓鄒、貴方から見て一刀の案、どう思うかしら?」

「はい。郷様の案は、今までに聞いた事がない画期的な内容であると思われます。まるで街の警備に携わった事が在るかのような真に迫ったものでした」

「わたくしもそう思うわ。涼州で現役だったころに私も警邏の仕事は遣った事が在るけれども、こんな妙案聞いた事がない。一刀、本当にこの案は貴方が自分で考えたの?」

「勿論です、真名に賭して誓えます」

嘘は言っていない、この案は俺がかつて華琳に提出した治安改善案をアレンジしたものだ。

もっとも、そのとき実際に街の警備に携わっていたからこそ出来たものではあるが‥‥‥。

「僅か六つの子供がこれほどの妙案を出すとは思わなかったわ。これでは流石に合格を認めざるを得ないわね。韓鄒もそれでいいかしら?」

「はい、武力試験の時と比較しても勝るとも劣らない素晴らしい結果だったと思われます」

「ええ、そうね。一刀、この度の智力試験合格とします。以後、自分が歩む道を決めたのならばわたくしかあの人に報告しなさい」

「解りました、母上。実は既に己が歩む道を見定めております。ですが今は父上が不在の為、答えは父上と母上が揃った時にお聞かせいたします」

「解りました。それでは今日の適正試験はこれにて終了です。ご苦労様でしたね、一刀」

試験終了を宣言すると、母上はいつもの優しい笑顔で俺を労ってくれた。

「はい、有難う御座います。母上」

「まさか両方の試験に合格するとは思っていませんでしたよ。折角ですし今日はお祝いの宴をしましょう♪」

「母上、父上が寝込んでおられますが」

「父上が居ないのは非常に残念ですが、体調が悪いのですし仕方がありませんね」

・・・南無三。

父上の事を不憫に思っていると、鄒が珍しく嬉々とした顔で俺や母上に話しかけてきた。

「郷様、両試験合格おめでとう御座います。今宵の宴では私も腕によりをかけて料理をしますので楽しみに待っていてください」

「「ちょっと待(て)(ちなさい)!!」」

「・・・?お二人とも如何なさいました?」

鄒は同時に呼び止められたことを不思議に思ったのか、俺と母上を交互に見てきた。

「す、鄒は今晩の宴の準備で総括をしなくちゃいけないし大変だろう!料理は韓白や母上に任せて会場の準備を頑張ってくれよ!ねぇ母上!」

「そうね!料理にばかり気をとられて肝心の宴の場が疎かになるのはいけないわ!韓鄒はそっちの方をおねがいね!」

「・・・そうですか。畏まりました」

少し残念そうな顔をしながら鄒は部屋を後にしたが、俺や母上は内心ホッとしていた。

鄒は非常に優秀で瀟洒な侍女ではあるが一つだけ致命的な欠点がある。

料理が壊滅的に下手なのだ。

以前、父上は母上が作った弁当と鄒が作った弁当を間違えて持って行き、一口食べた途端に口から泡を吹いて気を失い、衛生兵に蘇生処置をされながら仕事先から医者のところまで搬送されたなんて事があったほどだ。

俺も昔食べて危うく魂を持っていかれそうになったことがある。

彼女の唯一の得意料理は何かと問われたら、俺は迷わず《お茶》と答えるほど料理の腕は殺人級と言っても過言ではない。

「・・・じゅ、寿命が縮みました」

「全くです。さて、わたくしも宴の準備に行きますから貴方は部屋に戻っていなさい」

「解りました、母上」

「あ、それと後で貴方が今日のために用意した剣、わたくしにも見せてくださいね」

「はい、それでは宴の席にでも持って行きます」

俺はそう言った後、自分の部屋へと戻る為その場を後にした。

宴の席では母上が俺の刀を手に試し切りをしたいと言われたが、一発で折れてしまいそうなので全力で阻止した。

折ってしまったらまた一から作らせて父上の小遣いから差っ引けばいいと言っていたが、たたら場でまた倒れるのも嫌だし、何よりとっくに父上のライフはゼロなので遠慮してもらった。

 

 

 

 

試験の日から三日後、父上の体調(意識)が戻ったと聞き、答えを述べに二人がいる部屋へ向かった。

部屋へ行くとそこには父上たちの他に鄒と正宗、それに何故か韓白が部屋の隅に控えていた。

「来たね、それでは答えを聞こうか。韓鄒から智力試験の結果を聞いたけど、あれだけ聡明なのだからやっぱり一刀は文官になりたいよね?」

「いえいえ、あなた。武力試験の結果を鑑みるに、この子は武官の道を歩むに決まってます。一刀、そうですよね?」

二人が各々の理想を主張する中、俺の返した答えは二人が希望するものではなかった。

「いえ、父上母上。私は武の道も智の道も歩むつもりはありません」

「「それはどういうこと(だ)(ですか)?」」

「私は武の道も智の道も捨てるつもりはありません」

「「(私)(わたくし)たちはどちらか片方に専念せよ、と言ったはず(だよ)(ですよ)?」」

二人が納得いかないと言った顔で問いかけてきたが、俺は臆する事無く言葉を続ける。

「武の道のみを学べば智を持つ将兵に敗れます。また、智の道のみを学べば武を持つ猛将に容易く討ち取られるでしょう。故に私は武の道も智の道も学ぶつもりです」

「では一刀、お前はどんな道を歩むつもりだい?」

「漢王朝が生まれて四百年。国は乱れ、役人は暴利を貪り、大陸には貧困に喘ぐ民が溢れかえっております。この北郷一刀!武を知り、智を知り、地の民を知り、天の帝を知り、王の道を歩みます!」

「それは天に楯突き大陸に戦乱の世を巻き起こすと言うことですか!?」

母上が俺の答えを聞き朝廷に反逆すると思ったのだろう。

声を荒げて俺に詰め寄ろうとしてきた。

しかし、それを父上が黙って制し、こちらを見据えている。

朝廷の高官である父上は薄々気付いているのであろう、この国の滅びを……。

「母上、そうではありません。最早漢王朝は何もしなくても滅びるところまで来ているのです。父上はそれが解っているからこそ母上を制したのです」

「…あなた」

困惑する母上を差し置いて、父上は俺に神妙な面持ちで問いかけて来た。

「………一刀、もし漢王朝が斃れたとして、お前は何とする?」

「はい。貧困に喘ぎ、救済を求める民を束ねて大陸に覇を唱えます」

「敵となった者をなぎ倒してか?」

「はい!」

「敵将が束ねる精兵を打ち倒してか!?」

「はい!」

「その将が納める国の民を蹂躙してか!!?」

「はい!打ち倒した国の民に恨まれようとも、その民を全て私の民として受け入れながら王の道を行きます!」

そういうと父上は勢い良く立ち上がり、自分が司法官として派遣されるときに使う羽織りを手に取るとそれを俺に被せた。

「我が子北郷一刀!いずれ来る乱世を平定するために天が使わせた童成り!しかし未だ大陸に覇を唱えるときにあらず!その時まで父北景が法の下そなたを庇護しよう!存分に万物を学び、己が道を邁進せよ!」

「はい、父上!必ずや太平の世をご覧に入れましょう!」

俺は袖を通すには大きすぎる羽織を肩に掛け、父上に対して軍礼をして答えた。

父上もそれに答えるように礼をして、この場を収めることとした。

「ご立派です。やはり鄒が感じたとおり郷様はこの大陸全土を覆い尽くすほどの器をお持ちのお方だったのですね」

「まことで御座いますな。この正宗も大陸に覇を唱えて立つほどの方が持つ武具を作れるのなら、職人冥利に尽きると言うものです」

「GOゴ郷様…ハァハァ、Aのヨウな尾オ幼き体にそRE程のゲ激情を御餅DEあっタとはハァハァ…。こNO韓白、一生穴多様ニ憑いテ逝き魔す♪…ハァハァ」

部屋の隅に控える二人(と一匹)もこの裁定に納得がいったようで喜んでいる。

あ、また鄒が壁の方を向いて手拭を顔に当てている。

本当に涙脆いなぁ、まぁ喜んでくれているのだから俺としては嬉しいけど。

「全く…一刀を立派な武官にするのがわたくしの夢でしたのに…。これでは、二足の草鞋を履く一刀を応援せざるを得ないじゃないですか…それにしても北郷一刀・・・・恐ろしい子!」

母上も父上が俺を支えるといってしまったので、渋々了解してくれたが、顔を見みるに俺に何か恐ろしいものを見たのかもしれない。

こうして、屋敷の主だった人たちに祝福されながら北家適正試験は終わりを遂げた。

ちなみに父上はその晩、母上にお小遣いの交渉をしたり、正宗に刀の代金を値切りに行ったりしていたが、結局当初の額通り天引きされた様である。

正宗が父上の値切り交渉を「金は命より重い・・・!」と刀のような切れ味を持った言葉で一刀両断したのを後になって聞いた。

合掌。

 

 

 


 
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