No.524731

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第九十三話 ガンレオンは修理用

2012-12-29 16:09:11 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4982   閲覧ユーザー数:4540

 

 第九十三話 ガンレオンは修理用

 

 

 

 アサキム視点。

 

 『偽りの黒羊』を追っていたら少女が落ちてきた。

 『揺れない天秤』から得た『原作』から推測するにこの少女は『悲しみの乙女』と一緒にいる少年少女達に関わっていく…。

 だが、そこにスフィアの影は…。

 

 「…あの、アサキムさん?」

 

 「ん?ああ、すまない。考え事をしていた」

 

 すっと不自然(・・・)に上を見ていたアサキムはヴィヴィオの質問に答えた。

 

 少女。ヴィヴィオが落ちてきてからもう一人落ちてきた。

 彼女の方はというと僕の方に落ちてくる前に空中浮遊をしてぶつかることは無かった。

 紫と青の瞳、銀に少し緑かかった髪をした少女はヴィヴィオと一緒に落ちてきた。

 それだけならよかったのだが…。

 

 「あ、あのもしかして打ち所が悪かったですか?」

 

 「…ん?あ。いや、僕の方も言い方が悪かった」

 

 「…す、すいません。アサキムさん」

 

 ぺこぺこと謝る紫と青の瞳を持つ少女アインハルト・ストラトス。

 ヴィヴィオからちょっと遅れて上の方から落ちてきた。

 アサキムはヴィヴィオという前例があるので見上げ、待ち迎える余裕すらもある。ヴィヴィオも自分が落ちてきたこともあったのでアサキムと同じ行動を示す。

 

 いや、一つ(・・)だけ違う行動をとっていた。

 

 

 

 「…空中?!ティ、ティオ!空中制御!大人モードで!」

 

 「にゃあっ」

 

 より、制御しやすい体に変化するための動作。

 ヴィヴィオよりも少し年上な少女が上空から落ちてきながらバリアジャケットを展開していく。

 その小柄な体は成長しながら今着ている衣服を破り、その体を光で包みながら、新しいバリアジャケットを展開しながら二人の前に降りたつ。

 その様子を見て、アサキムがぽつりと言葉をこぼした。

 

 「……こちらの魔法関連の人達は一度服を脱ぐのが恒例行事なのか?」

 

 「~~~~~~~~っっっ!!??!?」

 

 どごすっ!

 

 アインハルトの鉄拳(重力落下のスピード付き)がアサキムの顔面に突き刺さった、

 それからしばらくしたが首が元に戻らないアサキムは視線を上空に向けたままスフィアを探していた。

 

 (…うう、まさか、すぐ下に男の人がいるなんて)

 

 (だ、大丈夫ですよ。アインハルトさん。見られたのは裸じゃないんですから)

 

 (…ミッドに戻ったら設定を見直してもらいます)

 

 (………)アインハルトから目を逸らす。

 

 (…にゃ~)

 

 すらりと伸びた手足。見目麗しいと言ってもいい女性的な躰に変化したアインハルトは顔を赤くしながらペコペコとアサキムに頭を下げていた。

 たぶん「面白いから駄目や」って、断られるよ。と、思いながらアインハルトの相棒。小さな猫型ユニゾンデバイス。ティオはユニゾンした後、主人の体の中で顔を赤くした彼女を慰める。

 それと同じくらいの大きさのウサギのストラップ。ヴィヴィオの相棒のクリスは彼女から目を逸らす。

 と、同時にそのウサギ耳に変化が起こった。

 

 (っ)

 

 ピコピコと手足を動かしてクリスはヴィヴィオ達に何かを知らせる。

 

 「どうしたの?クリス?…なにあれ?」

 

 「…気持ち悪いですね」

 

 体長は約一メートル。二本脚の肉食恐竜のような体に、黒い甲虫のような甲羅で背中に纏った異形の生物が機械じみたうめき声をあげて、こちらの方に向かって飛んで来ていた。

 

 (…『偽りの黒羊』の放った獣か。奴等を倒していけば彼女に行きつくかもしれないな)

 

 「…狩るぞ。シュロウガ」

 

 ズゥウウンッ。

 

 と、体中から重苦しい魔力を放ちながらアサキムは黒甲冑を身に纏い、赤黒い剣を手にする。

 

 「アサキムさん?!いきなり何を…」

 

 ヴィヴィオとアインハルトはいきなりアサキムが戦闘態勢に入ったことにより驚いた。

 彼の行動にではない。

 今までアサキムとシュロウガの放つ威圧感に気圧されたのだ。

 

 「…僕は彼等を放った大元に用がある。死にたくなければ下がるといい」

 

 ヴィヴィオから感じられるスフィアの気配も気になるが『偽りの黒羊』の方が優先順位は上の為、アサキムは目の前の獣を倒し、彼等の魔力の残滓を辿ってU―Dの居場所を特定することにした。

 

 「た、確かに見た目はあれですけどいきなり攻撃なんて…」

 

 「あれが何かご存じなのですか?」

 

 ヴィヴィオは戸惑い、アインハルトは目を細めながらアサキムに話しかける。

 それを聞いたアサキムは少し哀愁めいた声を出して答えた。

 

 「…あれは僕と似たような存在だよ」

 (スフィアに狂わされたモノ同士という意味でね)

 

 

 高志視点。

 

 D・エクストラクター。

 

 疑似スフィアとも言ってもいい代物でスフィアと同じように使用者あの感情・もしくは体力・精神に作用した膨大な力を扱うことが出来るシステム。

 メリットとしてはスフィアと違って訓練次第で、使用者を選ばない事にある。

 『傷だらけの獅子』が高志にしか使えない。『悲しみの乙女』はリインフォースにしか使えないといった制限を無視できる。

 デメリットはコスト。代償とも言ってもいい。寿命が減る。

 出力を間違えなければ通常の兵器以上の成果はあげられるだろうが、スフィアに対抗するには命を削る程に我が身、魂を代償にしないといけない。

 だが、逆を言えばそれだけの代償を払えばスフィアに対抗できるという代物だ。

 

 「…なるほど、ね。でも、それをどうして貴方は言いたがらなかったのかしら?」

 

 「…そうだな。確かにロストロギアクラスの技術だ。だが、アサキムに対抗するには有効手段になるんじゃないのか?」

 

 まあ、そうなんだけど…。

 問題はまだある。

 

 「…出力を上げすぎて寿命が減るのは理解したよな?でも、D・エクストラクターは別に人間からじゃなくても膨大なエネルギーを生むことが出来る。それこそ、コンクリートやそこら辺の岩からでもな。正しい名称は分からないけど、ZONE(ゾーン)。と呼ばれるD・エクストラクターから得られるエネルギーならアミタさんの言っていた湖も簡単に作れるかもしれない」

 

 「それって…!」

 

 「永久機関になるんじゃ…」

 

 「それならエルトリアも…」

 

 リンディさんとプレシア。アミタさんは目を見開いて俺の方を見る。

 だけど…。

 

 「吸い上げたその土地。そこにいる生き物全ての命を吸い上げるけど、ね」

 

 「「「「「っ」」」」」

 

 まあ、みんなびっくりするよね。

 そう、別に人間に限った(・・・・・・)ことじゃない。

 D・エクストラクターは暴走したら最後。そこに存在する物の全部を吸収してエネルギーに変化する。自分だけが犠牲になる『尽きぬ水瓶』のスフィアよりも性質が悪い。

 改めて考えてみるとすげー怖い。

 ゲームでとはいえ、それを使っていたボスキャラは星を欠けさせるほどの威力を持った兵器を使っても傷一つつかないバリアを張り続けることが出来た。

 

 「あくまでD・エクストラクターは兵器なんだ。だから、教えたくなかった」

 

 それに、訓練すれば強い力が手に入る。

 なのは達はもとより、リンカーコアを失って娘と戦うことが出来なくなったプレシアが魔力の代わりに用いたりでもしたら…。その結果暴走でもしたら…。…不安は尽きない。

 

 「…あれ?じゃあ、貴方のガンレオンはどうなるんですか?」

 

 俺の言葉を聞いて、ふと疑問に思ったのかアミタさんが質問してきた。

 

 「ガンレオンは修理用だけど…」

 

 「嘘?!どう見ても戦闘用でしたよね!」

 

 先代のザ・ヒートが聞いたら解体されますよ、姉さん。

 確かに貴女の前ではガンレオンは戦ってばかりで誤解しても仕方がないけど…。ここ最近ではアースラの修理とか翠屋のイベント会場の設立に力を尽くしたんだからっ。

 

 「「「「「っ!?!!??!」」」」」

 

 アミタさん以上に驚いているアースラメンバーや八神ファミリー。

 

 「なんで皆まで驚いてんの!来たよね!見たよね!ガンレオンで会場作ったり、アースラ修理しているところを!」

 

 なんでD・エクストラクターの事を知った時以上に驚いてんの!

 

 「「…っ」」

 

 そして、絶句している母娘もいた。

 

 「テスタロッサ母娘(ブルータス)。お前もか…」

 

 て、プレシアにアリシアも酷すぎないか!

 お前等の命を救った機体だよ!

 特にプレシアはメンテナンスをしているでしょ!

 

 「…だって、私。ガンレオンを使う時はいつも戦闘か訓練だけだもん。修理用デバイスって聞いたら…。チビ君ぐらいしか思い浮かばないし」

 

 「アリシア忘れないで!ガンレオンが本家だよ!」

 

 いつの間にチビレオンがガンレオンから修理用デバイスを襲名したの!?

 

 「仕方がないわよ、タカ。だってあなたが使う時はいつもそういう荒事関係よ。…一般生活の時には家電代わりに使っているけど。どうしても、ガンレオンと聞けばまず戦闘のイメージが先に思い浮かぶわ」

 

 「…ひ、否定が出来ない」

 

 俺自身もそうだし…。

 ここには居ないがアースラに戻っている最中のなのはやフェイト達に質問したら『ガンレオンは戦闘用』と答えるかもしれない。

 この世界にスフィアが無ければガンレオンは修理用を名乗れていたのかもしれない。

 じゃあ、俺か!俺の所為でこの世界ではガンレオンは戦闘用として扱われているのか?!

 

 「…本家の戦闘用?」

 

 「アミタさん?!」

 

 小首を傾げながら俺を見ないで!

 ガンレオンで俺は何を間違えた?

 ただただ生き残るのに必死だっただけなのに…。気がつけばガンレオンは戦闘用という認識をされ始めているし!

 

 …何が間違っているんだろう。

 世界が!世界が間違っているんだ!

 あ、いや、でも…。

 俺がガンレオンをもっと平和的に使えていたのなら…?ガンレオンのイメージは…。

 

 間違っているのは世界じゃない。俺の方か?!

 

 それから数分後。

 なのは達がアースラに戻ってきて、すぐに俺は彼女達にガンレオンについて質問した。

 その結果は…。

 

 

 

 「…お兄ちゃんが涙を流している」

 

 …泣くんじゃない俺。

 辛いのは多分ガンレオンも一緒だ。

 

 部屋の隅っこで落ち込んでいる俺の背中が語っている。

 


 
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