No.524117

時代は三十年後 IS世界へ~(とある傭兵と戦闘機)第十三話

更新遅れましてすみませんでした

ある戦争を戦い抜いた少女と、様々なものと戦う少年二人の共通点 と相違点、そして少女は世界に何を思うのだろうか

2012-12-28 02:24:49 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4861   閲覧ユーザー数:4580

 

 

 

目を開けると、そこは草原だった

 

ただ青い空の下に、緑色の草原が悠然と広がっていた

 

 「あれ?ここって・・・」

 

周りを見回して、丁度私の後ろに大きな一本木が立っていた

 

先ほどサイファーと話し合った、あの場所そっくりだった

 

とりわけ行く場所もなく、私はその木の元へ歩む

 

木の下は容赦なく降り注ぐ太陽の光をさえぎって、涼しい木陰を作り出していた

 

そしてその木の根元には、墓標のように一つのレンガが置いてある

 

 「誰の物なんだろう?」

 

レンガを確認しようとしてふと、後ろから人が来る気配がした

 

私は反射的に木の後ろに身を隠した

 

かさかさと、何か紙袋が擦れる音が聞こえる

 

 「あなた達がここを離れてから、もう四十年余り経ちました・・・」

 

聞き覚えのある優しい口調

 

もう十年近く声を聞いていないけど、私は覚えている

 

 「あなたの戦死報告書が届いてから、私は様々な方法であの子を探しましたが

 

  未だ行方が掴めていません・・・どうしてでしょうか?」

 

私は・・・もうお母さんの元には戻れない

 

人の乗っている機体に向けてトリガーを引いた以上、私に一般人として生きる権利は無い

 

たとえそれが自分が生きる為であっても、その私の犯した罪に変わりはない

 

こんな私が学園生活を送っているのも、私が捕虜と同じ扱いだからだ

 

世界では英雄とされていても、相手にした連中からしてみれば悪魔だ

 

世界からは、勝っても負けても非難を受けてしまう

 

そんな世界に、私達は生きている

 

そんな世界で、私達は戦っている

 

だからーーーー

 

 「ごめんなさい・・・お母さん」

 

 「・・・え?」

 

後ろで声が聞こえるが、私は構わずに走った

 

もう・・・あの場所には戻れない

 

そして、私は目の前の光に呑まれて意識を失った

 

 

 

 

 

 「う~・・・・う?」

 

なんか・・・おかしい

 

私は何故かよくわからない圧迫感に疑問を抱きつつ目を開ける

 

 「・・・・・」

 

 「・・・・・」

 

目の前にはなぜか、織斑君の顔があった。何で?というか近っ

 

でも・・・なんか視線を感じる

 

 「・・・なにしてるの?」

 

入り口の襖の所、何故かシャルルが覗き込んでいた

 

 「い、いや・・・その・・・」

 

織斑君を起こさないように、私は浴衣を置き去りにする

 

 「じゃあその手に持っている端末を見せてもらえる?」

 

 「いや、これは関係ないよっ!?」

 

シャルルって、土壇場でウソ言うの下手だよね・・・

 

 「とりあえずそこに置いて」

 

 「いや、だからーーー」

 

 「オイテ」

 

 「・・・はい」

 

置かれた端末の、フォトファイルを開く

 

・・・写っていたのは、織斑君に抱きしめられている私

 

 「こんなの撮ってどうするの?見せしめ?私の公開処刑?」

 

 「そんな事する訳無いよ!?」

 

 「うん、でも削除して返すからね」

 

 「そ、それは・・・」

 

 「イイネ?」

 

シャルルはコクコクと頷いた

 

というか、無理やり頷かさせた

 

 「所で、どうしたの?」

 

 「えっとね、ご飯の時間だから呼びに来たんだけど」

 

なるほど、それじゃあ起こさないと

 

 「織斑君、ご飯だって」

 

彼の肩を揺さぶる

 

 「・・・わかった・・・おまっ!?」

 

ん?何で織斑君は伏せるんだろう?

 

 「そういえばフィリア、浴衣は?」

 

 「・・・あ」

 

因みに私の浴衣は織斑君の腕の中にある

 

今の私は一糸纏わぬ姿

 

あれ?前より落ち着いてるな

 

と思った矢先、段々と何が起きているか頭が把握して

 

 「いやぁぁぁぁぁっ!?」

 

堪えきれずに思いっきり布団に潜りこむ

 

 「一夏ッ!!」

 

 「待ってくれ!!俺は何もしてなーーー」

 

と、言いかけた所で織斑君が現在進行形で右手に持っている物を確認する

 

おお、顔から血の気が引いていく

 

そして何故か追い掛け回される織斑君

 

まあ、いつも通りといえばいつもこんな感じなんだよね

 

 「元気だね~・・・」

 

またしても、騒がしい一日は過ぎていったのだった

 

 

 

 

   ~千冬視点~

 

 

私は、海岸沿いの崖に来ていた

 

崖の淵は簡単な柵が設けられているが、崖の高さは数十メートルある

 

普段は誰も寄り付かない・・・そんな場所に人影があった

 

 「は~。それにしても白式には驚くなぁ。まさか操縦者の生体再生まで可能だなんて、まるでーーー」

 

 「ーーーまるで、”白騎士”のようだな。コアナンバー001にして初の実戦投入。お前が心血を注いだ一番目の機体に、な」

 

束の言葉を紡ぐ

 

 「やあ、ちーちゃん」

 

 「おう」

 

私は束に背を向けるように木に背中を預ける

 

相手を見る必要などない

 

私達は、それだけお互いを知っている

 

それから私は束に幾つかの確認をして立ち去ろうとした時、束は呟いた

 

 「あの子が”世界を変える想い”なのか、世界を壊す想い”なのか・・・」

 

 「?」

 

 「零ちゃんとあの娘はーーーいずれ世界を壊すチカラを持っちゃうかもしれない」

 

束が放ったその声少し震えた声は、何故か私をひどく不安にさせた

 

 「だからちーちゃん、その時はあの子をよろしくね」

 

それから、私が崖の方を向く頃にはその姿は幻のように消えていた

 

 「・・・”持つかもしれない”ではなく”持っている”なんだろうな」

 

そう呟く私はこの時まだ知らなかった

 

その”鬼神”と呼ばれる力の規模を

 

 

 

    三日目

 

 

 

  ~フィリア視点~ 

 

 

三日目は主に撤収作業で、

 

生徒は訓練機、各国専用機持ちは試験用装備などの撤収作業に追われていた

 

元々何も送られていない私はやる事がないけど・・・

 

 「でも、最終チェックは私がやんないといけないんだよね・・・」

 

機体の状態・装備・システムの最終チェックは任された私がやらないと

 

 「こっちのチェック終わったよ~」

 

 「了解~。それじゃ格納よろしく~」

 

ボードのチェック用紙に記入していく

 

何だかんだで眠い・・・

 

体が小さくなっているからだろうか、その年齢くらいの私の体質にもどっているような気がした

 

皆より多くご飯を食べる事も含めて

 

 「はぁ・・・」

 

思い出したくない事も思い出してしまいそうになる

 

 「三番機のチェックは?」

 

 「今、システムクリーニング中で・・・あ、今完了しました」

 

よし、この機体で最後だ

 

 「シールド、武装、システム状況に異常は?」

 

 「どれも異常は見られません」

 

 「了解、これで全機確認完了っと」

 

封筒に報告書とデータの入ったメモリーカートリッジを入れる

 

それに封をして、織斑先生の所に向かう

 

 「織斑先生、機材のチェック終わりました」

 

報告書を受け取ってもらう

 

 「わかった、すまないないつも」

 

 「そう思うなら一杯奢ってくださいよ」

 

 「私が未成年の飲酒を黙認するとでも?」

 

 「あれ?私はお酒とは一言も言ってませんよ?」

 

 「・・・まあいい、時間があれば一回ぐらいは奢ってやる」

 

少し困ったように、織斑先生は苦笑しながら報告書を受け取る

 

 「確かに受け取った」

 

やっと、終わった

 

結構長く感じる三日間だった

 

それから旅館の人に挨拶を済ませ、私達は学園への帰路についた

 

 

 

 

帰りのバスの中

 

昼食は帰りのどこかでとるらしいけど

 

私はこのバスというゆりかごに揺られていた

 

 「あ~・・・」

 

横で死にかけの人みたいな声を出してるのは、昨日から引っ張られっぱなしの織斑君だ

 

なんだろう、目が死んでるような・・・

 

まあ、あれだけ重いもの運ばされたらそうなるよね

 

 「やっぱり眠くなる・・・」

 

私は窓の方にもたれるようにして睡魔に身を委ねる

 

何だかんだでここ数日大変だった

 

疲れた・・・

 

 

 

 

   ~一夏視点~

 

 

座席にかけた俺の状況は、一言でいうとボロボロだ

 

昨日は一時間近く追い回されたあげく、廊下を走り回った事と旅館から出た事がばれて千冬姉に大目玉

 

実質睡眠時間は三時間弱ほど。それでいて撤収作業という重労働なのだから、もう死にそうだ

 

 「すまん、誰か飲み物持ってないか?」

 

あまりにしんどくて、そう声をかけてみるが

 

 「唾でも飲んでろ」  とラウラ

 

 「知りませんわ」   とセシリア

 

 「あるけどあげない」 とシャル

 

 「フンっ!!」    と箒

 

リンは二組だからこのバスには乗っていない

 

最後の砦、俺の横にいる元ルームメイトは窓によりそって寝息を立てている

 

どうやら、誰も飲み物をくれないらしい。これも俺の不徳の致すところか。う~・・・

 

仕方なく端末を開いて音楽を聴きながら寝る事にしたのだが

 

 「「「「い、一夏っ」」」」

 

先ほどの四人が話しかけてきた。それと同時にバスの入り口から見知らぬ人が入ってきて

 

バスの中でざわめきが起こる

 

 「ねえ、織斑一夏くんっているかしら?」

 

 「あ、はい。俺ですけど」

 

半分より前の座席に居たお陰ですぐに返事をする事ができた

 

その女性の年齢は二十歳くらいで、スラッと伸ばした金髪が太陽の光を反射して眩しい

 

 「君がそうなんだ。へぇ」

 

女性はそう言うと、俺を興味深そうに眺める。それは別に品定めをしているのではなく

 

ただ興味本位に観察しているといった感じだ

 

 「あ、あの、あなたはーーー」

 

 「私はナターシャ・ファイルス。{銀の福音}の操縦者よ」

 

 「えーーー」

 

予想外の言葉に俺が困惑していると、頬にいきなり唇が触れた

 

 「これはお礼。止めようとしてくれてありがとう、白いナイトさん」

 

 「え、あ、う・・・?」

 

 「それと、蒼い髪の人っているかしら?」

 

蒼い髪って言えば・・・

 

 「彼女ですか?」

 

すかさず横で寝ているフィリアを指差す

 

 「・・・すぅ・・・」

 

相変わらずコクコクと船を漕いでるな

 

 「あら、フォルク司令が言ってた通りかわいい娘ね・・・え?」

何故か不思議な物を見たような顔をするファイルスさん

 

 「・・・今まさに年齢詐欺を味わった気分ね・・・」

 

何か英語で呟いてるが、どうかしたのか?

 

 「でも、助けてくれてありがとう。蒼き鬼神さん」

 

英語と共に、彼女はフィリアの手に何かを握らせた

 

 「じゃあ、またね。バーイ」

 

 「は、はぁ・・・」

 

ひらひらと手を振ってバスから降りるナターシャさんを、俺はぼーっとしたまま手を振り返して見送る

 

 「・・・ふあぁ~・・・」

 

という感じで、横にいるフィリアが大きな欠伸をして目を擦っていた

 

 「そうだフィリア、何か飲み物もってないか?」

 

 「ん~、飲みかけでよければ」

 

そう言ってフィリアは半分くらいになったペットボトルを取り出して渡してくる

 

 「サンキュー・・・はぁ、色んな事があり過ぎだっつ~の・・・」

 

キャップを回し、飲料を一口飲む

 

干乾びかけていた俺の喉に、その一口分の水分が一気に染み渡る

 

 「ふぅ~、助かった・・・ところでお前達は何しに来たんだ?」

 

と、目の前の通路で硬直している四人に質問する

 

 「あ、いや、なんでもない」

 

 「うん、何でもないよ?」

 

 「・・・・・・(くっ、先をこされたか・・・)」

 

 「何でもないですわ、それより大丈夫でして?」

 

ん?ああ、俺か

 

 「ああ、今こいつに分けてもらったからな。大分マシになったよ」

 

 「そう・・・ですの・・・」

 

何だ?皆何でそんなに落ち込んでるんだ?

 

 

 

 

 

 

     ~千冬視点~    

 

 

 

バスから降りたナターシャは、こちらに向かってきた

 

 「おいおい、余計な火種を作ってくれるなよ。子供の相手は大変なんだ」

 

少し軽めに挨拶を交わす

 

ナターシャは少しはにかんで返す

 

 「思っていたよりずっと素敵な男性だったから、つい」

 

 「やれやれ・・・。それより、昨日の今日で動いて平気なのか?」

 

 「それについては問題なく。私はあの子に守られていましたから」

 

ここでいうあの子とは、つまり今回の暴走事件を引き起こした銀の福音の事を指していた

 

 「ーーーやはり、そうなのか?」

 

 「ええ、。あの子は私を守る為に、望まぬ戦いへと身を投じました。

 

  強引なセカンド・シフト、それにコア・ネットワークの切断・・・あの子は私の為に、自分の世界を捨てた」

 

言葉を続けるナターシャは、さっきの陽気な雰囲気など微塵も含まず

 

その体に鋭い気配を纏っていく

 

 「だから、私は許さない。あの子から判断能力を奪い、全てのISを敵と見せかけた元凶を

 

  ーーー必ず追って、報いを受けさせる」

 

福音は、そのコアこそ無事であったが、暴走事故を招いた事から今日未明に凍結処理が決定された

 

 「・・・何よりも飛ぶ事が好きだったあの子が翼を奪われた。相手が何であろうと、私は許しはしない」

 

 「あまり無茶な事はするなよ。この後も査問委員会があるんだろ?しばらくは大人しくしておいたほうがいい」

 

 「それは忠告ですか、ブリュンヒルデ」

 

その名で呼ぶな・・・苦手なんだ

 

 「アドバイスさ、ただのな」

 

 「そうですか。それでは、しばらくはおとなしくしていましょう・・・。ところでーーー」

 

 「何だ?まだあるのか?」

 

 「あの零式の搭乗者の娘なんだけど・・・私の記憶だと四十過ぎのはずなんだけど?」

 

ああ、やはりそういう認識なのか

 

 「いや、あいつ自身の歳は15才だ。生年月日は気にしたら負けだ」

 

 「はぁ・・・私は世にも恐ろしい年齢詐欺を見た気がしたわ・・・」

 

 「全くだ」

 

ハァっとため息が同時に零れたのは言うまでもない

 

 「でも、フォルク司令が言ってた通り本当にやさしくて強い娘ね。羨ましいわ」

 

 「そうだな。あの齢にして世界と向き合っただけはある」

 

だがあの強さは、恐らく別の所から来るものなのだろうが

 

 「ベルカ戦争の英雄ーーー”円卓の鬼神”」

 

ベルカ戦争時に召集された一人のマーセナリーパイロット

 

そいつをこの学園で保護している。いやーーー

 

 「(保護されているのは学園の方かもしれんな)」

 

 「ああ、それとフォルク司令から伝言があるわ」

 

 「伝言?大将直々にか?」

 

それからナターシャはポケットから端末を取り出してメールを開く

 

 

 

 

 「”ブリュンヒルデ、これは軍に関係せずあくまで私一人の個人要望だ

 

   そちらで保護されている俺の相棒に、”普通の幸せ”を教えてやってほしい

 

   こんな時代の離れた世界で、あいつの居場所はもうどこにも存在しない

 

   だから、せめてもの頼みだ

 

   あいつの居場所を作ってやってほしい

 

   勝手わがままなのかもしれないが、これは俺からのあいつへの

 

                          せめてもの罪滅ぼしだ”」

 

 

 

メールにはそんな事が書かれていた

 

 「全く、世話焼きの親みたいよね」

 

ナターシャはふふっと笑いながら端末をしまう

 

 「ああ。だが、その分私は彼を信頼できる」

 

 「私からも、手伝える事があればよろしくね」

 

 「おう。呼んだ時には覚悟しておけよ?」

 

それから私達は互いの帰路につく

 

 

 

 「”普通の幸せ”か・・・全く、教えるのに一番苦労する項目だな」

 

ため息をつきながら呟くバスの中で呟く

 

でも、私は一人の教員としてその”お願い”を引き受ける事にしたのだ

 

まあ、それは私がする必要はないと内心で思っているがな

 

あの馬鹿達と一緒に居るだけで、それは普通の幸せなのかもしれんからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  投稿遅れて申し訳ありませんでした

 

  書いたデータをトばしてしまってあたふたしてしまいました

 

  今年中に投稿できて一安心です

 

  次回、夏休み編突入

 

  意見感想募集中ですので

 

  よろしくお願いします

 

 

 

 

 

 


 
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