No.524006

IS x アギト 目覚める魂 19: 正体

i-pod男さん

一夏と秋斗の説明の会みたいになります。

2012-12-27 22:35:47 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2890   閲覧ユーザー数:2776

一夏は目を覚ますと、そこは見慣れた真島医院の病室だった。私物も全て隣のテーブルの下にある引き出しに入っている。

 

「気が付いたか。」

 

「葦原さん・・・・俺、どうなったんですか?確か、背中が凄く熱くなってそれで・・・・・」

 

GX弾(アレ)を喰らったらそうなる。俺も一度、同じ攻撃を受けた事がある。だが、お前は予想より遥かに早く回復した。真島に感謝するんだな。」

 

病室の扉が開き、氷川と木野、そして翔一が入って来た。

 

「気が付いたんだ、良かったぁ〜・・・・」

 

翔一はほっと胸を撫で下ろす。氷川は申し訳無さそうに目を伏せる。

 

「そんな顔しないで下さい氷川さん。彼は助かったんですから。それに、あの弾頭の軌道のズレ方も不自然だったし、氷川さんがワザと彼を狙った訳じゃないって事位分かりますから。あれは、別のアンノウンの仕業です。」

 

「確かに。別のアンノウンの気配を、私も感じた。」

 

「それでも、すいません。あんなヘマ・・・・」

 

「大丈夫です。俺は、大丈夫です。氷川さん。」

 

一夏は起き上がり、持ち物をポケットに突っ込んだ。

 

「ああ、そうそう、何か女の子が沢山外で待ってるよ?」

 

「・・・・・でしょうね。分かりました。また何かあったら連絡しますので。門牙さんにもよろしく伝えておいて下さい。」

 

病院のパジャマから着替え、一階に降りた。そこではIS学園のクラスメートと姉でもある担任、そして目を真っ赤に泣き腫らした簪だった。

 

「一夏。今度ばかりは私も目を瞑る事は出来ん。話してもらうぞ。」

 

「・・・・・・・分かった。話の場は氷川さんに設けてもらう。ただし、条件がある。一つ目、話す相手は、千冬姉ともう一人だけ。二つ目、そのもう一人は俺が決める。三つ目、この事は誰にも絶対に言わない事。記録にすら残さないで欲しい。この三つの条件のいずれかを呑めない、と言うのなら俺は何も話さない。」

 

「・・・・・・良いだろう。」

 

一夏の目を真っ直ぐその射る様な目で見つめると、頷いた。

 

「もう一人、とはどう言う事だ?」

 

「そうですわ!あんな事が会ったのですから、私達全員に知る権利があります!」

 

「世の中には、知る必要の無い事、知っても得にはならない事、知ってもどうにも出来ない事がある。この話はそれら三つに全て当て嵌まる。聞いた所で、俺と同じ経験をした事も無いお前達がいても、何の意味も無い。千冬姉はこれに深く関係しているから話す。それに、悪いがこの話は極最少の人数に話すべき事だ。だが、どうしても聞きたいと言うのならば、氷川さんに頼めば良いか。だが、女だからと言って警察官に嘗めた口をきくなよ?」

 

「一夏君。」

 

後ろから声を掛けられて振り向くと、そこに小沢澄子が立っていた。

 

「あ、小沢さん。ちょっとお願いがあるんですけど。」

 

「何かしら?」

 

「彼女達にアンノウンとアギトの存在を教えて下さい。やり方は任せます。でも、正体とかは間違ってもバラさない方法で、適当にぼかす必要がある所はぼかして下さい。(ボソッ)」

 

「分かったわ。はーい、じゃあ話を聞きたい人達は私と付いて来て。」

 

まるで遠足に行く用事達を先導する保母さんの様に一列に並ばせ、病院の近くに止めてあるGトレーラーに誘導した。氷川は一夏、千冬、そして簪を連れて病院の空き部屋の一つを木野に都合してもらい、そこにある椅子に座り込んだ。

 

「さてと。まずはかなり前に遡る事になる。千冬姉、あかつき号での海難事故、覚えてるよな?」

 

「・・・・それがどうした?何の関係」

 

「良いから黙って聞け。順を追って話さないと分かる物も分からなくなる。あの海難事故で、俺と、父さんと母さんと、千冬姉は・・・・・ある、力を手に入れた。」

 

「力?」

 

「そう、アギトの『光』の力だ。」

 

「アギト・・・?何なのだ、そのアギトとは?」

 

「アギトは人類の進化した姿。『光』とはその力。その力は、人に宿っていて、やがて覚醒する。きっかけは人それぞれに違うけど、結果は同じ。アギトの『光』をその身に宿した人間は、超能力を使える。」

 

「何を馬鹿な事を。超能力等、只の都市伝説だ。SF小説に出て来る物だぞ。」

 

「じゃあ、今から何でも良い。五桁の数字を適当に頭の中に思い浮かべて。簪も。」

 

「う、うん・・・・」

 

一夏は目を閉じて集中し、目を開けた。

 

「千冬姉が思い浮かべた数字は五万六千七百二十一。簪が思い浮かべた数字は、三万八千六百九。」

 

見事に当てられた事に二人は呆気にとられる。

 

「能力は人によって違う。俺が出来るのは、先の未来、それも俺の未来を予知する事が出来る。そして、もう一つ。念動力だ。」

 

ポケットから五百円玉を引っ張り出し、コイントスの様に親指でそれを弾き上げた。重力に従って落ちて来るそれに向かって手をかざすと、それは部屋の回りをぐるぐると一周し、再び一夏の手に収まった。

 

「馬鹿な・・・・私にも、こんな力が宿っているのか・・・・?!」

 

「俄には信じられないかもしれないけど、そうだ。千冬姉も『光』の力を浴びてアギトとして徐々に覚醒している。」

 

「じゃ、じゃあ、あの、黒い化け物は何なの?あれは、何?」

 

「俺も良くは知らない。けど、氷川さん達はあれを『アンノウン』と呼称していた。俺も便宜上そうする様にしている。どこから来たか、何が目的なのか、数、その塒、全てに於いて謎の一文字でしか形容出来ない故に正体不明(アンノウン)と呼ばれている。ついでに、生身の人間がアンノウンをまともに相手には出来ない。当然、既存の兵器も、ISも何の役にも立たない。唯一分かっているのが、奴らは常人には不可能な方法で人を殺す事が出来る。」

 

「不可能な方法?」

 

「そうだね・・・・例えば、水の無い所での溺死。穴を掘った形跡が無いのに、地中での窒息。鎌鼬現象によってバラバラに切り裂かれる。壁を破壊せずに埋め込まれる。」

 

「馬鹿な!そんな事出来る訳が」

 

「出来るから言っているんだ。俺は実際にそれを見た。でも、アンノウンは何も無作為に人を殺している訳じゃない。法則があるんだ。狙う相手はアギトの力を持つ人物と、その血縁関係者全員。それがたとえ赤子だろうと関係無い。何が何でも、殺そうとする。」

 

「つまり、私にもそのアンノウンとやらに狙われる事になると言う訳か・・・・」

 

「でも、どうして?どうしてそこまでして・・・・!?」

 

「人間の進化を恐れているからだ。実際、アギトの力を持った人間がアンノウンを撃退、または撃破した事がある。でも、それは力が完全に覚醒した人間でなければ出来ない。ここまでで、何か質問は?」

 

自分が変身出来る事等、一番問題になる部分は伏せながらも話を進めて行く

 

「我々の両親は、どうなったのだ?」

 

「分からない。まだどこかで生きているか、あるいはもうアンノウンに殺されているか。俺は恐らく後者だと思う。どちらにせよ、状況が変わる訳じゃない。別にあの二人を責めはしない。こんな状況に陥って気が動転しない方がおかしい。」

 

千冬は大きく一度深呼吸をすると立ち上がり、思い切り一夏を殴り飛ばした。その勢いで一夏は壁まで吹き飛ばされ、椅子がけたたましい音を立てて床に当たる。

 

「何故・・・・何故こんな大事な事を黙っていた!?」

 

「落ち着け。言える訳ねえだろうがそんなもん。」

 

いつもとは段違いの剣幕で怒鳴る千冬だが、それに水を差した闖入者は、バイクのヘルメットを脇に抱えた秋斗だった。空いた手で総髪をぽりぽりとかいたり、弄ったりする。

 

「門牙。お前、何故ここに?」

 

「いちゃ悪いか?氷川さんに呼ばれたから大慌てで来たんだよ。腹が立つのは分かる。だけどまずそんな突拍子も無い話をして『はいそうですか』と信じる奴は絶対いない。事実、アンタも見せられるまでは超能力の存在を否定していた。実際にそれを目の当たりにしない限り、信じられないモンさ。Seeing is believingって奴だよ。第二に、このご時世だ。アギトの力の存在が知れてしまえば、それを何らかの方法で手に入れて利用しようとする輩は間違い無くごまんと出て来る。これは賭けても良い、絶対に現れる。アンノウンの力、ないしアギトの力、はたまた両方の力の存在を知ってしまえば、今以上にこの世界は混乱する。そして、俺や一夏がその力を持っている事が知れてしまえば、」

 

「一夏が、連れて行かれちゃう・・・・・」

 

簪の震えた声がその先を紡いだ。

 

「そう言う事だ。俺も一夏もお前も、命がかかってるんだ。だから、下手にアギトの力の事を委員会(うえ)には報告しない方が良い。教師であるアンタは兎も角、一夏も俺も、腐敗した官僚の下僕(イヌ)になるつもりは毛頭無い。どうせならソイツら皆殺しにした方が清々する。」

 

物騒な事を言いながらも一夏の手を掴んで引っ張り上げてやる。

 

「千冬姉。黙ってた事は謝る。ごめん。簪にも、ずっと隠しておいて本当にごめん。二人にはこんな事には巻き込みたくなかったんだ。でもここからが本題なんだ。」

 

「本題?」

 

「千冬姉。アギトの力を手放してくれ。それを、俺にくれ。頼む!」

 

一夏は体を殆ど二つに畳んでしまった様に見えなくもない程上半身を腰から折って頭を下げて懇願した。

 

「アンノウンはアギトの力を持っている人間を狙う。でも、逆にアギトの力を持たない只の人間は絶対に襲わないんだ。だから、千冬姉が力を手放せば、襲われなくなる。だから・・・・御願いします!」

 


 
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