No.523963

マブラヴ オルタネイティヴ RETURN OF START 二十二話 動き出す運命

モアイ像さん

今年、最後の投稿です

2012-12-27 21:22:03 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8105   閲覧ユーザー数:7703

マブラヴ オルタネイティヴ RETURN OF START

 

 

二十二話 動き出す運命

 

 

アメリカ SIDE

 

 

突然レーダーに飛来する物体が突然表示され、周囲が騒然となる

物体の映像が表示されるが高速で移動しているため、画質が荒く何本の筒が纏められ先端に何かが装着されているとしか分からない

 

「今のは一体!?」

 

「ミサイルだと思われる物体はゲートを破壊した模様」

 

「ゲートの破壊だと・・・我が軍はどうなっている?」

 

「軌道降下部隊が侵入するゲートではなく被害はありません、制圧部隊は交戦中」

 

「ミサイルは妨害じゃない?」

 

総司令は長年のカンが危険を発しているが、改修された戦術機の性能、予想外の出来事に焦り判断が鈍り始めていた

 

 

アメリカ SIDE END

 

 

日本帝国 SIDE

 

 

暗闇に爆音が遠く聞こえる中、月詠は補給のため野外に設置された仮設基地にいた

長刀は突撃級を何度も叩き斬り先から折れ、トライデントストライカーは冷却・防磁用ジェルが流れ出ているが武御雷自体は目立つような損傷もなかった

 

「各関節は問題無く、武装は全て取替え、推進剤を注入すれば再度出撃可能です」

 

「時間はどのくらい掛かる?」

 

「20分程掛かります」

 

「そうか・・・」

 

月詠はここまで戦い抜いた愛機を見上げる

武御雷は近接格闘戦に於いてトップクラス性能を引き出しているが熟練された衛士でなければ扱えないほどの癖がある機体であり、整備・コスト面を無視した設計になっている

それに加え、不知火アスカ機のデータを元に水素プラズマジェット、トライデントストライカーなどの新装備しているため整備兵は整備に手間取っていた

 

「大分戦果を上げているではないか月詠」

 

「紅蓮大将」

 

「帝国、一部の部隊が猛進したおかげで横浜ハイヴを包囲しつつあるが・・・」

 

「先ほどのミサイル攻撃ですか」

 

「うむ、レーザーを掻い潜りゲート破壊したことで各司令部は混乱をしているそうだ」

 

「ということは・・・」

 

「あの者しかおらん」

 

紅蓮は頷き、各司令部を混乱に陥れた人物を思い出した

 

 

日本帝国 SIDE END

 

 

アスカ SIDE

 

 

「こちらスネーク、ハイヴ内に侵入、これよりスニーキングミッションを開始する」

 

伝説の傭兵のセリフを中二病丸出しで言ってみた

誰も返答せず、壁には夢に出てほしくないランキング(個人)で上位を独占するトラウマ製造機が、お風呂の壁に頑固なカビみたく張り付き向かってくる

カビ○ラーでも吹き掛けてやりたいが手持ちはピンクの光を出す銃だけで、BETA(カビ)には効果が薄いだろう

 

「ま、掃除している暇も無いか・・・」

 

前回とは違い、軌道降下部隊よりはやく反応炉の確保しなければならない

短時間の内に確保できればG弾が使われずに済むが、確保が不可能だったらG弾使用とともに破壊することになっている

 

「どちらにしろ、反応炉があるメインホールにたどり着かないとなにもできない」

 

全包囲に意識を集中させドリフトを進む

ドリフト内部は薄気味悪く全身の毛が逆立ち、亡くなった人の怨念が聞こえそうだ

本当に聞こえたら怖いけど

ドリフトを抜けると大きく開いた地獄への入り口が待っていた

 

「うわぁ・・・大きいなぁ・・・・・・・・・大きい?」

 

なにか変だ

どこかの国の情報では横浜のハイヴはフェイズ2と指定され、シャフトの最大半径は100mとされている

しかし目の前のシャフトは100mよりも大きい

 

「ハロ、シャフトを測定してくれ」

 

「了解!了解!」

 

ハロが測定した情報をみると100mを越えて200m.に届きそうな距離だった

200m.ということはフェイズ4に該当し、最大深度はフェイズ2(350m)の約三倍、1200mに達する

このことが軌道降下部隊に知れば、作戦が失敗と判断され五番目が動く

 

「一気に降下するしか・・・「BETA接近!BETA接近!」・・・!?」

 

シャフト内の壁に張り付き侵入者を排除するかの如く、セファーラジエルに迫ろうとしていた

意識を集中させ、プロトビットを見えない手足のように動かす

4機のプロトビットは反応し、シャフト内を縦横無尽駆け抜け一斉にビームを放った

倒したBETAがほかのBETAを巻き込み将棋倒しに落下する

ある程度減らしたら反応炉があるメインホールに向けて最大速度で急降下を始めた

 

 

アスカ SIDE END

 

 

国連軍 SIDE

 

 

A-01は作戦開始からの休むことなく進撃し、補給・整備のためタンカーに帰艦していた

衛士全員はブリーフィングルームに集められ今後の作戦行動が説明され一同が騒然となってしまう

その内容とは、積極的交戦を禁じ、“特殊観測任務”という命令だった

 

「仲間が、友軍が殺されるのを・・・むざむざ見過ごせっと言うのですか?」

 

「その通りだ」

 

「隊長、我々A-01には力が有り、今の戦力ならハイヴの攻略が可能であります」

 

「鳴海少尉、敵の殲滅だけが任務ではない、この命令は決定事項だ」

 

「ですが・・・」

 

「孝之、やめておけ」

 

「・・・・・・くっ!」

 

慎二になだめられ着席するがヘタレは不満だった

ブリーフィングが終了するとヘタレの前に人が立っていることに気づく

 

「伊隅大尉?」

 

「・・・任務に不満を持つなら作戦から外してもらうほうがいい」

 

「なんだと?」

 

いまにでも噛み付くように睨みを利かせるヘタレに対し、伊隅は冷静に答えた

 

「A-01は最も勝利に順ずる部隊だ、貴官一人の都合ため部隊を危険に晒すわけにはいかない」

 

命令無視に走ることを見透かされ、ヘタレはたじたじなってしまう

それに比べ伊隅は何事も無かったようにブリーフィングルームを出て行く

ヘタレ以外の全員ざわめく中、男性がヘタレに近付き肩を叩いた

 

「ナニ~落ち込んでいるんだ?」

 

「クラフトさん・・・」

 

「こんな金属の部屋に居ると辛気臭くなるから外いくぞ」

 

「えっ?おわっ、ちょっと一人で歩けますから!」

 

ケニーはヘタレを担ぎ、ブリーフィングルーム出る

しかし狭い船内を移動するのでヘタレは頭、腕、足など当たり鈍い音が何度も鳴った

その様子を見ていた人は・・・・・・

 

「・・・はっ!熟女にも飽きたらず男にも手を出したのか!?」

 

「違うだろ」

 

 

国連軍 SIDE END

 

 

アメリカ SIDE

 

 

米軍総司令部はペンタゴンに状況を伝えるべく通信をしていた

 

「―――ジャップが作り出した兵器は短時間のうちに包囲網を着実に形成しつつあります」

 

『軌道降下部隊は?』

 

「それが・・・見てください」

 

ペンタゴンに軌道降下部隊が使うイーグルが映し出される

イーグルは腕や脚部などの装甲は高熱に当てられたように解け、突撃砲が全て破壊されていた

 

「スタブ内でレーザー級が確認され、部隊は撤退を余儀なくされました」

 

『レーザー級だと?』

 

「衛士からの話では、突然照射警告が鳴り、気づいたときには攻撃を受けていたと」

 

『信じられん、BETA(ヤツら)がスタブにレーザー級を配置していたとは・・・』

 

彼らは気づいていなかった

部隊全員がレーザー級の姿を見ていない、レーザーらしき攻撃で勝手にレーザー級と誤認してしまったのだ

 

「これではG元素が他国に渡ってしまいます」

 

『では予定を繰り上げ、G弾を使用する』

 

「ハッ!」

 

総司令部全員が敬礼し、一斉に動き出した

 

 

アメリカ SIDE END

 

 

国連軍 SIDE

 

 

不機嫌なヘタレを連れ出したケニーは甲板にいた

ここが戦場とは思えないほど波は穏やかで空は星々が見える

 

「うひょーユウコちゃんを誘うには丁度いい夜景だな、いやほかの子を誘うのも有りか?」

 

「あの~俺は一体・・・?」

 

ケニーは懐から携帯を取り出し、仙台基地に電話を掛けた

見た事も無い携帯電話を渡され、ヘタレはあたふたするが、懐かしい声が聞こえる

 

『もしもし考之君ですか?』

 

「は、遥!?」

 

『水月、本当に考之君に通じたよ』

 

『そりゃ、電話だから通じるのは当たり前でしょう遥』

 

「ははっ・・・」

 

『――それと考之、上官に噛み付いて命令違反を犯そうとしているって聞いたわよ』

 

「うぐっ!」

 

『考之君、無理しないで』

 

「別に死にに行くわけじゃないから」

 

二人の会話がヘタレの表情を緩み、一時間ほど電話をしていると次第に気持ちが和らぎ、笑顔になっていた

 

『――それと考之、私たちが配属されるまで死ぬんじゃないわよ』

 

『無事でいてね――』

 

「速瀬、遥・・・」

 

電話が切られ、携帯の切りかたが分からないヘタレはケニーを探そうとすると、甲板の端でケニーはナンパをしているのに気づき思わずため息をついてしまった

 

 

 

 

 

 

 

2日目の朝を迎えた横浜の地は、作戦に参加していた全て軍が困惑していた

突如、米国政府がG弾の使用宣言と影響範囲からの即時撤退要請が一方的な通知され、日本政府は激怒し、攻撃の中止を要求するが米国はそれを無視した

その最中、A-01は特殊観測任務すべく観測位置に移動していた

 

『なあ考之、なんかあったのか?』

 

「はあ?」

 

『昨日は張り詰めていたように感じていたが、今日は柔らかになっているから』

 

「そうなのか?」

 

『ああっ』

 

慎二の言葉にヘタレは顔を見ると、いつもの冴えない表情をしている自分の顔があった

そんな表情をヘタレが見つめていると、突然警告が鳴り響き、自動翻訳の機械的な音声が消えてくる

 

『――米国宇宙総軍よりハイヴ22(横浜ハイヴ)周囲に展開する全ての部隊に告ぐ、直ちに退避せよ――』

 

『「――っ!?」』

 

「宇宙総軍が一体何を?」

 

『CPよりA―01へ、直ちに観測位置に移動せよ、繰り返す――』

 

『デリング01より各機へ、これより噴射滑走(ブーストダッシュ)を行う』

 

『『『了解ッ!』』』

 

『デリング08、返答しろ!』

 

「りょ、了解!」

 

A―01の不知火が戸惑いを見せている大東亜連合軍や国連軍の機体を通り過ぎる

どの軍も戦闘中に即時退避など出来ようはずも無く、混乱によりむしろ被害が拡大していた

 

「くそっ、このままじゃ・・・」

 

『考之!』

 

慎二の言葉にヘタレが視線を向けると、空に二つの赤い流星が落ちてくる

それに対しBETAは何十ものレーザーが照射されるが、レーザーは後ろに逸れてしまう

赤い流星はモニュメントの上空で分解を始め、中心から黒紫の玉が出現し急速に膨張する

黒紫の玉がモニュメントに触れると、質量を持つあらゆる物質を分子・原子レベルで引き裂く、空間は侵食され枝のようなひびが入る

やがてモニュメントを呑み込み、地下を侵食させていると突然消失した

その瞬間、大気を含む周囲の物質が黒紫の玉があった場所に向かってなだれ込み、内向きの爆風が発生する

東京湾に展開していた艦隊は、海水の揺り戻しに合い、戦艦同士が衝突を起こしてしまった

 

 

国連軍 SIDE END

 

 

アメリカ SIDE

 

 

モニターに映る横浜ハイヴは、地表にBETAの姿がなく、あるのは大きく空けられたクレーター

 

「ついに・・・・・・ついに、やったぞ」

 

「これでオレたちはBETAに恐れることは無い」

 

「あれがG弾の威力なのか?この力・・・・・・圧倒的ではないか!」

 

総司令部に拍手喝采が鳴り止まない

しばらくすると、ペンタゴンから通信が入る

 

「これは国防長官」

 

『そちらの状況を知りたい?』

 

「はっ、二発のG弾はモニュメントから地下までを破壊しました」

 

『そうか我々は新たなる一歩に踏みつけたと言うことだな』

 

「はい、このG弾があればBETAすら恐れずに足りず世界を救済ができるでしょう」

 

『では、速やかに部隊再編成を行い、G元素を確保せよ、良い結果を期待している』

 

「ハッ!!」

 

通信が切られ、総司令はG元素を確保すべく指示をする

空母には部隊再編成されたイーグルが並べられ、次々と飛び出していった

 

 

アメリカ SIDE END

 

 

アスカ SIDE

 

 

「アスカ、シッカリシロ!アスカ、シッカリシロ!」

 

「・・・・・・うっ」

 

気がつくとモニターは再起動を始めていた

体を動かそうとするが全身に痛みがくる

痛みに耐えながら情況を確認すると、G弾使用後に行き場を無くした爆風に吹き飛ばされ、土砂に埋もれているらしい

 

「ハロ、操縦の補助を頼む」

 

「了解!了解!」

 

土砂の中からセファーラジエルを立ち上がらせシャフトに近付くと、シャフトには光が差し込み、上に空が広がっていた

 

「・・・あの国は全てを滅ぼすのか?」

 

これ以上、G弾が使用されたら本当に世界が滅ぶ

それだけは避けたい、香月博士に話して本核的に動けるようにしておかないと

 

「敵機、接近!敵機、接近!」

 

「逃げるぞハロ、退避ルート作成、全ての粒子を推進りょ・・・・・・!?」

 

この場から離れようとすると、突然頭痛に襲われる

視線がずれてモニターが二つに見え、操縦桿がまともに握れない

時間が経つと頭痛は消え、体調が元通りなる

レーダーで確認しても何も表示されない

 

「なんだ、いまの?」

 

「ドウシタ?」

 

「なんでもな・・・ちょっと寄り道する、こっちか」

 

なぜか分からないけど、自分のカンを頼りに機体を進めた

ハロが作成した退避ルートから外れ、シャフトに近い広間(ホール)にたどり着く

BETAの反応はあるが、肝心のBETAは時が止まったように立っていた

 

「BETAの墓場だな」

 

周囲を警戒しながら、ゆっくりと移動する

端までたどり着くと壁に血管みたいなものが天井に向かって伸び、その後を追うとそこには・・・

 

「・・・うそだろ」

 

何かのカプセルに入れられた人の脳と脊髄があった

それが一つではなく何十もの存在し、不気味に光っている

 

「・・・ハロ、生命反応は?」

 

「・・・・・・」

 

「ハロ?」

 

「・・・・・・」

 

ハロは何も答えない

つまり、脳と脊髄になってしまった人は、もう・・・

奥歯を強く噛み締め、口の中が血の匂いで満たされていく

 

「アスカ!アスカ!」

 

「分かっている、先に進むしかないってことは・・・」

 

静かに黙祷を捧げ、せめてと思い遺留品がないか周囲を見渡すが、遺留品は見当たらない

諦め掛けていたその時、ありえない光景が目に映った

 

「・・・女の子?」

 

仰向けで寝ている女の子がいた

注意しながらセファーラジエルで守るように近くに着陸させ、警戒しながら女の子に近付く

歳は十代後半あたりで、前髪に寝癖のような髪が立ち、後ろ髪は黄色いリボンで束ねていた

服装はどこかの制服を着て、胸には大きなリボンがある

そして目立つ外傷もなく、服装も汚れていない

腕の脈を調べると、微かに脈があった

 

「・・・この子は一体?」

 

 

アスカ SIDE END

 

 

国連軍 SIDE

 

 

ハイヴは大きなクレーターが出来上がり、人工物というものは瓦礫の山なり、戦術機は装甲が歪み倒れていた

その光景を2機の不知火が周囲を見渡す

 

『ひでぇ・・・』

 

『・・・俺たちの街が・・・くそっ!』

 

自分が守りたかった街が無残な光景に、ヘタレは怒りを操縦桿にぶつける

殴った右手に痛みが走るが、何も変わらず、ただ風の音が聞こえるだけ

そんな落ち込むヘタレを見て慎二は声を掛けた

 

『・・・皆が心配だ、探しにいこうぜ考之』

 

ヘタレは黙って頷き、跳躍ユニットを吹かす

彼らの行く先は、BETAに蹂躙された以上に破壊され人工物は形すら残ってはいなかった

クレーターの上空を飛行すると機体が大きく揺れ動く

 

『なんだ?強風でも吹いているのか?』

 

『慎二、風は吹いていないぞ』

 

『じゃあ、この揺れはどう説明しろと言うんだよ?』

 

『分からないが、米軍が使用した兵器・・・』

 

ヘタレの脳裏に禍々しい太陽を思い出す

凍るような感覚が体に襲いかかり、思い出すのを止めてしまった

 

『どうした?』

 

『なんでも・・・『全機に通達、コード991発令!繰り返す――』・・・はぁ?』

 

突然の発令に二人は戸惑うが、お構い無しにセンサーにはBETAの反応が表示されていく

 

『BETAは一掃されたはずだろ!?』

 

『そんなこと知るか、いくぞ!』

 

『おい!』

 

ヘタレの後に続くように慎二はセンサーに表示された場所に向かう

空はレーザーが飛び交い、逃げようとしたファントムを次々と撃墜され、身動きが出来ない機体は戦車級が飛びつき装甲を噛み砕く

 

『来るな・・・来るなぁぁぁ!』

 

『こいつら!』

 

ヘタレは短刀に持ち換え、友軍機を噛み砕く戦車級を斬り、管制ユニットを取り出す

しかし管制ユニットは血に染まり、骸しか残っていなかった

 

『考之、これ以上前に出たら危険だ、ヤツラから距離をとるぞ!』

 

『・・・・・・』

 

『考之?』

 

『一瞬でもBETAの動きを・・・』

 

『こっちに引き付ければ、友軍機が撤退できると?』

 

ヘタレが小さく笑い、慎二も笑い返す

互いの答えは決まり、跳躍ユニットの駆動音が重なり大きくなる

最高潮に差しかかった時、2機の不知火は全力で大地を蹴りつけ、BETAの群れに飛び込んだ

 

『邪魔だ、どきやがれ!』

 

気づいたBETAは取り囲むが射撃、斬撃の渦に巻き込まれる

不知火の後にはBETAの死骸が道が出来上がっていた

さらに二人の進撃は進む、群れの中央に差しかかると周囲360度に向かって射撃

たちまちBETAは死骸になる

 

『お前段々伊隅中尉に似てきたな』

 

『はぁ?』

 

『慎重に見えてこういう無茶するところ』

 

『勘弁しろよ、あのタイプは速瀬ひとりで十分だ』

 

馬鹿話しながらも戦闘を続ける彼らの上空からなにかが落ちてきた

二人は落ちてきたモノを見ると戦慄する

 

『A―01の不知火・・・』

 

『うそだろ・・・』

 

上半身だけ残し、管制ユニットはオイルや血が混ざり抉られていた

装甲は引きずられたように傷つけられ、肩に書かれたUNの文字が読める程度

その不知火だったと思われるパーツが次々と彼らの周りに落下し、地面が大きく揺れ地面から巨大な柱が現れる

『なんだ・・・』と言い掛けた瞬間、巨大な柱は倒れるように曲がり、面だった部分を広げた

その中から大型・小型関係無くBETAが溢れ出る

 

『こいつもBETAなのか?』

 

『考之、データに情報があった、母艦級と呼ばれるBETAだ』

 

『いままでのBETAは母艦級(コイツ)が持ってきたものなのか?』

 

『そうかもしれない』

 

『何でいまさら出てきたんだ』

 

『俺たちからハイヴを取り戻すため』

 

『それじゃあ、あの母艦級を倒せば・・・』

 

二人は頷き、母艦級に向かって跳躍した

しかし展開されたBETAに阻まれ母艦級に近付けず、彼らに攻撃が集中する

レーザーが照射されプラズマフィールドで防ぐが、レーザーの威力に耐え切れなく左腕ごと爆発

 

『くそっ、近付ければ攻撃できるのに』

 

目の前の母艦級を睨みながらヘタレはあることを思い出す

網膜投影システムから跳躍ユニット制御プログラムを選択、コントロールパネルを使い制御プログラムのプロテクトを解除させる

 

『よし、これなら・・・慎二、援護してくれ』

 

ヘタレがなにか無茶をやろうとするが、慎二は黙って頷き構えた

4機の跳躍ユニットが今までに無い力強い駆動音を鳴らし、前股部装甲からS―11を取り出す

操縦桿を握り直し深呼吸させ、勢い良く不知火は飛ぶ

ヘタレ自身にかなりのGに押さえつけられ息が辛くなるが、迷わずただ一心不乱に前を見据える

 

『俺たちの街で―――』

 

レーザーが照射され腰の跳躍ユニットに掠り、爆発を起こすがヘタレは諦めずに突き進む

 

『これ以上、死なせたくないんだ――ッ!』

 

渾身の一撃でS―11を叩きこむ

母艦級に触れた瞬間、S―11を持つ右腕がレーザーに破壊され地面に墜落する

落下の衝撃とともにコクピットは赤い光が点灯し、アラームが鳴り響いた

ヘタレは起き上がろうとするが全てエラーと表示される

 

『くそっ、動いてくれ!』

 

必死に操縦桿やスイッチを操作しても不知火は沈黙を保ったまま

次第に揺れと供にBETAの足音が聞こえ、ヘタレはいままでのことが走馬灯のように頭の中に流れて死を覚悟した

 

(遥、水月、ごめん・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あきらめるな!!』

 

突然通信が入り込み、強制的に緊急脱出(ベイルアウト)される

ヘタレの目に鋼の手が映り、衝撃とともに意識が遠のいていった

 

 

国連軍 SIDE END

 

 

アスカ SIDE

 

 

「管制ユニット、確保」

 

急いで母艦級から離れる

光学迷彩を展開しているとは言え、通信レーダー障害、空に向かってレーザーが照射されるのはまずい

 

『OK、狙い撃つぜ!!』

 

サンダーボルトⅡが支援砲を構え、レーザー級を狙撃する

レーザーは照射されなくなりサンダーボルトⅡの横に並び立った

 

「平少尉、ヘタ・・・鳴海少尉をこちらで確保した、直ちに戦場から離脱せよ」

 

『クラフトさんと桜咲チーフ、どうしてここに?』

 

「機体が損傷して帰還いた伊隅大尉から連絡を受け、ここに来た」

 

『そういうこと、あとはオレたちにまかせな!』

 

「サンダーボルトⅡの後ろに鳴海少尉を置いておく、そしてガンダムのことは機密事項なので忘れてくれ」

 

『了解!』

 

平少尉がヘタレと一緒に離脱した

母艦級を見ると、口を開けBETAを吐き出している

 

『――これからどうする?』

 

「迎撃するさ、あと味方を呼んでおいた」

 

『味方?』

 

するとタイミング良く、後ろから飛び出て赤と白の武御雷5機が現れた

う~ん、5機全て別な色だったら戦隊ものになるな

 

『まったく、ワシらを呼び出すとは・・・』

 

「すいません紅蓮大将、これ以上仲間を減らすわけにはいかないので」

 

『それで桜咲、あれがBETAの母艦か?』

 

「はい、中に無数のBETAを抱え、長距離の移動に使用されていると思われるBETAです」

 

『厄介なときに厄介なものが出てきたのう・・・桜咲、ワシらは牽制する』

 

「お願いします、ケニー始め・・・る・・・ぞよ?」

 

隣にいたサンダーボルトⅡの姿が無く、もしかしてと思い月詠さんの武御雷を見た

武御雷は見事にサンダーボルトⅡのコクピットに拳を当て、拳を引き抜くとサンダーボルトⅡは倒れた

 

『自業自得だ』

 

いやいや不味いからサンダーボルトⅡはこの作戦の要ですよ月詠さん

それとケニー、戦場でナンパするな

CPから「大尉より桜咲少佐のCPのほうがよかったです(泣)」と言われた

 

『クソーこうなったら、あの母艦級を倒した後にもう一度アタックしてやる!アスカ、やるぞ』

 

「そうだな・・・(たぶん、玉砕するだろう・・・)」

 

武御雷の動きに合わせ、サンダーボルトⅡの後ろに回り込む

機体と支援砲を接続している部分にラジエルの右腕を接続させ、コンデンサーにGN粒子を充填させる

本来ならセファーラジエルで母艦級と戦ったほうが良いが、まだビーム兵器を見せるわけにもいかない

 

「GN粒子充填完了、狙撃データ及びコントロールを渡す」

 

『よし来た!』

 

「月詠さん、射線軸から退避してください」

 

『了解した』

 

5機の武御雷が射線軸から離れるようにBETAを引き付ける

サンダーボルトⅡの頭部は展開され、レーダーサイトが稼働した

 

「許容範囲内、いまだケニー!」

 

『いくぜぇぇぇーーー!』

 

支援砲の砲身はスパークが発生させ、大気を振るわせる

トレガーが引かれた瞬間、後ろに叩き付けられるような衝撃が襲い、砲口の前に三重ほどのソニックブームを作り出す

粒子コーティングされた砲弾は風を切り母艦級に直撃

そのまま戦術機サイズの風穴を開け、母艦級はほかのBETAを巻き込みながら倒れた

 

「はぁ~」

 

ため息をつきながら、戦場を見た

無残にも破壊された不知火、G弾の爪あとを残した横浜の地

このままいけば、BETAが人類を滅亡されるか、五番目が発動して太陽系そのものが消滅する

どちらに転んでも最悪なシナリオだ

 

「絶対に止めてやる」

 

破壊された不知火に向かって自分勝手に宣言する

謝るつもりは無い、これが自分が招いた結果だと心に言い聞かせた

 

『ヨシ!再度アタックだー!』

 

あーケニーくん少し落ち着こう、また殴られるぞ・・・・・・あ、マゾだから関係無いか

 

 

 

 

あとがき

 

今年のラスト投稿、終了!

さっさと欧州にいきたいので二話で済ますところ一話に纏め長くしました

ヘタレを仲間にするため死亡フラグへし折り生存フラグへ

あのヒロイン(成層圏まで届くパンチを持つ人)が登場、しかし直ぐに退場

今後の物語の鍵を握るように考えています

 

そしてアスカの覚醒、あの機体の登場はアラ・・・・・・お待ちください

 

それでは来年も、この駄作駄文製造機をよろしくお願いします

良いお年を・・・

 


 
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