No.523317

Fate/Christmas night

朱桜さん

クリスマスを過ぎたけど投稿します。

2012-12-26 00:11:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:734   閲覧ユーザー数:724

 

 いつも夢に出てくるのは、一人の少女。

 

 その肌は雪のように白く、銀の髪をもつ、文字どおり真っ白の少女。しかし、その白とは対称的な赤い瞳。

 

 そのあまりにも綺麗な姿に俺は心を奪われた。

 

 俺が呆然としているのを気にせず、少女は俺に問う。

 

 「シロウ、貴方は私に何を願うの?」

 

 いつもの夢と同じ問い。

 俺が彼女に願うモノ?

 

「俺は――」

 

 俺が望むものは――

 

「シロウ、オッハヨォーーーーーー!!!!」

 

「ぐべらッッッッ!?」

 

 俺の願いは、突然耳に響いた大声と、腹痛によってかき消された。

 

 

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 

「だあああ!!」

 

 肺の中の空気が全部外に出たぞ今!?

 

「おはようシロウ。最高の目覚めだったでしょ?」

 

 俺の隣には、さっきの夢の女の子が布団に寝転んでいる。

 

「……イリヤ、今お前は俺に何をした?」

 

「え~と、ふらいんぐぼでぃいぷれすをしただけだけど?」

 

 イリヤと呼ばれた少女は、悪そびれた様子も無くさらりと言う。

 

「……普通、気持ちよく寝ている人にボディープレスなんてしないだろ。一応聞くけど、誰から教えてもらったんだイリヤ?」

 

「タイガから教えてもらったんだ。『もし士郎が何をしても起きなかったら、この技を使いなさい!!』って、笑いながら教えてくれたけど」

 

 ふじ姉の奴、後で弁当にワサビを大量に入れてやる。

 

「だけどさっき言った通り、何をしても起きなかったシロウが悪いんじゃない。……それとも、私が起こしに来るのが嫌なの、シロウ?」

 

「うっ」

 

 イリヤは下から上目遣いで俺を見る。ヤバイ、これは……くる、何かが!!

 

「べ、別に嫌いな訳じゃない」

 

 俺のその言葉を予想していたかのように、イリヤの顔が明るくなる。

 

「だよねー。だってシロウは私のモノ(彼氏)なんだから」

 

イリヤの赤い瞳が俺をじっと見つめる。まるで、夢に出てきた少女のように。

 

 ――イリヤが言った通り、現在俺とイリヤは恋人だ。

 

  第5次聖杯戦争

 

 その戦争でイリヤと俺――衛宮士郎は、サーヴァントを従えるマスターとしてお互い敵対していた……が、バーサーカーを倒した後でイリヤは俺にベタボレ、俺はマスター(イリヤ)を殺すつもりはないということで家に居候させ居間に至るのである。

 

 ……イリヤが脱落したあとも聖杯戦争が続き、最終的に俺たちが勝者になった。しかし、聖杯の中身はこの世にあってはならないもの。だから俺たちは聖杯を壊すことにした。

 

 聖杯を壊した後、黄金の丘で俺のサーヴァントであった騎士王から、こう言われた。

 

『シロウ、イリヤを頼みます。あの子はシロウに惚れてますから……私はあなたに何もすることは出来なかったけど、イリヤなら幸せにできる……。幸せになってください』 

 

 騎士王から託された言葉。

 

 セイバーが消えた後、その言葉を聞いて俺のほんとのきもちに気づいた。

 

 俺はセイバーを一番尊敬していた。だが、一番好きだったのはイリヤだったのだ。

 だから、俺はおれ自身の手で、イリヤを守る。イリヤのための"正義の味方"になると決めた。

 

 その事をイリヤに伝えた。ホントの気持ちを……。俺の気持ちを伝えた後、イリヤは俺に抱きついて『私も……シロウが大好き』と言って泣き続けた。この日から俺たちは恋人になったのだが……

 

 ――流石にこれは……やりすぎだ。

 

「い、イリヤ。冗談は――」

 

「冗談なんかじゃないよ……お・に・い・ちゃ――」

 

 その甘い声に俺の|熾天覆う七つの円環《ロー・アイアス》が破壊され――

 

「はい、ストップー。イリヤ、悪ふざけはいい加減やめなさい。でないとガンドブッ飛ばすわよ」

 

「キャ!?」

「うわ!?」

 

 俺の理性の盾にヒビが入りそうだったところに、どこにいても絶対に目立つ赤い服を着たあかいあ……遠坂凛が引戸を開けて入ってきた。さっき言った言葉はホントの事だろう、左手の照準をイリヤに向けて魔術刻印をギラギラ輝かせている。

 

「何よリン、堂々とシロウの部屋に入ってこないでよ」

 

 

「ふん、それはお互い様でしょ? 大体イリヤだって士郎の部屋にいるでしょうが」

 

「え?私は昨日からシロウの部屋にいるけど」

 

「へ?」

「え?」

 

「ねえシロウ、そこのあかいのはおいといて、早く昨日の続きしよ……ん」

 

 そう言ってイリヤは俺の頬に軽くキスをした。頬にキスをされ、俺の思考回路は完全にフリーズする。

 

「…………士郎」

 

 が、|あかいあくま《・・・・・・》の一声で戻ってきた。

 

「ええっとだな。遠坂、お前が何を勘違いしてるか分からないが、取り敢えず話を聞いてくれ」

 

 俺の言い訳も遠坂には通用せず、遠坂は左手を俺の額につける。俺は反射的に目をつぶった。

 

「…………パン」

 

 しかし、やってきたのはガンドではなく軽い凸ピンだった。

 

「と、遠坂?」

 

「なんてね。ホントにヤるわけ無いでしょ。これは朝からイチャイチャしていた分よ」

 

そう言って遠坂は駄々をこねるイリヤを連れて部屋を出ていったが、何かをいい忘れたのか、部屋に戻ってきた。

 

「ああそう、もうすぐ朝食が出来るって桜が言ってたから早めに来なさい。あと士郎」

 

「な、なんだ?」

 

「その……丸めたティッシュはちゃんとごみ箱に捨てて、風呂に入りなさい!」

 

 そう言って遠坂は速足で居間に戻っていく。

 

 確かに体を嗅いでみると、汗のほかになにかの臭いがした……気がした。

 

「……風呂に入るか」

 

 俺は着替えを持って風呂場へ向かった。

 

 

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 朝風呂の後、

着替えを済ませた俺は、イリヤたちが待つ居間へ向かった。早く行かないと空腹の虎……もとい、ふじ姉が叫び出すからな。 

 

「う〜〜しーろーう〜、おーそーいーぞ〜」

 

 どうやら予想は外れ、俺が来る前からふじ姉は叫んでいたようだ。

 

「悪いふじ姉、朝風呂でちょっと遅れちまった。桜もごめんな、朝の支度全部任せちまって」

 

「いえ、今日は簡単に作りましたから、私一人でも大丈夫でしたよ」

 

「あ、桜ちゃん、みんなにご飯盛ってあげて。ほら士朗、早く座りなさい、早く食べましょ」

 

「はい、わかりました」

 

 そう言って桜は俺の茶碗にご飯を盛り付ける。

 

 間桐桜と藤ねえ――藤村大河は遠坂とは違い、聖杯戦争が始まる前から家に入り浸っていた人物だ。流石に聖杯戦争が始まってからは|衛宮邸《ここ》に来ないように遠坂に暗示をかけてもらっていた。なんでも、遠坂は桜と何かしらあるらしく、快く引き受けてくれた。

 聖杯戦争が終わり、藤ねえ達の暗示を解いてから俺に待っていたのは、ヒステリックな叫び声だった。

 『士郎がロリコンになったーーーー!!』と言って藤ねえは道場にある虎竹刀を片手に今にも叩き上げようとしたのは今でも鮮明に憶えている。

 

 桜の方は最初はきょとんとしてしたが、俺たちのことを祝ってくれた。俺の思い込みかもしれないが、桜は聖杯戦争前とは違う顔つきになっていた。まるで、何かから解放されたかのように。その事はまた後で聞くとしよう。

 

「士郎、ちょっといい?」

 

 朝食を終えた後、遠坂に手招きで呼び止められた。

 

「どうした?」

 

「士郎、あんた今日が何の日か分かってる?」

 

「今日は、土曜日だろう?」

 

「私はそんなことを聞いてるんじゃないわよ!!今日は何日!?」

 

 今日って……今日は12月25日だろう……あ、

 

「そう、クリスマスよ」

 

 そう言えばそうだったな。

 

「はぁ〜。多分あんたのことだから、私が教えなかったら家で普段通りの事をしてたでしょ?」

 

「確かに、朝の片付けをして洗濯やらなんやらしようとしてたな」

 

 遠坂はもう一度深いため息をついた。

 

「あんたの行動って単純よね……はいコレ」

 

 そう言って遠坂は一枚のチラシを俺に渡してきた。それには【大型ショッピングモール[アヤナス]オープン!!ただ今クリスマスフェア開催中!!来なきゃ死ぬぞ〜】と書いてあった。……最後の文はどこのスルメ野郎が書いたんだ?

 

「家のことは私たちがするから、イリヤと二人でそこに行ってきなさい」

 

「ホントにいいのか遠坂?それじゃあお前達が――」

 

「何言ってるのよ。私達は別に用事なんて無いからいいのよ。あんたたちは恋人なんだから、今日はクリスマスなんだから、二人でぱあっと遊んできなさい。……それにどうせ前に買ったアレ、イリヤに渡して無いんでしょ?」

 

「なっ!?なんでお前があのことを!!?」

 

「シロウ、凛との話終わったー?」

 

 我慢の限界がきたのか、イリヤが早く終わるように居間から催促された。

 

「乙女には秘密があるものよ。それよりもほら、|イリヤ《お姫様》を|デート《舞踏会》に招待してあげなさい」

 

 遠坂に背中を押される。

 

「え〜と、イリヤ」

 

「なにかしらシロウ?」

 

「今日、新都に行かないか?」

 

「え?」

 

 イリヤが驚いている。流石に直球過ぎたかな? 遠坂のほうをチラ見すると、遠坂の顔がにやけている。

 

「……つまり、シロウはデートに誘ってるってこと?」

「あぁ、そうだ。ここんところ忙しくて二人っきりになる時間が少なかったからな。今日はクリスマスだし丁度いいかなって……だめだったか?」

 

 イリヤは首を横に振った。

 

「ううん、嫌じゃないわ。でも……」

 

 でも?

 

「シロウが|きちんと≪・・・・≫お願いしなきゃ行かな~い」

 

 イリヤはさっきの遠坂のような笑みを浮かべる。……あぁ、そうか――

 

「イリヤ、デートに行かないか?」

 

「ええ、喜んで」

 

 わざわざ聞かなくてもyesと答えるだろうに……乙女心は複雑だな。

 

「それじゃあ遠坂、俺たちは新都に行ってくるから留守番頼んだよ」

 

「ええ、思いっきり楽しんできなさいね」

 

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 

「士朗たちは行ったわね……桜、『今行った』って伝えといて」

 

 台所から了解の返事が聞こえる。

 

 桜は携帯の使い方が分かるらしく今電話をかけているが、私にはまったく理解不能だった。

 

「さて、私たちも準備しますか」

 

 そう言って、私は自分の部屋に戻った。

 

 ……あとで桜に携帯電話の使い方教えてもらおう。

 

 

//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 

 

「ところでシロウ、今日は新都のどこに行くつもりなの?」

 

 深山町からバスで移動し、新都についた後イリヤが聞いた。

 

「確かこの辺りに建てられたって聞いたけど……あった、あれだ」

 

 俺が指した方に目標の建物があった。近くあった看板を見ると、【ランドマークタワーアヤナス】と書いてある。

 

「シロウが来たかったお店って、ここなの?」

 

「ああ、最近オープンしたばっかで今はクリスマスフェアを開催してるんだ。だからちょっと寄りたくてね」

 

「それじゃあ、行こうか、イリヤ」

 

 俺は騎士のようにイリヤにお辞儀をする。

 

「シロウ、エスケープよろしくね」

 

 俺もここに来るの初めてなんだが……まあ、いい。

 

「かしこまりました。|イリヤ《お姫様》」

 

 俺はイリヤの手をとり、アヤナスへ入っていった。

 

     *

 

「へえ〜結構中は広いのね」

 

 アヤナスの中は思っていたより広く、今もたくさんの人々であふれている。

 

「どこに行こうかイリヤ」

「う〜ん、あ、あそこに行きたいな」

 

 イリヤは吹き抜けから二階に見える可愛らしい店を指差す。

 

「シロウ、早く行こー」

 

「分かった分かった。別に店は逃げないんだから、慌てない……っと、すいません」

 

 イリヤの方を見ていたせいで人にぶつかってしまった。

 

「ったく、気を付けてくれよな。……ちょっ、冴子待ってくれよ」

 

 灰色の髪をした男は一言言ったあと、先に行ってしまった女性を追いかけていく。……あの人も尻に敷かれている|(俺と同じ)だと思ってしまった。

 

「シロウー、早くー!!」

 

 イリヤがエスカレーター乗り場まで行ってしまった。お姫様を長く待たせるのはよくないな。

 

「今行くよ」

 

 俺はぶつかったことを頭の隅に置き、イリヤに追い付くために急いだ。

 

     *

 

「イリヤって、ぬいぐるみのセンスが無いよな」

 

「なによー、コレかわいいでしょ」

 

「だからって、コレは……」

 

 そう言って俺は手に持っているネコ……の様なものをイリヤに見せつける。

 

 イリヤが行った店は女の子が好きそうなアクセサリーや、どこぞの魔女が好きそうなぬいぐるみがたくさんおいてあった店だった。イリヤははしゃいでいたが、正直俺にとっては居心地が悪い場所なので、イリヤの後をずっとついていたが、急にイリヤが立ち止まったのだ。よく見ると、イリヤが立ち止まったところにあったのは、白い服と紫のスカートを履いたネコ? が大量にあった。イリヤはそれを手にとって『コレにするわ!!』と言って財布を持っている俺を置いてレジへ行ってしまった。

 

「いいじゃない、私が可愛いって言ったらかわいいものなの!!」

 

 そう言って抱いていたぬいぐるみをぎゅ〜っとする。一瞬ぬいぐるみの顔がにやけたように見えたのは気のせいだろう……。

 

「そう言えばシロウ、お昼どうするの?」

 

「昼か……」

 

 ケータイを見ると12時ちょっと過ぎ。今から家に戻るのは面倒くさいから……

 

「お昼食べてくか」

 

 となると、行き先はアーネンエルベか……ん?

 

 商店街の向こう側に見慣れたメイド服――セラとリズが、スーパーの袋を両手にかかえて移動している。なにしてんだろ?

 

「ねえシロウ、あそこ見て」

イリヤが興味ありげに、俺が見ていた反対側にある店を指差す。喫茶店【ツィベリアダ】? 新しくオープンしたのかな?

 

「行ってみるか?」

 

「うん」

 

 イリヤが元気よく頷いたので、ツィベリアダに入ってみることにした。

 

     *

 

「いらっしゃいませ」

 

 喫茶店に入ると右目に眼帯をかけた青髪の青年が声をかけた。

 

「二名様でよろしいですか。それではこちらへどうぞ」

 

 その青年は俺達を座席へと案内する。

 

「ご注文はなにになさいますか?」

 

「う〜ん、それじゃ、グリーンカレーと食後にコーヒーを……イリヤは?」

 

「私もシロウと同じグリーンカレー、それと食後に薔薇のケーキと紅茶をもらえるかしら」

 

「かしこまりました。しょうしょうお待ちください」

 そう言ってウェイターは厨房へと向かっていった。

「結構いいかんじの店じゃないか」

 

「そうね……でも――」

 

 俺の問いかけに対してイリヤは少し不満のようだ。

 

「(まあ、|欠片《・・》は集まってないようだし、放っといても大丈夫よね)……後は料理次第ってことね」

 

 若干間があったが気にすることでもないだろう。

 

「お待たせしました。グリーンカレーです」

 

 お、頼んだ料理が来たようだ。腹も減ってることだし、食べることにしよう。

     

 結果として、頼んだ料理は全て美味しかった。イリヤが頼んだ紅茶もイリヤには好評で、俺が頼んだコーヒーも今まで飲んだ中で一番美味しかった。途中ウェイターの彼女らしい人が来店し、ここのマスターらしき人物も交えて少し騒がしくなったが、そこは店のBGMだと思って聞き流していた。……コスプレ喫茶にするってのはさすがに……

 

 

     *

 

 

「今日は楽しかったね」

 

「そうだな」

 

 帰り道、イリヤは少し残念がるように呟いた言葉に、俺は相づちを返した。

 

「結局、買ったのは謎のぬいぐるみ|(これ)だったわね」

 

 そう言ってイリヤはぬいぐるみの顔を掴んでぐにゃぐにゃさせる。

 

「そうかな? 俺は結構充実してたけどなあ。美味しい店とか見つけたし」

 

 今度新都にデートに行ったときにもう一度行こうかな?

 

「シロウ、早く中に入りましょ」

 

 あ、いつの間にか家まで来てしまった。

 

「イリヤ、ちょっと待ってくれないか?」

 

 家にはいる前に、|あれ《・・》を渡しておかないと……

 

「どうしたのシロウ?」

 

「イリヤ、ちょっと目をつぶってくれないか?」

 

 イリヤは首をかしげたが、素直に目をつぶってくれた。

 

 俺はポケットから素早くプレゼントを取り出し、イリヤに着ける。

 

「イリヤ、眼を開けていいぞ」

 

「もう、シロウったらなにす……え!?」

 

 俺がイリヤに贈ったのはネックレス。

 

「シロウ、これって?」

 

「ああ、俺からイリヤへのクリスマスプレゼント。どうかな?」

 

 プレゼントしたのは真ん中に小さなルビーが埋め込まれたクロスペンダント。『恋人には贈り物をするほうがいいですよ』と、桜からアドバイスをうけて、ちょっと値がはる店に買いに行って買ってきたのだ。因みに、桜に参考のためについてきてくれないかと頼んだらジト目で睨まれたのはイリヤには内緒である。

 

「………シロウ、ちょっとしゃがみなさい」

 

「お、おう」

 

イリヤが顔をうつむかせながら呼んだので、もしかしたら、プレゼントを気に入らなかったか?そう思いながらイリヤの近くにしゃがみこむと、

 

チュッ

 

「ッッッ!!?」

 

 突然のことで頭が真っ白になった。だってイリヤが俺にキスをし「シロー、早く中に入りましょー」………へ?

 

 俺の目の前にいたイリヤはいつの間にか玄関近くまで歩いていた。俺はそのあとを慌てて追う。

 

「イリヤ、さっきのあれって」

 

「さっきのはデートに誘ってくれたお礼よ。さっ、早く入りましょう」

 

 イリヤは俺がイリヤの顔を見えないように隠しながら玄関を開ける。その瞬間。

 

「「「メリークリスマス!!!」」」

 

 玄関で遠坂、桜、セラ、リズ、大河が俺たちに盛大にクラッカーを鳴らした。

 

「遠坂、これって!?」

 

「ふふん、驚いた士郎。あんた達がデートに行ってる間に、私たちで準備したのよ」

 

「去年は藤村先生と先輩と私の三人だけだったんですけど、イリヤちゃんも加わったしセラさんにも手伝ってもらいました」

 

「セラ、リズいつの間に準備してたのよ?」

 

 イリヤは目を開いたままセラとリズの方を見る。

 

「一昨日電話来たからそのままオッケー出しちゃった。今日はイリヤが行った後スーパーに買い出し〜」

 

「すみませんお嬢様。桜さんがお二人には内緒にとのことで……」

 

 それであの時ショッピングセンターにいたのか。

 

「シロウ私もおなかすいた~。早く食べましょ」

 

「そうよイリヤちゃん、私もおなかすいたから早く食事にしましょ~。ほら士朗はや『なにも手伝わなかった藤村先生は黙ってください!!!』………はい」

 

 藤ねえ、何もしてなかったのかよ………

 

「ほらシロウ、タイガは置いといて早く食べましょう」

 

「ああ、分かったわかった」

 

「お嬢様、私は今回はスペアリブに挑戦してみたのでぜひともお味見を」

 

「セラの作ったアレおいしかったよ~」

 

「こらリズ、あなたつまみ食いしたわね!!」

 

「先輩、シャンパンを用意しましたから私がグラスにおつぎしますね」

 

「あーーー、サクラそれあたしの役目ーーー!!!」

 

「ほらほらそんなことで喧嘩しない、藤村先生も早く復活してください。ほら士朗、さっさと上がりなさい。家主がいないんじゃパーティー始めれられないじゃない」

 

 やれやれ、今日はまだまだ終わらないな。俺はそう思いながら玄関で靴を脱いだ。

 

 

 

 

 

 

 
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