No.521646 真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ十八2012-12-22 22:49:32 投稿 / 全16ページ 総閲覧数:7147 閲覧ユーザー数:5399 |
「一刀…そこにいるそれは何?」
俺達が孫呉の陣に到着し、全員揃って挨拶に出向いた時に、雪蓮が最初に
発した一言がそれである。
雪蓮の視線の先には、麗羽の後ろに隠れてこちらを伺う美羽の姿があった。
「何って…見ての通りだけど?」
俺はしらっとそう答えるが、
「何で袁術があんたの所にいるのよ!!」
雪蓮は完全に激昂し、今にも斬りかからんばかりの勢いであった。
どうやら冥琳は留守のようなので、雪蓮を止められる者がこの場にいない。
「や、やっぱり孫策は怖いのじゃ…ガクガクブルブル、ガクガクブルブル」
美羽は麗羽の服の裾を掴んだまま震えていた。
「美羽は俺達の仲間になった。今回も我が軍の将としての参戦だ」
それを聞いた瞬間、雪蓮は呆れた顔をする。
「将ねぇ、袁術なんかに何が出来るっていうのよ?一刀は有能な者しか取らな
いのかと思ってたけど、女に関してはそういう趣味なわけ?」
雪蓮は朱里の方を意味ありげに見ながら、そう言い放つ。
正直殴ってやりたい衝動には駆られるが、平常心を保つよう努める。
「…そういう事を言うか。なら俺達はお前達とは戦えないな。全軍引き揚げだ!
この戦いは右将軍殿が解決するそうだからな!!」
俺がそう言って引き揚げ、北郷軍の者達はそれに続いて引き揚げる。
呉の面々はそれを冷ややかに見つめていたが、
「あ、あの…一体これはどういう事ですか?せっかくの援軍が…」
呂蒙は一人そう言って慌てふためいていたのであった。
「お頭!援軍に来た北郷が孫策と喧嘩して引き揚げていっちまったそうです
ぜ!今なら孫呉の野郎共を叩ける絶好の機会ってもんだ!」
張怨の元へ部下がそう報告してきた。しかし、
「それは罠…放っておきなさい」
張怨は取り合わない。
「罠?俺達を誘き寄せようって事ですかい?」
「間違いなく」
「ふうむ、そうなんですかね。まあ、お頭がそう言うのでしたら」
報告に来た部下はそう言いながら去って行く。
「北郷、そして諸葛亮が来ましたね…今こそお嬢様の仇を討つ時。見ていて
ください、お嬢様。七乃はあなたを追い落とした者達を全て排除してご覧
に入れますから…」
張怨は空を見上げながらそう呟いていた。
・・・・・・・
「くしゅん!」
「どうしました、美羽さん?お風邪でもひきましたかしら?」
「いや、そうではないのじゃが…誰ぞが妾の噂でもしてるのじゃろうか?」
「きっと美羽さんの『ふぁん』とかいう者達が褒め称えているのですわね」
「おお、そうなのか!?ならば、妾も一生懸命歌ってきた甲斐があったという
ものじゃ、ぬははーーーーー!」
「お~ほっほっほっほっほっほ!お~ほっほっほっほっほっほ!!」
相変わらず意味不明な高笑いを上げる袁家姉妹に、斗詩と猪々子はため息を
洩らすのであった。
「お頭!北郷軍の奴ら、本当に荊州へ引き揚げちまいやがったですぜ!!」
その報告に張怨は驚く。
「まさか…そんなはずは…孫策も自軍のみで私達との決着をつけれない事位は
わかっているはず…なのに何故?」
・・・・・・・
「どういう事だ、雪蓮?北郷軍が全て引き揚げていったというのは?私が建業
に戻っている間に何があったんだ、答えろ!!」
予備兵力との交替や補給の為に建業に行っていた冥琳が陣に戻って来て最初
に聞いた報告が『北郷軍の引き揚げ』であったので、雪蓮に詰め寄っている
のだが、雪蓮は仏頂面のまま何も答えない。
「黙っていても何もわからんぞ!答えろ、雪蓮!!」
「あ、あの…」
「何だ、亞莎!今はこいつと話しているのだ、報告なら後にしろ!!」
口を挿もうとした呂蒙に冥琳は苛立ち紛れに怒鳴りつける。
「ひっ!あ、あの、でも、今お話ししている事に関してなので…」
呂蒙はその迫力に押されながらも言葉を続ける。すると、
「ほう、そうなのか。なら、この阿呆に代わってお前が話せ」
冥琳は雪蓮を放っておいて呂蒙に目線を向ける。
「は、はい!実は北郷殿と共に袁術が来てまして…」
「袁術だと!?それで?」
「その、北郷殿が『袁術に将として加わってもらった』と仰られましたら雪蓮様
が諸葛亮殿を見ながら『あんたの女の趣味はそういうのなの?』とか言ったら
北郷殿が怒り出して帰ってしまわれまして…」
そこまで聞いた冥琳は盛大にため息をついた。
「ふん!ちょっとからかってやったら怒り出してさ、ガキみたいな奴なんだから!」
ようやく雪蓮はそう口にする。
「ガキか…それはお前の方だ!!」
その言葉に冥琳は今までに無い迫力で雪蓮を怒鳴りつける。
その迫力にさすがの雪蓮もたじろぎ、呂蒙に至っては腰を抜かしていた。
「確かに我々は袁術に含む所は山ほどある!だが北郷とてそれは重々承知している
はずだ!それをあえて連れて来たという事は袁術が何かしら知っているか、これ
からの戦略の鍵になると判断したと他ならないからだろう!それを確かめもせず
に…この大馬鹿者めが!!」
その場に収まりきらない冥琳の怒りの気が溢れ出す。
「亞莎!その場にいる者は誰もそれに気付かなかったのか!!」
その迫力を向けられた呂蒙は頷くので精一杯であった。
「揃いも揃って…もういい!勝手にしろ!!」
冥琳はそれだけ言うと陣から出て行った。
「あ、あの…冥琳様、どちらへ…」
「私も勝手にさせてもらうだけだ!」
呂蒙の問いかけに冥琳はただそれだけ答える。
そしてその場には、まだ腰を抜かしたままの呂蒙とうなだれた様子の雪蓮のみが
残されたのであった。
「北郷軍が荊州に引き揚げたとは言っていたが、まだ完全には引き揚げてはいない
はず…何とか引き止めねば」
冥琳は単騎で北郷軍を追いかけていた。
「冥琳様、お一人は危のうございます!」
それを心配して明命が付いてきていた。
そこへ木の上から声がかかる。
「お前が周瑜にゃ?」
「誰だ!」
「質問に答えるにゃ。別に危害を加えるつもりはないにゃ」
冥琳は明命に辺りを警戒させながら答える。
「ああ、確かに私が周瑜だ。質問には答えたぞ、姿を現せ!」
すると木の上から人影が舞い降りる。
「お猫様!!」
それを見た明命が眼を輝かせる。
「猫じゃないにゃ!みぃは南蛮大王孟穫にゃ!!」
「孟穫だと…南蛮の者が何故ここにいる!」
「朱里にお前を案内するように頼まれたにゃ。必ず周瑜が戻ってくれば追いかけて
くるからと」
その言葉に冥琳はため息を洩らす。
「やれやれ、全てお見通しか。それとも私がその場にいなかったのですぐにそれを
考えたのか…どちらにしても相変わらずの読みだな。わかった、私を朱里の所に
案内してくれ」
冥琳と明命は美以の案内で朱里のいる場所へ向かった。
「朱里、連れて来たにゃ!」
二人が連れて来られたのはそこからそれほど遠く離れてない場所であった。
「美以ちゃん、ご苦労様でした」
そこに朱里が現れる。
「冥琳さんならきっと来てくれると思っていました」
「その前に…何故南蛮の王がお前達と一緒にいるんだ?」
「美以ちゃん…孟穫さん達、南蛮の人は私達の仲間になってくれたからです」
「朱里や一刀兄ィと一緒にいると美味しい物が沢山食べれるにゃ!だからこれからも
一緒に戦うって決めたにゃ!」
「そして彼女に伝令をお願いしたのはこの姿なら、例え見つかっても敵方の者だとは
思われにくいからです」
そこまで聞いた冥琳はやれやれと肩をすくめる。
「本当、お前達と接していると驚くばかりだな」
「ところで、冥琳さん。ここにお呼びした理由なのですが…」
そこまで言って朱里は冥琳達に頭を下げる。
「なっ、何をしている。別にお前に謝ってもらうような事は…むしろこっちが謝らな
くてはならない位だというのに」
「いえ、美羽さん…袁術さんに対して孫呉の皆さんが快く思っていない事を知ってて
彼女を連れて行くのを事前にお知らせしなかった事に関しては、こちらにも責任の
ある事です」
「いや、それについても謝る必要は無い。おそらく先に知らせたら、余計に雪蓮の奴
を激昂させるだけだしな。こちらこそすまない、今我が軍の者達は皆苛立っていて
な。すぐに怒り出す事が多くて私も苦心している所なんだ」
冥琳はそこまで言ってため息をついた。
「それはやはり張怨との戦いにおいて主導権を取る事が出来ていないからですか?」
「ああ、まさしくその通り。向こうの徹底した一撃離脱戦法に翻弄されててな。呂蒙
の加入で拠点を一つ潰す事には成功したのだが、張怨めはさっさと逃げてしまって
いてな。新たな場所からまた一撃離脱の繰り返しさ。これでは何時、雪蓮が暴走し
て敵中に突撃していくか分からん」
冥琳はそこで再びため息をつく。
「ところで…蓮華さんはどうされているのですか?」
朱里のその質問を聞いた瞬間、冥琳の顔が凍りつく。
「答えにくい事なら別に…」
「いや、そうではないんだ。そうではないのだが…」
そう言って冥琳はまた口ごもるが、意を決したように話し始める。
「我が方の内情を話すのは心苦しくはあるのだが、どうしても解決の糸口が見つからな
くてな…実を言うと、私が一度建業に戻っていたのは補給の他に蓮華様の事があった
からなんだ」
「蓮華さんが建業に?何処かお怪我でもされたのですか?」
朱里のその質問に冥琳は嘆きの度合いを強める。
「まだそんなのだったら良かったのだがな…穏が敵の毒矢を受けた事は聞いているな?」
「はい、確か華佗さんが治療に向かわれたと…まさか?そういえば、先程の陣の中に
お姿が見えませんでしたが…」
「いや、さすがは華佗だけの事はあって命に別状は無い。だが…その毒のせいで右腕を
切断せざるを得ん状況であったのだ。それを蓮華様は自分のせいだとすっかりふさぎ
こんでしまっていてな。建業で静養中なのだが…一向に立ち直る気配を見せない所か
ここ数日食事もまともに取らなくなってしまって…このままでは死んでしまう。雪蓮
はすぐにでも張怨の首をあげれば蓮華様も立ち直るに違いないと躍起になって攻めか
かろうとするばかり…一体どうすれば良いのだ?お主の知恵の中に、これを解決する
良い方法はないか?あったら教えてくれ。頼む、この通りだ」
冥琳はそう言って朱里に土下座をする。
「はわわ!?冥琳さん、そんな事しないでください!!私でお力になれる事があるなら
幾らでもお教えしますから!!」
朱里は慌てて冥琳を抱き起こす。
「ならば、何か良い方法があるのか!?」
「とはいったものの、心の病はそう簡単に癒えるものではありません。ううっ、本当は
この方法を取るのは嫌なんですけど…」
「何だ!?それは荒療治なのか!?多少の事はいい、蓮華様が立ち直ってくだされば…」
朱里はしばらく逡巡した後、
「わかりました。しかしこの方法は誰にも知られず、そして迅速に行う必要があります。
なので明命さんのお力もお借りしなければなりません」
「私ですか?一体どのような事を!?」
急に話を振られた明命が素っ頓狂な声をあげる。
「まずは建業に密かに忍び込む必要がありますので…」
朱里が語った内容に二人は驚きのあまり開いた口が塞がらない。
「それで蓮華様が立ち直ってくださるのなら、私は構わないが…良いのか、朱里?」
「ああああああ……朱里様、過激です。まさかそのような」
「さっきも言った通り、本当は嫌なんです。考えただけで泣き喚いてしまいそうなんです
が、このままでは埒があきません。蓮華さんが立ち直らないと、勝利の糸口も見えてこ
ないですので…これ以上は言わせないでください。これ以上語ったら私…」
朱里は眼に涙を溜めながら何とかそこまで話す。
「すまない、朱里。事が終わったら蓮華様の事はこっちで何とかする」
冥琳はそう言って頭を下げた。
「…で?何故俺が建業に忍び込むんだ?」
「私も詳しい事は…朱里様の言った通りにしていただければ」
俺は急に朱里より建業にいる蓮華に会うよう懇願され、了承はしたものの…明命に先導
されて来てみれば、行くというより忍び込むといった状況になっており、何故こんな事
をするのかいまいち良く分からない。
「一刀様、こちらです」
夜も更けた頃、明命に案内され俺は城内のある部屋の前に来ていた。
「ここは…?」
「蓮華様のお部屋です」
「えっ!?…むごご」
あまりの驚きに声をあげようとした瞬間、明命に口を塞がれる。
「しーーーーーっ、大きな声を出してはダメです」
「でもこれじゃまるで夜這い…まさか」
「それは一刀様がお考えになれば良い事です。それでは私はこれで」
明命はそう言い残したまま闇に消える。
「俺にどうしろって言うんだ…朱里」
俺はそうボヤきながらとりあえず部屋の戸をノックする。しかし返事はない。
「この時間ならさすがに寝てるか…?」
しかし戸に手をかけると鍵もかかってなく、簡単に開いてしまった。
そして俺の眼に飛び込んできたのは…。
「えっ…?蓮華だよな…?」
そう確認せねばならないほど憔悴しきった状態の蓮華だった。
「誰…こんな時間に何…?」
一応意識はあるらしく、こっちに眼を向けたその瞬間。
「え…えっ、一刀!?何故!?幻でも見えてるの!?」
急に慌てふためいて衣服の乱れを整える。
「まさか本当に一刀だなんて…ごめんなさい、見苦しい物を見せたわね」
「いや、見苦しい所か素晴らしい物で…」
一応そんな軽口を叩いてみたが、場の雰囲気が重くあまり話がはずまない。
「でも良かった。建業に戻ったって聞いてたから何処か具合が悪いのかとばかり
思っていたんで…思ったより元気そうで何より」
「私はね…でも…でも…穏が、私のせいで…」
「穏が毒矢のせいで右腕を失った話は聞いた。でも、それを君のせいだなんて思って
はダメだ。むしろ『私の為にありがとう』位の気持ちでないと、主君なんて務まら
ないよ」
「その位わかっているわよ…昔、母様や姉様は確かに自分の為に怪我したり死んでい
った者達にそうしていたわ。でも…私は…こんなの主君として失格なのはわかって
るけど…うっうっ」
蓮華はそこまで言うと布団を握り締めて泣き始める。これはかなりの重症だな。
「私のせいなんだ…私があそこで飛び出さなければあんな事にはならなかったんだ…
やっぱり私なんかが姉様みたいになるなんて無理だったんだ…」
「雪蓮みたいになるねぇ…ふん、鼻で笑うね。蓮華の目標はそんな程度だったなんて」
俺がそう言うと、蓮華は今まで泣いていたのが嘘のように怒りの目つきで俺を睨む。
「おや、どうしました。何か俺の顔に付いてますか?」
俺はとぼけてそんな事を言ってみると、
「訂正しなさい…」
「何を?」
「雪蓮姉様をそんな程度って言った事をよ!」
「無理。だって俺そんな事言ってないし」
「今そう言ったでしょうが!?」
段々蓮華の眼に怒りの色が籠ってくる。
「俺が言ったのは『蓮華が雪蓮みたいになるのが目標』というのがそんな程度なのかと
いうことだけど?」
「何故よ、姉様みたいになろうとする事に何の問題があるっていうのよ!?」
「そりゃ、どれだけ頑張ろうとも蓮華は雪蓮になれないからだよ。それと同時に雪蓮も
蓮華になれないけどね」
それを聞いた蓮華はきょとんとした顔となる。それにお構いなしに俺は続ける。
「前に雪蓮は『国を治める器は蓮華の方が上」だと言っていた。実際、雪蓮が主だった
時よりも今の方が呉の政はしっかりしているしね。だから『雪蓮は雪蓮、蓮華は蓮華』
他の何にもなれないって事さ」
「姉様は姉様、私は私…」
「そう、だから今度の戦だって蓮華は雪蓮の真似をするのではなく、自分に合った戦い
方を考えればいいんじゃないかな?幸いにも助言してくれる人はいるんだしさ」
俺の話を聞きながら、蓮華はずっと『姉様は姉様、私は私』と繰り返していた。
不思議な事に段々と蓮華の瞳にに力が戻ってくる。
「ありがとう、一刀。どうやら私、ちょっと気が動転していたみたいね。私一人でこう
やってウジウジしていたって何も前進しないし…よし、当たって砕けろね!」
「いや、砕けたらダメだと思うけどね」
「もう、そういう事言わないの!」
蓮華はそう言って満面の笑顔を見せる…やべぇ、可愛すぎる。
「さて、蓮華が元気になった事だし、俺はこれで…」
俺は早々に退散しようとしたが、
「ちょっと待って。一刀がここに来たのってそれだけの為?」
「うん、まあ、一応…」
「それでもこんな時間に女の子の部屋にやって来て何も無しなんて、女に恥をかかせる
ような事はしないわよね?」
蓮華はそう言って身体を密着させてくる。
「いや、待て、落ち着け。こういう事は勢いでするものでは…」
「こういうのは、時には勢いも必要でしょ?」
蓮華はそのまま俺を寝台の上へ引っ張り上げる。
そして何時の間にか俺の上に蓮華が乗っかる形になっていた。
「あ、あのさ…というか俺でいいn…ウプッ」
俺が言葉を続けようとしたその唇を蓮華は自分の唇でふさぐ。
「プハッ…ふふ、接吻しちゃった♪」
蓮華はそう言って艶かしく自分の唇を舌で舐める。
「言っておくけど…私も初めてなんだからね。それにまだちょっとだけ怖いの。だから…
ちょっとだけでいいから勇気を分けてほしいの。ちなみに拒否権は無しよ」
そしてそのまま俺の上に覆いかぶさってくる。正直、朱里の顔が頭をよぎるが…。
「ダメよ。こういう時に他の女の子の事を考えちゃ…」
再びの蓮華とのキス(しかも今度はディープ)で頭の中は完全に真っ白になっていく。
ええい、ままよ!!
俺も蓮華を抱き寄せ、服を脱がせていった…。
「なあ、蓮華。食事も喉を通らない位衰弱してたんじゃなかったのか?」
事が終わり、俺の腕枕に乗っかる蓮華に質問をしてみる。
「うん?確かに食事は喉を通らない時はあったけど…でも大丈夫。一刀の一杯飲んだ
からね♪」
そういう事をはっきり言われると恥ずかしいのだが。
「いや、そうじゃなくて…ていうか本当に俺で良かったのか?」
「そういう事はする前に聞くものよ」
蓮華はそう言いながら笑みを浮かべる。何で女の子は、事が終わった後はこんな艶っ
ぽい顔になるんだ。朱里も何時もそうだったし…。
「本当に嫌だったら最初から部屋から追い出すわよ。それに私達のような立場の女はね、
正直結婚相手とかも望む形では出来ない事の方が多いのよ。だから最初位、強引にでも
気に入った相手としたいものなのよ。でも心配しないで、別に朱里からあなたを取ろう
っていうわけじゃないから」
また朱里の事を考えていたのがバレたのか、蓮華はそう言っていた。
「さあ、一刀は早く出て行った方がいいわよ。他の者にバレると大変だからね」
そのまま夜が明ける前に俺は建業から退散したのであった。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
今のはメイド喫茶に入った時の店員さんの言葉ではなく…朱里の声である。
「ごめんなさい!!」
その瞬間、俺は土下座して詫びていた。
「ひゃ、ひゃい!?一体どうなされたんでしゅか?」
さすがに朱里もそれには驚いていたようだ。
「あの、あの、俺…蓮華と」
そこまで言いかけた俺を遮るように朱里は話し始める。
「蓮華さんはお元気なんですね?」
「え…あ、ああ、最初は元気ない様子だったけど…まあ、最後には。すぐにでも戦陣に
戻るって言ってたよ」
「そうですか、ならまずは一安心ですね」
朱里はそう言って話を切り上げようとする。
「ちょっと待って、朱里。まだ言い終わってない事が『それについては気にしなくても
いいんです。私が提案した事ですから』…えっ、それってどういう?」
「蓮華さんが元気を無くしていると冥琳さんから聞いて…それならご主人様なら元気に
してさしあげられるんじゃないかと…思惑通り行って良かった…でしゅ…」
そう言っている朱里の声は段々と涙まじりになっていた。
「朱里…ごめん」
俺は朱里を後ろから抱きしめる。
「ですから、ご主人様が謝る事は何も…はわっ!」
俺はそれに構わず朱里を押し倒した。朱里にも蓮華にも悪いがまだ気分が完全に治ま
っていなかったようだ。
そのまま空が白むまで事は続いた。
場所は変わり、雪蓮の陣。
「申し上げます!孫権様のお越しです!!」
「蓮華が!?大丈夫なの?」
そして入ってきた蓮華を見て驚く。
「蓮華、その髪…」
蓮華は長かった髪をばっさりと切り落としていたのだ。
「姉様、ご迷惑をおかけしました。今より私も軍の指揮に戻ります」
変わったのは髪形だけでなく、身にまとう雰囲気も前より威厳が増したような感じに
なっていたのであった。
「まずは一刀達との共闘についてですが…」
それを聞いた雪蓮は機嫌を損ねたような表情になる。
「む、一刀の力なんて借りる必要なんて無い『姉様、そんな我が儘を言っている場合で
はありません』…えっ!?」
蓮華は雪蓮を説き伏せるように話かける。
「一刀が袁術を仲間にした話は聞きました。確かに我々は袁術に嫌な思いを散々させら
れました。でも悲願を達成した今、袁術個人に対して何を恨むのです?むしろ、袁術
がこっちを恨んでもおかしくはないではないですか。しかし、どうやら袁術本人には
そのようなつもりはまったく無い様子。ならば、ここはこっちが袁術を利用してやる
位の気持ちで行きませんとね」
雪蓮は蓮華に対して何も言い返せなかった。むしろ、
「蓮華…ふふ、今の主はあなただし、そこまであなたが言うのであれば私に異存は無い
わ。それに今更なりふり構っていられないわね。一刀でも袁術でも、利用できる物は
利用しないとね」
そう言って、成長を遂げた妹の意見を支持する。
「冥琳!北郷殿に使者を送り、改めて共闘を乞うよう伝えて来て!」
「それには及びません、もうすぐ明命が連れてくる手筈になっておりますので」
冥琳は笑ってそう答える。蓮華もそれにつられて微笑み、
「では北郷軍が合流次第、張怨戦の軍議を始める!此度こそ奴との決着をつけるぞ!!」
力強く号令をかけたのであった。
続く(おそらく)
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
今回は…遂にヤッちまった。色々な意味で…。
だからといってこれが種馬の解放に繋がるかどうかは…
でも皆、黙ってないような気もする…どうしよう?
まあ、一応蓮華さんも成長したという事でご勘弁を。
でもこんなんで立ち直って本当にいいのか、蓮華?
とか我ながら思ってしまいますが。
次回は本当に張怨との戦に入ります。出来れば決着を
つけたい所ではありますが…。
それでは次回、外史動乱編ノ十九でお会いいたしませう。
追伸 別にこれから朱里と蓮華による争奪戦とかが発生する
わけではないですので…あくまでも一刀の一番は朱里
に違いありません…あっ、これじゃ命が黙ってないな。
こりゃ大変だ。
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お待たせしました!
遂に一刀達が参戦する事によって
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