No.521215

東照権現と独眼竜は未来へ行く 第八話

鉄の字さん

試合その後です。

2012-12-21 22:44:46 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2792   閲覧ユーザー数:2564

 

試合終了後、肩に担いでいる途中で目が覚めた一夏と共に保健室へ向かった。

一夏の外傷は打撲だけだったので湿布薬を貼る程度で済んだ。

 

 

しかしロッカールームへ行く途中………

 

 

「政宗、あれ何だ?」

 

 

「Oh my god………」

 

 

政宗は呆れ顔に手をやり、顔が引きつっている一夏が指差す方向には

 

 

「徳川君、カッコよかったよ!!」

 

 

「おお、ありがとう!」

 

 

「あの武術って徳川君が考えたの?」

 

 

「ああ!あれはワシの良き友と一緒に考えたんだ!」

 

 

「あのっ!サイン下さい!」

 

 

「さいん?あぁ、署名の事か!お安い御用だ!」

 

 

「ねぇねぇ、とっくー、今度一緒にご飯食べない〜?」

 

 

「ああ、もちろんだとも!…………とっくー?」

 

 

「ずるいわよ本音!私も行く!」

 

 

「私も私も!!」

 

 

「おお!皆行くか!まずはこの絆に感謝を!!」

 

 

一組の女子に続き他クラスの女子にどうやって情報が漏れたのか二年三年の生徒に囲まれた家康がいた。

 

 

「一夏、迂回してlocker roomを目指すぞ。」

 

 

「お、おう。」

 

 

今家康に関わると面倒な事が起こると判断した政宗は一夏に指示し、一目に付かないように抜き足差し足ともと来た道へと戻ろうとする。

 

 

まあ、普通こういう事になるとパターン的にオチは見えているのだが………

 

 

「お!独眼竜と一夏じゃないか!」

 

 

手を振りながら超満円の笑みを浮かべた家康に呼ばれギクッと背筋がピンッとなる二人。

 

 

「あ、本当だ!」

 

 

「きゃ〜!織斑君と伊達君よ!!」

 

 

「カッコよかったよ!!」

 

 

「握手して〜!」

 

 

「サイン下さい!!」

 

 

二人の存在に気づくやいなやあっという間に女子に囲まれてしまった。

 

 

「Ah〜、thanks. ま、これからもよろしく頼むわ。」

 

 

「お、俺、サインなんて書いたことないんだけどな………」

 

 

揉まれて揉まれて、やっと離してロッカールームに辿り着いたのはそれから数時間後だった。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ〜、今日は本当に素晴らしい絆を結べたな!」

 

 

「「そうですね………」」

 

 

「ん?どうした二人とも、元気ないぞ?」

 

 

お前の性だよ!!と声に出さないのは二人の優しさかそれとも呆れてかのどちらだろう。

 

 

「そういえば家康、セシリアはどうしたんだ?」

 

 

「セシリア殿は保健室で少し寝た後直ぐに起きてな。少し話をしてから帰って行ったぞ。」

 

 

「少し話をしたのか?」

 

 

「あぁ、まあ少しな。」

 

 

曖昧な返事をする家康。

そこで着替えが終わり三人は更衣室から出るとその近くに箒がいた。

 

 

「箒?寮に帰ったんじゃないのか?」

 

 

「う、うむ。たまたま通りかかってな。」

 

 

因みにアリーナから寮への道に更衣室はないので通りかかれるわけではない。

 

 

「ハア?こんな所にたまたまか?」

 

 

「た、たまたまだからこそだ!」

 

 

顔を真っ赤にして声を荒げる箒を見て政宗は箒は一夏と帰りたいという事に気づいた。

 

 

「おい家康、juice買いに行くぞ。」

 

 

「構わんが一夏はいいのか?」

 

 

「箒が一夏に用があるみたいだしな。ま、夫婦仲良くすりゃいいだろ。」

 

 

「ふ、ふふふ夫婦!?」

 

 

「何だよ夫婦って………」

 

 

政宗の発言に箒はさらに顔を真っ赤にして、一夏は呆れ顔になった。

 

 

「そう言うわけだから一夏と箒は“二人っきり”で帰ってくれ。」

 

 

二人っきり、という言葉だけ強調するかのように発音した政宗は家康を連れて自動販売機がある所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………政宗め、いらん世話を。」

 

 

「ん?何か言ったか?」

 

 

「な、何もない!それよりも早く帰るぞ!」

 

 

「ちょ、おい!先行くなって!」

 

 

速歩きで先に行く箒に一夏も慌てて着いて行く。

やっと一夏が追いついたのはいいがお互い無言のまま歩くだけである。

そこで沈黙を破ったのは箒だった。

 

 

「その、だな、一夏。」

 

 

「ん?何だ?」

 

 

「試合に負けて悔しいか?」

 

 

「………全力出して負けたんだ。悔しくないわけがないだろ。」

 

 

「そ、そうか。」

 

 

「だからさ箒。」

 

 

「ど、どうした?」

 

 

「俺はもっと強くなる。皆を守れるくらいな。だから、これからも剣道の練習よろしくな。」

 

 

決意を決めた一夏の目を見た箒はフッと微笑む。

 

 

「だったら私以上に強くなってもらわなくては困るな。」

 

 

「ハハハ、ああ、やってやるよ。」

 

 

仲良く肩を並べて歩く二人を見守るかの様に夕陽が二人を照らしていた。

 

 

 

 

 

これは数時間前の家康とセシリアの会話である。

 

 

「お?目が覚めたかセシリア殿。」

 

 

「と、徳川さん!?ど、どうしてここに!?」

 

 

「いや、いくら戦ったとはいえ女子に手を出したから少し謝ろうと思ってな。すまなかったな。」

 

 

「い、いえ元はと言えば私が挑んだ事ですから頭を上げて下さい!」

 

 

「そう言ってもらえると助かる。」

 

 

顔を上げて微笑む家康にセシリアは思わず赤面し視線を背けてしまう。

 

 

「その、徳川さん、前はあのような態度で日本を侮辱してしまって申し訳ありません。」

 

 

前の事を思い出し家康に対して今度は逆にセシリアが頭を下げた。

 

 

「ハハハ、その事はもういい。それにワシに頭を下げる必要はない。あー、だが独眼竜と一夏には謝っといた方がいいな。」

 

 

「で、でも!」

 

 

「それよりもワシとの試合で何を感じた?」

 

 

「え?あ、えーと、何と言いますか…………徳川さんは一人で戦っていない気がしましたわ。徳川さん皆と繋がっている気がしまして…………」

 

 

「そう絆だ!セシリア殿、お前が感じた物こそ絆である!ワシにはこの学園に結んだ絆がある!その絆こそがワシの力の源なんだ!」

 

 

「絆………ですか。」

 

 

嬉しそうに語る家康にセシリアは思わず涙が零れてしまった。

 

 

「せ、セシリア殿?どうして泣いている?」

 

 

「いえ、昔の事を思い出してしまいまして…………少し聞いてくれませんか?」

 

 

セシリアは見ての通り名家の娘である。

その父はその名家に婿入りして、どこか母に引け目を感じていたであろう弱々しい感じだった。

それに対し母は強い人で会社を幾つも成功させた。

厳しい人だったが、正に憧れの人物であった。

だが、その両親も三年前の事故で亡くなった。

 

 

彼女の手元に残ったのは莫大な財産。

しかし、彼女に来るのは金の亡者ばかり。

それから遺産を守るために勉強し、その一環で受けるIS適性テストでA+が出た。

政府からは国籍保持の為に好都合な条件を出し、遺産を守る為にそれを即断した。

そして、ブルー・ティアーズのデータをとるために日本へ。

 

 

 

「そうか………そんな事があったんだな。」

 

 

「ええ、だから今の私には徳川さんの言う絆と言う物が無くて…………」

 

 

その瞬間、セシリアの言葉を遮るかのように家康はセシリアを抱き寄せていた。

家康もセシリアも今はISスーツを着ているので家康の筋肉質な体がセシリアによく伝わっている。

 

 

「と、とととととと徳川さん!!?こ、こんな所でそんな「頑張ったな。」

 

 

「そんな荒波にもめげず、誰にも頼らず、辛かっただろう。」

 

 

「そ、そんな事は…………」

 

 

「隠さなくてもいい。ワシはそんなにできた男ではないから何も言えないが泣くくらいの胸なら幾らでも貸してやる。だから…………存分に泣け。」

 

 

「う…………うわぁぁぁぁぁぁあああん!!!」

 

 

お母様!お母様!と叫びながら家康の胸に顔を押し付けて今までの苦労を流すように泣くセシリアを家康は慈愛の微笑みで受け止めていた。

 

 

「もういいのか?」

 

 

「ええ、泣いたらスッキリしましたわ。」

 

 

目に残った涙を拭い微笑むセシリアに家康もつられて微笑む。

 

 

「ではセシリア殿、ワシと絆を結んでくれるか?」

 

 

差し出した家康の右手をセシリアは右手で握手する。

 

 

「ええ、これからもよろしくお願いしますわ徳川、いえ家康さん。」

 

 

「よろしく頼むセシリア殿、いや、セシリア!」

 

 

今まで頼る事が出来なかったセシリアに頼れる、そして今まで会った事がない強い男ができた。

セシリアは一歩、歩を進める事ができたのだ。

家康はそんな彼女を祝うかのように今まで一番優しく微笑むのだった。

 

 

「それにしてもクラス代表は家康さんに決まりましたわね。」

 

 

「ああ、その事なんだが…………」

 

 

「どうかなされたのですか?」

 

 

「こうしようと思ってるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

「はい。と言うわけで一年一組のクラス代表は織斑一夏君に決まりました。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 

 

嬉々と話す山田先生に一夏は即座に手を挙げた。

 

 

「先生、質問です。」

 

 

「はい、織斑君。」

 

 

「俺、昨日の試合に関係ない上に政宗に負けましたよ。」

 

 

「それは…………」

 

 

「それはワシが辞退してお前を推薦したからだ!」

 

 

そこで家康が勢いよく立ち上がる。

隣にいる家康にギギギと機械が錆びれた音を出しながらそちらへ顔を向ける。

 

 

「家康…………?」

 

 

「ワシがクラス代表なるよりも一夏がクラス代表になった方がより多くの絆を結べそうな気がしたからな!」

 

 

二カッといい笑顔でサムズアップwithグッジョブ。

キレるにはいい材料である。

 

 

「イィィィィィィィエェェェェェェェヤスゥゥゥゥゥウウウ!!!!」

 

 

「うおっ、石田のモノマネか?」

 

 

「おっ!一夏、やる気満々だな!!さあ、来い!!」

 

 

殺意ムンムンにして目を真っ赤に光らして家康に襲いかかる一夏。

そして楽しそうに受けて立つ家康。

一気に騒ぎ出す一年一組。

 

 

まあ、当然の如くこれを収めるのは…………

 

 

スパァァァァァン!!

 

 

「騒ぐな、そして座れ馬鹿共。」

 

 

音は一つしか鳴ってないのに一斉に頭を押さえてしゃがみ込む一夏と家康、そして何故か政宗。

と言うかさっきまで端の方にいたのに瞬時にここまで来るとはこれ如何に。

 

 

「ぬぉぉぉおお…………」

 

 

「こ、これは効くなぁ…………」

 

 

「何で俺も…………!」

 

 

政宗の呻きも無視し千冬は教卓に行く。

 

 

「くだらん揉め事は十代の特権だが、あいにく今は私の管轄時間だ。自重しろ。」

 

 

「いや俺、二十代………」

 

 

バシンッ!!

 

 

「伊達、何か言ったか?」

 

 

「イエ、ナニモアリマセン………!」

 

 

危うく口滑る政宗にまたもや一撃。

頭が机にめり込んでいるのは錯覚であると信じたい。

 

 

「………こうして善良な市民は暴力に屈するのか。」

 

 

バシンッ!!

 

 

「織斑、何か言ったか?」

 

 

「イエ、ナニモアリマセン………!」

 

 

理不尽ここに極まれり。

 

 

「クラス代表は織斑一夏。依存はないな。」

 

 

はーい、と(一夏、政宗除く)クラス全員が一斉に答えた。

もうどうにでもなれHAHAHAHA、と半分諦めた様子で心の中で呟く一夏であった。

 

 

 

 

 

〜おまけ〜

 

 

「時に織斑、伊達、お前達、昨日の補習はどうした?」

 

 

「「………………あ」」

 

 

ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 

 

「今日は帰れると思うな。」

 

 

「織斑先生〜、おりむーとだっちーの顔、机の板貫通してま〜す。」

 

 

「………小十郎、俺は誇れるのか………?」

 

 

「…………政宗、その台詞は言ってはいけない気がする…………」

 

 
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