ゆりかごが消滅するのを見届け、五代達は心から安堵していた。全てが終わった。そう誰もが感じていた。そして邪眼が倒れたのと同じくトイやマリアージュも局員達や修道騎士達の手によって倒れ、完全に戦いは終了した。死者は奇跡的に出ず、負傷者はある程度いたものの完全勝利と呼ぶに相応しい結果を残して。
その代償ではないがなのは達は満身創痍。五代達ライダー達も肉体面はともかく精神面は疲れ果てていた。故に変身を解いて、全てが終わった達成感と安心感でその場に座り込んでいた。なのは達もそれと同じように座り込んでいたが、はやては何とか立ったまま、部隊長らしく周囲へ作戦終了を告げる。
―――これを以ってラボ奪回と邪眼撃破戦終了、やな。みんな……ほんまにお疲れ様。
その瞬間全員がサムズアップをした。はやてもそれに頷いてサムズアップを返す。その光景を、ティーダとヴァイスはやや離れた場所に置いてあるヘリの傍から見ていた。二人は、自分達がその輪の中へ入る事は出来ないと思い、離れていたのだ。最終決戦を潜り抜けた者達だけが共有出来る雰囲気。そう理解していたからだ。
故にティーダはそれを見届け、ヴァイスと軽く言葉を交わしてその場を静かに去る。自分は色々と面倒事があるのでそれを処理しないといけないと、そう執務官の顔で言い残して。去り行く背中をを敬礼で見送り、ヴァイスは視線をなのは達へ戻す。
今ははやてもその場へ腰を下ろして苦笑している。疲れていたから早く座りたかったと語り周囲を笑わせていた。その和やかな様子を眺め、ヴァイスは小さく笑みを浮かべながら視線を空へと移した。そこには澄み渡る青空が広がっている。トイと戦っていた空戦魔導師達や修道騎士達も既に撤収を終えていて、もうこの場に残っている者達はいない。
自分が操縦するヘリを護衛したり、救出作業を影ながら支えていた彼らの事を思い出し、ヴァイスは改めて感謝の意を伝えなければいけないと考えていた。それぞれの管轄や所属を超えた連携や協力。それには当然ぎこちなさがあった。それでも、ヴァイスは思う事がある。
「今日の事は、絶対これからの管理局や次元世界を変える。そんな気がするぜ」
その呟きが風に消えるのと同時に、五代達の方でも誰かが空を見上げて口を開いた。
―――本当に……終わったんだな。
真司がぽつりと呟いた言葉に誰もが言葉にならない気持ちを抱いた。全てが始まったのが翔一の海鳴出現とすれば、もう十年以上前になる。いや、邪眼が復活した時からとすればもっと昔だ。そんな長きに渡る戦いが今終わった。そう考える光太郎は一番感慨深いものがあった。
世紀王として生まれた邪眼。それが異世界にまで転移し、破壊の限りを尽くそうとしていた。本当ならばそれを阻止する仮面ライダーはいないはずの世界で。たしかに戦える者達はいた。なのは達を始めとする管理局や聖王教会の者達だ。だが、それだからこそ思う事があった。
「仮面ライダーが四人いた。なのはちゃん達がいた。そして管理局や教会の人達が、大勢の人達が支えてくれた。だから……勝てたんだな」
そう、きっとRXだけでも、龍騎だけでも、アギトだけでも、クウガだけでも邪眼には勝てなかった。四人揃っていても、なのは達がいなければ勝てなかった。管理局や聖王教会の協力がなければ多くの犠牲者が出ていた。全てが揃っていたからこそ、ゆりかごでの戦いも地上本部の戦いも勝てたのだ。
そう思っての言葉に五代達も頷いた。自分達が経験した中でも類を見ない程の激戦だったのだ。シャドームーンを模した姿も凄まじき戦士の力を有した姿も、一人では勝つ事はおろか善戦する事も厳しかっただろう。そう思う三人は笑顔を浮かべて告げていく。
「先輩達が三人もいたし、ジェイルさん達やなのはちゃん達もいたから俺は戦い抜けた。それに、ラボへの道を切り開いてくれたシャッハさん達やゆりかごまでの道を守ってくれた局員の人達も手を貸してくれた。仮面ライダーの意味と在り方、そして本質。それをみんなが教えてくれた」
「俺だってそうです。だから、仮面ライダーの名前をちゃんと名乗れるようになって嬉しかったし、呼ばれたりした事が凄く嬉しかった。クウガに会えて、BLACKさんと再会出来て、龍騎っていう同級生……って言えばいいのかな? とにかく先輩ライダーの話も聞けたし家族だって出来た。もう言う事ないです」
「うん、俺も。光太郎さん達と会えた事はすっ…………っごく、嬉しかった。なのはちゃん達からも色々教わる事があったしね。特に、真司君には先生とは違う意味で忘れられない言葉をもらったし」
そんな三人の言葉になのは達も笑う。先程まで命懸けで全次元世界の命運を賭けた戦いをしていたとは思えない雰囲気に。それに誰かがふと隊舎に残してきた者達の事を思い出したのだろう。早く六課に帰ってヴィヴィオ達を安心させてやろうと告げたのだ。それに全員が頷きを見せて立ち上がった時だった。先程まで誰もいなかったはずの場所に一人の男性が立っていた。しかも、その格好は黒一色。誰もがそんな相手に息を呑むが、翔一が誰よりも早く叫んだ。
―――今度は一体何の用だ!
その言葉に誰もが気付いた。目の前の青年はあの神と思わしき相手なのだろうと。そんな彼は全員を見つめて一言告げた。時がきましたと言う短い言葉を。それに表情を驚愕に変えるのは、なのは達ライダー達が帰る事を知っている者達だ。スバル達はその言葉の意味が分からずに困惑している。そして五代達四人はやはりと思って神妙な表情をしていた。
彼ら四人が邪眼を倒すために呼ばれた事は予言から明白だった。であれば、その原因がなくなればもうこの世界に留まる理由はない。それを真司さえどこかで察していたのだ。実を言えば別れがここまで早いとは思っていなかった。しかし光太郎は既に覚悟が決まっていたのだろう。誰よりも早くこう切り出した。
「アクロバッター達も連れて行ってくれるのか?」
「ええ。貴方達三人をちゃんと元居た世界へ戻します」
光太郎の問いに答える青年。だが、その中にあった三人との表現に五代が疑問を抱いた。
「ちょ、ちょっと待って。三人って……」
「黒き闇、黒い太陽、それにアギト。その三人です」
「え? じゃあ……俺は?」
青年の告げた表現に真司は自分を指差した。何故自分が含まれていないのか。その疑問対して青年が告げた言葉はあまりにも衝撃的だった。
―――今の貴方は正確には人ではありません。消えかけた命を繋ぎ止め、それらしく見せているだけです。
その言葉に誰もが耳を疑った。だが、真司だけはその言葉で全てを理解―――いや、思い出した。自分が最後に見た光景を。そう、それこそあの夢。蓮に揺さぶられ、何事かを叫ばれている光景だ。全てを思い出し、真司は神妙な表情で自身の手を見つめた。
「……そうか。俺、女の子を助けて……その時の傷が原因で」
「はい、死に瀕していました。なので、私がその命を取りとめたのです。あのライダーの在り方が歪んだ世界で、唯一ライダーらしくあった貴方を邪眼への対抗者とするために」
「待て。では真司は死んでいるというのか?」
「正確にはまだ死んではいないという事です。ですが、私が彼をこのまま元の世界へ戻せばいずれそうなる事になります」
トーレの問いかけに青年はあっさりと答えた。それに驚きを見せる周囲へ更にこう続ける。だからこの十年あまり一切変化もしなかっただろうと。その瞬間、ウーノ達が息を呑んだ。確かにそうだった事に気付いて。初めて出会った時から何も変わったところが無かったと。
それに思い当ったなのは達が言葉を失っている中、真司は平然と笑った。全てに納得が出来たという風に。しかし、一つだけ気になっている事があった。それについて予想している事はあるのだが、それだけをちゃんと確認しようと思い尋ねた。
「俺が見てた夢って、もしかしてパラレルワールド?」
「おそらくそうです。生と死の狭間にいるから見てしまったのでしょう」
「……そっか。じゃあ”俺”は絶対に死ねないな」
真司のその声は真剣なものだった。どの世界でも自分は本当に願いを叶えられる結末は無かった。故に自分が全ての城戸真司の想いを受け継いで叶えてみせるのだと、そう強く思ったのだ。青年はそれに何も言葉を返す事無く、微かに笑みを浮かべるのみ。まるで真司がそう言うだろうと分かっていたように。
真司に関しての衝撃発言から周囲が脱したのを見て、青年はなのは達へ告げた。別れを告げなさいと。それに覚悟をしていたなのは達は頷けた。だが、スバル達知らなかった者達は一斉に動揺を見せた。まだ信じられないのだ。それを察してなのはがかつての無人世界での出来事を話した。邪眼を一度倒した時、五代と翔一が消えた事を。そして五代は光太郎と共にミッドチルダへ戻った際の出来事を、翔一が科警研へ行った話を語る。
その内容にスバル達は言葉を失った。全てが邪眼を倒すための流れだとすれば、この後どうなるかは理解出来た故に。そこでなのは達はどうしてそれをスバル達へ伝えなかったのかの理由を告げる。
「ごめんね、私達も迷ったんだ」
「もしかしたらって……そんな気持ちがあったから」
「でも、出来るなら知らんままで終わって欲しかったんよ」
隊長三人の言葉にスバル達が不満を口にしようとするも、それを遮るようにシグナムが口を開いた。
「お前達の気持ちは分かる。それでも教えて欲しかったと、そう思ったのだろう」
「でもな、はやて達の気持ちも分かってくれ。もし悲しまないで終わるならそれがいいって、そう考えたんだ」
「それに、三人を責めるなら私達も同罪よ」
「我らも知りながらお前達には隠していたのだからな」
守護騎士達の鎮痛な表情にスバル達は何も言えなくなった。確かに何事もなく四人が残るのならそれで済ませたいと思う気持ちは理解出来ないでもなかったのだ。そう、それはライダー達の戦いと同じ。知らないままで終わる方がいい。下手に悲しませたり不安にさせるのならいっそ……と。
それでも、納得は出来ない。特にスバル達の中で一番その怒りを強くしていた者は。彼女は拳を握り締めて叫んだ。その行動に誰もが意外そうな表情を見せる。
「それでもっ! それでもアタシ達は教えて欲しかったです! 下手したら、大切な人達に、自分達が目指す人達に別れの言葉を言えなかったかもしれなかったんですよ!」
「……せや、な。みんなはあの頃のわたしよりも強いもんな。みんな堪忍してや。わたし達はちょうみんなの事をみくびっとったわ」
もしかしたら自分は翔一へ想いを告げる前に会えない状況になっていたのかもしれない。そんな思いがティアナを動かしていた。それにはやても理解と納得をした。あの無人世界で自分が感じた想い。それをティアナ達にも味あわせるところだったと、そう思い至ったのだ。
そうして、それを見つめていた青年は無言で視線を真司へ向けた。それに気付き、真司も視線を青年へ向ける。
「……城戸真司、貴方には秘められた可能性があります」
「可能性……?」
「それを私が目覚めさせれば、きっと貴方は更なる力を得るでしょう」
「そんなのがあるのかよ……」
青年の言葉に意外そうな表情の真司。自分にそんなものがあるとは思えなかったのだ。それでも真司はそこから青年が何かを言う前に小さく笑うとこう言い切った。
―――でもいらない。俺は今のままで足掻くよ。その力ってのは、必要ならいつか自分で目覚めさせてみせるし、必要ないならそれに越した事はないからさ。
それに青年は小さく驚きを見せるも、すぐに薄い笑みを浮かべた。まるでその答えに満足するように。彼が知る”仮面ライダー”らしさをそこに感じたのだろう。故にもう何も言わない。人間は全て彼の子供だ。その子供が望まぬものを与える程、彼は親馬鹿ではないのだから。
「では、そろそろ別れを。私が干渉出来るのも限界があります」
「そうなんだ。じゃ……」
青年の言葉を聞いて五代が少し寂しそうな顔をする。本当に別れを告げなければならない。そう改めて突きつけられたために。だがすぐに気を取り直すとなのは達へ視線を向けて微笑みかける。それだけで誰もが悲しむのではなく微笑むのだから五代雄介という男がどれ程凄いかが分かるというものだ。
五代は悲しみの別れにするつもりはなかった。あの無人世界では何も言う事が出来なかったが、今回は言葉を告げる事が出来る。なら、単なる別れではなく次に続くものにしたいと思っていた。だから誰よりも笑顔でいよう。その気持ちで五代は言葉を切り出そうとして―――少し離れた場所を見つめて不思議そうな顔を見せた。
「あれ?」
その五代につられるように青年以外の全員が視線を後方へ動かして言葉を失う。そこには四人の人物がいた。そう、ここにいるはずのない者達だ。彼らは少しずつ五代達がいるところへ近付きながら何事かを言い合っていた。
「ちょっとメガーヌ、ここでホントにいいの?」
「もう、ヴァイス陸曹からの座標通りに来たから大丈夫よ」
「二人共、それぐらいにしておけ。む、見慣れない者がいるな」
「黒服……? ああ、気にする必要はないよ。ある意味この戦いの功労者だ」
姿を見せたジェイル達に五代達が声を揃えて疑問をぶつける。何故ここへ来たのかと。しかしその答えをジェイル達が言おうとする前に、青年が周囲へよく通る声でこう告げる。あまり時間はありません、と。それに五代が思い出したとばかりに頷いて、今度こそ別れの言葉を切り出した。
「まずは俺から。えっと、短いような長いような不思議な時間だったけど……そうだね。すっ…………ごく楽しかった。これで本当は会えなくなるんだろうけど、心配しないで。晴れない空がないように、行けない場所はないから。だから、きっとまた会えるよ」
締め括りは笑顔のサムズアップ。五代を象徴する光景になのは達が笑みと、そして微かな寂しさを見せる。ジェイルはその言葉で全てを察し、ゼスト達もその雰囲気で何かを悟って複雑な面持ちとなった。それでも涙は見せない。五代がそれを嫌うだろうと思うから。涙の別れではなく笑顔の別れ。それは再会を信じるための約束。そんな風に誰もが思う中、五代の後を受けたのは翔一。
五代と同じく悲しくなるような言葉を言う気は翔一にもなかった。ただ自分の素直な気持ちを告げよう。そう単純に思って、翔一は五代の笑顔に負けないぐらいの笑顔を見せて全員へこう切り出した。
「俺、帰ったらまた料理の勉強を続けます。絶対店を開くんで、いつかみんなで来てください。あ、名前はここと同じでレストランAGITΩにするつもりですから。美味しい時間を約束します」
その言葉にも全員が頷く。口々に楽しみにしていると返すなのは達。翔一が言うと不思議と本当になりそうな気がしてくると、誰もがそう思いながら心から笑顔を浮かべていく。そして、それを見て嬉しそうな笑顔を見せながら真司が一歩前に出た。ある意味で元居た世界へ戻る事が危機となる真司。故にその事で抱かれている懸念を払拭しておこうと考え、気楽な表情で口を開く。
「俺は……まぁ戻ったらいきなりピンチなんだけど、頑張って何とかするよ。どんな時でも諦めないのがライダーだもんな。で、誰でもいいから俺の書いてた本を保管しといてくれないか? あれ、公にするには色々と問題が出来たからさ、修正したいんだよ。だから頼むな。俺は向こうで光太郎さんから聞いた事をまとめてライダーの本にしておくから」
真司の告げる内容に誰もがおかしそうに笑った。死ぬかもしれないのに根拠もなく何とかすると言いのけた事と、別れの間際に言うにはあまりにも普通すぎた事に。しかも、それでいてちゃんと再会の約束も兼ねている。それに気付いて誰もが笑った。
本についてはジェイルが責任持って引き受けると返すと、真司は安堵するように息を吐いた。それを横目で見ながら、光太郎が笑顔のままで口を開く。自分が最後になる事を理解しながらも変に気負う事はないと思い、唯一仮面ライダーを最初から名乗っていた者としての言葉を。
「最後は俺だね。正直、俺はこの世界で人に絶望しかけた。でも、フェイトちゃんが、それにみんながそれを吹き飛ばすぐらいの希望をくれた。人間は決して弱くない。決して愚かじゃないって、そう信じさせてくれるような、ね。だから、今度は俺がみんなへ希望を与える番だ。もし、自分達だけじゃどうにも出来ない時は俺達の名を呼んでくれ。仮面ライダーは、誰かが心から望む時に必ず現れるから」
光太郎の締め括りに五代達も頷いた。光太郎の言葉はまさしく仮面ライダーの言葉だった。人間が自分達の力だけではどうにも出来ない時、風と共に現れ、嵐のように戦い、朝日の中へ去って行く。それが彼ら仮面ライダーなのだ。
なのは達もそんな光太郎の言葉に希望をもらい、絶対に忘れないと返す。そして、安易に頼る事もしないとも。それに光太郎は嬉しそうに頷いた。するとそこへアクロバッターとライドロンが姿を見せた。無人で動く二台を見て驚くゼスト達とその反応に思い出し笑いをするなのは達。
一人五代だけが慌ててその場からヘリへと走る。それから少ししてビートチェイサーのエンジン音が周囲へ響き渡ると、五代がそれに乗って戻ってきた。そして、もう少しで忘れていくところだったと呟く五代に笑いが起きる。そんな和やかな空気の中、四人へなのは達もそれぞれ言葉をかけていく。
「五代さん、すずかちゃん達へは何かないですか?」
「あ、じゃあ……元気でねって。それとまた会おうねって言っておいて」
なのはの言葉に五代はそう返す。それになのはは小さく微笑んで頷いた。きっと親友であるすずかも同じ事を思っているだろうと感じたのだ。
「光太郎さん、いつか夢……叶うといいですね」
「うん、ありがとうフェイトちゃん。君も体に気をつけて。リンディさん達にもお世話になりましたって伝えておいてくれるかな」
光太郎の言葉に笑顔で頷くフェイト。その目に光るものはない。彼女が再会を信じているのがそこから分かる。
「翔にぃ、約束忘れんといてな」
「分かった。その時のためにタキシードを用意しておく」
「うん。あ、本番で緊張してこけたりせんよね?」
「それはないよ。はやてちゃんに恥をかかせたりしないから」
そんな兄妹のような会話をするはやてと翔一。とても別れの言葉には程遠い雰囲気がそこにある。
「……何か、こう考えると俺だけなのはちゃん達と関りが薄いんだなぁ」
そんな三組を眺めて苦笑する真司。決して羨ましいとかではなく、なのは達三人と五代達との繋がりの深さを改めて感じていたのだ。しかし、それを聞いて楽しげな笑みを浮かべながら真司へ近寄る者達がいた。
「真司さんには私達がいるじゃないですか」
「え? あ、そういう意味じゃないから」
「あら? じゃ、どういう意味か教えてくれる?」
「えっと、ただ五代さん達となのはちゃん達のやり取りが何かいいなって思っただけで……」
「まったく……お前はどうしてそういう誤解を受ける事を言うんだ」
「シンちゃんは最後までぶれないわねぇ」
クアットロの締め括りに呆れながらも楽しげに笑うウーノ達。ドゥーエの質問に対する真司の答えが実にらしくて、トーレがため息混じりに放った言葉。それが全てだった。そんな四人の笑いに真司が少し苦笑する。ラボでの生活の様々な状況で自分を支えてくれた四人。その彼女達相手にはやはり敵わないと感じたのだ。
「真司、待っていろ。絶対に助けに行くからな」
「ドクターの力、甘く見ないでね、真司兄」
「兄上、それまでご武運を」
「ああ、待ってる。三人も元気でな」
チンクの言葉に真司は嬉しそうに頷いた。そして、心配そうなセインとセッテの頭を軽く撫で、安心させると同時に言葉をかける。周囲とは明確に異なる寂しげな気持ちをチンクとセインが抱いていると知らずに。
「兄様、また色々な事を教えてもらいに行きます」
「それに兄貴の話ももっともっと聞きたいしな」
「うん。だから真司兄さん、元気でね」
「おうっ! お前達が来てくれるまでは何があっても死なないからな!」
若干潤んでいる三人の瞳。それが何を表しているのかを悟り、真司は一際明るく声を返した。そしてオットー、ノーヴェ、ディエチの頭を少しだけ乱暴に撫でる。異世界で出来た妹達へ精一杯の感謝と想いを込めるように。
「にぃにぃ、次に会う時は下町ってのを案内して欲しいッス」
「アサクサ、でしたか? 楽しみにしていますので」
「分かった。旨い物とか面白い物とか沢山教えてやるからな」
「真司、アタシは忘れないから。アタシの最高のロードは仮面ライダー龍騎だって」
ウェンディとディードの頼みに真司は任せろとばかりに応じて胸を叩く。それに楽しそうな笑みを浮かべる二人の頭を同時に撫でた。その微笑みを記憶に刻みつけるようにし、アギトへは無言で力強く頷く事で返事とした。それだけでアギトも真司の気持ちを感じ取って嬉しそうに頷き返す。
そして今度はスバル達が五代達へ別れの言葉をかけていく。その場の雰囲気が明るいためか彼らの顔も晴れやかだ。また必ず会えるとの強い確信を抱いているように、誰の顔にも悲しさや辛さは浮かんでいなかった。
「五代さん、今度はゆっくり冒険の話を聞かせてください」
「いいよ。あ、冒険のお土産でインドネシアの魔除けの仮面とかもあるから、渡してもいいか桜子さんに聞いておくね」
「あの、それって逆に呪われたりしないですよね?」
「呪われる、かぁ。そんな事を思ってる人はぁ……の~ろ~わ~れ~る~ぞぉ~」
五代がスバルの申し出に嬉しそうな表情で応じるも、その後半部分でギンガがやや不安そうな言葉を返す。それを面白がった五代が若干ふざけると二人は揃って楽しげに笑った。
「あ、あの、翔一さんに聞きたい事があるんですけど」
「どうしたの?」
「こ、恋人とか……いますか?」
「恋人? いないなぁ」
「いないんですね? ……よし、ならチャンスはある」
「え? チャンス?」
翔一の言葉に慌てて何でもないと両手を振るティアナ。それを見たはやてがどこか面白そうに表情を変える。それを見つめてなのはとフェイトは今後のティアナを思って苦笑していた。
「光太郎さん……約束、忘れませんから」
「絶対、絶対また会いに来てください!」
「ああ。エリオ君もキャロちゃんも仲良くね。自然保護隊へ戻るのなら、ミラさんやタントさんの言う事を守って、絶対無理をしないようにするんだよ」
揃って返事を返す二人の体を軽く抱きしめ、光太郎はゆっくりと体を離す。そして、二人の頭を優しく撫でると微笑みかけた。それに二人はこみ上げるものがあったのか、微かに目に光るものを浮かべながらも微笑み返してみせる。
「城戸、お前の本が出来るのを楽しみにしてるぞ」
「出来上がったら両方とも最初に買わせてね」
「スカリエッティの事は私達や八神部隊長達で何とかしてみせるから」
「はい、よろしくお願いします。それと、出来たらお礼に皆さんへプレゼントしますから安心してくださいよ」
メガーヌの言葉に感謝して頭を下げた真司だったが、頭を上げると心配するなとばかりにそう言い切った。そんな真司にゼスト達は笑う。本当にお人好しだなと改めて感じて。
「翔一、達者でな」
「今度は菜園残しておくかんな。今度こそいちごやメロン、育てろよ」
「世話はアインやみんなでするからね」
「お前の食事の味は忘れん。後、駄洒落もな」
「お姉ちゃんへの伝言をどうぞです」
「じゃあ……食堂を頼みます。それと、最後まで手伝えなくてすみませんでしたって伝えておいて」
異世界で得た家族達からの言葉に翔一は笑顔で頷いていく。ヴィータとツヴァイは涙を目に浮かべながら笑っていた。シグナムとザフィーラは柔らかく微笑み、シャマルは優しげに笑う。それに翔一はもう一度力強く頷いた。唯一の肉親を失った自分に出来た新しい家族の顔を焼き付けるように。
その後も口々に言葉を掛け合う五代達。そこに悲しみの涙はない。あるのは明るい笑顔ばかりだ。決してこれが最後ではない。そう誰もが強く信じているような雰囲気がそこにはある。そして最後とばかりにジェイルが真司へ歩み寄った。
「真司、これを持って行ってくれ」
ジェイルが差し出したのは一つの機械。ジェイルが急ぎで作っていたものだ。それを見つめて真司が疑問符を浮かべる。周囲もまた同様に。一体これが何かを探ろうとする目を向ける真司を気にもせず、ジェイルはどこか満足そうに告げた。
「これは強力な発信機だ。もしかすればこれで君の世界への座標が分かるかもしれない」
「じぇ、ジェイルさん、それ本当?」
「かなり強力なものだからね。でも、分かったからといってすぐに行けるとは限らない。安全性が確立されるまでは使わないと約束しているからね」
「約束、ですか?」
「ジェイルさん……」
ジェイルの告げた約束との部分に小首を傾げる翔一とは違い、五代はその言葉に嬉しそうに笑顔を返す。五代の反応にジェイルは小さく笑い、手を振った。
「いいって事だよ。本当は君達の分も用意したかったんだが……」
「いいんです。真司君は俺達とは違ってただ相手を倒すだけじゃ終わらない戦いをしている。なら、ジェイルさん達の力が必要なのは彼の方だから」
光太郎の言葉に五代と翔一も同意するように頷いた。だが五代達との再会をそこに見出そうとしていたのか、ジェイルは残念そうな表情で軽く下を向く。すると光太郎は驚くべき事を話し出した。それはかつて自分は時間軸を超えた事がある事。過去の自分を助けるために未来の自分が時を超え、空を駆けてやってきた事実。それを光太郎は語った。詳しい話はされなかったが、その荒唐無稽な出来事に誰もが唖然とすると共に、改めて光太郎の凄さを感じた。
「きっと俺は……いや、仮面ライダーは時代や空間を超えられるんだ。俺達を本当に心の底から必要としている場所が、人がいる限り。だから、また必ずここへ来れるさ。俺達がこれを永遠の別れにしたくないように、そちらもそう思い続けてくれるのなら」
その言葉にそれぞれが笑みを浮かべる。想いは時空を超え、世界をも超える。それはこの場にいる全員が知っていた。目の前にいる四人の来訪者をその証拠として。そして、青年がそこで話が終えたのを見計らって静かに五代達へ歩み寄った。
「私も改めて人間の可能性とその凄さを見せてもらいました。いかなる困難にも屈せず乗り越える力。どんな相手とも分かり合おうとする心。それをこれからも無くさずに生きてくれる事を願います」
その言葉が子の成長を願う親のようにも思え、誰もが妙な気持ちを抱く。それを感じ取ったのか青年は優しく微笑むと手をゆっくりと五代達四人へ向けた。すると四人の体が光り始めた。それは段々輝きを増し、なのは達一部の者へあの無人世界での光景を彷彿とさせる。誰もが眩しさに目を閉じる中、青年の声が全員の脳裏に響く。それは感情を感じさせない声だったが、微かな優しさを感じる事が出来るような声でもあった。
―――これで私の役割は終わりました。ここからは貴方達の想い次第です……
声が消えると同時に光も消える。なのは達が目を開くと、そこには誰もいなくなっていた。ゴウラムやアクロバッターなどもなく、四人がいた証は何も残っていなかった。それでも、なのは達は泣かない。誰が言い出したでもなく、視線を空へ向けてその手を動かす。その手をある形へ変化させ、全員が笑顔を見せた。
笑顔とサムズアップ。自分達の誓いであり、思い出の魔法。いつか必ず再会するとの誓いを送り、なのは達は空を見つめ続けた。青く澄み渡る青空を……
どれぐらいそうしていただろう。やがて誰かが六課隊舎へ帰ろうと言い出した。その声に促されるように動き出すなのは達。そこへヴァイスが慌てて走ってきた。理由が分からず不思議に思うなのは達へヴァイスは息を切らしながら告げた。
―――く、クロノ提督からなのはさんに急ぎの話があるって通信が……
それになのはが疑問符を浮かべながらストームレイダーを経由してレイジングハートを使った通信に切り替える。すると、そこに映ったのは微かに微笑むクロノと共に一人の人物が映っていた。その相手の顔を見てなのはは我が目を疑った。
「ゆ、ユーノ君……?」
『お疲れ様、なのは。フェイトやはやて達もお疲れ』
「どうして?! 体は大丈夫なの!?」
なのはの言葉にユーノは苦笑しながらゆっくり説明を始めた。あのツバイとの戦闘で床に落ちた毒が作った穴。そこに付着していた毒を、クロノの指示で分析した局員が何とか解毒剤を作り出す事に成功したのだ。それを投与され、一命を取り留めたとユーノは語って苦笑する。
『クロノがその可能性に賭けて指示してくれなかったら危なかったよ』
「ユーノ君……本当に……良かった……っ!」
微笑みかけるユーノに感激のあまりなのはは涙を流す。それに動揺する周囲とは違いユーノは優しく笑みを浮かべて慰め始めた。そんな恋人同士のやり取りを聞きながら誰もが笑みを浮かべる。何も言わず、ただ静かに微笑み続けるフェイト達。ただ、ユーノだけが気付いていた。なのはの涙に五代との別れから来るものが含まれている事を。
光太郎は気がつくと五代と共に魔法世界へ突入した場所へ立っていた。その傍にアクロバッターとライドロンがいる事を確かめ、光太郎はしみじみと噛み締めるように呟く。
「戻って来たんだな……」
「ライダー、イコウ。マダタビハオワッテイナイ」
「…………ああ!」
アクロバッターの言葉に光太郎は力強く頷くと、そのシートへ跨ってアクセルを唸らせると同時に姿を変える。RXはアクロバッターを駆ってライドロンを伴って走り出す。やがてライドロンは元居た倉庫へと戻るために途中で別れて去った。それを横目に見送りながらRXはある事を思って頷いた。
まずは先輩達へ会いに行こう。一刻も早く伝えたい事があると。その思いがアクロバッターを加速させていく。未来と異世界の仮面ライダー達。そして魔法世界で出会ったかけがえのない仲間達との思い出を。心強くしてくれる多くの思い出達を共有するために。そう考えてRXは通信機能へ意識を向けた。
『先輩達、聞こえますか?』
『RXか!? 急に通信が出来なくなったから心配したぞ!』
RXの通信へ応じたのは一号だった。おそらく全員が聞いているのだろうと思い、RXは嬉しく思いながら簡単に邪眼との事を語った。それに一号と二号、V3にライダーマンが感慨深そうに声を漏らした。彼ら四人はあの発電所の戦いに関っている。邪眼の事も知らない訳ではなかったからだ。だが、それに対して情報を持たない他のライダー達は別の事に疑問を抱いた。
『RX、君は異世界だけではなく未来のライダーにも会ったと言ったな。では、また新たな悪が現れるのか?』
『いえ、彼は改造されたんじゃないんです。突然変身能力を得たと、そう聞きました』
Xの質問にRXは翔一からの話を思い出して答えた。その事が意味する事に全員が息を呑んだのを感じて、RXは無理もないと思いつつ告げる。
『心配しないでください。アギトは俺達と同じ仮面ライダーです。それは本郷さん達が知ってます』
『……そうだな。彼は確かに仮面ライダーだった。例え改造人間ではないとしても……いや、改造人間ではないからこそ、きっと俺達よりも辛いはずだ』
『そうか。改造された訳ではないのに、突然人とは違う姿と力を得てしまった。それは俺達よりも辛いだろう』
『じゃあ、遠い未来で彼に……アギトに出会う事があれば、俺達はどう接すればいいんでしょう……』
一号と二号の言葉を受けてスカイライダーが呟いた言葉。それに誰もが答えを出せずに悩む。改造人間の孤独や辛さならば彼らも分かる。しかし、人でありながら変身する力を得たとなれば事情が違う。故に言葉が浮かばない。確かにRXも五代や翔一と出会う前ならば悩んだだろうが、彼らを知った以上その答えは簡単に出た。
それだからだろうか。無意識にRXは通信であるにも関らず、あの仕草―――サムズアップをしながら答えを告げた。
『大丈夫です。その時は、笑顔で話しかけてください。彼は自分の体の事を誇りにしていますから』
『……そうか。彼もその体が自分のプライドか』
『はい。だからこそ仮面ライダーアギトを名乗っているんです』
V3の言葉にRXは返事を返してこう続ける。是非全員へ渡したい物と話したい事があると。それに一番最初に興味を示したのはアマゾンだった。
『コウタロウ、何くれる? ウマイ物か?』
『異世界のライダーからの預かり物です』
『異世界のライダーから、ねぇ。一体何だってんだ?』
『手紙? ……じゃないのか。なら……何だ?』
ストロンガーが告げた言葉を受けてZXが予想した単語。それにRXが反応を返さなかったので、二人はそこから考え始めたのか黙り込む。その事を感じ取ってスーパー1が笑った。かつては死闘を演じた関係にも関らず、今では同じ話題で会話している事の不思議さを思い出したのだ。
『ははっ、それも楽しみだけど、俺はその思い出話に凄い興味があるな』
『では、通信では何だし一度合流しよう。それでいいだろうか?』
ライダーマンの問いかけに全員が応じ、集合場所を話し合い始めた。それを聞きながらRXは思う。ここにはいない者達の事を。
(俺は忘れない。クウガ、アギト、龍騎、そしてなのはちゃん達。君達との日々は、時間は決して忘れやしない!)
唸りを上げるエンジン音。誰もいない道を一人走るRX。脳裏にあのミッドチルダでの日々を思い出しながら、その手に握るアクセルを開け放っていく。まるで過ぎ去りし日々を追い駆けるように。未だ見えない明日を迎えに行くように。
そこへ集合場所が告げられる。それに了解と返し、RXは急ぐ。そして、誰にでもなく呟いた。それは、彼の中に残る一つの約束への思い。何があっても必ず果たすと決めた誓い。時空を超えても叶えなければならない大切な少年との思い出。
「キャロちゃん、エリオ君、フェイトちゃん……いつか会いに行くよ。絶対に……いつの日か……」
その呟きが風に流れていく。太陽を浴びて遠く彼方へ去って行くRX。その彼の右手はあの仕草を作り、青空へ向けられている。彼の旅は終わらない。人が自然と共存し、本当の平和を掴むその日まで彼は戦い続けるのだ。いつの日にかその戦いが終わり、その旅が意味を変える時まで……
「っ……ここ、は……?」
体中に感じる痛みと脱力感に耐えながら、真司はゆっくり目を開けた。そこには去って行く蓮の背中が見える。それに気付いて真司は引き止めようと声を掛けようとするも、痛みが邪魔してそれも出来ない。そうこうしている間にその背中が遠くなり、やがて見えなくなった。それで気が抜けたのか真司は再びその瞼が重くなっていくのを感じていた。何とかそれに抗おうとするも、徐々に目が閉じていく。
(諦めるかっ! みんなに約束した以上絶対死ねない……っ!)
薄れゆく意識の中、閉じかける瞼を開こうと必死になる真司。だが、その抵抗を嘲笑うかのように全身から力が抜け、意識が遠のいていくのを真司は感じ取っていた。これで死ぬのか。そんな事が脳裏をよぎった瞬間、突然痛みが和らいでいく。それを感じた真司は不思議に思いつつ、先程とは別物のように軽くなった瞼を開けて視線を動かす。すると、その両隣にいるはずのない者達がいた。
「ど、どうして……?」
「間に合ったね、真司」
「今、薬で応急処置をしましたから。でも、無理は駄目ですよ」
ジェイルとシャーリーは笑みを浮かべながら真司に肩を貸して立ち上がらせる。疑問符を浮かべる真司へ、ジェイルが見せたのは何かの機械だった。それは受信機。真司の持っている発信機の反応を辿り、ジェイルは転送ポートの技術を応用して作り上げた装置を使いここへ来た事を告げる。しかし、現状では来る事しか出来ないとジェイルは教えて苦笑した。それに唖然となる真司を見たジェイルは、楽しげな笑みを浮かべてこう答えた。
「心配ないさ。こちらで同じ物を作ればいいだけだからね。だが、やはり時間の誤差が予想以上に大きいな。こちらでは君がいなくなって三ヶ月以上も経過しているのに……。まぁ、おかげで助ける事が出来たからよしとしよう」
そこでジェイルは話を締め括った。その説明に納得しながらも、真司は何故シャーリーがいるのか不思議に感じていた。その疑問を感じ取ったのだろう。シャーリーはここにいる理由を説明した。この世界へ来るためにジェイルに協力し、転送装置を作り上げたシャーリーは多忙なフェイトに代わり、名目上はジェイルの監視役としてついてきた。
その必要は既にないと苦笑するジェイルと、その言葉にやや照れた反応を見せつつそれらしい事を言って誤魔化すシャーリー。そんな二人のやり取りに、何とも言えない安らぎを覚えて真司が微笑みを浮かべた。
更に詳しい話をしようとする二人だったが、そこへレイドラグーン達が再び出現した。それを見て真司は戦おうとカードデッキを手にするも、その手をシャーリーが優しく止めた。
「今の真司さんじゃ戦うのは危険です。第一、真司さんが無理をする必要はないんですから」
「え? どういう事?」
レイドラグーンの群れを見ても少しとして恐怖を感じていないジェイルとシャーリー。その様子に疑問符を浮かべた真司へシャーリーは小さく微笑みながらある方向を指さした。
「ほら」
「……あれって」
シャーリーの指差す方向には、十二人の女性がいた。その姿を見て真司は言葉を失う。それは紛れも無くナンバーズー―――いやヴァルキリーズだった。彼女達は一度だけ真司を見ると微笑みや手を振ったりとそれぞれに反応を示し、すぐに視線を前方へ戻すと表情を戦士のものへと変えた。
「数は多いけど、怪人程ではなさそうね。でもみんな、気をつけて」
「前線指揮は頼むわね、オットー。ウーノは私が護衛するから」
「了解です、ドゥーエ姉様。クアットロ姉様は護衛と援護をよろしくお願いします」
「はいはーい。お任せよ」
「行くぞセッテ。遅れるな」
「はい、トーレ姉上」
「あたしはここで援護射撃に徹するからね、セイン」
「りょ~かいっ! なら、あたしは真司兄達を護衛するよ」
「ならアタシもいく。接近戦出来る奴がいた方がいいだろ」
「では私も参ります。ドクターとシャーリーさんもいますので」
「アタシはお姉達の援護に回るッス!」
「ヴァルキリーズの力を見せてやるぞ、ミラーモンスター!」
聞こえてくる声に思わず笑みが零れてくる真司。その目の前で繰り広げられ始めた光景を眺め、真司はジェイルとシャーリーへこう告げながら離れた。
「ごめん、やっぱり俺も戦うよ。女の子達だけに戦わせるのは嫌だから。それに……」
真司はそう言って足を止めると後ろを振り返って力強い笑みを見せる。
―――それに、俺、仮面ライダーだから。
その言葉に二人は苦笑しながら頷いた。ただ、無理はしないでと念を押して。それに真司は頷くとデッキを手にしたまま歩き出す。途中で車のミラーへデッキをかざしてVバックルを出現させると、ゆっくりとその中央へデッキを装着し、龍騎は立ち止まった。
そのしっかりと立つ姿を見てジェイル達に笑みが浮かぶ。龍騎もそれに気付いて小さく頷くとその場で構えて叫んだ。それはある意味でこの世界そのものへの宣戦布告。
「絶対諦めないからな! 俺は、俺達はこの戦いを止めてみせる!」
龍騎の言葉に誰もが心強さを感じて頷く。そこからヴァルキリーズの動きが変わったのを見たシャーリーは、ドラグセイバー片手に走り出した龍騎へ視線をやって呟いた。やはり仮面ライダーの存在は大きいのだな、と。
龍騎は戦う。彼と志を同じくする者達と共に。共に戦う仲間であるジェイルとシャーリーという二人の頭脳がライダーシステムを解明し、戦いを止める術を見つけ出してくれると信じて。一度だけその手が青空へ向かってあの仕草をする。ここにいない者達へ自分の健在を告げるように。
こうして彼の戦いは終わり、ここからは彼らの戦いが始まった。龍騎と十二人の戦乙女達を合わせた十三人の”仮面ライダーSPIRITS”を持つ者達の戦いが……
「ここは……あの時の道だ」
翔一は眼前に広がる光景にそう呟くと、バイクへ跨り走り出す。目指すは自分が住まう街。そこで色々な事を確かめなければと思ったのだ。その途中で公衆電話を見つけたため、翔一は居ても立ってもいられずそこへ駆け込み急いで電話をかける。早く繋がってくれと思いながらコール音を聞く翔一。すると数コール後に願いが通じたのか繋がった。かけた場所は彼が長きに渡り世話になった家。そして、電話に出た相手は翔一のよく知る相手だった。
『はい、美杉ですけど』
「真魚ちゃん! 俺だけど、今何年?」
『俺って……翔一君? しかも今何年って……いきなり何?』
「いいから教えてくれない?」
翔一の声が普段と違う事に疑問符を感じながらも、真魚はやや不思議そうに告げた。そう、2004年と。その答えに翔一は驚くも礼を言って電話を切ろうとする。だがそこで真魚は気付いたのだ。何か翔一の身に凄い事が起こった事を。それもアギトの力を使わねばならない状況のはず。そこまで読んだ真魚は素早かった。
『待ってっ! ……翔一君、ちゃんと理由を聞かせて』
「それはいいけど……きっとかなり驚くよ?」
『今更そんな事言うんだ。もう慣れっこよ。翔一君絡みはそれが普通でしょ?』
真魚の苦笑混じりの声に翔一も苦笑した。今から向かうと告げ、翔一は電話を切ると電話ボックスから出ると伸びをして笑みを浮かべる。自分の体に大きな変化が起きなかった理由を何となく察したのだ。おそらくあの青年が、消えた頃とあまり大差がないように配慮してくれたのだろうと。
内心で意外といい人かもしれないと思って翔一は一人笑う。もし機会があれば、自分の料理を食べてもらいたいと考えて。そんな時、ふと視線を感じて翔一は顔を動かした。そこにはその青年が立っていた。
「……アギト、あの時といい今回といい貴方には驚かされるばかりです。あの賭けはどうやら彼の勝ちになりそうですね」
「賭け? 彼?」
「おそらく、もうこの世界はアギトを必要としないでしょう。ですが、仮面ライダーは別のはずです」
「それって……つまり……」
翔一の言葉に青年は無言で頷き、静かに美杉邸のある方向を指差した。
「今はお行きなさい。貴方を待ちわびる者の元へ。貴方の道に幸多からん事を……」
「はいっ! えっと、色々とありがとうございました! 貴方も、いつか俺の開く店に来てください!」
翔一の笑顔の申し出に青年は若干驚きを浮かべる。しかし、すぐに微笑むと頷いて消えた。それを見送り、翔一は笑顔でバイクへ跨った。そして走り出すバイクと共にその体がアギトへ変わる。それに伴いバイクもマシントルネイダーへと変化していく。
人気のない道を駆け抜けながらアギトは思う。青年の言った”アギトは必要ないが、ライダーは別”との言葉の意味を。それは進化の光としてのアギトではなく、仮面ライダーとしてのアギトは求められ続けるという意味だろうと。
(俺の役目はきっとそういう事だ。これからアギトとなる人達へ仮面ライダーとしての生き方を教え、怪人にさせない事。それが仮面ライダーアギトの仕事だ!)
自分の与えられた役割を自覚し走るアギト。いつかまだ見ぬ先輩ライダー達にも会いたい。そう思った時、その脳裏に浮かぶ者達があった。それはあの異世界で世話になった二人の少女の顔。その二人との思い出を思い返してアギトは小さく呟いた。
「そうだ。真魚ちゃんに色々と意見をもらおう。はやてちゃんやティアナちゃんと再会した時、何か美味しいお菓子でも渡してあげたいし……」
きっと年も近いから良い意見をくれるはず。そんな事を考えながらアギトは道を走り抜ける。その右手にあの仕草を作り、空へと向けたまま。同じ青空の下にいるだろう先輩ライダー達とあの異なる世界の大切な者達へ思いを込めて……
白い砂浜。どこまでも続く青空と海。それが意識を取り戻した五代が最初に見たものだった。それが自分が海鳴へ飛ばされる前に見ていた景色だと理解し、五代は周囲を見渡す。すると、傍にはビートチェイサーとゴウラムがあった。本来ならここにあるはずのない姿を見て、五代はあの出会いが夢でなかった事を実感した。
「夢じゃ……ないんだ」
そう呟いて五代は視線を上へ向ける。眩しい日差しに手で影を作りながら、どこまでも広がる青空を見つめた。そして小さく頷くと、五代はビートチェイサーへ跨った。しばらく帰らないと決めた日本。だが、自分は五年以上帰っていない。そう考え、なら一度帰ろうと思ったのだ。何よりもビートチェイサーとゴウラムを科警研へ返さねばならないし、自分の体も診てもらいたい。そう決断した五代は素早かった。ゴウラムがその意思を感じてビートチェイサーへ合体し、ビートゴウラムへと変化するのを見てからアクセルを解放したのだ。
唸りを上げて走り出すビートゴウラム。五代はそれに乗ったまま構える。それは変身の構え。ビートゴウラムで安全に走るためにはクウガになっておく必要があると考えたからだ。
「変身っ!」
変身を終え、クウガは走る。どこかで連絡手段を見つけ、一条か榎田辺りにでもビートゴウラムの輸送手段を手配してもらおうと考えながら砂浜を抜け、道へ出ようとしたその時、クウガの耳に懐かしい音が聞こえると同時に懐かしい声が聞こえた。
『五代! 聞こえるか、五代!』
「一条さん?!」
『五代か! やっと繋がったな……。それで今どこにいる?』
「キューバです。丁度良かった。今から日本に帰ろうと思うんですけど、ゴウラムとかいるんでどうしようかと思ったんですよ」
通信範囲を超えているにも関らず繋がった事に疑問を抱くも、クウガはそう返した。どうもそれは一条も同じらしく、キューバと聞いて驚いていた。しかし、今はその原因を探るよりもビートゴウラムの輸送を考える方が先と判断したのだろう。すぐにそこで少し待機するように告げ、何かを誰かと話す声が聞こえてくる。クウガはそれにもしやと思い、大声で尋ねた。
―――もしかして、対策本部の人達が揃ってるんですか?!
―――そうだよ、五代雄介君。全員ではないが、主だった者は揃っている。
そのクウガの問いかけに答えたのは、よく知る一条ではなく本部長の松倉の声だった。それに続くように耳馴染みある桜井や杉田の声も聞こえてくる。最後には笹山も声を出し、クウガは嬉しさを噛み締めながらふと疑問に思った。それは一条達が集まっている事だ。自分がなのは達の世界に行ってから十年以上が経過している。にも関らず、何故未だに彼らが揃う事が出来るのだろうと。
「あの、すみませんが今って2001年ですよね?」
『は? ええ、そうですよ?』
クウガの質問に答えた笹山の声はどことなく理解しかねるというものだった。それを聞いたクウガは一瞬言葉に詰まった。自分が過ごした時間と元の世界の時間がすれていると気付いたのだ。だが、そこで何故自分があの五年間で外見が変化しなかったのかを理解した。
(そっか。俺、あの時から体の変化する時間、ゆっくりになってたんじゃないかな。だから全然変わらなかったんだ)
きっとあの青年の力だろう。そう結論付け、クウガはやはり神様みたいな相手だったと感じて頷いた。そこへビートゴウラムから杉田の声が聞こえてきた。
『五代君、とりあえず今からそっちへ一条が行く事になった。さすがにすぐにとはいかないが出来るだけ早くするつもりだ。それで、今は奇跡的に連絡が取れているが、何が原因で通信が繋がらなくなるか分からないんだ』
「分かりました。幸いこの辺りは海岸ですし、ビートチェイサーをここに止めて近くで野宿して待ってます」
『そうか。すまないがよろしく頼む。しかし、よくもまぁキューバと繋がったもんだ』
「ホントですよ。いや、さすが科警研の技術は凄いですねぇ」
クウガの軽い口調に杉田達の笑いが起こる。それにクウガも笑い声を上げようとして、はたとある事を思い出した。それは、ビートチェイサーがシャーリィによって改造されている事。それが原因で遠距離通信が可能になってしまったのではないだろうか。そんな事を考え、クウガは榎田達へくれぐれもこの事を内密にしてもらおうと頼む事にした。簡易的デバイスと同じ機能を積んだビートチェイサーを分析し、何かの拍子でその技術が悪用される事を防ぐために。
『五代さん。戻ってきたら冒険の話、聞かせてくださいよ』
「いいですよ。桜井さんが喜びそうなとびっ…………きりの奴がありますから。期待しててください」
クウガの言葉に嬉しそうに楽しみにしてますと返す桜井。そこで通信が切れた。そこまでの一連の流れにクウガは懐かしさを感じながら空を見上げた。そこに広がる空に、ふとなのは達の笑顔が見えた気がしてクウガは軽く驚く。だが、何かを思って小さく頷くと空へ向かって手を動かす。それをあの形へ変えて、クウガは誰にでもなく告げる。
―――ありがとう、みんな。俺も忘れないから……
自分のいる世界だけでなく、異世界を含む全ての世界が争いのない世界になってくれる事を願ってクウガはそう告げた。きっとまた笑顔で会える日が来る。その時は一条達となのは達を会わせる事が出来るはず。そう信じてクウガは自分の手を見つめた。
(いつか、これをみんなで見せ合える時がくるといいな)
そう思いながら、クウガは黙って青空とそれを見つめ続けた。自分達の共通の仕草となった”サムズアップ”を……
青空の下、小さな庭先を元気よく走る子供達がいる。ヴィヴィオとイクスだ。六課解散と同時に同じ学校へ入学した二人は幸運にも同じクラスとなり、リインが迎えに来るまで高町家で遊ぶのが常となっていた。
既にゆりかごが落ちてから半年以上が経過し、ミッドチルダは日常を取り戻していた。仮面ライダーの名は管理世界中に広まり、彼らの乗っていたライダーマシンを模したバイクがミッド中で見られるようになった程に。
レジアスとグレアム達との協力の下で行われている管理局改革は、少しずつではあるが効果を見せていて、バトルジャケットは既に少数が生産配備された。現在治安維持隊としてその力を発揮していて、ジェイルのデータをフェイトから託された技術仕官のマリエル・アテンザによって、近々増産が行われる予定となっている。
あの後、ゆりかごが落ちたのを受けて最高評議会の存在は白日の下に晒され、民衆からは批判と理解の両方を受ける事となった。それでも、本来ならば死んでいる者が裏で全てを動かそうとの行いは許されず、彼らは世界をその時代に生きる者達へ託して退く事を決意せざるを得なくなった。レジアスは、そんな彼らへ決して後悔させる結果にはしないと誓い、その最後を見送った。
「あ、ヴィヴィオ見て。あの雲、ライドロンみたいです!」
「どれ? ……あ、ホントだ。ライドロンみた~い!」
二人は揃って空を見上げる。そこにはやや歪な楕円形の雲があった。ライドロンに見えるかと言えば、正直微妙なところだろう。だが、それでも二人にはいいのだ。そうと思える要素があるだけで子供は十分なのだから。
あれからヴィヴィオと親密になったイクスは、固い喋り方を何とか克服する事が出来た。それでも所々丁寧になってしまうのはご愛嬌というもの。本人曰く、中々砕けた喋り方にするのは苦労するとの事で、それを聞いたシグナムが「誰かとは真逆だな」とヴィータへ言った事で八神家は一つの思い出を得る事となったのだが、それはまた別の話だ。
「五代さん達……今頃どうしてるんだろうね?」
「きっと元気なはずです。それよりも、ジェイルさん達は真司さんと合流出来たでしょうか?」
ラボからヴァルキリーズと共に真司の反応を追って消えたジェイル。彼は書類上はもう罪を償う必要が無くなっていた。それは、はやて達やレジアス達の機転によるもの。邪眼が全管理世界へ行った通信。その際、ジェイルの姿をしていた事を利用し、邪眼が犯罪者のジェイルだったとしたのだ。
つまり、邪眼が倒れたために犯罪者ジェイル・スカリエッティは死んだ事になった。邪眼がミッド限定とはいえ、その姿を大勢の見ている前で変えたのも大きい。今のジェイルは、邪眼によって捕まっていた何の罪もない本人とされているが、それでも本人は罪を償う気でいる。それとこれは別だと、そう言い切っていた。しかしその心遣いには感謝し、戻ってきた時にはこれまで以上にみんなの笑顔のために尽くす事を誓って、ジェイルは転送装置から真司の世界へ旅立ったのだ。
「そっちこそ心配ないよ。その内、こっちに戻ってくるんじゃない?」
「そうだといいですね。早く会いたいな」
ヴィヴィオの言葉にイクスはそう返して笑う。残暑の日差しは鋭く、吹き抜ける風はやや熱い。その時、ふと思い出す事があったため、ヴィヴィオが表情を曇らせた。
「どうしました?」
「うん。もうすぐゆりかごが落ちた日でしょ? それでビビの事を思い出したんだ」
ヴィヴィオの言葉にイクスも少し悲しげな顔をした。ヴィヴィオの告げたビビとは、あの邪眼に殺された少女の事。なのはは戦いが終わった後、ユーノと共に手続きを進めてヴィヴィオと死んだ少女を自分の娘とした。少女のような悲劇を忘れないためにも、そして親の愛を知らずに眠った少女へせめてもの愛情を注ぐためにもと。
だから名前はヴィヴィオから取った。ヴィヴィオの姉妹なら名前も近いものをと、そう考えてなのはとユーノが付けた。ちなみに、なのはとユーノは籍は入れたもののまだ式を挙げていない。五代達だけではなく、ジェイル達さえいない状態では絶対式を挙げたくないと二人の意見が一致しているからだ。
「……みんなで行けるといいですね、お墓参り」
「うん、そうだね……。会いたいな、みんなに……スバルさん達だけじゃなくて仮面ライダーにも」
イクスの告げた”みんな”に五代達も含まれている事に気付き、ヴィヴィオは小さく頷いてそう返すと黙った。イクスもそれに応じて黙り込む。
六課が解散した日以来、なのは達でさえ全員で集まる事は出来なかった。ジェイル達がいないのもあるが、それぞれが多忙なのもある。なのはは航空戦技教導隊へヴィータを連れて戻り、フェイトは次元航行艦付きの執務官としてティアナを補佐に復帰。はやてはレジアスの頼みを受け、地上の治安維持と災害救助を主とするバトルジャケット部隊”特務六課”部隊長として、ツヴァイや残る守護騎士達と共に忙しい日々を送っている。
スバルはミッドチルダ湾岸救助隊へスカウトされ、レスキュー隊員として活躍し、エリオとキャロは自然保護隊に復帰して、以前よりも目覚しい働きを見せていた。ギンガは108へ復帰し、捜査官として奮闘中。リインは家事をしながら八神家の留守を守っている。
グリフィス達もそれぞれに自分達の目指す進路先に進む者、そのための経験を積むための部署へ異動する者、原隊へ復帰した者とみなバラバラとなっていた。今や”機動六課”はライダーと共に次元世界を守った伝説の部隊となり、そこの出身者は初めて会う者達から必ずといっていい程仮面ライダーの話をせがまれるのが常となっていた。
ヴィヴィオとイクスが揃って無言のまま空を見上げる。だが、その瞳には光るものがあった。どこかでもう会えないのではないかと考えたのだろうか。すると、その涙を止めるように二人の目の前へ灰色のオーロラが出現した。驚く二人を余所に、そこから一人の男性が姿を見せる。無愛想な表情の彼は首元にあるトイカメラを揺らして歩みを止めた。そしてそのまま突然の事に戸惑う少女達にも気付かず、周囲を見渡して呟いた。
―――ここは、何の世界だ……?
時代が望む時、仮面ライダーは必ず蘇る。それは本来、仮面ライダーがいなければならない事態になっている。もしくはなるという事を意味する。
だが、今回はどうなのだろうか? 何せ、ヴィヴィオとイクスが出会った相手は世界の破壊者。全てを壊し、全てを繋ぐ者なのだから……
新しい道が開かれようとしている。それがどんな道かは分からない。しかし、その先にはきっと彼らが望む未来があるはずだ。
光と闇の果てしないバトルを止めようとする者達が、生きている激しさを体中で確かめながら進む者達が、誰かが平気な顔で夢だと笑う事を信じる者達が、そして、伝説は塗り変えるものだと示した者達が、心から願う明日が……
誰かの声無き声が響く時、ヒーローは現れる。その涙を笑顔へ変えるために……
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最終回。長きに渡る拙作にお付き合い頂きありがとうございました。これにて完結とさせて頂きます。
この後の物語は皆さんの中に。Arcadia版とは結末に至るまでの細かな展開が違いますので、興味が沸いたのならそちらも読んで頂けると幸いです。
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戦いは終わった。闇は消え、世界は平和を取り戻した。だが、それはヒーローの旅立ちを意味する。別れという名の旅立ちを。
それでもなのは達に涙はない。再会を青空へと誓って彼らは笑顔を見せる。もう二度と会えないとしても、歩き続けると約束するように。