No.519206

自覚

yurayuraさん

TOI-Rの現代パロの10話目です。やっとひと段落つきました・・・。

2012-12-16 12:05:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:513   閲覧ユーザー数:513

 

「スパーダ!風邪ひくかもしれないから、中に入って!」

 

ルカは雷が怖いはずなのに、俺が雨でびしょ濡れなのを見ると、そんなことなど忘れたように、俺に言った。

雷に怯えているはずのルカが心配で来たのに、逆にルカに心配されてしまった。

「僕、着替えとってくるから、お風呂に入っていて!」

ルカはそう言って、部屋の中に行ってしまった。

玄関にいた俺は、ルカが部屋の中に消えるまで、ルカを見ていた。

(「思ったより元気そうだな・・・」)

雷が怖いとコンウェイから聞いて心配だったのだが、それほどでもなかったようだ(俺がびしょ濡れなのに驚いたせいかもしれないが)。

俺はルカに言われたとおり風呂場へ向かった。正直、早く風呂に入りたかった。雨の中、傘も差さずに自分の家からルカの家まで走ったので、服の中まで雨が染み込んでいた。

俺がシャワーを浴びようとしたとき、脱衣所からルカの声がした。

「スパーダ。お父さんの着替えなんだけど、タンスの上に置いておくね」

「ああ、ありがとな」

俺はルカに礼を言って再びシャワーを浴びだした。

 

 

だが―――

 

 

「・・・・・・」

 

脱衣所にいるルカが動こうとしない。

(「まだ、何かあるのか・・・?」)

「ルカ?」

「えっ!?何、スパーダ?」

俺に呼ばれたことにルカは驚いていた。

「まだ、何かあんのか?」

「え・・・?」

「そこから動こうとしねぇからさ。どうかしたのか?」

「あ・・・うん・・・・・・」

ルカは何だか言いにくそうだった。

「あっ、あのさ――」

「うん?」

 

 

 

「ここにいてていいかな?」

 

 

 

「え・・・?」

どうしたんだと思ったが、そういえば――――

 

「雷か?」

「えっ!?・・・あ・・・うん・・・」

「別にいいぜ」

「ん・・・ありがと・・・」

そう言ってルカは座った。風呂場からは曇りガラス越しにルカが膝を抱えているのが見える。

(「・・・そんなに怖いのか・・・」)

さっきは元気そうだったが、どうやら俺がびしょ濡れでそれどころではなかったからのようだ(なんだかちょっと嬉しかった)。近くに人がいないとダメなほど、雷が怖いみたいだ。そんなことを思っていると―――

 

「ねえ、誰から聞いたの・・・?」

ルカがそう言ってきた。

「あ?何を?」

「その・・・僕が・・・雷を・・・・・・」

「ああ、コンウェイから聞いたんだ」

「えっ?あ、そっか・・・」

俺とルカの共通の知り合いは、学内交流で同じ班だったメンバーとコンウェイくらいだ。雷が怖いとか、友達だってなかなか知る機会がない。だとしたら、そのことを知っていて俺に教えるのは、コンウェイくらいだ。ルカはそのことに気づいたようだった。

「う~、コンウェイのバカ・・・・・・」

「雷が怖いの知られんのそんなに嫌なのか?」

「えっ、だって・・・・・・恥ずかしいんだもん・・・・・・」

別に恥ずかしがることじゃねぇだろ、と言おうとしたが―――

「ねえ、もしかして、コンウェイがスパーダに僕の家に行くように言ったりしたの・・・・・・?」

「ん、ああ」

「コンウェイ・・・・・・」

「ルカ?」

「スパーダ、ごめんね・・・・・・」

「は?」

「こんな理由でわざわざ来てもらって・・・」

「は!?何だ、それ?」

「だって、雷が怖いから家に行けって、迷惑でしょう・・・」

「別に迷惑って思ってねぇよ!思ってたら来るわけねぇだろ」

「だってコンウェイが言ったんでしょ?」

「俺がコンウェイの言うこと聞くと思うか?」

「えっ・・・うーん・・・・・・」

そう言ってルカは少し考え込んだ。

「・・・思わない・・・かな・・・・・・」

「だろ?」

「うん。そうだね」

ルカは可笑しかったようで、笑っている。

俺はそのことに安心した。

(「元気になったようだな」)

「ねえ、スパーダ」

「ん?」

 

 

 

 

「―――――――ありがとう」

 

 

 

 

「・・・ああ」

何だか少し恥ずかしかった――――――ただ礼を言われただけなのに。

 

 

「ねえ、スパーダ。夕ごはんは何にする?」

「ん、ああ。そんな時間だったか」

「スパーダは何食べたい?」

「別に何でもいいぜ」

「えー!いつもそればっかりじゃんか」

「つっても、ホントに何でもいいしな」

「じゃあ、スパーダの好きなのって何?」

「好きなのは――――」

 

 

それから俺たちは自分の好きな食べ物・飲み物、趣味、普段家でどう過ごしているか―――――いろいろなことを話した。

 

 

 

思い返してみれば

 

 

 

俺はルカにそういうことを聞いたことがなかった

 

 

ルカの好きなもの

 

 

大切なもの

 

 

 

 

 

 

―――――――聞くのが怖かった

 

 

 

もし答えてくれなかったら

 

 

拒絶されているようで

 

 

・・・・・・・・・怖かった

 

 

 

どこまで踏み込んでいいのか

 

 

 

どれだけ俺に許してくれているのか

 

 

 

―――――――今でも、どれだけか、分からない

 

 

 

 

だけど

 

 

 

近くにいる

 

 

 

最初よりは

 

 

 

前よりは

 

 

 

絶対に

 

 

 

俺は、ルカの近くにいる――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは、やっぱり大きいね」

俺がルカの持ってきてくれた服を着ると、それを見たルカが言った。

ルカが俺に着替えとして持ってきてくれたのは、ルカの父親のものだ。当然、大人と子供ではサイズが違う。結果、服はぶかぶかで、袖を何重にも折り曲げなければなかった。

 

「何だか、不思議な感じだなぁ・・・」

そうルカは俺を見て言った。

「何がだよ?」

 

「だって、スパーダって背が高いじゃん。でも、その格好だと小さく見えるんだもん」

「うっ・・・・・・」

ルカに悪気はないのだろうが、その言葉が意外にぐさりときた。

改めて自分の格好を見てみると、手首とかが小さく見える。多分、首周りもだろう。袖も腕の太さに比べて大きい。

同級生の中ではデカい方なのに、大人と比べると、とても小さい。

 

 

 

なんだか、悔しかった

 

 

成長したつもりだったけど

 

 

成長しているんだろうけど

 

 

 

俺は、まだちっぽけだった――――

 

 

 

早く、大人になりたい

 

 

前から思っていた

 

 

 

―――あの家から出るために

 

―――自分の身を守るために

 

 

 

でも

 

 

 

 

今は、何のために――――――――――?

 

 

 

 

 

「スパーダ」

ルカが俺に呼びかけてきた。

 

「ごはん作ろう!」

「そうだな」

そうして、俺たちは夕メシを作り始めた。

作った。作ったけど――――――正直、上手くできたとは言えなかった。食べられないことはないけど。

俺は、メシを作ったことはあるけど、ちゃんとしたのを作ったことがなかった。

ルカは、そもそも一人でメシを作ったことがない。

俺はいつもよりはマシなのを作ろうとしたけど感覚で作ろうとして、ルカは料理の本を見て作ろうとして。結果、そんな2人で作った料理は、上手いものではなかった。

 

「・・・・・・練習しなきゃね・・・」

「おう・・・」

「でも、工作みたいで面白かったね」

「料理は工作じゃねぇだろ!」

ルカがクスクス笑っている。

それを見ていると、こっちまで笑ってしまった。

 

 

 

食べ終わって食器を洗いながら外の様子を見てみる。

雨はまだひどく降っている。―――――雷もまだ鳴りやんでいない。

横で食器を拭いているルカを見てみると、雷が鳴るたびに怯えている。

「・・・・・・」

俺はちょっと考えた―――ルカの家に来る前にも考えていたことだが、実際どうしようか迷っていた。

自分から歩み寄るのは緊張する。

「なあ、ルカ」

「えっ、何?スパーダ」

ルカが俺を見上げる。瞳が潤んでいる。多分、俺が帰って家に一人になるのが不安なのだろうが―――

 

 

「今日、お前の家に泊まっていいか?」

 

 

「・・・・・・え?」

ルカが驚いたようだった。予想はしていたけど。

「・・・まあ、お前が嫌じゃなかったらだけど」

「嫌じゃないよっ!」

即答だった。俺はそれが可笑しくて笑ってしまった。

「じゃあ、いいか?」

最初の緊張はもうなくなっていた。

「もちろん!」

ルカが笑顔でそう応えた。

 

 

 

俺とルカはルカのベッドで寝ることになった。

ルカのベッドの横に布団を敷いて寝ようと思ったのだが、ルカのベッドは大きくて子供2人が余裕で寝れる大きさだった。わざわざ敷くのも面倒なので、一緒に寝ることにした。

 

「ねえ、スパーダ」

「ん?」

 

 

「スパーダって、優しいよね」

 

 

「は!?」

俺はルカの発言に驚いた。優しいなんて言われたのは初めてだ。

優しいというのがどういうものか考えてみる。それに自分が当てはまるか――――当てはまらない。

「そうか・・・?」

「優しいよ」

ルカは微笑みながらそう言った。本当にそう思っているようだ。

「たまに怖いって思うときあるけどね」

「おい」

「ふふっ」

ルカは可笑しそうに笑っている。

 

 

ゴロゴロッ

 

 

雷の音がした。

「うわっ!!」

ルカが怯えて縮こまってしまった。

「ルカ、もっとこっちに来るか?」

「うん・・・」

そう言ってルカは俺の腕の中に入ってきた。

ルカの体温が伝わってくる。

 

 

―――――ひとの体温って、こんなにほっとするもんだったのか・・・・・・

 

 

俺は普段ひとに触れることがない。友達とのふざけ合いなんかでのスキンシップはあるが。

こうしてひとの体温を感じたことはない。

 

 

―――――こんなに暖かかったんだ・・・・・・

 

 

そう思いながら、俺はルカを見る。

ルカは安心したのか、うとうとし始めている。

 

―――ルカって夜更しとかしなさそうだもんな。

 

本当はもっと話したかったのだが、

「もう寝るか?」

「うん・・・おやすみ、スパーダ」

「ああ、おやすみ、ルカ」

そう言うと、ルカはもう眠ってしまったようだ。

 

安心したような寝顔。

 

 

嬉しかった

 

 

俺の腕の中でルカが寝ていることが

 

 

ルカが俺の腕の中で安心して眠ってしまったことが

 

 

怖くても俺の腕の中なら安心することが

 

 

 

 

―――――――――守りたい

 

 

 

この小さくて、怖がりで、やさしい存在を

 

 

 

『お前、変わったよな!』

 

いつもつるんでいる奴の言葉を思い出した。

 

その時は、どこが?って思ったが

 

 

 

自分でも、気づいていた

 

 

 

ルカ

 

 

 

俺は

 

 

 

 

お前のそばにいたい――――――――

 

 

ずっと――――――――――――――

 

 
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