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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第三十三話 夏祭り

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-12-16 02:22:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:39874   閲覧ユーザー数:35696

 「なでなで」

 

 「……………………」

 

 「なでなで」

 

 「くー……」

 

 夏休み真っ只中の今日この頃。

 俺はルーテシアと神社に来ていた。理由は勿論ルーテシアが久遠と仲良くなりたいが為である。

 そして久遠も旅行に行っていた日を除くほぼ毎日、俺と一緒に来るルーテシアに対しての警戒心が薄れて行き、遂に今日はルーテシアが一人で久遠を撫でる事に成功した。

 撫でる事が出来たルーテシアは現在、大層ご満悦そうである。

 

 「ルーちゃん凄く嬉しそうだね」

 

 「やっと俺が抱き抱えていなくても撫でる事が出来ましたからね」

 

 そんな一人と一匹を俺と那美さんは微笑ましく見守っている。

 今日という日を迎えるまでひたすら油揚げを久遠に献上してきたからな。

 

 「私もルーちゃんと久遠が仲良くなってほしいと思ってたから、目の前の光景を見る事が出来て嬉しいかな」

 

 「それは俺も思ってました」

 

 ルーテシアが久遠と戯れている光景を見ながら俺と那美さんは会話する。

 

 「ところで勇紀君。今度の夏祭りには遊びに来るの?」

 

 「来週の祭りの事ですよね?当然来ますよ」

 

 祭りがあると聞いて真っ先にテンション上がったのはレヴィ。シュテル、ディアーチェ、ユーリも楽しみにしている様子だった。

 折角だからこれを機にシュテル達の事も那美さんと久遠に紹介しておくか。

 

 「当日は大勢の人が来るだろうから人波に巻き込まれて怪我したりしない様にね」

 

 「分かりました。気を付けておきます」

 

 那美さんからの有り難い忠告を聞いてすぐに

 

 「おにーちゃん、なみおねーちゃん」

 

 ルーテシアがこっちにやってきた。久遠を抱き抱えて。

 

 「みてみて。きつねさんとおともだちになったよー」

 

 「「おめでとうルー(ルーちゃん)」」

 

 「えへへー、ありがとー」

 

 俺と那美さんの間に座り、久遠を膝の上に置く。久遠も逃げる素振りを見せない。

 

 「すっかり仲良くなっちゃったねルーちゃん」

 

 「うん!」

 

 「久遠も友達が増えてよかったな」

 

 「くぉん!」

 

 嬉しそうに鳴く久遠。そしてルーテシアの膝の上から離れ人型になる。…って!

 

 「ふぇ!?」

 

 「久遠!?」

 

 「ちょ!?」

 

 俺達はいきなり久遠が変身した事に驚いた。

 

 「久遠、いきなりどうしたの?」

 

 「ルー…友達…」

 

 「それと変身した事に何か関係あんのか?」

 

 「勇紀と一緒…信用…出来る」

 

 それから久遠が言うには大切な友達だからこそ自分の秘密を話し、普通の狐じゃなく妖狐という事を知っておいて貰いたかったという事。

 ルーテシアは久遠が変身した事に『ほえ~』って感じで最初は驚いていたが、次第に瞳を輝かせ

 

 「きつねさん、すごーい!」

 

 興奮してキャーキャーと騒ぐ。人型の久遠に触ったり抱き着いたりしてる姿を見て

 

 「ルーちゃん、何とも思ってないのかな?」

 

 「俺達魔導師の世界にいる使い魔も人型になれるのっていますから」

 

 「それで久遠にも物怖じしないんだ」

 

 那美さんにはそう返しておいたが俺も内心ルーテシアの反応は予想外だったのでちょっと驚いている。

 俺の知り合いだとリニスさん、アルフさん、ザフィーラ辺りが久遠みたいに人型になれる使い魔(ザフィーラは守護獣だけど似た様なもんだろ)だな。もっともルーテシアが会った事あるのはザフィーラだけだが人型のザフィーラは見た事無い。

 …まあ久遠の見た目からして怖がるなんて事はないか。

 

 「きつねさーん♪」

 

 「ルー♪」

 

 久遠がルーテシアを抱き上げ、抱き上げられたルーテシアは笑顔で頬擦りし始める。

 

 「平和だね」

 

 「平和ですね」

 

 ルーテシアと久遠の仲睦まじい姿を見ながら俺と那美さんはのんびりと過ごしていた………。

 

 

 

 そして祭り当日…。

 

 「さあ、食べるぞー!!」

 

 「祭りに来た第一声がそれか」

 

 周りの屋台を見て高らかに叫ぶレヴィ。周囲の人がこっちを向く。当の本人は気にしていないようだが恥ずかしいったらありゃしない。

 

 「レヴィ、勝手にウロウロしてはぐれないで下さいよ」

 

 「分かってるよシュテるん」

 

 「絶対に分かっておらんなコイツ」

 

 「ですね。今にも走っていきそうな勢いですし」

 

 「ママ、ひとがいっぱいいるね」

 

 「そうねえ。賑やかで楽しそうだし」

 

 祭りにはメガーヌさんも含め、長谷川家総出で来ている。

 

 「ところでなのは達はもう来ているのでしょうか?」

 

 「『祭りには行く』と言ってたから来てるだろ。ただ、この人混みの中で見つけるのは難しいだろうな」

 

 「そんな事今はどうでもいいから早く行こうよ!」

 

 「…だそうだ。誰かさんは待ちきれないらしいからとりあえず見て回ろうか?」

 

 俺の言葉に皆が頷き、はぐれないように固まって歩き出す。

 しかし俺達が道行く人を通り過ぎる度に視線(男子だけ)がこちらに向いている様な気がするのは気のせいではないだろう。ついでに俺に向けられている殺意の籠もった視線も。

 今、俺と共に歩いているシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、メガーヌさん。この五人が原因なのは明白だ。

 シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの四人は言わずもがなってとこだな。『海小の四天使』という呼ばれ方は伊達ではない。メガーヌさんも子持ちとは思えないぐらい若いから。ルーテシアに関しては論外だ。まさか二歳間近の幼女に見とれ…

 

 「あの幼女、可愛すぎる」(ハアハア)

 

 「俺の妹になってほしい。そして『お兄ちゃん』と呼ばれたい」(ハアハア)

 

 「お医者さんゴッコして遊びたい」(ハアハア)

 

 …るどころかハアハアと鼻息を荒げ、欲情してる変態達がいた!担任(ロリコン)並の変態がまだ複数この街に潜んでいたのか!?こんなんで街の治安大丈夫なのか海鳴市!?

 

 「ママ、ママ。わたし、あれたべたい」

 

 そんな中でも視線に気付かない純真無垢なルーテシアが指差す視線の先には『ベビーカステラ』の文字が書かれている屋台があった。

 

 「じゃあ買いに行きましょうかルーテシア」

 

 「はーい」

 

 「ユウ!僕達も行くよ!!」

 

 「はいはい」

 

 メガーヌさんと手を繋ぐルーテシア、そして俺達を先導するように前方を歩くレヴィの後をついて俺達はベビーカステラを買いに行く。

 

 「へい、らっしゃい!」

 

 「すみません。カステラを5人分頂けますか?」

 

 「あいよ!サイズはどうするんでえ?」

 

 「大サイズを2つと中サイズを3つ下さい」

 

 「毎度!」

 

 メガーヌさんが注文し、屋台のおっちゃんは注文したカステラを袋に詰め始める。

 大サイズはレヴィが1袋、メガーヌさんとルーテシアが二人で1袋、中サイズはシュテル、ディアーチェ、ユーリが1袋ずつである。俺?俺は買わんよ。今味覚無い様なもんだから買ってもあんま意味無いっしょ。

 

 「大サイズ2袋に中サイズ3袋お待ちぃ!全部で1900円でさぁ!」

 

 「じゃあ丁度で」

 

 メガーヌさんが千円札1枚と百円玉9枚をおっちゃんに手渡す。

 

 「確かに!毎度ありぃ!」

 

 勘定を終え、屋台を離れる。早速レヴィは袋の中に手を突っ込み、カステラを口の中に入れて頬張り始める。

 

 「あまーーーーーい!美味しーーーーー!」

 

 だから大声で叫ぶなよ。視線がこっちに集まるんだから。

 

 「おいしーーーーー!」

 

 ルーテシアまでレヴィの真似をする。視線が更に集まる。メガーヌさんは『あらあら』といった様子で苦笑しているがシュテル、ディアーチェは身内の行動が恥ずかしいと言わんばかりに顔を赤くして俯いてるし俺とユーリは揃って溜め息を吐かざるを得なかった。

 

 「ふぉのふぁふてらふっごくおひひいよユフ」(このカステラすっごく美味しいよユウ)

 

 「分かったから口に物を入れながら喋るなレヴィ。行儀悪いぞ」

 

 カステラを頬張りながら喋るレヴィに注意する。口いっぱいにカステラを詰め込みほっぺが膨らんでいる姿はリスを連想させてくれる。

 

 「それとレヴィ。美味しいからって叫ぶのは止めて下さい」

 

 「(モグモグ…ゴックン)何でさシュテるん。美味しい物を美味しいって言ってもバチは当たらないよ?」

 

 「確かに悪くはないがもう少し声を抑えろ。一緒に行動する我等が恥ずかしいのだ」

 

 「ディアーチェの言う通りです。貴女はもう少し周りの目を気にして下さい」

 

 「むう~…」

 

 シュテル、ディアーチェも注意を促すが逆にレヴィは不満そうだ。

 

 「まあレヴィが大声上げてくれたおかげでコッチは簡単にアンタ達を見つけられたんだけどね」

 

 不意に第三者の声……と言っても聞き覚えのある声色。

 

 「アリサ…それに小鴉達も一緒か」

 

 俺達が振り返った先に立っていたのは案の定、アリサ・バニングス本人であった。その後ろにはなのは達もいる。

 

 「あ、皆ヤッホー」

 

 「レヴィ達ももう来てたんだ」

 

 「皆さん今晩は」

 

 偶然にもなのは達と合流出来た。探す手間が省けて良かった良かった。

 

 「ねえねえ勇紀。これ似合う~?」

 

 アリシアは俺の側まで来て自分の服装を指差した。

 アリシアが着ているのは浴衣だ。…いや、アリシアだけじゃなく他の皆(長谷川家とアルビーノ親子含む)も浴衣だったりする。

 シュテル達はこの祭りのためにデパートに浴衣を買いに行ったらしい。その時メガーヌさんが店員さんに着付けの仕方を教えて貰ったらしく、皆見事に自分の浴衣を着こなしていた。

 

 「ああ、似合ってるぞ」

 

 「えへへ、そうでしょそうでしょ(似合うって言われた~♪)//」

 

 アリシアの浴衣姿を褒めてやると他にも視線がいくつか飛んでくる。これはアレか?浴衣姿を褒めろって事なのか?

 

 「他の皆も似合ってるぞ浴衣」

 

 「「「あ、ありがとう…//」」」

 

 「にゃはは。そう言ってもらえると嬉しいの」

 

 「まあ、当然だけどね」

 

 相変わらず自信満々ですなアリサさん。

 しかし何故俺に聞いてくるかねえ?シュテル達も家で浴衣になった時、真っ先に聞いてきたし。

 

 「ところで勇紀君。そちらの女性(ひと)は?」

 

 すずかが遠慮がちに見つめる視線の先にはメガーヌさんがいる。なのは達も『誰?』って顔してる。まあ皆とは初対面だし当然か。

 

 「ルーのお母さんだよ」

 

 「初めまして。メガーヌって言います。勇紀君のお父さん、泰造さんとは知り合いで今は事情があって勇紀君の家でお世話になってるの」

 

 メガーヌさんは父さんの知り合いっていう事で通すと決めている。でもメガーヌさん、本名で名乗って大丈夫かな?ルーテシアの事だって『ルー』で紹介したからなのは達はそれが本名だと思ってるし…。

 …まあ大丈夫だよな?同姓同名の人物がいたって可笑しくは無い…と思うし。

 メガーヌさんに自己紹介しているなのは達を見ながらそんな事を考える。

 

 「自己紹介は終わりましたか?なら立ち止まらずに移動しないと他の人の迷惑になると思うのですが…」

 

 シュテルの言う通りだ。この人混みの中で立ち止まるとか迷惑な事にしかならない。

 

 「シュテルの言う通りね。でもこのまま全員で固まって移動するの?」

 

 「うーん、せやなあ。適当にバラけてまた後で何処かに集合せえへん?」

 

 「はやてちゃんの意見に賛成なの」

 

 「じゃあ1時間後に神社下の石段の前で集合って事で一時解散!」

 

 その言葉を最後に皆は散り散りになって行った………。

 

 

 

 ~~シュテル視点~~

 

 皆がそれぞれ自由行動になったので私も現在人混みを上手く避けつつ移動しています。そんな私と行動をする者が一人…

 

 「ねえシュテル。何処に行くの?」

 

 「特に行く所は決めてませんよなのは」

 

 周りの屋台を見回しながらなのはの質問に答えます。レヴィの様に食べ歩くのも良いとは思いますが食べ過ぎて太るのは避けたいですし。

 

 「むっ?」

 

 その時私の目に一つの屋台が目に留まりました。

 

 「シュテル、どうしたの?」

 

 「なのは、アレは何でしょうか?」

 

 私が指し示す屋台には『カタヌキ』と書かれていました。

 

 「あー、アレは『型抜き』っていう縁日のゲームなの。爪楊枝や画鋲で型を上手く抜き取れば景品がもらえるの」

 

 「ふむ…縁日のゲームですか。面白そうですね」

 

 「シュテル、挑戦するの?」

 

 「ええ」

 

 私は屋台に近付き、店主にお金を支払い爪楊枝を受け取って早速やってみる事にしました。

 しかし…

 

 「割れました」

 

 私が挑戦したのはコマの形を型抜きしていたのですが型を抜いている途中で割れてしまいチャレンジ失敗という結果になりました。その後2回程やりましたがやはり型を抜き切る前に割れてしまいます。

 

 「にゃはは。やっぱ難しいよね」

 

 なのはが苦笑いしながら言いますが

 

 「いえ、もうコツは掴みました」

 

 「ふぇ!?」

 

 私の発言に驚いた顔をしていますが元『理』のマテリアルである私を見くびってもらっては困りますよなのは。

 それからもう一度チャレンジします。先程までとは違い、順調に型を抜いていき

 

 「こんなものですね」

 

 あっという間に型を割る事無く抜き切りました。

 

 「シュテル凄いの!」

 

 なのはは若干興奮した様子で私を褒め称えてくれますが

 

 「一つ抜いただけでは景品は貰えないのですよね?」

 

 店主に尋ねます。

 

 「そりゃ当たり前だお嬢ちゃん。最低三つ連続で抜け切らなきゃ景品は渡せねえなあ」

 

 ニヤリと笑いながら店主が答えます。

 

 「なら後二つですね」

 

 私は次の型抜きを受け取り作業に取り掛かり始めます。

 

 10分後…。

 

 カカカカカカカカッ

 

 「店主、次の型を出して下さい」

 

 既に50を超える型抜きが私の側に並んでいます。

 

 「…お嬢ちゃん、もう勘弁してくれ。これ以上されたら商売上がったりだ」

 

 遂に店主はもう泣きそうな表情をしながら告げてきました。

 

 「シュ、シュテル。流石におじさんが可哀相なの」

 

 なのはも店主に同情している様子。

 

 「…分かりました。これで勘弁してあげます」

 

 私は最後の型を抜いて爪楊枝を置きます。

 そして私は景品であるお菓子を大量に受け取り、次の店を散策し始まるのでした………。

 

 

 

 ~~シュテル視点終了~~

 

 ~~レヴィ視点~~

 

 うーん、色んな所から美味しそうな匂いや甘い匂いがして口の中から出る涎が止まらないよ。

 

 「レヴィ、また涎が出てるよ」

 

 僕と一緒に行動しているフェイトが口元の涎をハンカチで拭いてくれる。

 

 「あはは、子供だなあ~レヴィは」

 

 「むう、アリシアだって涎出てるじゃん」

 

 「嘘っ!?」

 

 「本当だよ姉さん」

 

 続いてフェイトはアリシアの口元を拭き始める。

 

 「何て言うかフェイトって世話好きだよね」

 

 「そ、そうかな?」

 

 「そりゃあ私の妹だもん。当然だよ」

 

 何でアリシアが威張るんだろう。

 

 「まあ、僕はユウに世話を焼いてもらってるけどね♪」

 

 『ふふんっ』と威張り返してみる。

 

 「レヴィ、それ自慢にならないと思う」

 

 「なっ!?レヴィズルい!私も勇紀にお世話してもらいたい!!」

 

 「……姉さん」

 

 「何でそんな目で見るのフェイト!?フェイトだって勇紀にお世話してもらいたいと思うでしょ?」

 

 「それは羨ましいと思うけど勇紀に迷惑掛ける事になるし」

 

 「じゃあレヴィは勇紀に迷惑掛けてるんだ」

 

 「そんな事無いよ!僕がユウに迷惑掛けた事なんて無いもん!」

 

 「ホントかなあ~」

 

 疑う様な目で見てくるけど事実だもん。迷惑掛けてない……筈だもん。

 

 「でもやっぱりレヴィだけ世話してもらえるなんて不公平だよ!」

 

 悔しそうに言うアリシアに僕は優越感を感じていた。

 

 「ふ、ふんだ。いいもんいいもん。私が勇紀と付き合う事になったら思いっきり甘えるもん」

 

 「な、何言ってるのさ!!ダメダメ!!ユウと付き合うなんて僕は許さないからね!!」

 

 「レヴィの許可なんて必要ないでしょ!」

 

 「ダメなものはダメなの!」

 

 僕とアリシアはお互いに『ふーっ!』と威嚇する。

 

 「ふ、二人共その辺にしておこうよ。周りの人がこっち見てるよ」

 

 「「そんな事はどうでもいいよ」」

 

 「良くないよ。…そ、そうだ!仲良くしてくれるならあそこの屋台で売っているかき氷を奢ってあげるから」

 

 「「何してるのフェイト?早く行こう!」」

 

 僕とアリシアは仲良く肩を組んで仲良しだって事をフェイトにアピールする。

 かき氷かき氷♪ブルーハワイ味あるかなあ?

 

 

 

 ~~レヴィ視点終了~~

 

 ~~ディアーチェ視点~~

 

 「なー王様ー」

 

 「何だ子鴉」

 

 「そのカステラ一つくれへん?」

 

 「何故我が貴様に恵んでやらねばならぬ。自分で買え」

 

 「ケチー。一つぐらいくれてもバチは当たらんやんか」

 

 「ケチで結構だ」

 

 「ぶう~」

 

 頬を膨らませブーたれているが我は無視してカステラを一つ口に放り込む。

 

 「(モグモグ…ゴックン)第一何故我に着いて来た?」

 

 「そりゃー王様とお話したかったからに決まってるやん」

 

 「我は貴様と話す事などないぞ子鴉」

 

 「それや王様。他の皆の事は名前で呼ぶのに何でわたしだけ『小鴉』のままなん?」

 

 「貴様など子鴉で充分だからだ」

 

 「理由になってへんよ!?別に名前で呼んでくれてもええやん!」

 

 「貴様を名前で呼んでやるほどの価値が無い」

 

 「酷い!酷いわ王様!!」

 

 ギャーギャーとやかましい奴だ。何故我には子鴉なのだ?これがユウキであればどんなに良かった事か。

 …今更そんな事を言っても仕方が無いか。

 

 「うう~、王様が冷たい。こんな事なら勇紀君と回れば良かったわ」

 

 「寝言は寝て言え子鴉。貴様がユウキと肩を並べて歩くなど我が許さぬわ」

 

 「勇紀君と歩くだけで王様の許可必要無いやん」

 

 「我とユウキは家族だ。家族の事を心配するのは当然であろうが」

 

 「心配って…。王様、私の事どんな風に思っとるんよ?」

 

 「先程から我に付き纏うウザったい存在」

 

 「…王様、ホンマわたしには容赦無いんやね」

 

 子鴉は肩を落としシュンとなるが我の後を着いて来るのは止めぬ様だ。

 

 「しかしこのまま歩くだけというのもつまらぬな」

 

 我は何か無いかと周囲の屋台を見回す。

 

 「む、あれはスーパーボール掬いか」

 

 我がスーパーボール掬いの店の側まで寄る。我以外にも子供が何人かおり、水槽にあるスーパーボールを掬い上げようと必死になっている。

 

 「王様もやんの?」

 

 多少元気を取り戻したらしい子鴉に尋ねられ我はどうするか考える。

 

「…時間潰しには丁度良いか。おい店主、我もやるぞ」

 

 我も他の子供達に交じってスーパーボール掬いに勤しむ事にした………。

 

 

 

 ~~ディアーチェ視点終了~~

 

 ~~ユーリ視点~~

 

 「お祭りとはこんなに賑やかなものなのですか?」

 

 「そうね。海鳴の夏祭りは毎年訪れる人も多いし、打上花火も綺麗だしね」

 

 「ユーリちゃんはお祭り初めて?」

 

 「はい」

 

 私の疑問にアリサが答えてくれ、すずかの質問に私は頷きます。

 

 「去年は一般常識を覚えるのに必死でそんな余裕がありませんでしたからね」

 

 レヴィはそれでも行こうとしてましたが。

 

 「なら今日は精一杯楽しみなさいよ」

 

 「分かってますよアリサ」

 

 しかしお祭りというのは色んなお店が出てるんですね。レヴィ辺りは食べ物意外に興味無さそうですけど。

 ユウキやシュテルやディアーチェは今何をしているのでしょうか?

 

 「ねえユーリ。アレやってみない?」

 

 「アレ?」

 

 アリサの示す方向にあったのは『輪投げ』の屋台だった。

 

 「輪投げ…ですか?」

 

 「そうそう。欲しい景品に輪を投げて上手くいけばその景品を貰えるのよ」

 

 アリサの説明を聞きながら私は棚に置かれている景品を目にします。これと言って欲しい物は無いですね…。

 

 「…お菓子ならレヴィが喜びそうですね。戦利品として狙ってみますか」

 

 私はアリサ、すずかと共に輪投げに挑戦します。

 一回のゲームで投げられる輪は五回。狙ってみるのは正面にあるお菓子の詰め袋です。集中し、早速一つ目の輪を投げますが…

 

 ポスッ…

 

 思いきり的外れなところに落ちてしまいました。

 ……ま、まあ初めての経験ですからね。自分でも無意識の内に緊張しているという事でしょう。決して私がノーコンではない筈です!

 気を取り直して第二投目……。

 

 ポスッ…

 

 こ、今度は反対の方向に。

 第三投目…

 

 ポスッ…

 

 第四投目…第五投目…

 

 ポスッ…ポスッ…

 

 「……………………」

 

 結局一投も景品に輪がかかる事はありませんでした。それどころか真っ直ぐにすら飛びませんでした。

 

 「ユーリ、アンタ残念なくらいノーコンね」

 

 「ちちち違います!私はノーコンなんかじゃないです!」

 

 「でも結果が物語ってるじゃない」

 

 「今日は偶々です!偶々調子が悪かっただけです」

 

 大体私がノーコンになるのはボールを投げる時だけなんです!ボール以外は真っ直ぐに飛ぶ筈なんです!

 

 「認めたくないのかもしれないけど現実を受け入れなさい」

 

 「ユーリちゃん。別にノーコンだからってそこまで気にしなくてもいいと思うよ」

 

 「うう~…」

 

 私はもう唸る事しか出来なくなりました。アリサは携帯ストラップやキーホルダー、すずかも私の狙っていたお菓子をゲットしたりしています。

 

 「つ、次の屋台に行きましょう!」

 

 そうです。他の屋台には私の実力を二人に示す事が出来る遊戯が有る筈。

 私は二人を連れて新しい屋台を探し始めるのでした………。

 

 

 

 ~~ユーリ視点終了~~

 

 シュテル達はちゃんと祭りを満喫出来てるんだろうか?

 アイツ等の誰かに着いて行くかどうか少し考えている内に皆さっさと行ってしまった。この人混みの中で見つけるのは困難なので俺はメガーヌさん、ルーテシアのアルビーノ親子と一緒に歩いている。

 

 「ママ、あれたべたい」

 

 ルーテシアが指差す先にあるのは綿飴だった。

 

 「カステラはもういいの?」

 

 「おうちにかえってからたべる」

 

 「そう。じゃあ買ってくるから待っててね」

 

 メガーヌさんが綿飴を買いに俺達から一旦離れる。そして

 

 「あ、勇紀君にルーちゃん。今晩は」

 

 メガーヌさんと入れ替わる様に那美さんが久遠(子狐形態)を抱き抱えたまま俺達の側にやってきた。

 

 「那美さん、久遠今晩は」

 

 「こんばんはー」

 

 「くぉん」

 

 久遠は那美さんの腕からスルリと抜けルーテシアの足元に近寄り、ルーテシアは久遠を抱き上げる。ホントに仲良くなったもんだ。

 

 「勇紀君とルーちゃんは二人で来たの?確か一緒に住んでる子達も来るって言ってたよね?」

 

 「いえ、皆友達と一緒に行動してますから。あと、あそこの綿飴を買ってる人が俺達の保護者でルーのお母さんです」

 

 屋台の方を指して答える。屋台の店主さんから綿飴を受け取るメガーヌさん。店主さんメッチャ鼻の下伸びてるな。綿飴を受け取ったメガーヌさんがこちらに戻って来る。

 

 「あら勇紀君、この方は?」

 

 「神社の管理人で巫女さんの神咲那美さん。ルーがお気に入りの久遠の飼い主です」

 

 「神咲那美です。勇紀君が紹介してくれた様に久遠の飼い主で八束神社の管理を任されています」

 

 「ルーの母親でメガーヌと言います。娘がそちらの飼い狐を気に入ったらしくて、ご迷惑を掛けてないか不安だったんですけど」

 

 「そんな!迷惑なんて事は無いですよ。久遠も勇紀君の他に新しい友達が出来て嬉しがってますし」

 

 「あの、メガーヌさんに那美さんも人混みの中で立ち止まって話し込むのはなんですから少し移動して別の場所で話した方が…」

 

 「あら、そうね。でも何処に移動しましょう?」

 

 「集合場所である神社下の石段前へ行くのはどうですか?」

 

 「そうね。そうしましょうか」

 

 俺達は揃って移動する。久遠は俺の頭の上に乗りルーテシアは俺と手を繋いで上機嫌で歩く。

 集合場所に着いた俺達は特にする事も無くメガーヌさんと那美さんが話しているのを眺めていた。

 

 「おにーちゃん、このわたあめおいしーよ」

 

 先程メガーヌさんが買った綿飴を食べている。

 

 「そっか。よかったな」

 

 石段に腰掛けながら綿飴をパクパクと食べていくルーテシア。

 そろそろ1時間が経つ頃なんだけど…

 

 「ユウキ、もう来ていたのですか?」

 

 最初に戻ってきたのはシュテル、なのはだった。シュテルの両手には大量のお菓子を詰め込んだビニール袋が握られている。

 

 「シュテル、その大量のお菓子はどうしたんだ?」

 

 「景品です」

 

 「…一体何をやったらそんなに貰えるんだ?」

 

 「屋台のおじさんが凄く可哀相だったの」

 

 「ニヤケ顔が気に入らなかったもので」

 

 ホントに何やったんだコイツは?

 

 「戻ったぞ」

 

 新たな声。今度はディアーチェ、はやて組だ。ディアーチェの持つ袋の中にも大量のスーパーボールがあった。

 

 「お前も大量の戦利品を抱えてるな」

 

 「ふっ、我の実力を子鴉に見せつけてやろうと思ってな」

 

 「王様大人気なかったんやで。最初の2、3回はすぐに(ポイ)が破れてしもうたから強化魔法で(ポイ)が破れへん様にして掬いまくってるんやもん」

 

 それ、反則じゃね?

 

 「だ、黙れ子鴉!あの店主の馬鹿にした様な表情が気に食わんかったのだ!」

 

 コイツもか。シュテルといいそんなに屋台の店主の態度が悪かったのか?

 

 「「着いたー」」

 

 今度は二人分の奈々ボイス…もとい元気な声。元気いっぱいのレヴィとアリシアに対し何だか疲れた様子のフェイト。

 

 「おお!?シュテるん、そのお菓子どうしたの?」

 

 「戦利品です。食べますか?」

 

 「良いの!?」

 

 「別に構いませんよ」

 

 「じゃあ早速…」

 

 「レヴィズルいよ。シュテル、私も貰うから」

 

 レヴィとアリシアがシュテルの持つビニール袋を漁り始める。

 

 「…で、フェイトは何でそんなに疲れてるんだ?」

 

 「あの二人、次々と色んな屋台に忙しなく移動するから」

 

 「…元気が取り柄の奴等だしな。一人でお守させて悪かった」

 

 二人に振り回されるフェイトの姿が容易に想像出来る。

 

 「謝る事はないよ勇紀。少し疲れたけど私も楽しかったから」

 

 そういうフェイトの表情には確かに不満は無さそうに見える。むしろ満足そうな表情だ。

 

 「あら?私達が一番最後みたいね?」

 

 最期の組であるユーリ、アリサ、すずかが集合場所に現れた。しかしユーリは肩を落としてやたらと気落ちしているが…。

 

 「…何があった?」

 

 「輪投げ、射的、金魚すくい…他にも色々な屋台を回ったけど何一つ戦果を残せなかったのよ」

 

 「うう…」

 

 特に輪投げはノーコン過ぎて真っ直ぐ飛ぶ事すらなかったという。

 

 「それでさっきから気になっていたのですが…」

 

 一通り会話を終えるのを待っていた様子のシュテルが口を開く。

 

 「ユウキ、その頭の上に乗っているのは何ですか?」

 

 俺の頭上に指を差しながら質問してくる。

 

 「これが以前から言ってた子狐の友達で久遠って言うんだ。それとあそこでメガーヌさんと会話してるのが久遠の飼い主で神咲那美さん。この八束神社の管理を担当してる巫女さん」

 

 俺の言葉に皆が一斉にメガーヌさんと那美さんのいる方を見る。当の本人達は会話に花を咲かせて皆の視線には気付いていない。

 そしてこっちに向き直った皆の視線(なのは、アリサ除く)は何か鋭いものになっていた。

 

 「あの…どうかしましたか?」

 

 思わず敬語になってしまった。

 

 「「「「「「「「別に(年上…しかも美人)」」」」」」」」

 

 どうもないなら何故そんなに俺を睨むのでしょう?

 

 「それよりその狐可愛いわね。私にも触らせなさいよ」

 

 「あっ、アリサちゃん。私も触りたいの」

 

 二人が頭の上に乗っている久遠に手を伸ばすが

 

 ピョンッ

 

 「「あっ」」

 

 俺の頭上から飛び降りた久遠はそのままルーテシアの背に隠れる。

 

 「あー、二人が久遠に触れたい気持ちは分かるが久遠は人見知りが激しくてな。初対面で触れるのはまず無理だと思う」

 

 『仲良くなるなら地道に時間を掛けてゆっくりと距離を縮めろ』とアドバイスしておく。

 それからメガーヌさんと話し終えた那美さんがこっちにいる皆に振り向いて驚いた表情をしていた。『海鳴には双子が多いんだね』と。

 勿論シュテル、レヴィ、ディアーチェがなのは、フェイト、はやてと双子ではないと説明しておいた。この場で双子なのはフェイト、アリシアのテスタロッサ姉妹だけだろう。

 皆も那美さんに自己紹介して少しの間話していたが子供にとってはもう遅い時間になりつつあったので今日はもう解散という事になった。那美さんは久遠と神社に戻り、いつの間に連絡したのかリムジンを運転してきた鮫島さんが迎えにきていた。どうやら俺達長谷川家以外の面々は家まで送迎してもらえるっぽい。皆がリムジンに乗り込み帰ったのを見届けてから俺達も家に向かって歩き出す。

 『今日は中々楽しかった』とユーリ以外の面々は満足そうでユーリは『ノーコンの汚名を返上します!』と意気込んでいた。

 …頑張れユーリ。運動音痴が改善されるのは悪い事ではない。

 俺も出来るだけ力になってやるかと思い、心の中でユーリにエールを送るのだった………。


 
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