No.517781

変化

yurayuraさん

TOI-Rの現代パロの9話目です。

2012-12-12 20:43:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:393   閲覧ユーザー数:393

 

――お前、最近明るくなったよな!

 

 

 

いつもつるんでいる奴から、そう言われた。

 

――は?いきなり何言ってるんだ?つーか、それは俺が暗かったって意味か!?

――だってよー。お前、人を近寄らせないオーラ出してるじゃんかよー。

 

そいつは不貞腐れながら言った。

近寄らせないオーラを出しているつもりはない(が、出ているらしい)。

俺がそいつのセリフに顔を引きつらせていると、そいつはそんなことなどお構いなしに笑顔で言った。

 

 

――お前、変わったよな!

 

 

変わった?

 

 

どこが―――――?

 

 

 

 

 

 

「もしもし、スパーダくん?」

 

いきなりコンウェイから電話がかかってきた。

予想外のことに俺は驚いた。何かあったのかと思い電話に出てみると、

「悪いけど、今からルカくんの家に行ってくれないかい?」

「は?何でだよ?」

電話がかかってきたことにも驚いたが、その内容にも驚いた。

 

「今、雷が鳴っているだろう?」

確かに、さっきから家の外で雨とともに雷の音がずっと鳴っている。だけど、

「それがどうしたんだよ?」

「ルカくん、雷が怖いんだよ」

 

別にコンウェイは怒るようなことは言っていない―――――言っていないが、何でかムカついた。

自分で何にムカついているのか分からなかった。

 

 

だが、そんなことより―――

 

 

「ルカ、雷が怖いのか?」

「うん」

あー、そんな感じするなぁ・・・。

ルカは、どちらかと言わなくとも怖がりだ。それは今までの付き合いで分かっている。

「だから、ルカのところへ行けと?」

「そう」

「・・・・・・」

 

嫌なわけではない。

雷を怖がっているルカのところへ行くのが、嫌なわけではない。

 

 

―――ただ、こいつの言うことをそのまま聞くのが、なんだか癪だった。

 

 

「だったら、お前が行けばいいんじゃねぇの?」

「行きたいのはやまやまだけど、学校の用事で遠くにいるんだ」

 

別にそんなの放っておいて行けばいいじゃねぇか――と言おうとしたら、

 

「このことはルカくんも知っている」

「は?だから何だよ?」

 

「自分のことで、僕が用事を投げ出してルカくんのところに行ったら、ルカくんが気にする」

 

 

―――――何だよ、それ

 

心の中のイライラがだんだんつのってきた。

心配でルカのところに行きたいけど、

ルカが気にするからルカのところに行けねぇ――て

 

 

何だよ

 

 

携帯を持つ手が、だんだん力をなくしていった。

 

 

「ねえ、スパーダくん」

「何だよ・・・?」

イラつきが声に出た。

 

「君、ルカくんが心配だよね?」

「はっ!?」

 

こいつ、何ふざけたこと聞いてるんだ――!?

 

「当たり前だろ!!」

 

「じゃあ――」

 

 

 

 

「ルカくんのところに行ってくれないかい?」

 

 

 

 

 

 

俺はすぐに携帯を切って、ルカの家に走っていった。

 

 

雷が怖いっていうのが、どれほどのものかは分からない

ルカが、どれほど雷を怖がっているのか分からない

 

 

 

けど

 

 

そんなんじゃなくて

 

 

そういうことじゃなくて

 

 

 

自分でも分からない何かで、ただ早くとルカのもとへ走っていた

 

 

 

心配?

 

ああ、心配だよ

 

 

けど

 

 

それだけじゃない

 

 

自分でもよく分からない

 

 

ただ、

 

 

早くルカのところへ行きたい―――――

 

 

 

「はぁはぁ・・・」

俺はルカの家の門に着くと、すぐに呼び鈴を押した。

「・・・・・・」

けど、何の応答もなかった。

まさか家にいないのか?――と思ったが、雷が鳴っている今、雷の苦手なルカが外にいるというのは変だ。

俺は携帯を取り出して、ルカの携帯へかける。

 

トルゥゥ、トルゥゥ

 

数回呼び出し音が鳴っても、出ない。

それでも、かけ続けていると――

 

 

「・・・・・・スパーダ?」

 

「ルカ!」

やっと、ルカが出た。

雷が鳴っているせいか、声がいつもより元気がない。

「・・・どうしたの?」

泣きそうな声で言ってくる。

心の中で、焦りが募ってくる。

「なあ、今お前の家の門の前にいるんだけどよ。開けてくれねぇか?」

「えっ!!?」

ルカが驚きを隠せないようで、明らかに慌てていた。

「あっ、うん!今、開けるよ!!」

 

最初より、声が明るくなっていた。

そのことに少し安堵した。

少し経ってルカがドアを開けた。

ドアを開けて、俺を見て――――もともと大きい目を、さらに大きくさせて、泣きそうな声で俺に言った。

 

 

 

「スパーダ!風邪ひくかもしれないから、早く入って!!」

 

 

お前、雷が怖いんじゃなかったのかよ―――

 

 

口には出さずに、俺のことを心配するルカの言葉に、そんなことを思った。


 
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