亡国機業 タボン・トラークの幼少期
第3話 「慈善は偽りを隠す」
男性
「さぁ、入ろうか。」
タボンは男性に誘われるまま、繁華街の裏地にある薄暗く寂れたビルの中へ入った。
薄暗く感じたビルだったが、繁華街から発する光でけを浴びてた薄暗かったビルが2人が入口へと入った瞬間、突如電気が点いて明るくなった。
タボン(当時10歳)
「うわっ!!」
突然の電気の点灯で、しかも暗かった空間が突然にして明るくなったので彼は一瞬目を眩んだのだ。
スラムの極貧地区で生活してた彼は電気とは懸け離れた生活を送ってたので、暗い環境に慣れてた眼は突然の点灯に驚いてしまったのだ。
男性
「ハハハ。大丈夫かね?」
男性は少し笑いながらタボンに問いかける。
タボン
「う・・・・うん。もう平気だから。」
タボンは突然の点灯で驚いてたが、眼もその点灯された空間に馴染んでた。
しかし、それと同時にタボンは何かしらの疑問を感じてた。
ここが児童支援施設というのに、何故か建物の中では自分と男性以外の人気(ひとけ)が全く無いのだ。
とても広いフロントだけど、2人以外の誰もいない。
明るいけど、何故だか分からないがヒンヤリとする。温もりが溢れてた繁華街とは全く違う程寒気がしてた。
とてもヒンヤリしてる。身震いする位の寒気がする。
タボン
「ねぇ・・・・おじさん、なんでこの中はこんなにヒンヤリしてるの?」
男性
「ここは北側に面してるから、太陽の光があまり当たらないんだよ。でも大丈夫だよ、これから此処が君の居場所になるんだから、すぐに慣れるよ♪」
男性はタボンの不安を薄めるかのように優しい声で安心させた。
しかし、それでもタボンは何かしらの不安があった。
自分がいる入口に繋がる広いフロントホールはとても明るい。しかし、2階へと続く階段やフロントと繋がる廊下が奥になるにつれて暗くなってる。
そして人の気配が全く無い。児童支援施設なら最低でも5人以上の人間がいる。
職員でも2人はいる。身寄りの無い孤児たちの世話をする為に泊まり込みも行う。
この知識は、タボンがまだ更識家の計略の対象になる前、彼がまだ裕福な上流家庭で豊かな生活してた頃、当時通ってた学校で行われた社会見学実習で学んだ事だ。
男性
「君の部屋へと案内するよ。付いてきなさい。」
男性は彼の不安を和らげるかのような優しい声で安心させる。
明るいフロントから2階へと続く階段へ上る。
階段を上るにつれて徐々に薄暗くなっていき、2階へ上がると1階のフロントとは比べものにならないくらい薄暗い。オレンジ色の豆電球が薄暗い廊下を僅かながら照らしてる。
タボン
「おじさん・・・・・、どうして2階はこんなに薄暗いの?」
男性
「ほかの子供たちはみんな寝てるからね。明るくしてしまうと夜更かしする子もいるからね。」
2階の廊下の奥にある広いスペースでベンチに座って、男性はそのスペースにあった自販機でジュースを買ってくれた。
ちなみに時間は夜10時50分。
男性
「ここが君の部屋だよ。」
自販機の向かいにある扉へ移動し、扉を開けた。
扉の向こうは真っ暗で何も見えない。
タボンは若干不安に駆られたが、男性は部屋の電気を点けてくれた。
タボン
「入っていいの?」
男性
「勿論だよ。これからはここが君の家なんだから。」
男性の言うとおりにタボンは部屋へと入った。
タボン
「うわぁ!!とても広くて綺麗!!」
タボンは部屋の広さに驚いてた。1人で済むには広すぎるくらいだ。
4人いてちょうどいい広さだった。
けれどこの部屋にはタボン以外居なかった。
男性
「今日はもう遅いからゆっくりと休みなさい。それと、明日はこれからこの施設で共に暮らす仲間を紹介するから、楽しみにしててね。」
タボン
「おじさん、有難う。こんなボクを拾ってくれて」
男性
「いいんだよ。こうして少しでも身寄りの無い子供を支えてあげる事が、我々児童支援施設の職員の使命だと思うんだ。それではお休みなさい。
男性は廊下へ出て部屋のドアを閉めて去って行った。
タボン
「・・・・やさしいおじさんだったな。僕もいつかはあのおじさんみたいな大人になりたいな。ちょっと小太りで毛むくじゃらなのは嫌だけど(笑)」
彼は男性の寛大さに感銘を受けてた。与えられた広い部屋。ベットが4つある。
彼に与えれたのは4人部屋だ。しかし部屋にはタボン1人だけだった。
タボン
「4人部屋だけど、居るのはボク1人か・・・。近いうちにおじさんがまたボクみたいな居場所のない子供を連れてくれるんだろうな。」
タボンは広い部屋をウロチョロしてた。
ベットが4台。大きな薄型テレビが1台。大きなクローゼットが1台。
ブラインドが窓を覆ってる。
テレビの上には大きな振子の時計が掛けられてる。
― 時間はもう11時か。今日はいろいろ有って疲れたよ。―
タボンは一気に今日の疲れが襲ってきたのか、ベットの上に倒れこみ寝転がった。
フワフワな布団がとても気持ちいい。
部屋がヒンヤリしてたせいもあって布団がとても暖かくて彼に安らぎを与えた。
今日の出来事なんて忘れたい。スラムと市街地で起きたギャングとマフィアによるピストルの撃ち合いで死んでいった人とその断末魔。
それで精神的にもかなりの負荷で、スラムのゴロツキ共にリンチされた身体への傷。
一日で一斉に受けた負荷を払拭してくれるかのように、優しくタボンを包み込む布団。
やわらかいベッドとふかふかな布団の温もりに包まれながら、タボンは瞼を閉じていった。
― 夢 -
タボン
「ん?ここは何処だろう?」
タボンの意識が戻ると、そこはとても豪華な家でメイドさんと婆や、そして死んだはずのお父さんとお母さんがいた。
そうタボンは夢を見てたのだ。
スラムへ追いやられる前の家族と囲まれながら幸せに暮らしてたあの頃・・・・。
みんなが大きなテーブルに載ってる沢山のご馳走を食べてる。
メイド
「お坊ちゃま、夕食の準備が終わりましたので、どうぞ召し上がって下さい。」
メイドはタボンに手を差し伸べる。
そして、タボンもみんながご馳走を食べてるテーブルに着き、椅子に座ってご馳走をほおばり始まる。
無我夢中で行儀も気にせず、母親やメイドから注意されるも気にせずに貪り食べる。
母親
「コラ!!タボン。よく噛んで食べなさい。」
メイド
「お坊ちゃま・・・!!そんなに詰め込むように食べたら喉が詰まっては大変ですwww!!」
タボン
「モグモグガツガツガツガツ」
父親
「ハハハ♪今のタボンに何を言っても駄目だよ♪」
タボン
「ガツガツガツガツモグモグモグモグ・・・・・っ!!!」
母親
「ほら見なさい。急いで食べるから喉詰まらせるのよ・・・ハハハハ♪」
メイド
「笑い事ではありませんよ奥様♪もうお坊ちゃまったら♪」
喉を詰まらせて息苦しそうなタボンにメイドは笑いながら水を指し出し、彼はその水を中へ流し込むかのように一気飲み
タボン
「ハァハァ・・・・ハァハァ・・・(汗)死ぬかと思った・・・・・。」
両親、メイド、婆やは彼の安心した姿を見て再び笑いだした。
タボン
「笑わないでよ!!死ぬところだったん・・・・・・ううっ!!」
急に目まいがした。両親たちの姿が徐々にぼやけていく・・・。笑い声が遠のいていく。
両親やメイド、婆やの姿が徐々に捻じれて行くかのように歪んでいく・・・・!!
そして徐々にぼやけて周りが黒く染まっていく・・・・。
タボン
「みんな・・・!!何処に行くの!?やめて!!ボクを独りにしないで!!待ってよぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
・・・・
タボン
「うわっ!!」
突如タボンは大声を出して目を覚めてしまった。
そして息を荒くしながら吐いてた。
タボン
「ハァ・・・・・ハァ・・・ハァ・・・・。なんだ・・・、夢か・・・。」
空はまだ薄暗かったものの、かすかに蒼色の部分が見えてた。
時計を見ると 朝4時15分。
まだ繁華街の光が微かに残ってるのを窓から確認した。
タボン
「嫌な夢だったな・・・・。」
死んでしまった両親に会えたのは夢でも嬉しかった。しかし、その両親が再び消えてしまう所で目を覚めてしまったのだから、目覚めが悪い。
大声を出して起きてしまったので、もう寝れない。
タボン
「目が覚めてしまってもう寝れないや・・・。確か、おじさんは朝6時30分に朝食に起こしに来るから、まだ2時間以上時間があるな・・・。」
テレビを点けても、なにもやってなく砂嵐ばかりだった。
何をしようか考えてたタボンは、ひとまず他のベットに飛び移りゴロゴロしなが考えてた。
タボン
「・・・・・!?なんだこれは?」
タボンはベットの隙間から何かを見つけた。
それは、ゴム状で出来た小さな袋状の物。色は肌色。結構伸縮性がある。
好奇心で指を袋の中に入れると、とてもベタベタする・・・。
気持ち悪くなったのですぐに指を袋から抜いた。指には白っぽい液が付いてる。
変な匂いがする・・・。
気持ち悪くなったタボンはその袋をゴミ箱い捨て、すぐに部屋を出て廊下にある手洗い場へ向かって、白っぽいベタベタした液を洗い流した。
ちなみに手洗い場の床には、その小さなゴム製の袋があちこちに散乱してた。
タボン
「なんでこんなのがトイレにあちこちに落っこちてるんだろ?」
タボンは疑問に思ってたが、そこまで深く考えず手洗い場を出た。
朝の冷え込みもあって廊下も手洗い場も物凄く寒かった。身震いが止まらなかった。
まだ午前の4時台なので、廊下はとても暗く、奥が漆黒に覆われてた。
タボンは廊下の冷え込みに耐えらなくて、すぐに部屋に戻り再びベットに入り布団にうずくまった。
To Be Continued
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前作の小説の続きです。 序でに亡国機業便りも書きました。