No.516640

IS x アギト 目覚める魂 01: 邂逅 その1

i-pod男さん

第一話です。どうぞ

2012-12-09 11:34:58 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3857   閲覧ユーザー数:3687

そして数年の時が流れ、織斑一夏は高校受験の為にある会場に向かっていた。彼が受ける高校は、学費が安くも就職率が高いと言う色々と都合が良過ぎる藍越学園だ。そして会場には行ったは良いが、問題が一つ。

 

「・・・・・迷った・・・・・どこだここは・・・・?カンニング防止の溜めとは言えここまで道を入り組ませる事無いだろうに。近くに人がいる気配も無いしなあ・・・ん?」

 

「お。」

 

そして歩いている内にバッタリと二人は出会った。

 

「あの〜、藍越学園受験の試験会場に行きたいんですけど、知りませんか?」

 

「悪いが俺はここのスタッフじゃ無い。俺は少し前にここに私物を置き忘れて取りに来たんだが、帰ろうとすると突然道が入り組み始めたみたいで、恥ずかしい話俺も迷ってるんだ。」

 

門牙は苦笑して手に持っていた将棋の定石を記した本をトントンと指で叩く。嘘は言っていない。

 

「俺は門牙秋斗。門の牙に秋の北斗七星と書く。こんな見た目だが、一応十八歳だ。敬語は使わなくていい。」

 

「織斑一夏です。って十八歳?!」

 

「まあな。さてと、それは兎も角人に聞かない事にはここからは出られないな。適当な部屋に入って人がいるかどうか確かめて、いたら道筋を聞こう。」

 

「え、ちょ」

 

秋斗は適当なドアを開けた。だが、その部屋は薄暗く、そこら中に設置された精密機器の音しかしない、何とも不気味な所だった。そして部屋の中心に何か大きな物が、それも二つ置いてある。

 

「まずいですよ、勝手に入ったら・・・」

 

「敬語は良いと言ってるだろう?道順を聞くだけだ、別にどうと言う事は無い。ん・・・・?あれは、IS、か?」

 

「みたいですね。生で見るのは久し振りだな。」

 

暗がりの所為で欲は見えなかったが、秋斗は薄く笑い、一夏の腕を掴むと、それぞれの手でISに触れた。途端に頭の中に何らかのイメージが流れ込み始める。

 

「君達!ここで何してるの?早く・・・・うそ・・・・機動、してる?!女性にしか反応しない筈なのに、何で・・・・・!?」

 

「(これは少しヤバいかもな。注目を引き過ぎたら関係無い奴まで巻き込んでしまう。)一夏、走るぞ。」

 

「え、でも迷ってたんじゃ?!」

 

「適当に走り回ってりゃ大丈夫だ!いざとなれば窓から飛び降りれば良いだけさ!」

 

滅茶苦茶なことを言われて面食らったが、ここで掴まれば事態は更に悪化すると思い、素直に従った。十分程走り回るとようやく会場の外に出る事に成功し、一夏をバイクのタンデムシートに乗せると、アクセルを捻って姿を消した。

 

「ここまでくれば一先ずは大丈夫だろう。」

 

「はい・・・・・びっくりしたー・・・・まさか起動するなんて・・・・」

 

「女にしか起動出来ない筈の物が俺達二人に反応した。偶然か運命の悪戯か・・・・何にせよ、厄介な事になるな。お前も、あの不完全な姿の事もあるし。」

 

「不完全な、姿・・・?何を」

 

「隠さなくても良い。俺はお前と同じ、異質な人間なんだ。っ・・・!!」

 

突如気配を感じ、秋斗の目の色が変わる。一夏の背中めがけて飛んで来た矢を掴み、その矢を使って飛んで来る矢を更に叩き落とす。

 

「こんな所まで来るか・・・・一夏、お前も変身出来るんだろ?」

 

「え・・・・」

 

「何で知ってるか、ってか?簡単な事だ。お前が俺に触れていた時、俺はお前を『読める』。だから、お前のあの破滅のイメージも、モンド・グロッソの事も、全て知っている。新聞でも呼んだしな。辛いだろうが、それが現実だ。受け入れずに足踏みしてても何も変わらない。踏み出せ、その一歩を。俺は、そうする事で『俺』を受け入れた。お前にもそれが出来ると信じたい。そこで見ていろ。俺の、変身!」

 

左拳と右手を左腰まで持って行き、右手を前方に突き出して自分の方に引き寄せた。すると、光と共に秋斗の腰周りにベルト、オルタリングが現れる。引き寄せた手を再びゆっくりと伸ばし、両腰のスイッチを叩くと、眩い光に包まれて秋斗の姿が変わった。

 

「あれは・・・・」

 

「・・・・そこか。」

 

アスファルトの一部を踏み砕き、その衝撃で跳ね上がった欠片をある方向に向かって蹴り飛ばした。

 

『ヌウゥア!』

 

建物の屋上から青いスカーフの様な物を纏い、弓矢を持った白いジャガーロード、パンテラス・アルビュスが地面に激突した。

 

「一気に片をつけてやる。」

 

頭のクロスホーンが開き、突き出した拳の前にあの紋章が現れ、吸い込まれて行く。飛び上がると、まだ立ち上がろうとしている途中のパンテラス・アルビュスの脳天にパンチを叩き込んだ。落下速度の速さも相まってその破壊力はアンノウンを地面に減り込ませた。

 

『グウォオオオオオオオオオーーーーー!!!!』

 

円盤状の発光体がアルビュスの頭上に一瞬浮かび、爆死して粉々に飛散した。クロスホーンを閉じると、一夏に向き直る。

 

「これで分かったろ?」

 

「・・・・門牙さん・・・・っ!」

 

一夏も何かの気配を感じ取ったのか、割れたアスファルトの欠片を拾い上げ、投げ飛ばした。命中した付近で赤い布が舞い上がるのを目にする。

 

『ア・・・・ギ、ト・・・・』

 

同族と思しきもう一体のジャガーロード、パンテラス・ルベオーが何かしらのサインを両手で作り、そう呟いた。

 

「アギト・・・?」

 

「そう。それが人類の進化した、『光』を手にしたその力を根源とする種族の名前だ。お前の力はまだ不完全だが、それはお前がその力を恐れ、無意識に押さえ込んでいるからに過ぎない。押さえるな。解放しろ。もう一人の、本当のお前を見せてみろ。暴走しても、俺がお前を止める。」

 

一夏は深く息を吸い込むと、目を強く閉じ、大きく開いた。赤く変色した目が、露わになる。

 

「・・・グルァァアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーー!!!!!!」

 

何年も押さえ込んでいたもう一人の、野獣の様な自分を、解放した。一夏の姿は消えて行く。緑の体と角、赤い目、金色の腰のベルト。代わりに現れたのは不完全なアギト、ギルスが現れた。

 

「ギルスか・・・・」

 

「ウォオオオオオーーーー!!!」

 

驚異的な跳躍力で空中に飛び上がり、パンテラス・ルベオーにタックルをかまし、地面に叩き付けた。マウントを取ると、何度も何度も力任せに殴り付ける。まるで今までたまっていたモノを発散するかの様に執拗に殴り付ける。武器を出す暇も無くボロ雑巾にされて行くルベオーを両腕の前腕に出現させたギルスクローで更に切り刻み、ダメージを与える。クローを引っ込めると、今度は手首の内側から長大な触手状の鞭『ギルスフィーラー』を引き出した。それはまるで鎌首を擡げる蛇が生きているかの様な動きを見せる。それを縦横無尽に振り回してルベオーに叩き付けて追い詰めて行く。遂にギルスフィーラーによって拘束、首を締め付けられ、上空に投げ飛ばされた。

 

「ガァァアアアアアアアアアーーーーーーーー!!!!」

 

落下して来る所で手刀によって胸を貫かれ、非業な最期を遂げた。ギルスは肩で息をしていたが、徐々にギルスアントラーが短くなって行くのが顕著に現れ始めた。

 

「う、あ・・・・(俺は・・・・人・・・・間、なんだ・・・・・!!!)」

 

変身が解け、一夏の姿に戻り、倒れ伏した彼をバイクのシートに乗せると、秋斗はある病院に急いだ。

 


 
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