No.516456

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第八十八話 作戦会議&決行

2012-12-08 22:46:54 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4891   閲覧ユーザー数:4465

 第八十八話 作戦会議&決行

 

 

 

 アサキムが現れてからタカの行動は明らかに焦っていた。

 まず、スフィアを持つアリシアが近くにいないから焦っていた。

 はやてとリインフォースが彼と対峙しているところを見ると更に焦っていたんだ。

 

 「…すいません。リンディさん。エイミィさん。クロノ。勝手に指示を出してしまって」

 

 「いいえ。高志君。貴方の判断は正しい。私もいきなりの事だから思考が停止していたからはやてさんに停止を促すことを怠ったわ」

 

 「僕も同意見だ。彼女だけでアサキムと対峙させるわけにはいかないからな」

 

 エイミィの席から離れながらも高志が僕たちに謝っていると、プレシアが指令室に入ってきた。

 

 「今、あの二人が戻ったわ。今からどう行動するか。…大体決まっているわね?リンディ?」

 

 「ええ、まずはマテリアル達の捜索班。もう一つはアミタと呼ばれた人の保護。そして、アサキムを迎撃する班」

 

 二人がそう言うと高志は最後の言葉を聞いて手を上げる。

 

 「それは俺が担当する。出来ればそこにクロノとリインフォースさん。あと、シャマルさんを連れてほしい」

 

 「…いいの?アサキムはあなたとリインフォースさんを」

 

 「だからです。それに…。他の皆はともかく、俺とリインフォースはまだ(・・)殺されませんから」

 

 その諦めにも自嘲にも似たその力無い笑みからはタカの心情を図ることは出来なかった。

 

 「…タカ。なんで君がそれを知っている?」

 

 僕は高志が未だに自分とリインフォースが殺されないという事を知っているようだった。

 それは確信じみたものでもあり、それを信じきっている感じもした。

 

 「…俺もリインフォースもまたアサキムと同じリアクターだからかな」

 

 

 「というわけで、これから三グループに分ける。が、その前にこれは協力を促すものであって強制はしない」

 

 「そう言われてやめる人はここにはいな…」

 

 「アサキムが出てくる可能性もある」

 

 「「「…っ?!」」」

 

 私とリインフォースはアースラに戻ってくるとすぐに作戦室に呼ばれた。

 私達の前に現れた王様や他のマテリアル達。不思議なお姉さんたちに…。

 アサキム。

 彼の事を知らされると皆が体を強張らせた。

 

 「出来ることなら参加してほしい。だが、今、アースラに君たち以上の力を持った人達がいない。マテリアル達もそうだが他の武装局員がいってもやられるだけだろう」

 

 「「「「…………」」」」

 

 「…私は、やります。王様は『砕けぬ闇』を手に入れてこの世界を壊すって言っていました。夜天の主としてそれは止めなあかん」

 

 私のその言葉に私の騎士達も呼応するかのように私に賛同する。

 

 「はやてがやるならあたしもやるぜ」

 

 「無論。私もだ」

 

 「私も精一杯サポートします」

 

 「我は守護獣。主はやてを守護する盾。どこまでもついていきます」

 

 「元は私の闇がまいた種だ。私が刈り取らないでいるというのはあまりにも身勝手すぎるな。断られても無理にでも参戦するぞ」

 

 その言葉になのはちゃん達も自分の意見を上げる。

 

 「私も…。シュテル達にはちゃんとお話したほうがいいと思うの。きっとわかってくれると思うから…」

 

 「なのはが出るなら僕も行くよ」

 

 「私も…。レヴィって呼ばれていた子はきっと高機動を得意としているだろうから私が当たった方がいいと思う」

 

 「あのピンク頭の匂いは覚えているから私なら追えるよ」

 

 ユーノ君にフェイトちゃん。アルフも手伝ってくれる。

 ここにいる皆で当たればどんなことでも出来る。私はそう思っていた何より…。

 

 「…一応、アサキム担当兼バックアップでいつでもアースラから出動できるようにアリシアとユニゾンして待機している。ここいる誰かが危なくなったらすぐ行く。そうならない方がいいけどな」

 

 『傷だらけの獅子』の高志君がいる。

 大丈夫。私達ならやれる!

 

 「そうか、それなら君達にはマテリアル達の探索を頼む。彼女達は元は『闇の書』と呼ばれていた頃の欠片だったから君達の方が探索に示しているだろう。…だが、シャマルとリインフォースには僕とタカと一緒に残っていて欲しい」

 

 「…え?!なんでですか?私は確かに戦闘向きではないですけど探索とか補助なら出来ますよ」

 

 「そうだぜ。シャマルがいるといないじゃあ探索には倍かかっちまう」

 

 シャマルとヴィータが意見してくるがそれに答えたのは高志君だった。

 

 「シャマルさんには転送とかで俺の傍にいて欲しいんだ。アサキムやマテリアル達の魔力で出来た結界とかですぐにその場に転送出来なくなるかもしれない。だから彼女には俺と一緒にいて欲しいんだ。応援部隊が足止めを食らうというのは避けたいから」

 

 「う、そ、それはそうかもしれねえけど」

 

 「もちろん嫌ならいいけど?」

 

 「…その言い方はずるいです」

 

 ヴィータの意見も封殺。シャマルは口をとがらせながらも納得した。

 でも…。なんだか高志君らしくなかった。

 いつもなら心の余裕というかそういうものを持っているのに…。

 

 「…『偽りの黒羊』が来るかもしれないのだな?」

 

 リインフォースの言葉に高志君は力なく笑う。

 

 「…たぶんだけどね。リインフォースも分かっているだろうけどスフィアリアクターがスフィアリアクターを殺すと殺した側はその力を手に入れる」

 

 いつもならさん付けするはずのリインフォースを呼び捨てにする。

 

 「…そうだな」

 

 「アサキムだけじゃなく他にも自分を殺す存在が現れたら安全策も取りたくもなる。だから、俺とアリシアの『傷だらけの獅子』。リインフォースの『悲しみの乙女』。二人のリアクターの全力攻撃で確実に撃退させたい」

 

 「…わかった。だが、その前に主はやて。高志の意見をどう思われますか?」

 

 「ほえ?!う、うん。ええと思うよ。だけど、その場合は私も残った方がいいんとちゃう?」

 

 「以前使った逆ユニゾンはあてにしてはいけない。アレを使えば君もそうだがリインフォースにも負担がかかるぞ」

 

 「…う」

 

 「そうなったらピリオド・ブレイカ―でリインフォースを助けることも出来なくなるかもしれないぞ?」

 

 今の所、高志君のガンレオンとスフィアでリインフォースの弱体化と消滅を防ぐ手だてが見つかっていない。

 クロウ君の時もそうだがあの魔法は超絶な回復能力をもつ。

 だが、危険性もある。それを使えば魔力回路を絶たれてリインフォースは直後に消えるかもしれないから目下研究中だが恐らく助かるんじゃないかというのが高志君の意見だ。

 

 「…うう」

 

 「それに私も調べてみたけれど彼女のスフィアはあなたに同調しやすいみたいよ?もし、『悲しみの乙女』が逆ユニゾンでリインフォースからあなたに移ったら彼女はどう思うかしらね?」

 

 「主はやて!絶対に!私は今後一切逆ユニゾンを致しません!!」

 

 「わかった!わかったわ!皆してわたしをいじめんといて!」

 

 クロノ君。高志君。プレシアさん・リインフォースから言葉の集中砲火を喰らい。私は意見するのを止めた。

 

 高志君は言っていなかったけどもう一つのデメリットがある。

 マグナモードの激痛はもちろんやけどそれとは別にもう一つのデメリット。

 ピリオド・ブレイカ―でリインフォースを治したら高志君は『悲しみの乙女』まで背負うかもしれない。

 それに触れないでいるのは私達に気を負わせないためかもしれない。

 

 だけど、高志君。

 私達は君に何をしてあげたらいいの?

 

 

 考えをまとめる。

 

 俺とリインフォースのスフィアリアクター。勿論アサキム対策。初見必殺。見つけ次第ザ・グローリー・スターとペイン・シャウター仕留めるのが狙い。

 クロノは俺の足場作り兼サポート。マグナモードが使えなくなった時。最悪、ノット・バニッシャーだけでも使えるように俺のフォローに入って欲しいから。

 シャマルさんは探索グループの治療と俺の臨時転送を行う転送係。これがかなり重要。

 

 残りがマテリアルの探索とアミタ・キリエと呼ばれていた女性の保護。

 彼女達がアサキムに狙われないか心配だから彼女達にも事情を説明。

 マテリアル達が起こそうとしている事態を説明して大人しく、もしくは協力してもらって事態解決に向けたい。

 

 そして、探索グループが再び探索を開始しようと転送装置のある部屋に向かおうとしたところで俺はフェイトを呼び止める。

 

 「それじゃあ、皆。気を付けて…」

 

 「ちょい待った。…フェイト」

 

 「なに?」

 

 俺は予言騎士の言葉を思い出してフェイトにブラスタ(待機状態)をガンレオンから取り出してフェイトに渡す。

 以前、アリサ達が誘拐された時以降、ブラスタとガンレオンの切り離しに成功したので今回もそれを使わせてもらう。

 なのははそれを見て表情を曇らせる。

 

 「それって…」

 

 「クロウのブラスタ。今は俺が使っているけど今回はフェイトがもっていってくれ」

 

 「でもブラスタって確かフェイトと同じで高機動主体だけど、フェイトはバルディッシュの方がいいんじゃないの?」

 

 「ユーノが言うのも最もだけどブラスタは感知能力も高い。フェイトは高機動だから担当する範囲も広い。そのせいで孤立しやすいだろうからブラスタで常に警戒していてくれ」

 

 探索班は更に三つに分かれて探索する。

 

 なのはとユーノ。

 フェイトとアルフ。

 八神ファミリー。

 

 八神ファミリーは闇の欠片には敏感だからシャマルさんがいなくても感知できるだろう。

 なのはとユーノには結界を得意とするユーノがいるから大丈夫だろう。

 

 「ちょっと待ちなよ。それじゃあ私が補助には向かないみたいじゃないか」

 

 「そうじゃねえけど…。予言騎士からフェイトに何かあるって言っていたんだ。能力的にはなのはたちと同じくらいとはいえブラスタの探索能力で少しでもそのリスクを削りたい。…気を悪くしたのなら謝る。…ごめんな、アルフ」

 

 長年、フェイトのサポートをしてきたアルフに『お前はサポートに向かない』といったのは確かに失礼だから。

 俺が頭を下げて謝るとアルフは慌てて俺に顔を上げるように言ってきた。

 

 「ちょっ、そ、そこまでしなくてもいいよ!わ、わかった。私も悪かったっ。フェイトを心配してくれてありがとう」

 

 アルフとお互いに謝り合うと彼女達の後ろではやてが探索組を呼んでいた。

 

 「皆、行くでー」

 

 「うん。今、行くよ。はやてちゃん」

 

 なのはが答えながらはやての元に走っていく。

 

 「ユーノ。お前が一番疲れるかもしれんが頑張ってくれ」

 

 「任せて、なのはは僕が守るよ。その代わり、…アサキムや『偽りの黒羊』は任せたよ」

 

 「おう」

 

 なのはには聞こえてはいないだろうけど、俺とユーノは拳を突き合わせてお互いに気合を入れあう。

 

 「気をつけて行くのよ、フェイト。アルフ。皆」

 

 プレシアは戦えない自分の代わりに探索に行くフェイトとアルフを抱きしめてから送り出す。

 

 「…はい。母さん」

 

 「…あんたに言われなくても、フェイトには怪我一つさせないよ。リニスから教えられたことを全部使ってフェイトは私が守る」

 

 アルフは少し戸惑っていたけど隣で安心しきっているフェイトに悪いと思ってかプレシアにされるがままにされていた。

 

 (お兄ちゃん。私もフェイトとアルフをぎゅっ。て、したいっ)

 

 (帰ってからにしなさい)

 

 (ぶー)

 

 ユニゾンしていたアリシアもそれに触発されたが、今回は我慢してもらう。

 

 「それじゃあ、皆。気をつけてな」

 

 こうして俺は皆をアースラから送り出していった。

 

 


 
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