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魔法少女と竜と漆黒の狂戦士と StrikerS編 第十八話

『再会、新たな仲間そして・・・戦い』

2012-12-07 20:30:29 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8014   閲覧ユーザー数:5927

前書き

 

 

今まで遅れて申し訳ありません!

 

今回もかなり長く、修正要素がかなり多かったので二回に分けることにしました。

 

急な変更で皆さんにはご迷惑お掛けして申し訳ないです。

 

因みに、サブタイトルも変更しました。

 

 

そして今回のモンスターはリクエストされた中で、全くの予想外な意見が出てきたのでそれを出すことにしました。

 

では、魔法少女リリカルなのは StlikerS 第十八話 『再会、新たな仲間、そして・・・戦い』 

 

 始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

零冶  「な!?どうして此処に!?」

 

     零冶は地面に倒れ伏していた。

 

エリス 「隊長!?貴女達・・・一体何者ですの!?」

 

バライカ「よくも隊長をっ!!」     

 

キール 「覚悟は出来てんだろうな?」

 

ヘンリー「・・・・・・。(チャキッ)」

 

     エリス達が零冶の前で仁王立ちしている人物に向かってデバイスを構える。

 

     何故、こんな状況になったかというと、時は1時間前に遡る。

 

 

零冶  「各自、荷物は持ったな?」

 

     零冶はこれからの出張任務に向かう所だった。

 

エリス 「問題ありませんわ。ちゃんと必要な物(水着)を持ちましたわ!」

 

バライカ「ええ。しっかりと必需品(化粧道具)は持ちました!」

 

キール 「おう!こっちも要る物(釣り竿)を持ったぞ!」

 

ヘンリー「必要な物(非常食)は確認しました」

 

     それぞれの格好を見て零冶は固まった。

 

零冶  「・・・・・・お前等、何か勘違いしてないか?」

 

     エリスは白のワンピース姿。

 

     バライカは短パンにシャツといったラフな格好。

 

     キールはジーパンにアロハシャツ。

 

     ヘンリーは黒いシャツにジーパンだ。

 

     いや、服装はどうでも良かった。ただ、それぞれの荷物がおかしかった。

 

零冶  「特にバライカ・・・お前、その荷物の量は何だ?」

 

     バライカの荷物はトランク3つ分という大荷物だった。

 

バライカ「え?・・・何かおかしいでしょうか?」

 

零冶  「いや・・・うん、もういいや」

 

     諦めるな零冶!

 

 

零冶  「それじゃあ、出発だ。中継ポイントを経由してから地球に向かうぞ」

 

     そして零冶達DOG隊一行が出発する。

 

     50分後、DOG隊は零冶の車(六輪ハマ―)を降り次元航行艦に乗り込む為に空港へ着いた。

 

     そして、空港の入り口に着いた時、何か声が聞こえた。

 

??? 「・・・・・ー!」

 

零冶  「ん?エリス、何か言ったか?」

 

エリス 「え?何も言ってませんが?」

 

零冶  「そっか・・・空耳か。」

 

     しかし、また声が聞こえた。

 

     今度はハッキリと・・・後ろから。

 

??? 「み・つ・け・た・わ・よー!!こんのぉ~・・・バカ零冶ぃぃぃ!!!!」

 

零冶  「ぶぼらっ!?」

 

     1人の女性が見事なドロップキックを零冶の後頭部に決めた。

 

     零冶は数m程吹き飛び、倒れ伏す。

 

     そして、当の零冶にドロップキックをかました女性は零冶の前で仁王立ちする。

 

     零冶は何事かと思い、顔を上げると同時に硬直した。

 

零冶  「な!?どうして此処に!?」

 

     しかし、零冶が驚いている間に自体は悪化しようとしている。

 

エリス 「隊長!?貴女・・・一体何者ですの!?」

 

バライカ「よくも隊長をっ!!」     

 

キール 「覚悟は出来てんだろうな?」

 

ヘンリー「・・・・・・。(チャキッ)」

 

     そして話は冒頭に戻ることとなった。

 

     そこへ、もう1人の女性が走ってきた。

 

??? 「待ってよ~!もう・・・いきなり走らないでよぉ。・・・って、何してるの!?」

 

バライカ「下がっていなさい。この暴行者を今から逮捕するところです」

 

??? 「何よ?管理局とやらは一般人に向けて武器を向けるのかしら?」

 

エリス 「・・・いきなり後ろからドロップキックをする人に言われたくありませんわ」

 

??? 「・・・そんなことしたの?」

 

??? 「ふんっ!それはコイツが悪いのよ」

 

バライカ「へぇ~・・・何処の何が悪いのか説明して貰おうかしら?」

 

     4人と1人が険悪なムードになる。

 

     さすがに放心している場合じゃ無いと思い、零冶は止めに入った。

 

零冶  「ま、待てお前等!別にいいんだ・・・。俺の友人・・・だから」

 

エリス 「え?隊長の?」

 

??? 「・・・そういうことだから、さっさと武器を仕舞ってくれるかしら?」

 

??? 「あの、お願いします」

 

バライカ「・・・。」

 

     バライカとエリスは渋々ながらもデバイスを納める。

 

零冶  「その・・・なんだ。久しぶり・・・だな。アリサ、すずか」

 

     その2人の女性とは、嘗て零冶のクラスメイトであり、零冶の大切な友人であるアリサとすずかであった。

 

すずか 「・・・うんっ!零冶君!」

 

アリサ 「ふんっ!」

 

     すずかは目に若干涙を浮かべながら言った。アリサはツンッとして顔を背ける。

 

零冶  「ところで、何で此処にいるんだ?」

 

すずか 「あれ?聞いてないの?」

 

零冶  「は?何を?」

 

     零冶は何も聞いていない。というか、すずか達がここに来ること自体知らなかった。

 

アリサ 「なによ、てっきりもう話がついてると思ってたんだけど。まぁ、いいわ」

 

すずか 「実はね、零冶君の任務の護衛対象って・・・アリサなの」

 

エリス 「なっ!?」

 

キール 「・・・マジかよ」

 

     4人は驚く。そして、零冶は・・・

 

零冶  「・・・あんのハゲェ・・・・知ってて黙っていたな~?」

 

     この任務を伝えたボースに怒りを感じた。

 

     もちろん、これを仕組んだのはボースである。

 

アリサ 「それよりも、ほら!さっさと行くわよ!」

 

すずか 「あ、待ってよアリサちゃん!」

 

     アリサが先に行った。

 

     それに続いてDOG隊も行く。

 

     しかし、艦に乗ってからも驚くことになった。

 

 

 

なのは 「あれ?零冶君に・・・アリサちゃんとすずかちゃん!?」

 

フェイト「え?なんで?」

 

はやて 「何ですずかちゃん達がここにいるん!?」

 

     何故かなのは達機動六課が居たのだ。

 

零冶  「・・・これも奴の仕組んだのか?」

 

     勿論、ボースであった。

 

スバル 「あっ、零冶さん!」

 

キャロ 「こんにちわ。」

 

エリオ 「零冶さんもこの艦に?」

 

ティアナ「・・・・・・。」

 

     そしてフォワード陣も挨拶をする。

 

     さすがにティアナは昨日の今日なので、気まずそうにしている。

 

     だが、零冶はティアナの目が変わっている事に気付いた。

 

     まるで、肩の荷が下りたかのように。

 

 

 

はやて 「いや~、零冶兄ぃも地球での任務やったんやね。」

 

なのは 「ビックリしたよ。」

 

フェイト「うん。」

 

     そして現在、なのは達5人と零冶で話していた。

 

     エリス達は、(特にエリスとバライカは)珍しく空気を読んで自室で休んでいる。

 

なのは 「それで、零冶君は何の任務だったの?」

 

零冶  「え?あー・・・それは「私の護衛よ。」アリサ・・・。」

 

     零冶は誤魔化すか言うか迷っている内にアリサが答えてしまった。

 

はやて 「へ?なんでまた?」

 

フェイト「というより、どうやって依頼したの?」

 

     フェイトの疑問は最もだった。零冶との連絡も取れない上に、なのは達3人は依頼をまったく知らなかった。

 

     なら、どうやって依頼したのだろうか?

 

     それは―――、

 

アリサ 「ボースって言う人物が、私に連絡してきたの。護衛を雇ってみないか?ってね。最初は怪しいかと思ったけど、ちゃんと

     所属を教えてくれたから確認が取れたのよ。だから応じたって訳」

 

なのは 「ああー!もしかして、この間アリサちゃんが電話してきたのってその事だったの!?」

 

     アリサの説明を聞いてなのはは何か思い出したようだ。

 

     実は、先週にアリサがなのはに貰った通信機で連絡していた。

 

     ボースという人物は本当に実在して、どういった経歴なのかを。

 

アリサ 「そうよ」

 

零冶  「そ、そうだったんだ。(あのハゲ、いつかイビルの餌にしてやる・・・!)」

 

     零冶は本気でイビルに喰わせてやろうか考えたのであった・・・・。

 

 

 ――――そして3時間後

 

アリサ 「やっと到着ね」

 

零冶  「そうだな・・・」

 

     アリサとすずか、零冶とDOG隊はアリサの豪邸へ着いた。

 

     因みに、六課は翠屋に行っている。

 

すずか 「零冶君・・・地球に戻ってきてどうだった?」

 

零冶  「ああ・・・・懐かしいよ。もう・・・いや、何でも無い」

 

     何か言いかけたのをアリサとすずかは聞き逃さない。だが、それを追求することは無かった。

 

アリサ 「兎に角入りなさい」

 

零冶  「ああ」

 

     中に入ると鮫島が待っていてくれた。

 

鮫島  「お嬢様、お帰りなさいませ」

 

アリサ 「ありがとう、鮫島。零冶を私の部屋に通すから荷物をお願いね。残りの4人とすずかはそれぞれの部屋にお願い」

 

鮫島  「かしこまりました、お嬢様」

 

     零冶達はそれぞれの部屋に移動した。

 

     この時、すずかはアリサを見て頷くと用意された部屋に行ってしまった。

 

     部屋に入るとアリサは鍵を閉めた。

 

 

零冶  「・・・なんで鍵を?」

 

     しかし、アリサは無言で立ったままだ。

 

     だが、それも少しの間で、いきなり零冶に向かって飛びついた。

 

     今度は蹴りではなく、抱きつくように・・・。

 

零冶  「ア、アリサ!?ちょっ!?」

 

     零冶は慌てて引き離そうとするが、アリサは抵抗する。

 

     そして足が縺れてしまい、大きなベッドに倒れ込んでしまった。

 

     アリサは零冶の服を掴んで顔を俯かせたままだ。

 

     だが、肩が震えているのを零冶は気付いた。

 

アリサ 「・・・・よ」

 

零冶  「アリ・・・サ?」

 

アリサ 「・・・なんでよ」

 

     よく見ると小さな水滴が落ちて、ベッドを濡らしていた。

 

アリサ 「なんで・・・私達の前からいなくなったのよ!!」

 

     アリサが顔を上げて言った。

 

     その顔は涙で濡れている。

 

零冶  「それは・・・」

 

アリサ 「あの時、私はいきなり魔法とか訳の分かんない事に巻き込まれたわ。でも、零冶は私達を助けてくれた・・・・私達の所に

     戻って来てくれたと思った」

 

零冶  「・・・・・・」

 

アリサ 「でも、なんでまた・・・何処かに行っちゃったのよ?アンタが消えて・・・変な艦に連れてこられて・・・アンタが

     二度と戻って来られないって聞かされて・・・生きて帰って来れないって聞かされて・・・どんな思いだったか・・・!」

 

     零冶が消えた後、全員はアースラに乗り、虚数空間に落ちたらどうなるかを聞いた。

 

アリサ 「寂しかった・・・・。零冶が消えたクリスマスは・・・寂しかった。毎年、クリスマスになる度に辛かった!」

 

     そして零冶はアリサを抱きしめてあげた。

 

零冶  「・・・ごめんな、アリサ。心配掛けて・・・。皆にも・・・迷惑を掛けた」

 

アリサ 「本当よ!・・・寂しかったのよ・・・・・・ずっと、アンタが居なくて寂しかったんだから!!」

 

零冶  「・・・アリサ」

 

     零冶は優しくアリサの頭を撫でた。

 

     そしてアリサに胸を貸し、しばらくしてアリサは泣き止んだ。

 

アリサ 「そ、その・・・ありがと」

 

零冶  「気にするな」

 

アリサ 「ねぇ・・・零冶」

 

零冶  「なんだ?」

 

アリサ 「すずかの所にも・・・・行ってあげて。あの子も・・・心配してたんだから」

 

     アリサが言葉とは裏腹に零冶の服を強く掴んだ。

 

零冶  「・・・・そうだな。すずかにも心配掛けたしな・・・・それじゃあ行ってくる。」

 

アリサ 「う、うん・・・・・」

 

     零冶はアリサの部屋を出て、すずかの部屋に向かう。

 

 

アリサ 「・・・・・・・・・・バカ」

 

 

     そしてアリサの呟きは零冶には聞こえなかった。

 

 

 

零冶  「すずか?今大丈夫か?」

 

     零冶はすずかの部屋のドアをノックした。

 

すずか 「ふぇ!?れ、零冶君?ちょっと待って!今開けるから!」

 

     すずかは慌ててドアを開けた。

 

零冶  「いきなりで悪いな」

 

すずか 「ううん、いいの。入って」

 

     零冶はすずかに促されるままに入る。

 

すずか 「・・・アリサちゃんには謝った?」

 

零冶  「ああ・・・すずかにも謝って来いって葉っぱを掛けられたよ」

 

すずか 「そう・・・なんだ」

 

     すずかは何か思うところがあったが、今は頭の隅に追いやった。

 

     そして零冶がすずかに謝った。

 

零冶  「心配掛けて・・・ごめん」

 

すずか 「・・・本当だよ。もう・・・会えないと思った。死んじゃったかと・・・思った」

 

     すずかの目に涙が浮かぶ。

 

零冶  「・・・ごめん」

 

すずか 「でも・・・許してあげる。零冶君が・・・ちゃんと戻って来てくれたから」

 

零冶  「・・・ありがとう「でも・・・」ん?」

 

     すずかは顔を俯かせてもじもじし始めた。

 

すずか 「許す代わりと言っちゃ何だけど・・・・その・・・・・」

 

零冶  「なんだ?俺が出来ることなら何でもするぞ」

 

すずか 「その・・・・・・・・・零冶君の血・・・・欲しいな・・・?」

 

     すずかは顔を真っ赤にさせて言った。

 

     零冶も特に気にしなかったので了承した。

 

     すずかは顔をさらに赤くしながら零冶の首に手を回し、抱きしめるような体勢になる

 

     すずかの目が赤くなり、そして牙を零冶の首に突き立てた。

 

零冶  「っ・・・。」

 

     零冶は若干眉を顰めながらも指一つ動かさずに耐える。

 

すずか 「んく・・・んく・・・・んく・・・・・っぷはぁ・・・・」

 

零冶  「終わったか?」

 

すずか 「うん・・・零冶君の血・・・・美味しかったよ・・・えへへ」

 

     すずかの顔はまだ赤いが、その笑顔はとても綺麗だった。

 

零冶  「そっか・・・はは、そりゃ良かった。それじゃあ俺はちょっと部屋に戻るよ。」

 

すずか 「うん・・・ありがとう、零冶君」

 

零冶  「・・・ああ」

 

     零冶はそう言ってすぐに部屋を出た。

 

     すずかは零冶が出た後、ベッドにある枕を抱きしめる。

 

すずか 「・・・はふぅ・・・・零冶君の血・・・・吸っちゃった・・・・えへへ~・・・・」

 

     そしてすずかは一晩中、顔をにやけさせていた。

 

     余談だが、すずかの様子がおかしいことに気づいたアリサが本人に問いただし、零冶の顔面を殴った後にキスを迫ったのは

     また別の話だ。

 

 

 

 

     昨日の夜、アリサを説得するのに疲れ果てた零冶は翌日になってアリサの父、デビット・バニングスに挨拶をした。

 

デビット「うむ・・・随分久しぶりだね、零冶君。たしか・・・最後に会ったのは10年前だったかな?」

 

零冶  「ええ・・・一度だけお会いしました」

 

     零冶がそう答えるとデビットは懐かしそうな目をする。

 

デビット「ああ、あの時の事はよく覚えている。アリサが初めてボーイフレンドを連れてくると聞いた時は気が気でならなかった」

 

     はっはっは、と笑いを漏らすデビット。

 

アリサ 「ぱ、パパ!もう!」

 

デビット「はっはっは。しかし、実際に会ってみると驚いたよ。あの時はとても9歳の立ち振る舞いではなかったのでね。ただでさえ

     大人っぽかったのが今ではさらに貫禄というものが出ている・・・体だけではなく、心も・・・ね」

 

零冶  「・・・・・。」

 

     デビットが何か意味深げに言ったことに零冶は黙るしかなかった。

 

     そして、聖夜の悲劇の事について語り始めた。

 

デビット「あの時、君が消えた日の夜・・・アリサが涙を流して私に抱きついてきたときは本当に驚いた。あのアリサが父親とはいえ、

     人に涙を見せたのだから・・・」

 

     アリサはアースラから解放され家に帰り着いた時、抑えきれない悲しみのあまり父親に抱きついて泣いてしまった。

 

     そしてアリサは全てを父親に語った。

 

デビット「君が死んだと聞いた時は私も本当に悲しかった・・・。アリサはそれ以上に悲しかっただろう。しかし、君は生きて戻って来た。

     本来ならアリサの父親として何か言うべきだろうが・・・・・どうやらその必要は無いらしいな」

 

     デビットは零冶の右目についた痣を見て苦笑しながら言った。

 

零冶  「ははは・・・。それで、そろそろ本題に入りましょう」

 

アリサ 「そ、そうよ。パパ、例の事を話してちょうだい」

 

     昨夜の件についてはアリサもかなり恥ずかしかった様なので、すぐに話題を変えようとした。

 

デビット「おお、そうだったな。ふむ・・・・・・零冶君、君を態々雇ったのは他でも無い。今日の社交パーティーでアリサの付き人兼

     護衛をやってもらいたいのだよ」

 

零冶  「・・・・・前者はともかく、護衛は聞いてますが一体何故俺を?」

 

     普段の護衛なら今まで通り雇っているSPに任せれば良いだけの話だ。

 

デビット「ふむ・・・実は妙な情報が入ったのだよ。」

 

零冶  「妙な情報?」

 

     零冶は眉をひそめて聞いた。

 

アリサ 「社交パーティーで私を暗殺する計画よ」

 

零冶  「なるほど・・・・アリサも苦労しているな」

 

アリサ 「まったくよ」

 

     アリサもデビットの娘であるからにはそういう事への覚悟は出来ている。だが、むざむざ殺されるつもりは毛頭も無い。

 

デビット「今まではどうにかなってきたが、今度ばかりは用心するに越したことは無い。情報によると、相手は凄腕の暗殺チームらしい」

 

     暗殺チームということは複数の暗殺者が狙っているということだ。

 

     相手はどうあってもアリサを殺したいらしい。

 

零冶  「了解しました。それでは、パーティー会場の見取り図と主犯格の候補を挙げてもらっていいでしょうか?」

 

デビット「分かった。後で資料を渡そう」

 

アリサ 「頼りにしてるわよ」

 

     その後、零冶はデビットから資料を受け取り、エリス達を招集して護衛の計画を練った。

 

 

 

 

零冶  「さて・・・・行くか・・・」

 

     零冶は目の前の店の扉に手を掛ける。

 

     ドアを開けると、ドアベルが心地よく鳴り響いた。

 

??? 「いらっしゃいま――――」

 

     店員らしき人物が客を出迎えようとして零冶を見た瞬間、手に持っていたトレイを落とした。

 

     幸いにも何も乗せていなかったので、食器が割れるようなことは無かった。

 

     そして、目の前にいる男性の名を口にする。

 

??? 「れ、零冶・・・君?」

 

零冶  「はい、お久しぶりです。桃子さん」

 

     実は桃子達は零冶が此処に来るとは聞いていなかったのだ。

 

     零冶がなのはに頼んで内密にしてもらったからだ。

 

     桃子はすぐに店を貸し切りにして、客が居なくなった後にはすぐに閉めた。

 

     そして現在、零冶は右頬に痣を作っていた。

 

士郎  「さて、全て話してもらおうか?」

 

     理由は零冶を見るなり士郎が殴ったからだ。

 

     たった一発だけだが、零冶にとって彼の拳はとても重く感じた。

 

     そして今までに起きたこと全てを語った。だが、ジェイルの名前は一切出していない。

 

     これは彼等、高町一家の安全の為でもある。

 

士郎  「そうか・・・。しかし、君が生きていて本当に良かった。なのはが零冶君が生きているのを知ってから本当に明るくなった」

 

桃子  「あなたが居なくなってからなのはは・・・とても酷い状態だったもの」

 

恭也  「まるで・・・なのはが小学生の時に戻ったみたいだった・・・」

 

美由紀 「ずっと・・・鬱ぎ込んでたもんね・・・。」

 

     零冶は改めてなのはがどれだけ悲しんでいたか知った。

 

     だが、零冶は意を決して今日ここに来た用件を伝えることにした。

 

零冶  「それと、もう一つ大事な事を伝えないといけません」

 

士郎  「ん?なんだい?」

 

     その用件とは・・・

 

零冶  「それは・・・・・・また、なのは達と戦わなければならないかも知れません」

 

     確実ではないが、可能性としてなのは達と再び敵対する事だ。

 

恭也  「零冶!貴様、あれだけ悲しませておいてまだなのはを「止めるんだ恭也!!」父さん!」

 

士郎  「理由を聞いてもいいかな?」

 

     士郎は恭也を止め、静かに・・・しかし鋭い目で零冶に聞いた。

 

零冶  「なのは達を・・・・守る為です」

 

士郎  「・・・ふむ」

 

恭也  「守る・・・だと?」

 

零冶  「はい。今、俺は管理局に勤めています。なのはもです。それは御存じでしょう。」

 

     零冶の言葉に高町一家は頷いた

 

零冶  「士郎さん、あなたは管理局がどういった組織か知っていますか?そして、その組織体系の問題点も」

 

士郎  「・・・・なるほど、そういう事か・・・。」

 

     士郎は一瞬思案した後、何かに思い立った。

 

士郎  「零冶君、つまり君は・・・・組織を知り過ぎてしまった訳だね?」

 

零冶  「その通りです」

 

     士郎の答えに零冶は頷き、恭也は納得した。

 

     美由紀と桃子だけが首を傾げている。

 

士郎  「となると、詳しい事は私達にも言えない訳か・・・」

 

零冶  「・・・はい。ただ、なのはは表、俺は裏です。俺の部隊は表向きの理由は戦闘における突破不可能な状況を可能にする

     エリート部隊。ですが、本当の目的は・・・・・」

 

士郎  「聞こうか・・・。」

 

零冶  「汚職管理局員及び違法魔導師の逮捕もしくは・・・抹殺です」

 

高町家 「「「「っ!」」」」

 

     全員がショックを受けたが、恭也と士郎はそこまで驚かなかった、というよりも抵抗がなかった。彼等もそう言う役目を

     やってきたから。しかし、美由紀と桃子にはショックが大きかったようだ。

 

 

     当初は普通に逮捕するだけであったが中には巧妙に証拠を隠滅して法を上手く潜り抜けている者もいたので、仕方なく

     抹殺という形になった。     

 

零冶  「一応まだ抹殺対象になった人物は一人だけです。それと俺の部隊の奴等にはそんなことをさせてませんし知りません。それは

     俺の役目ですからね」

 

     そして、その言葉を聞いて士郎は全て納得した。

 

士郎  「だから・・・かね?なのはやフェイトちゃん、はやてちゃんの好意に気づかないフリをしていたのは?」

 

零冶  「・・・・・・・」

 

     零冶はどう言い返そうか悩んだが、結局言い返せなかった。

 

士郎  「やはり・・・な。だが零冶君、これだけは覚えておいてくれ。なのはは・・・諦めが悪いぞ?」

 

     士郎は零冶に対して特に怒りもしなかったが、最後に薄く笑みを浮かべて言った。

 

 

 

 

 

 

     海鳴市のとあるホテルでパーティーが開かれていた。

 

     そこには有名な俳優女優、世界的な大手企業の社長やその跡継ぎなどが集まっていた。

 

零冶  「・・・・帰って良いか?」

 

アリサ 「良くないわよ!」

 

     そのホテルの前で二人の男女がいた。

 

     言わずもがな零冶とアリサである。

 

零冶  「正直こういうのは・・・苦手だ」

 

アリサ 「気持ちは解らんでもないけど、今は私の付き人でしょ?」

 

零冶  「『護衛』の間違いだろ?」

 

     態々SPではなく付き人としているのはデビットの策である。曰く「財産うや地位目当ての輩より、アリサを守ってくれる

     零冶君の方が何億倍もマシだ!」らしい。

 

     因みに、アリサが父親に吹き込まれたのではなく、零冶に直接宣言したのである。

 

     アリサの許嫁にする―――と。

 

アリサ 「どっちも同じよ!」

 

零冶  「いや、違うだろ・・・?」

 

     そう文句を垂れる零冶をアリサは強引に引っ張って連れて行く。

 

     そして、会場に入ると当然の如く虫けら共が集まってくる。

 

     勿論、純粋に挨拶に来る者もいる。

 

     そしてまた一人、虫けらがアリサに近づいてきた。

 

??? 「これはこれはバニングス嬢!お久しぶりでございます」

 

アリサ 「ええ、確か・・・岡崎コーポレーションの跡取りでしたわね?」

 

慎吾  「はい、岡崎慎吾と申します。たしか最後にお会いしたのは去年の夏でしたな」

 

アリサ 「まぁ、そうだったでしたわね。申し訳ありませんが、私はこれから父の代わりで挨拶に行かなければなりませんの。折角声を

     掛けて下さったところを申し訳ありませんが私はこれで失礼しますわ。御機嫌よう」

 

     アリサがさっさとその場を離れようと零冶に連れて貰おうとしたとき、ウザイことに慎吾は引き留めに掛かった。

 

慎吾  「まぁ、そう連れないことを仰らないでください。少し私とお話ししませんか?」

 

アリサ 「(・・・っち)。いえ・・・申し訳ありませんが、私も色々挨拶しなければならないので」

 

     アリサは内心舌打ちしながら丁重に断ったが、

 

慎吾  「少しだけでいいのです。不快な思いはなさいませんから!」

 

アリサ 「(現在進行形で不快よ!)いえ、ですから私も忙しいので・・・また今度に」

 

     しかし、それでも引き下がろうとしない慎吾である。アリサの笑顔も引き攣り始めている。

 

     いい加減アリサもキレようとしたとき、横から救いの手が伸びてきた。

 

零冶  「そこまでにして頂きたい。アリサは本当に忙しいのだ。お引き取り願いたいのだが?」

 

アリサ 「れ、零冶・・・」

 

     さすがに零冶もいきなり威圧感を出したりはしない。ここは丁重に、穏便にお引き取り願おうと思った。

 

慎吾  「な、なんだ君は!?そこを退きたまえ!」

 

     しかし、そんな気遣いも彼には理解出来ない。

 

零冶  「断る。それに、退くのは貴方の方だ。ご婦人を無理に引き留めるのは紳士のやることではないだろ?それに、アリサが

     断っている以上、無理に引き留める事もないだろう?」

 

慎吾  「・・・さっきからバニングス嬢を気安く呼び捨てにするな!僕は彼女と話しているんだ!それに、君には関係無い事だろう!」

 

     さすがの零冶もイラついてくる。しかし、アリサはそこに爆弾発言を投下した。

 

アリサ 「大ありですわ。彼は私の・・・許嫁ですもの」

 

     その一言に周りに居た人達が一斉に静まりかえる。

 

     そして零冶は額に手を当てていた。

 

慎吾  「・・・は?」

 

零冶  「いらんことを・・・・」

 

アリサ 「ですから、彼・・・零冶は私のい・い・な・づ・け、ですわ」

 

     とてもいい笑顔でもう一度言うアリサ。

 

零冶  「まぁ、そういうことだ」

 

慎吾  「そ、そんな・・・」

 

     慎吾は肩を落として立ち去っていった。

 

零冶  「まったく・・・もうちょっと言い方があったんじゃないか?それに俺は了承していない。見ろ、注目の的だぞ?」

 

アリサ 「いいじゃない別に。そうでも言わないとアイツはしつこく言ってくるんだもん」

 

零冶  「まぁ・・・それはそうだが・・・」

 

アリサ 「それよりも、さっさとエスコートしなさい!」

 

零冶  「はいはい、お嬢様」

 

     そしてアリサは零冶の腕を組んで挨拶回りへと行った。

 

 

 

 

エリス 「きぃいいいい!何で私たちがこんな事を!隊長と一緒にパーティーを楽しみたかったのにぃー!」

 

     エリス達は会場の隅で怪しい人がいないか見張っていた。ヘンリーとキールは建物の中を巡回している。

 

バライカ「落ち着いてエリス。それは私も一緒だけど、今は隊長から与えられた任務を遂行するのが優先よ」

 

エリス 「分かってますわよ!・・・それにしても、怪しい人物なんていませんわね。」

 

     先ほどからずっと警戒していたが、暗殺者どころか怪しい人物すら見当たらない。

 

     遠距離からの狙撃、毒、ナイフ、全てを想定して警戒したが何か怒る気配が無い。

 

     しかし、ヘンリーからオープンチャンネルで連絡が入った。

 

ヘンリー『隊長!すぐにそこから離れて下さい!』

 

零冶  『どうした?』

 

ヘンリー『ホテルの周囲や中の警備が全員殺されています!それと、敵は少数の暗殺者ではありません!最低でも10人はいます!』

 

エリス 「なっ!?」

 

バライカ「そんな!」

 

     全くもって予想外である。

 

     敵は穏便に始末する為に少数で狙撃なり毒殺なりすると思っていたからだ。

 

エリス 「バライカ!」

 

バライカ「分かってる!隊長と合流するわよ!」

 

     バライカ達が零冶へ合流しようとした時、会場の照明が消えて客の悲鳴と共に窓ガラスが大量に割れる音がした。

 

 

零冶  「アリサ、伏せろっ!」

 

アリサ 「な、何!?」

 

     零冶はアリサを床に伏せさせた。その時、アリサの頭があった場所に何かが飛来した。

 

零冶  「派手にも程があるだろうが!」

 

     零冶はすぐさま竜眼を使用した。暗闇でも知覚することはできるこの竜眼で敵を視認、すぐに隠し持っていた特別仕様の

     セラミック製ナイフを投げつける。

 

     そして見事命中し、敵は崩れ落ちる。

 

     次に直接アリサを殺そうと接近してきた敵をナイフで喉を切り裂く。

 

     その時に見た敵の装備を見て零冶が驚く。

 

零冶  「P90に手榴弾、それに暗視ゴーグル?こいつ等・・・傭兵か?」

 

     明らかに暗殺には程遠い装備をしている。 P90は性能や取り回しのいいサブマシンガンで弾薬の単価が他の弾よりかなり高く、

     軍や大きな組織をバックに持った傭兵が使うことが多い。 因みに、マガジン一つで50発あるので制圧射撃にも使える。

 

零冶  「・・・ルナ」

 

ルナ  [ライフルモード!]

 

     零冶はすぐにルナをバレットにして構える。尚、発光はしないようにしているため目立たない。

 

     そして近くにあった大きな円形テーブルをひっくり返してアリサが被弾しないようにする。    

 

     すぐに銃口を敵に向け、グングニールを撃った。

 

     魔力弾なので相手は気絶する。それで4人を撃ち抜いた。

 

バライカ「せいっ!」

 

エリス 「ふっ!」

 

     そこへエリスとバライカも参戦。次々と敵を倒していった。

 

     そして粗方片付け終わると暗闇の中、アリサに声を掛けた。

 

零冶  「アリサ、大丈夫か?」

 

アリサ 「え、ええ・・・なんとか。ってか、暗くてよく見えないんだけど?」

 

零冶  「良かった・・・。どうやら電気系統がやられたみたいだ。すぐに家に帰るぞ。エリス、バライカ、行くぞ!」

 

エリス 「了解しました!」

 

バライカ「ヘンリー達も片付け終わったみたいなので合流するそうです」

 

     零冶はアリサを起こし、会場を後にする。

 

     いつまでも視界の悪い場所にいるとアリサを守り切れない可能性があるからだ。

 

     そして一行はバニングス邸へと向かった。

 

     それまでの道中は何も無く、無事に事が済んだ。

 

     そして、デビットがこの事件の情報操作を行ったのは言うまでも無く、計画犯もあぶり出した。

 

主犯  「ひぃっ!?た、助けてくれ!」

 

零冶  「・・・・」

 

     零冶はそのデビットが調べた主犯の居場所をこっそり盗み聴き、一人で行った。

 

     目の前には情けなくも命乞いしている主犯がいる。

 

     そんな奴を零冶は冷たい目で見下ろしていた。その瞳に感情は無い。

 

     しかし、零冶が溜息を吐いて背を向けた瞬間、男が銃を取り出して零冶に向かって撃った。

 

主犯  「死ねぇ!!」

 

零冶  「・・・・」

 

     パンッ!と発砲するが、それは簡単に避けられる。

 

主犯  「なっ!?ば、化け物め!」

 

     男が銃を乱射するも零冶に当たることは無かった。そしてついに弾切れを起こした。

 

     もう終わらせようと零冶はバレットを構えた。

 

主犯  「や、止めろ!い、いいのか!?知っているぞ!お前があのアリサ・バニングスの許嫁だということを!人殺しになればお前の

     許嫁も悲しむ―――」

 

     だが零冶はただ無言で、男が言い終わる前に引き金を引いた。

 

     そして男の頭部は吹き飛び、辺りには頭部の無い体と肉片と血だけが残る。

 

零冶  「生憎・・・俺の手はとっくに血で汚れている」

 

     それを見届けた零冶はその場を後にした。

 

     以後、デビットの集めた証拠で警察が乗り込んだ時には頭部のない死体があったそうだ。

 

     そして、この事についてアリサは何も知らない。

 

 

 

 

     次の日、零冶は海辺の公園で黄昏れていた。

 

     因みにDOG隊は各々の趣味や買い物に行っている。

 

     エリスとバライカはアリサと買い物兼護衛だ。

 

零冶  「・・・・・人殺し・・・か」

 

     先日、アリサ暗殺の計画犯を始末したときのことを思い出した。

 

     彼は死ぬ前に零冶の事を『化け物』『人殺し』と罵った。

 

     アリサを殺そうとしておいてよく言うと思ったが、改めて考えると思うところがあった。

 

零冶  「俺は・・・」

 

     しかし、そこへ声を掛ける者がいた。

 

??? 「零冶・・・さん?」

 

零冶  「・・・どうした、ティアナ?」

 

     内心動揺したが零冶は振り返ること無く言う。つい物思いに耽り過ぎたようで、近づいてくるのに気づかなかった。

 

ティアナ「その・・・すいませんでした!」

 

     するとティアナが突然謝った。

 

     その言葉に意外性を感じた零冶は振り返る。

 

零冶  「・・・もう少し経ってから謝りに来るかと思った」

 

ティアナ「やっぱり・・・どうしても謝りたかったんです。自分のした事を理解しましたから・・・」

 

零冶  「そっか・・・。安心しろ。今のお前ならリンカーコアを破壊するなんて事は言わないから」

 

ティアナ「はい・・・。あの!零冶さん・・・」

 

     ティアナは何か思いきって聞こうとした。

 

ティアナ「あの・・・・・。か、神様って本当ですか?」

 

     言葉を発しようとしたティアナだが、一度呑み込んで聞いてきた。

 

零冶  「そっか、聞かされたんだっけな?まぁ、そうらしいな。自覚はないけどね」

 

ティアナ「やっぱり・・・何でも出来るんですか?」

 

     その問いに零冶は少し笑ってしまった。

 

零冶  「お前は何か勘違いしてないか?」

 

ティアナ「・・・え?」

 

零冶  「神様ってのは必ずしも万能や完全ではないんだよ。完全なら戦争は起きないし、人類が発展することなんか無い」

 

     戦争という言葉で零冶はレンが死んだ時の事を思い出した。

 

     レンには幸せになるとは言ったものの、何が自分の幸せかよく解らない。

 

零冶  「ま、頑張って精進しろ。もし俺が認めるぐらい一人前になったら・・・いや、この先は言わないでおこう」

 

ティアナ「?」

 

     ティアナは何か聞きたそうにしていたが、零冶はここで話を区切ることにした。

 

零冶  「いや、何でも無い。それじゃあ、俺はもう行くから。・・・じゃあな」

 

ティアナ「あ・・・・」

 

     零冶はその場を立ち去った。残ったティアナは寂しそうにそこへ立っていた。

 

     そして、零冶が去って行った方向を見て呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティアナ「零冶さん・・・・・・『人殺し』ってなんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     零冶が任務最後の日では一人で海鳴市をぶらついていた。

 

     辺りは変わっている所があるが、結構変わっていない所もある。

 

     そして、かつてフェイトが拠点にしていたマンション付近を通っていると見覚えのある女性が通りすがった。

 

     その女性は2人の3歳ぐらいの子供2人を連れていた。

 

??? 「え?」

 

??? 「どうしたのママー?」

 

     一瞬勘違いと思ったが、気になって振り返ると、向こうも振り返っていた。

 

??? 「ああっ!零冶君!?」

 

     そして思い出した。

 

零冶  「・・・エイミィか?」

 

エイミィ「そうだよ!久しぶりだね!」

 

     零冶は驚いた。エイミィが海鳴に居た事も驚いたのだが、一番は・・・

 

??? 「ママ、このお兄ちゃんだれ~?」

 

     二児の母である事だ。

 

エイミィ「ん?この人はママ達を助けてくれた零冶お兄ちゃんよ。挨拶しなさい、カレル、リエラ」

 

カレル 「うん!こんにちわ!れいじお兄ちゃん!」

 

リエラ 「こ、こんにちわ・・・。」

 

零冶  「あ、ああ・・・こんにちわ」

 

     未だに驚きが隠せない零冶だった。

 

零冶  「子供が出来てたのか?・・・っていうか、相手はもしかして・・・・」

 

エイミィ「うん、クロノよ?」

 

零冶  「し、知らなかった。まぁとにかく・・・おめでとう」

 

エイミィ「ありがとう。で、零冶君は此処で何してるの?」

 

零冶  「護衛任務という名の休暇だ。しばらく休めそうに無いからな」

 

     一応ちゃんとした護衛任務である。

 

エイミィ「そっかぁ・・・大変なんだね」

 

零冶  「まったくだ。あのハゲ、人使いが粗すぎる」

 

エイミィ「は、ハゲって・・・?」

 

零冶  「ん?ああ、ハゲっていうのは地上本部長のボースって奴だ」

 

エイミィ「いや、そうじゃなくて・・・・って、本部長!?零冶君、そんなこと言っちゃまずいよ!ってか、今何してるの!?」

 

     エイミィがボースの名前を聞いて冷や汗を流す。

 

零冶  「ん?DOG隊の隊長だが?」

 

エイミィ「DOG隊ってあの噂の・・・・?よくもまぁ出世したわね・・・。思いっきりエリート部隊じゃないのよ」

 

     そしてエイミィ呆れて言った。

 

零冶  「エリートと言っても普通の魔導師の仕事と変わらん。偶に呼び出される時があるけど」

 

エイミィ「その偶に(・・)が洒落にならない任務でしょうが」

 

     実際はそうでも無く、管理局員のレベルが低い為に零冶達が呼び出される場面が多々あった。本当にDOG隊らしい依頼は

     数える程しか無い。

 

カレル 「ママー、なんのお話をしてるのー?」

 

リエラ 「かえりたいよぉ・・・」

 

エイミィ「ああごめんね。もう帰ろうね」

 

     カレルとリエラが眠たそうにしていた。

 

零冶  「そっか、それなら『隊長、今何処ですか?早く帰って来て下さい!アリサの不機嫌度指数がメーターを振り切ってます!』・・・俺も帰るとするよ。それじゃあな」

 

     ヘンリーから念話が届き、一刻も早く帰って来て欲しいとせがまれる。

 

エイミィ「うん、じゃあね」

 

カレル 「ばいばーい!」

 

リエラ 「ふみゅ・・・ばいばい・・・」

 

     そして零冶は帰路に就いた。

 

 

 

 

     その後、アリサが護衛最後の日ということで晩餐会を開き、その日は大いに盛り上がった。

 

 

 

     だが、デビットがお酒を持ってきたのが事の始まりだった。

 

 

 

 

エリス 「らいらいたいひょうはれすねー・・・ひっく・・・もっと女性のきもひを考えるべきはほおもいまふわ!!」

 

アリサ 「んんー?あんらよくわはっへるじゃらい。少しくらいこっちのきもひをかんはえてくれはっへ・・・」

 

     エリスとアリサが何故か意気投合し、零冶に文句を言ってくる

 

零冶  「どうしてこうなった?」

 

     零冶は未だに何故こうなったか分からなかった。

 

     いや、心当たりはある。

 

     原因は恐らくデビットが持ってきた洋酒だろう。

 

     最初は高いブランデーやウィスキー、ワインを持ってきてくれたのだが、何を考えてきたのかスピリタスを持ってきた。

 

     当然、お酒に詳しくないアリサや地球の酒を知らないミッド組はそれを飲んでしまう。

 

     零冶が気づいた時には既に手遅れで、5人がスピリタスを飲み干した所だった。

 

     スピリタス(spirytus)とは、ポーランドを原産地とするウォッカでありアルコール度数が高いことで有名である。

 

     因みに、アルコール度数は96度と世界最強である。

 

     一方、バライカは静かに座っていた。零冶が気になって声を掛けると・・・

 

バライカ「・・・・・・・」

 

零冶  「バライカ、大丈夫か?」

 

バライカ「・・・・・・・」

 

零冶  「・・・・バライカ?」

 

     零冶が揺すっても無反応である。

 

零冶  「目を開けたまま気絶してる・・・・」

 

     実は酔いつぶれていた

 

     今度はヘンリーを見てみると・・・

 

ヘンリー「あっはははははははははははは!!!!」

 

零冶  「ヘンリー、お前・・・・笑い上戸だったのか・・・」

 

 

     ヘンリーは大爆笑し、零冶がその意外性に驚いていた

 

     因みに、元凶のデビットとキールはアリサ、エリス、バライカに無理矢理飲まされて零冶の足元で轟沈している。

 

零冶  「ま、偶にはいっか・・・ははっ」

 

     だが、零冶は偶に羽目を外すのも悪くないと思い、1人で飲み始めた。

 

     その後、酔ったエリスとアリサが何故かストリップを始めようとして、それを止めようと必死に頑張ったのは別の話である。

 

 

 

 

  ―――――二日後

 

     今日は零冶にとって大事な日でもある。

 

     何故か?理由は・・・

 

ルーテシア「えへへ~、お兄ちゃんとデート~!」

 

      ルーのお守りの日でもあったからだ。

 

      今日はルーテシアと遊びに行くという約束しているのだ。

 

      何故こうも簡単に了承したか?

 

      考えてみても欲しい。ルーのような可愛く、素直で良い子に上目遣い+涙目でお願いされて断れる大人がいるだろうか?

 

      まあ、零冶も仕事の都合で何度か断っていたが流石にもう断り切れないと思い、了承したのだ。

 

ルーテシア「あっ!お兄ちゃん!あれ何?ルーが居た時は無かったよね?」

 

零冶  「ああ、あれはパン屋さんだ。ルーが旅に出てからすぐに出来たんだ」

 

ルーテシア「ふ~ん・・・・・ねぇ、お兄ちゃん?」

 

      街の変わりように興味津々なルーは何かをねだるような目を見る。

 

      それを見て零冶は苦笑した。

 

零冶  「はいはい。好きな物を一つだけ買ってあげるよ」

 

ルーテシア「本当!?わーい!ありがとー!」

 

     ルーはパン屋でメロンパンを一つ買って貰い、近くにある公園のベンチで零冶と一緒にパンとジュースを飲んでいた。

 

はやて 「あれ?零冶兄ぃ?」

 

     すると、はやてが現れた。

 

零冶  「はやてか?休憩中なのか?」

 

はやて 「うん、これから2時間ぐらいな。ところで、そこの女の子は誰や?」

 

     はやてが零冶の横に座ってメロンパンを食べているルーについて聞いた。

 

零冶  「ああ、この子は知り合いの娘さんでルーテシアって言うんだ。ルー、挨拶しなさい」

 

ルーテシア「ルーテシアです!ルーて呼んで下さい!」

 

     ルーは元気よく挨拶した。

 

はやて 「お、礼儀正しい子やなぁ!ルーちゃん、ウチは八神はやてって言うんよ。はやてって呼んでな?」

 

ルーテシア「うん!はやてお姉ちゃん!」

 

はやて 「もー、ルーちゃんは可愛ぇなぁ!」

 

     はやてがルーの頭を撫でる。ルーも気持ちよさそうにはやての撫で撫でを堪能していた。

 

零冶  「ところで、もし良かったらはやても一緒に散歩でもしないか?ルーも結構はやてに懐いているようだし」

 

はやて 「え?ええの!?それじゃあルーちゃん、ウチも一緒に行ってもええ?」

 

ルーテシア「うん!いいよ!」

 

     ルーもはやての事を気に入っているみたいだ。

 

     そしてルーと零冶とはやては3人で仲良く、はやての休憩が終わるまで楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

  ――――それから三日後

 

 

零冶  「そろそろだな・・・」

 

     零冶はDOG隊舎のヘリポートで目的の物を待っていた。

 

     いや、正確には物と者だ。

 

     以前からボースが言っていた通信士と操縦士だ。

 

     いくら少数精鋭のエリートといっても操縦士、通信士、エンジニアは必要最低限の項目だ。

 

零冶  「・・・来たか。・・・ん?」

 

     そしてヘリ特有のプロペラ音が聞こえてきた。しかし、少し変わった音だ。

 

     まるでセスナ機のプロペラ音に近い音に聞こえる。

 

     そして見えてきたのは・・・

 

零冶  「おいおい・・・アメリカからでもパクって来たのか?」

 

     それはヘリであるが、左右に大きな固定翼が付いている。

 

     そしてその大きさ・・・明らかに普通のヘリより大きい。

 

     続いて異様な速度。

 

     最後には着陸態勢に入るとき、左右のプロペラが固定型ではなく、可変型であったこと。

 

     何処からどう見てもどう見ても

 

零冶  「どう見てもV-22オスプレイだな」

 

     零冶がいた世界では結構有名なものだ。

 

     まぁ、いろいろと問題があって日本人には大不興だったが。

 

     因みに、カラーリングは黒だ。恐らく夜間攻撃用にしていると思われる。

 

     そしてV-22オスプレイが着陸して、2人の女性が出てきて敬礼をした。

 

キャシー「キャシー・フェリル一等陸士ぃ、ただいま出頭しましたぁ!担当は通信士ですぅ!」

 

ミュー 「お、同じくミュー・レイストン一等陸士、出頭しました!担当は操縦士兼整備士です!」

 

零冶  「ああ、ご苦労。堅苦しいのは無しにしよう」

 

     その2人は嘗て零冶の生徒だった2人だった。

 

キャシー「はい~、教官!」

 

ミュー 「ま、またお世話になるです!」

 

     2人は零冶が他の部隊から引き抜いた。DOG隊は全員が零冶の生徒だが、別にひいき目にしているわけではない。

 

     情報処理能力や事務処理が抜群のキャシーに天才整備士の異名を誇るミュー。この2人の能力を吟味して他に候補がいないかを

     捜した上での選抜なのだ。

 

     ちなみに、このオスプレイ擬きの正式名称は『XH-01ヒュバイン』だ。

 

     そして3人は隊舎の中に入って行った。

 

     そこでエリス達に紹介し、6人は再び会えたことに喜んだ。

 

     だが、キャシーとミューは知らない。

 

     ここ、DOG隊では整備士だろうと通信士だろうと容赦の無い訓練が待ち受けていることを・・・。

 

     その後、早速訓練を受けさせられた2人は初心者用にヒプノックのヒューノを相手させられた。

 

     勿論、速攻で眠らされて終了となる。

 

     次の日は少しレベルアップでリオレウスのアカツキ、次の日はジンオウガのジンを。

 

     そして三日目にはとあるモンスターを召喚してみた。

 

 

キャシー「こ、今度は何ですかぁ・・・・?もう勘弁して下さいぃ・・・」

 

ミュー 「ふぇえーん!もう嫌だー!」

 

     泣き言を言っている2人にエリス達4人は懐かしそうな表情をしていた。

 

     ただ、エリス達の場合はもっと酷かったが・・・。

 

零冶  「まぁ、我慢しろ。さて・・・」

 

     そして零冶は容赦なく召喚する。

 

 

零冶  「我が意に集いし友よ 汝、死の光に冒されながらも生き長らえし者!

 

     汝の咆哮は敵を止め、汝の片翼は敵を貫く!

 

     轟かせ!カリブ海の覇王! 

 

     今再び現代に蘇りて我が敵を討ち滅ぼせ!

 

     来い!鋼鉄の牙王!核竜ギアレックス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     そして現れるのは今までとは違う竜。体は緑色の装甲と白銀の皮膚、背には槍のような突起が生えている。

 

     核竜ギアレックス。現代のカリブ海に突如現れた牙王。現代でも重火器を駆使しないと絶対に倒せない最強の生物。

 

     因みに、何故零冶が契約しているかというと・・・なんと!リリなのの世界で5年前に地球のカリブ海で遭遇したのだ!もちろんオーディンの仕業です。

 

     名前はレギアだ。 ※CVは大塚明夫

 

     そして開口一番の一言が―――

 

 

 

 

 

 

 

レギア 『待たせたな!』

 

 

 

 

 

 

 

     いや、待たせたのは零冶ですがね。

 

零冶  「いや、俺の方こそすまない。あまり表に出させないで・・・」

 

レギア 『なに、構わない。それで、任務は何だ?』

 

零冶  「分かった。レギア、ターゲットはそこの2人。今回は模擬戦だ。死なない程度に相手をしてやれ。以上!」

 

キャシー「ちょっとぉ~!?」

 

ミュー 「死なない程度って!?」

 

     抗議をしようとするが最早それも無駄である。

 

レギア 『了解した!いくぞ!■■■■■ーーーッ!!!』

 

2人  「「っ!?」」

 

     レギアの咆哮に身を竦ませる2人

 

     そして地獄は始まる。

 

     先ずはレギアが突進する。これは普通に回避しす2人。

 

     そしてレギアの背部にある棘を飛ばし、再び咆哮する。

 

     地面に刺さった棘が咆哮と共鳴し、2人の動きを止め、レギアが槍のような突起の先から高圧縮された赤色の液体を噴射。

 

     ギリギリで回避した2人。だが、その液体のかかった地面を見ると・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ジュウゥ~~・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャシー「・・・・・・」

 

 

ミュー 「・・・・・・」

 

 

     地面が高熱と強酸と思わしきもので溶けていた。

 

     2人は一気に青ざめた。

 

ミュー 「って、ちょっと!?殺す気ですか!?」 

 

キャシー「あ、熱そうですねぇ~・・・?」

 

レギア 『む?すまん、ついやってしまった』

 

キャシー「つい、で殺されるとこだったですぅ!?」

 

ミュー 「気をつけてくれる!?」

 

レギア 「・・・・善処する。いくぞ!はいだらーーーー!!!!」

 

     2人の抗議を聞いても久々にする戦闘に高揚を抑えきれないレギア。

 

     2人は無事に訓練を生き残れるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――10分後

 

レギア 「任務完了。これより帰還する」

 

キャシー「も、もう無理ですぅ・・・・」

 

ミュー 「し、死ぬところだった・・・・」

 

     何とか生き残ることが出来た2人。

 

     しかし、もう体力気力共に限界だ。

 

零冶  「その・・・すまん。とりあえずゆっくり休んでくれ」

 

     零冶は2人に申し訳なく思い、ゆっくり休ませることにした。

 

     言い忘れていたが、2人にもDOG隊の秘密を教えている。もちろん、ジェイル達の事も。

 

 

 

 

     そして何だかんだで2週間が過ぎた。

 

     その頃にはキャシーとミューもだいぶ零冶の訓練に慣れてきた。

 

     何だかんだ言ってもやはり零冶の生徒である

 

     だが、急に事件が起きた。

 

 

零冶  「ガジェットが?」

 

ボース 『ああ、ミッドの市街地の地下水路で発見された』

 

零冶  「っち、どこまで警戒が甘いんだよ・・・」

 

ボース 『まったくだな』

 

     ボースの連絡によればミッドの地下にガジェットが侵入。非公式だが、レリックを運搬していたらしい。

 

     しかし、現場にはガジェットの残骸と内側から破壊された生体ポッドがあった。

 

零冶  「生体ポッドということは・・・・・・・実験材料か?」

 

     実験材料という一言で零冶の目の色が変わる

 

ボース 『恐らくな。場所は廃棄都市のA-6エリアだ。今は六課が先に向かい、既に戦闘が始まっているらしい』

 

零冶  「っ!分かった、すぐに向かう」

 

     すぐさま零冶は全員に連絡し、ヘリに搭乗するように指示した。

 

     そして、零冶がヘリポートに着いたときには全員が揃っていて、ヒュバインに搭乗していた。

 

ミュー 「出します!」

 

     そして零冶達は飛び立った。

 

     10分もすれば目的地に到着できた。だが、戦闘は既に開始されている。

 

     勿論なのは達が後れを取るとは思っていない。

 

     そして、ガジェットⅡ型が破壊さていく中、増援が到着する。

 

キャシー「敵増援を確認しましたぁ。数は・・・ひゃ、150ですぅ!」

 

零冶  「・・・多過ぎだ」

 

     しかも、どんどん増え続けている。

 

零冶  「キャシー、地下はどうなっている?これだけの陽動だ。恐らく目的は地下だろう?」

 

キャシー「ええっとですねぇ・・・・でましたぁ。地下にもガジェットが配置されてますぅ。でも、これってぇ・・・・」

 

     キャシーが何か気づいたようだ。

 

零冶  「どうした?」

 

キャシー「スカさんのガジェットと登録番号が一緒ですぅ。しかも、他のガジェットと争ってますぅ」

 

零冶  「なに?」

 

     零冶はすぐさま確認を取る。

 

ジェイル『おお、零冶君か!ちょうど連絡しようと思ってた所だ』

 

零冶  「ということは、地下はジェイルのが混じってるのか?」

 

ジェイル「ああ。以前私が作り出した人造魔導師の最後の被検体が運ばれていくのを確認してね。慌てて回収しようとしたのだが・・・」

 

零冶  「既に奴等も援軍を送ってきたって訳か・・・」

 

ジェイル『その通りだ。因みに、Ⅱ型は残っていなかったんでアレは全部敵だよ』

 

     ジェイルが最高評議会の命令で作っていた最後の人造魔導師。

 

     それは聖王の力を再現する実験だった。

 

ジェイル『あの子だけは絶対に奴等に渡してはいけない!もしあの子が奴等に渡り、聖王のゆりかごが起動すれば・・・・』

 

零冶  「どうなる?」

 

ジェイル『最悪・・・ミッドが消える』

 

零冶  「・・・それはまずいな」

 

     ジェイルの言葉から察するに戦術兵器もしくは決戦兵器と思われる。

 

ジェイル「今はセインとルー君にアギトが回収をやってくれている。被検体は六課に預けても良いが、レリックはこちらで

     回収しようかと思ってね」

 

     だが零冶はルーを向かわせたことに怒る。

 

零冶  「おい、何故ルーを向かわせた?」

 

ジェイル「し、仕方なかったんだ!今手が空いている人がいないんだ。ゼスト隊は使う訳にはいかないし、他の娘達は全員調整中だったんだ。

     精々ウーノが出られるが、彼女は戦闘向きではない。苦肉の策だったんだ」

 

     ジェイルが言うことも分かるが、あまり納得できない零冶だった。だが、行ったものはしょうが無い。

 

零冶  「仕方ない。調整が早く終わるのは誰だ?」

 

ジェイル『今、トーレを最優先で調整中だ。もう間もなく終わるから、済み次第向かわせるよ』

 

零冶  「了解した。俺も迂闊には動けない。急いで調整を終わらせてくれ」

 

ジェイル「ああ!」

 

     そして通信を切った。そして、その時に遠くから光りが見えた。

 

ヘンリー「広域殲滅魔法!?」

 

キール 「なんつー無茶苦茶な魔力だ・・・」

 

エリス 「隊長・・・・」

 

     零冶は焦った。もしこのまま広域殲滅魔法が続けばすぐにガジェットがやられる。敵だから有り難いが、今はこっちにとって

     好都合だったのですぐにやられてもらっては困る。

 

     しかし、零冶の胸はもの凄くざわついている。ガジェットがやられていることではない。もっと別の・・・何か別の危険が

     迫っているような感覚がする。     

 

零冶  「キャシー、半径20km圏内に何か居ないか調べてくれ。何でもいい」

 

キャシー「わ、分かりましたですぅ!」

 

     キャシーに遠距離探知を頼んだ。

 

バライカ「隊長?」

 

零冶  「胸騒ぎがするんだ」

 

     そしてキャシーが結果を報告する。

 

キャシー「隊長ぉ、六課さん達とそのヘリ以外何も見つかりませんでしたぁ」

 

零冶  「そうか・・・俺の思い過ごしか・・・」

 

     だが、それでも胸騒ぎが止まらなかった。

 

     そして、その予感は当たった

 

キャシー「っ!?隊長ぉ!ほ、砲撃ですぅ!しかも質量兵器のぉ!真っ直ぐ六課さんのヘリに向かって行きますぅ!」

 

零冶  「なっ!?」

 

     零冶が反応したときにはもう遅い。

 

     既に目の前に巨大な砲弾が迫り、六課のヘリに着弾する。

 

     凄まじい爆発音と共に煙りが巻き起こる。

 

零冶  「・・・・いや、間に合ったのか?」

 

     しかし、煙が晴れるとヘリは健在だった。

 

なのは 「はぁ、はぁ・・・っ!間に合ったけど・・・結構キツイなぁ・・・」     

 

フェイト「2人がかりで・・・しかも全力でやっと防げるなんて・・・無茶苦茶な砲撃だね・・・・」

 

     なのはとフェイトがリミッターを解除して全力で防いだからだ。

 

零冶  「キャシー!砲撃の位置は特定できないのか?」

 

キャシー「む、無理ですぅ!砲撃の方角をたどっても一切の反応が見られませ~ん!それと、ルーちゃんが六課さんに捕まってますぅ!」

 

零冶  「っち!キャシーはそのまま全周警戒!ミュー!機体をルー達がいる場所の近くに移動させろ!」

 

キャシー「了解ですぅ!」

 

ミュー 「分かりました!お願いね、イリス!」

 

イリス [OK!]

 

     イリスはヒュバインのインテリジェントデバイスである。

 

     零冶はアンノウンの特定を放棄し、ルー達の援護に向かう。

 

     そしてどうやってルーを助けるか考えた。

 

零冶  「(どうする?迂闊に手を出せばこっちの苦労が水の泡になりかねない。だが、ルーを放っておく訳にもいかない。アイツ等を

     召喚してもすぐに俺が疑われる。せめてステルスが使える奴がいたら・・・ん?・・・・っ!そうだ!アイツなら

     見つからずにルーを助けられる!)」

 

     零冶は一つだけ方法があるのを思いだし、すぐに行動した。    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     零冶達より20km南の地点

 

     そこには六つの巨大なクレーターが出来ていた。

 

     しかし、それ以外には何も無い場所。

 

     鳥すらもいないのだ。

 

     その理由はすぐに分かった。

 

     一瞬、風景が歪んだと思ったら、巨大な要塞が現れた。

 

     左右対称の形と装備をしている。

 

     そして、要塞なのに足が3対も付いてあり、中央には大型3連装砲台、胴体の周りに滑走路が5つmある。

 

     大きさはどれぐらいだろうか?

 

     残念ながら、周囲に比較対象が無い為、正確に計り難い。

 

     だが、おおよそで言うと・・・最低でも全長1kmはあると思われる。

 

     それは一度姿を現した後、すぐに消えるように姿を消した。

 

     そして、クレーターが南西方向に増えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

     そして少し前に戻り、地下では・・・

 

 

ルーテシア「もぅ、何処にあるの~?」

 

アギト 「もう少しの筈だぜ、ルー」

 

     アギトとルーは地下でレリックを探している。

 

     セインは別の通路から探索している。

 

ルーテシア「う~ん・・・あっ!あそこに誰かいるよ?」

 

     そしてルーが見つけたのはレリックを回収しに来たティアナ達であった。

 

アギト 「んん~?ホントだ。ん?アイツが持っているのって・・・レリックじゃないか!」

 

ルーテシア「え?それじゃあ、あの人達がスカっちの言ってた悪い人なの?」

 

アギト 「どうだろ?全然弱そうだけどな。でも、向こうもアレが目的みたいだし、多分そうじゃね?」

 

ルーテシア「そっか!よーし!悪い人はやっつけなきゃ!」

 

      そして悪い方向へ勘違いする2人であった。

 

      ルーが手の甲を掲げて言った。

 

ルーテシア「おいで!ガリュー!」

 

      すると、四角形の魔法陣が現れ、中からガリューが出てきた。

 

ルーテシア「ガリュー、あの人達からレリックを取り返して!」

 

ガリュー「・・・・・。(コクッ)」

 

     ガリューは頷くと、透明になって姿を消した。

 

     そして地や壁を蹴って高速でティアナ達に向かった。

 

     アギトの方は上空で待機し、ルーのピンチになったら助ける手はずになっている。

 

     そして、セインにも連絡して地上で待機させ、第二の逃走切り札として残した。

 

 

     紫色の羽を展開し、ダッダッダッダッと壁や地面を蹴っていくガリュー。常人を遙かに超えた動きでレリックのケースを持っているキャロに迫りながら4つの黒い魔力弾を撃った。

 

キャロ 「きゃあっ!?」

 

     キャロに直接は当たらなかったものの、衝撃で吹き飛ばされた。

 

     そして追い打ちを掛けようとしたところにエリオが見えないガリューを闇雲に斬りつける。

 

     それをガリューは紙一重で躱し、鋭い尾でエリオの右胸あたりを斬りつけた

 

エリオ 「ぐっ!」

 

キャロ 「エリオ君!?」

 

     手当てしようとするキャロを手で制し、目の前を注視する。

 

     ガリューは降り立ち、ステルスを解除した。

 

     その隙にルーがレリックを回収。キャロが気づいて取り返そうとするが、

 

ルーテシア「来ないで!」

 

     手をキャロに向け、魔力流で吹き飛ばす。

 

スバル 「てぇえええい!!」

 

ガリュー「・・・・・」

 

     スバルはガリューに殴り掛かるが、ガリューは回避してスバルの腹部に蹴りを入れて吹き飛ばす。

 

ギンガ 「はああああ!!」

 

     続いてギンガが攻撃するが、その拳を流れるような動作で受け流し、カウンターの肘を決めた。

 

ギンガ 「ぐうっ!」

 

     ルーはその場から走り去ろうとするが、スバルが呼び止める。

 

スバル 「こ、こら!そこの女の子!それ、危険な物なんだよ!?触っちゃダメ!こっちに渡して!」

 

ルーテシア「・・・ふんっ!・・・っ!」

 

     ルーはそのまま無視して走り去ろうとしたが、誰もいないのにいきなり肩を掴まれ、目の前には魔力刃を突きつけられた。

 

ティアナ「ごめんね?乱暴で。でもね、これ本当に危ない物なのよ」

 

     魔力刃を突きつけていたのはティアナだった。

 

ルーテシア「悪い人には渡さない!ガリュー!」

 

ティアナ「え?ちょっ!きゃああああ!?」

 

     ガリューは魔力弾を一発ティアナに向けて撃つ。スバルとギンガが妨害しようとするが、それを簡単にあしらった。

 

     ティアナは魔力弾をすぐに迎撃。だが、その瞬間には真横からガリューの蹴りを食らってしまい、飛ばされた。

 

ルーテシア「これはスカっちに頼まれたの!悪い人から守って欲しいって。だから・・・渡さない!」

 

ギンガ 「ちょっと待って!私達、管理局よ!」

 

スバル 「悪い人じゃないから!誤解だよ!」

 

     スバルとギンガが弁護しようとするが、ルーの知識では管理局=悪と思っている。

 

     これは零冶とジェイルが言ったのだが、あくまでも管理局の一部の人がそうであって全員が悪い人じゃないと説明している

     はずだが、そこらへんをよく理解出来ていなかったための誤解だ。

 

ルーテシア「スカっちとお兄ちゃんが言ってた!管理局の人達は悪い人達って!だから、あなた達は悪い人!」

 

キャロ 「ち、違うよ!そんなんじゃ――――」

 

アギト 「ぶちかますぜー!」

 

     そこで、ルーがピンチと判断したアギトは炎の魔力弾を発射。ティアナ達に攻撃する。

 

     そこからは一方的な攻撃だった。高威力のアギトの魔力弾は完全にティアナ達を制圧していた。

 

     だが、最初は有利だったルー達だったが、突如天井から現れたヴィータ達によって互角になってしまう。

 

ヴィータ「うおおおおお!!」

 

リィンⅡ「フリジットダガー!」

 

アインス「ブラッディダガー!」

 

     ヴィータのハンマーをガリューが片手で受け止めて耐えて見せた。そして水色と紅色の短剣がルーとアギトに襲いかかる。

 

ルーテシア「あうっ!」

 

アギト 「うお!?あぶねっ!?」

 

     アギトは何とか回避して見せたが、ルーは一部を回避出来ずにダメージを受けてしまう。

 

ヴィータ「お前等、よく頑張ったな」

 

アインス「待たせてすまない」

 

リィンⅡ「私達が来たからにはもう安心ですー!」

 

     副隊長達が来て安心するフォワード陣。

 

ティアナ「ヴィータ副隊長!」

 

ギンガ 「これで形勢逆転ね」

 

     そして六課陣が体勢を立て直す。

 

アギト 「な、なぁ、ルー・・・。これ、やばいんじゃね?」

 

ルーテシア「う、うん・・・兎に角、ここから逃げなきゃ!

 

     ルーテシアが慌てて転送魔法陣を展開しようとするが、

 

アインス「逃がすか!」

 

     アインスがブラッディダガーを発動する。その数およそ数十。ルーは目の前に迫った魔法を回避するも転送魔法陣は消えてしまった。

 

ガリュー「・・・・・!」

 

     主のピンチを察したガリューが六課達に単身で突撃していった。

 

ルーテシア「ガリュー!?」

 

ガリュー「・・・・・・・」

 

     ガリューは4つの瞳を光らせて呼応した。まるで此処は俺に任せろと言わんばかりに。

 

ルーテシア「うん・・・わかった。ガリューも無理しないでね!」

 

アギト 「いくぜっ!」

 

     アギトが天井に魔力弾を立て続けに放つ。そして轟音と共に天井に穴が空いた。

 

アギト 「よっしゃ!行くよ、ルー!」

 

ルーテシア「分かった!」

 

     ルーはまだ未熟な飛行魔法を使用し、地上へと翔上がる。

 

アインス「待て!くっ!?」

 

ヴィータ「うおっ!?」

 

     六課陣はルーテシアを追おうとするもガリューの猛攻によって追撃を中断した。

 

     しかし、多勢に無勢というべきか、次第にガリューも追いつめられてしまった。

 

リィンⅡ「はぁ、はぁ、はぁ・・・。追いつめましたよ?」

 

     しかし、ガリューは全く動じない。不振に思った六課達は警戒を強くするが、アインスだけは慌てて捕縛しようとした。

 

アインス「いかん!すぐに捕縛しろ!」

 

     しかし、気づいた時には既に遅く、ガリューは魔法陣の中に消えてしまった。

 

アインス「遅かったか・・・」

 

リィンⅡ「ごめんなさい、お母様」

 

アインス「いや、気にするな。それより早く奴等を追うぞ!」

 

ヴィータ「ああ!お前等!ボーっとしてないでさっさと行くぞ!」

 

     ヴィータが落ち込んでいるフォワード陣に活を入れる。

 

     そして追跡しようとした時、異変が起きた。

 

     ズズゥーン!!

 

     突然地下が振動し、今にも崩れそうになる。

 

アインス「なんだ!?」

 

キャロ 「お、大型召喚を感知しました。多分、その影響かと・・・」

 

     キャロがエリオとティアナに支えられながら言った。

 

ヴィータ「くそっ!早く外に出るぞ!スバル!」

 

スバル 「は、はい!ウイングロード!」

 

     スバルがウイングロードを展開し、アインスが先頭でヴィータが殿で脱出する。

 

     一方、ルー達は・・・。

 

 

ルーテシア「もう怒ったんだから!地雷王!やっちゃって!」

 

     空中で魔法陣の上に立っているルーが先ほどの事で大荘ご立腹だった。

 

アギト 「や、ヤバイよルー!これじゃあ地下が崩れてアイツ等が死んじゃうよ!?いくら悪党でも殺すのは拙いよ!」

 

ルーテシア「大丈夫。あの人達ならこれぐらいで簡単には死なないから」

 

     ルーは腰に手を当てて言った。

 

アギト 「でも・・・・「ドンッ!」あっ・・・・やっちまった・・・・」

 

     アギトが尚も中断させようとするが、すでに地雷王の重みで地下が崩れ、地面が陥没してしまった。

 

     アギトもこれじゃあ死んでしまったと思ったが、その予想は外れていた。

 

地雷王 『グォオオオー!?』

 

     すると、ピンク色の巨大な魔法陣が地雷王の足元に展開され、中から現れた幾重の鎖が地雷王を縛り上げる。

 

ルーテシア「地雷王!?・・・っ!アギト!避けて!」

 

アギト 「ふぇ?・・・うわわっ!?」

 

     ルーが咄嗟に叫んでアギトが一瞬呆けた顔をしたが、オレンジ色の魔力弾が目の前に迫ってきた事に焦った。そしてなんとか回避した。

 

     ルーも魔法陣を消して自由落下で避けた。その序でに紫色のナイフを生成、狙撃手に向けて放つ。その攻撃に続いてアギトも魔力弾を撃つ。

 

ティアナ「くっ!」     

 

     狙撃手であるティアナはその場を離脱して回避する。

 

ルーテシア「外しちゃったかぁ(チャキッ)あっ・・・」

 

     ルーが近くの道路の上に降り立つと、既にエリオが回り込んでいて、槍を突きつけられた。

 

アギト 「ルー!?待ってろ今「させん!」なっ!?」

 

     ルーを助けに行こうとしたアギトもアインスのバインドによって拘束される。

 

リィンⅡ「ここまでです!」

 

アギト 「くっそぉ・・・・。」

 

     アギトは脱出不可能と判断したのか、地面に座り込んでしまった。

 

ヴィータ「子供を虐めているみてーで良い気分はしないが、市街地での危険魔法使用に公務執行妨害、その他諸々で逮捕する」

 

     ヴィータとアインス、リィンⅡが降り立った。

 

 

 

     そして場面は零冶達の方へ戻る。

 

     零冶は一度ヘリから飛び降り、市街地に架かっている橋の下で詠唱を始めた。

 

 

 

零冶  「我が意に集いし友よ

 

     来たれ!姿無き者よ!

 

     汝は霞に生きる者なり」

 

     霞故に汝の姿を捕らえること叶わず

 

     不可視の身で敵を奇襲せしめん!

 

     来い!霞龍オオナズチ!」

 

 

 

 

 

 

     魔法陣から現れたのは少し変わった竜だ。

 

     体の色は薄紫色でとても滑らかな鱗をしている。頭には尖った角が出ており、目はカメレオンのように出て、左右が違った動きをする。

 

レオン 『零冶はん、呼んだかいな?』

 

     因みに関西弁である。

 

零冶  「レオン、頼む!ルーを助けてくれ!お前しかこの状況を乗り切る奴がいないんだ!」

 

レオン 『ルーってあの蟲使いの子やろ?ええで。零冶はんの頼みやさかい、わいで良かったら力になるで!』

 

零冶  「ああ、それと姿は絶対に見られないようにしてくれ。あと出来れば周りの奴等もあまり怪我をさせないでくれ」

 

レオン 『結構しんどい注文やけど、おっけーや!ほな行きますか!』

 

     レオンはキュルルッと一鳴きすると透明になって飛び立った。

 

     本来なら違う角度から見ると僅かに風景に違和感が出てしまうが、そこは零冶との魔力を使った訓練で完璧に不可視になった。

 

レオン 『さて・・・ルーちゃんは何処やろか?お!おったおった!』

 

     レオンがルーの姿を確認した時は今に連行されるところだった。

 

レオン 『ほな行くで~!』

 

     レオンは急降下してルーの近くに着地した。

 

ヴィータ「な、なんだ!?」

 

アインス「急に風がっ!」

 

スバル 「うわわ!」

 

     その時の風圧で近くにいた3人が数m飛ばされた。

 

ルーテシア「え?」

 

アギト 「な、なんだ?」

 

     突然の出来事に2人は驚いた。

 

     そこでレオンから念話が届いた。

 

レオン 『ルーちゃんにアギトはん、大丈夫でっか?』

 

ルーテシア『え?あっ!もしかして・・・カメレオンさん!?』

 

アギト 『零冶のカメレオンか!?』

 

     2人はレオンの事をカメレオンと呼んでいる。

 

レオン 『誰がカメレオンや!!わいをあんな爬虫類と一緒にせんといてな!』

 

     本人ならず本龍?はカメレオンという呼称には不満であったようだ。

 

アギト 『でも、お前も生物学的には爬虫類だろ?』

 

レオン 『いや、せやけど・・・って、ちゃうわ!今はそんな事言っとる場合やない!ルーちゃん!わいがキャッチするさかい、

     すぐ後ろから飛び降りるんや!』

 

ルーテシア『う、うん!』

 

アギト 『ちょ!オレは!?』

 

     逃げる際に自分が頭数に入ってなかった事を抗議するアギト

 

レオン 『自分は・・・・・・・先に謝るで?堪忍してや!』

 

アギト 『ちょっ!?それってどういうkむぎゃっ!?』

 

     レオンは何かを言おうとするアギトに口を開けた。

 

     するとカメレオンのように舌は勢いよくアギトに迫り、見事キャッチ。そのまま―――

 

 

 

 

 

レオン 『パクッ!』

 

 

 

 

 

     食べた。

 

 

 

 

 

ルー  『ええええええ!?アギトを食べたー!?』

 

レオン 『こら!誰がこんなけったいなモンを喰うかいな!ちゃんと口の中で生きとr「ここから出せぇーー!!」もごもご!?

     ちょっ!?大人しくしとかんと呑み込んでしまうで?』

 

アギト 「・・・・・・・」

 

     レオンがそう言うとアギトは大人しくなった。

 

レオン 『せや。そのまま大人しゅぅしとき。ほなルーちゃん?手はず通りに!』

 

ルーテシア「う、うん」

 

      そして思わず出た声に反応したリィンⅡがルーの方を見ると、

 

リィンⅡ「え?・・・あっ!!あのおチビさんがいないです!?」

 

ティアナ「え!?さっきまでそこにいたのに!?」

 

スバル 「ど、何処に!?」

 

     ルーがその後ろを振り返って走り出した。

 

キャロ 「あっ!」

 

エリオ 「待て!」

 

     そしてルーをエリオとキャロが止めようとするが、

 

キャロ 「え?うそっ!?」

 

エリオ 「危ない!」

 

     ルーがバインドを掛けられたまま飛び降りた事に驚愕する。

 

ルーテシア「・・・っ!」

 

     ルーは正直言うと怖かった。しかし、零冶の龍を信じて飛び降り、目を瞑って恐怖に耐えた。

 

     そして―――

 

レオン 『キャッチや!』

 

    何も見えないが、ルーは何かに当たる感触がして空中に留まった。

 

    他の皆もその光景に絶句し、すぐに助けようと追いかけようとするが、

 

アインス「な、何だ!?」

 

     突然アインスの足が掴まれた。

 

     足元を見ると手が地面から生えて自分の足を掴んでいた。

 

     アインスが振り払うと、今度はヴィータの足を掴んで転倒させ、スバル、ティアナと続けて妨害した。

 

キャロ 「あっ!返して!」

 

     そして、キャロが持っていたケースを地面から飛び出してきたセインが奪い去った。

 

     だが、セインは既に地面の中へ消え去っていた。

 

     そしてルーが行った方を見ると、姿は見えずにロストしてしまった。

 

セイン 「へへーん。ざまー見ろー!」

 

     セインはルーが逃げ出すタイミングをずっと計っていた。そしてここぞとばかりに妨害し、ケースを奪い取った。     

 

     そしてセインは素早く逃げていき、無事にレリックをジェイルの所へ持ち帰った。

 

 

 

 

     零冶達とは少し離れたビルの屋上に1人の青年らしき人物が立っている。

 

??? 「・・・・・・・」

 

     彼の姿は他の人たちとはかなり違っていた。

 

     背中には気味の悪いロングボウを担いでいる。

 

     奇妙な、と言う点はロングボウの中心に大きな目玉のようなものが付いているからだ。

 

     そして彼の視線の先にはXH-01ヒュバインがある。そしてその後部が開き、零冶が乗り込もうとしている所だ。

 

 

??? 「あれか・・・・」

 

     青年はロングボウを手に持ち、矢筒から矢を取り出して矢をつがえる。そして力一杯に引き絞った。すると、ロングボウの

     目がギョロッと動いて零冶をジッと見つめる。

 

     そして・・・放った。

 

     矢は真っ直ぐ、寸分の狂いも無く零冶の頭部に向かって飛翔する。

 

エリス 「隊長、お疲れ様です」

 

零冶  「ああ、今回ばかりは冷や汗を―――っ!!」

 

     だが、零冶は何か嫌な予感がしてルナを夜天連刃【黒翼】にした。

 

     そして剣を交差して向かってくる矢を防ぐ。だが―――

 

零冶  「がっ!?」

 

エリス 「隊長!?」

 

     矢の威力は不安定な足場にある零冶を簡単に吹き飛ばした。

 

     そして零冶はヘリから叩き落とされビルの屋上へ着地しようとした。

 

??? 「・・・防がれた?」

 

     そして青年は自分の矢が防がれたことに驚いた。

 

     そして、間髪入れずに第二射を撃とうとした、が・・・

 

??? 「・・・っ!」

 

     青年の勘が『避けろ!』と命令し、すぐさまバックステップをした。何が起きたか分からなかったが、その答えもすぐに出る。

 

トーレ 「やれやれ、ルーが心配ですぐに来てみれば・・・意外な獲物が引っかかったようだな」

 

     トーレがIS『ライドインパルス』を発動して青年の後方に立っていた。

 

??? 「っ!?(後ろを盗られた!?)」

 

     青年は自分が後ろを盗られた事に驚く。また、トーレも自分の攻撃を避けられた事に驚く。

 

トーレ 「しかし、私の攻撃を避けたのは驚いたな。貴様・・・何者だ?答えろ」

 

??? 「・・・・・」

 

     青年は黙して何も言わない。

 

トーレ 「まあいい、どうせ貴様を捕らえて吐かせればいいだけのことだ!」

 

??? 「っ!」

 

     青年は常人には不可能な動きで矢を番え、トーレに向けて放った。

 

     トーレはそれを回避。青年の腹部に蹴り飛ばした。

 

     青年の体は吹き飛び、ビルから落とされてしまう。

 

     トーレがすぐさま追撃に入ろうしてビルの下を確認すると、

 

トーレ 「いない・・・だと?」

 

     そこには落下していくはずの青年がいなかった。

 

     魔力を探知して索敵しようとしても反応が一切無い。

 

トーレ 「トレースもダメか・・・。完全にロストしたな」

 

     トーレは何かしらの魔法を使って転移、若しくは姿を隠したと思った。

 

トーレ 「とりあえず、ドクターと零冶に報告だな・・・」

 

     トーレはそう言い残すとその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

零冶  「くそっ!な、何なんだ今のは!?」

 

     零冶はビルに着地すると開口一番に悪態を吐いた。

 

零冶  「・・・ん?」

 

     そして、地面にあるものが落ちていたのを見つけて拾い上げる。

 

零冶  「これは・・・矢?」

 

     それはアーチェリーに使われるような短い矢ではなくロングボウや日本弓に使われるような長い矢だった。

 

     しかし、デザインはどちらかというとロングボウ寄りだった。

 

零冶  「これが原因か・・・?っ!これは・・・毛?」

 

     そして、零冶がまじまじと観察していると、突然に矢がバラバラと獣毛のようなものに変わり崩れていく。

 

零冶  「ジェイルに分析させて見るか・・・。どうも嫌な予感がする」

 

エリス 「隊長ー!ご無事ですかー!?」

 

     零冶が上を見上げると、ヒュバインが停滞飛行してエリスが叫んでいた。

 

零冶  「ああ!大丈夫だ!すぐにそっちへ行く!」

 

     零冶は獣毛をポケットに入れ、ヒュバインに乗り込む。

 

     この後、エリス達に事情を説明し、周辺警戒をしながら帰投した。

 

 

 

 

 

 

 

    ミッドチルダの何処かにある場所に彼等は話していた。

 

??? 「ほう、お前が仕留め損ねるとはな」

 

??? 「ふむ、アーヴィンが仕留め損ねるとは・・・中々の武人とお見受けした」

 

     1人は2mを越える程の大男。そしてアーヴィンと呼ばれた青年に頭を下げられたのが露出が多い毛皮のベストの様なものを

     着込んでいる男だ、グルンベルドとゾッドだ

 

アーヴィン「・・・・・申し訳ない」

 

ゾッド 「いや、別に構わん。奴も可能であるなら、と言っていた。こっちも一応の義理は果たした故に問題は無い。だが、それと同時に

     楽しみも出てきた」

 

グルンベルド「いやはやまったくですな!私も剣を交えるのが楽しみになってきました」

 

     グルンベルドは笑みを浮かべて言ったゾッドに賛同した。

 

ゾッド 「しかし、今はまだ動くなと奴に言われている。癪だが、奴が帰還の方法を握っている以上我々はそれに従わねばならん」

 

グルンベルド「方法を手に入れた後はどうされます?」

 

     グルンベルドがそう聞くと、ゾッドは獰猛な笑みを浮かべて言った。

 

ゾッド 「なに、我ら戦魔兵をこき使ってくれた礼をしてくれるまでよ」

 

 

 

     そしてそことは違う場所でもまた、秘密裏に話している者がいる。

 

ジェイス「ふむ、流石はDOG隊隊長か・・・。この程度ではどうにもならん・・・か。・・・くく・・・くくくくくっ!」

 

     最高評議会が新たに作り出したマッドサイエンティストのジェイスがモニターを見て嗤った。

 

     彼は今、最高に気分が高ぶっている。

 

ジェイス「もうすぐだ・・・。もうすぐ私の新しい兵器とおもちゃ、それとあの御方達の体が出来上がる。くくくくくっ!」

 

     彼が嗤いながら見つめている視線の先には兵器らしきもの設計図と三つの生態ポッドに入っている人の体が浮かんでいた。

 

ジェイス「あと三ヶ月で全ての準備が整う。それまで精々偽りの日常を楽しむといい!ふはははははははははは!!」

 

     彼はただひたすらに嗤い続けた。

 

     

 

 

 

 

     今回の事件について零冶はボースに報告した。

 

零冶  「という事があった」

 

ボース 「ふむ・・・ガジェットはともかく、零冶君を狙撃した者についてはこちらでも探ってみる。しかし、信じられないな・・・

     人の姿をした人ならざる者・・・か」

 

     零冶はトーレから受けた報告をボースにも伝えた。そして、ジェイルに依頼した毛の分析結果も出た

 

     ジェイルによると、どの次元世界の動物にも該当しない全く新しい種らしい。

 

 

零冶  「ああ、最初はそんなもんだ。しかし、これで確信に至った。俺が予想した最悪のパターンだ」     

ボース 「戦は避けられん・・・か」

 

     ボースは零冶の言葉に深いため息を吐いた。

 

零冶  「戦になればまだ良いがな」

 

ボース 「ん?どういうことだ?」

 

零冶  「いいか?奴等は人ではない。使徒と呼ばれる者だ。人を捕食し、殺しを快楽とする正真正銘の化け物。しかも、一体二体だけでは

     ない可能性も十分にある。現に俺の所に1人いるからな」

 

     因みに、ボースはロシーヌの事をまったく聞いていなかった。

 

ボース 「なに!?聞いてないぞ!?」

 

零冶  「言ってないからな。ま、ロシーヌという名前なんだが、彼女については問題無い。俺達と共に歩むことを選んだからな。

     本来なら一部を除いた使徒の言うことは信られないが、彼女は別だ。ちゃんと人の心を持っている」

 

     ロシーヌは人として歩む事を選んだ。ならば、零冶はそれを全力で応援するのみだ

 

ボース 「むぅ・・・なら良いが・・・」

 

零冶  「すまんな。それで・・・・・今後の事だ」

 

     零冶は雰囲気をより一層重くして言った。

 

ボース 「・・・ルーテシア君を見られてしまった事か?」

 

零冶  「ああ。以前、ルーと一緒にミッドへ散歩に行った事がある。今まで殆ど街を見たことが無いから、遊んであげたったんだが・・・

     迂闊にもはやてに見られてしまった。」

 

ボース 「彼女か・・・。また面倒なことになったな」

 

零冶  「いや、今度は完全に俺の失態だ。ルーに遊ばせたかった俺の甘さが招いた事だ。責任は取る」

 

     零冶はルーがずっとラボの中で遊んでいるのを心苦しく思っていた。だから偶には外に連れて行ってあげたいと思い、

     ミッドへ散歩に行ったのだ。

 

ボース 「むぅ・・・それが分かっているなら構わん。だが、これからどうするというのだ?場合によっては最悪・・・」

 

零冶  「ああ・・・管理局とは決別する可能性がある。ま、遅かれ早かれそうなっていたとは思うが・・・」

 

ボース 「折角立ち上げたというのにな・・・」

 

零冶  「・・・申し訳ない」

 

     零冶はボースに誠心誠意を込めて頭を下げた。

 

ボース 「頭を上げてくれ。終わった事えお言っても仕方ない。」

 

零冶  「・・・ああ。今はまだはやてが追求してこないから良いが、もし・・・万が一任務先で使徒と出会うような事があれば俺は

     間違い無く問答無用で殺す必要がある。奴等を殺すには斬魔刀を使う方が適しているから質量兵器使用の罪で査問に

     掛けられるだろう。そうなれば―――」

 

     しかし、ボースは零冶の言葉を手で制した。

 

     そしてしっかりと零冶を見つめて言う。

 

ボース 「皆まで言うな。私も共に君達と戦おう」

 

零冶  「だが、そうなればお前も―――」

 

ボース 「だから皆まで言うなと言っておるだろうに。なに、どうせ今の管理局に私の求めるあり方は無いのだよ。しかし、我々と違って

     彼女達は真っ当な方法で事を望むだろうな」

 

     ボースがはやて達を思って言った。

 

零冶  「ああ・・・あいつらは真っ直ぐだ。曲がることも折れることも無く、ただ己の正義を貫く立派な戦士だ。だが、人の醜さと

     狡猾さを知り過ぎた俺には到底真似は出来ない。この手を血で・・・血で血を洗う事しかできないからな、俺は。」

 

ボース 「ああ、そういえば君は転生する前は暗殺者だと言っていたな?」

 

     ボースは零冶の言葉を聞いて零冶の過去を思い出した。

 

零冶  「ああ・・・感情の一切が無く、ただ命令されるがままに人を・・・女子供まで殺してきた殺人マシーンさ」

 

ボース 「そんな事を言うな。君には立派な人だ。自分を殺人マシーンなどと寂しい事を言うんじゃない。スカリエッティ達が悲しむぞ?」

 

零冶  「ふっ・・・そうだな。」

 

ボース 「取りあえず、次に近々行われる大規模な作戦が終わるまでは何とか隠し通しておきたいものだ」

 

零冶  「大規模な作戦?」

 

ボース 「ああ、つい最近・・・多くの違法魔導師と犯罪者が第89無人世界に集結していることが調査で判った。数はおよそ900人。

     これまで無い規模の人数だ。しかも、質量兵器を所持しているらしい」

 

     全員が魔導師では無いが、魔法が使えない者は銃をで武装しているらしい。

 

零冶  「となると・・・俺達の出番が来る訳か」

 

ボース 「だろうな。今の管理局に彼等をまともに相手が出来る程の戦力は無い。ま、上の連中が手柄と名誉、地位目的でやろうとしている

     だけだろうな」

 

零冶  「傍迷惑な奴等め」

 

     ボースは「まったくだ!」と言って呆れていた

 

零冶  「取りあえず、使徒は俺が相手をする。他の奴が発見しても絶対に手を出すな。殺されるか喰われるだけだ」

 

ボース 「承知した」

 

     そして零冶は一通り報告も終わったのでボースの部屋を後にした。

 

ボース 「零冶君・・・・・もしや、再び自らを犠牲にしようという訳ではあるまいな?」

 

     ボースは零冶が出て行った後で、そう呟いた。

 

 

 

 

     翌日、零冶はなのはに呼ばれて六課に来ていた。

 

零冶  「急に呼びつけてどうしたんだ?」

 

なのは 「あ!零冶君!」

 

フェイト「やっと来た!」

 

     2人はとても嬉しそうにしていた。零冶は何事かと思い、首を傾げていたが・・・

 

なのは 「ほら、ヴィヴィオ。挨拶して」

 

零冶  「ん?」

 

     零冶が視線を少し下に移すと、オッドアイの女の子がなのはの服を掴んでいた。

 

     そして、もじもじしながら爆弾発言を投下する

 

ヴィヴィオ「えと・・・あの・・・こ・・・にちわ。・・・零冶パパ」

 

零冶  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

 

     長い長い沈黙の後、零冶が出せた言葉はこれが精一杯だった。

 

なのは 「はい、よく言えました♪」

 

ヴィヴィオ「えへへ~♪」

 

     なのはがヴィヴィオを褒めて頭を撫でた。

 

ヴィヴィオ「ねぇ、パパも撫でて?」

 

零冶  「え?あ、ああ・・・・」

 

     零冶はついついヴィヴィオの頭を撫でてしまった。

 

     そして、しばらく撫でていると、ようやく状況を理解した零冶が驚く。

 

零冶  「って!ぱ、パパ!?ちょっと待て!どういうことだなのは!」

 

ヴィヴィオ「ひうっ!?」

 

     零冶が突然大声を出した事にヴィヴィオは驚いて涙目になる。

 

ヴィヴィオ「ふ・・・ふぇ・・・・」

 

     そして今にも泣きそうな顔をしていた。

 

なのは 「零冶君!ダメだよそんな大声を出しちゃ!ヴィヴィオが怖がってるじゃない!」

 

零冶  「え?あ!ご、ごめんな?ヴィヴィオに言ったんじゃないから泣かないでくれ、な?」

 

ヴィヴィオ「ぐすっ・・・・うん・・・」

 

     取りあえずヴィヴィオを宥めた事に零冶は安心し、なのはを静かに問い詰めた。

 

零冶  「・・・ふう。・・・で?どういう経緯で俺が父親なんだ?」

 

なのは 「え?私がヴィヴィオの母親になるから?」

 

     なのはは顎に人差し指を当てて首を傾げながら言った。

 

     どんなに可愛く言っても、答えになっていない事は変わりないが・・・。

 

     そして、ヴィヴィオを見て気になってたことを零冶はなのはに聞いた。

 

零冶  「答えになってねぇし!?ってか、この子・・・もしかして?」

 

なのは 「・・・うん、昨日の事件に関係があるみたい」

 

零冶  「そっか・・・。しかし、何故俺が父親なんだ?俺はそんなキャラや歳でもないのだが・・・?」

 

     実際は30過ぎたオッサンである零冶だが、まだそんな自覚は無い。

 

なのは 「嫌・・・かな?」

 

     そしてなのはの上目遣い攻撃が零冶を直撃する。

 

     基本的に恋愛に神がかった鈍感さである零冶だが、興味が全く無いわけではない。

 

     ただ、意識してないだけである。

 

     まあ、本人は薄々感じ始めているが自分には勿体ないと思っている。

 

零冶  「ぐっ・・・・べ、別に嫌って訳じゃないが・・・・」

 

なのは 「じゃあいいじゃん!」

 

     そして急に明るくなるなのは。

 

零冶  「・・・むぅ。(俺、もしかして騙された?)」

 

     零冶は何か違うと思ったが、どう言ったらいいか分からなかった。

 

なのは 「それと、フェイトちゃんも同じ母親だからね」

 

零冶  「・・・・・・なのはがヴィヴィオの母親で、フェイトもヴィヴィオの母親?・・・もう訳が分からん」

 

     零冶はなのはの発言にまた頭を混乱させられた。

 

     ちなみに、ヴィヴィオは零冶にすっかり懐いてしまっている。

 

ヴィヴィオ「ねぇ、パパ・・・?」

 

零冶  「え?あ、ああ・・・どうかしたのか?」

 

ヴィヴィオ「ヴィヴィオ・・・ねむい・・・・」

 

零冶  「そ、そうか?えっと・・・なのは、頼む」

 

     零冶はもうどうしたら良いか分からずなのはに丸投げする。

 

なのは 「ふふふ、分かった。ほらヴィヴィオ?お家に帰りましょうねー?」

 

ヴィヴィオ「うん・・・・・・パパは?」

 

なのは 「パパはまだお仕事があるから、お家には帰れないの。だけど、明日になったらまた会えるから、ね?」

 

     ヴィヴィオまたぐずりだそうとするが、なのはが優しく撫でてあげると我慢してくれた。

 

ヴィヴィオ「うぅ・・・。・・・・・うん・・・わかった」

 

なのは 「よしよし、ヴィヴィオは良い子だね」

 

     そしてなのははヴィヴィオを連れて帰宅していった。

 

     と、その前になのはが立ち止まって零冶に言った。

 

なのは 「あっそうだ零冶君。はやてちゃんが昨日の事で何だか妙に雰囲気が暗いっていうか、悩んでいるように見えたんだけど・・・

     何か知らないかな?」

 

     その問いに零冶はルーの事だろうと思い動揺した。しかし、顔には一切出さなかった。

 

零冶  「・・・さあ?時間が空いたら聞いてみるよ」

 

なのは 「うん!お願いね!」

 

     そして今度こそなのはは帰宅して行った。

 

     零冶はなのはが隊舎を出るまで見送った。

 

     そしてポツリと呟いた。

 

零冶  「期待していなかったとはいえ・・・本当に面倒な事になったな・・・」

 

     そう言って零冶ははやての方には行かずに、もう一方の呼び出しに応えるためにコンピュータールームへ向かった。

 

     そして中に入ると、フェイトとシャリオが待っていた。

 

零冶  「遅くなってすまない。ちょっとなのはに捕まっててね。」

 

フェイト「あ、それじゃあもうヴィヴィオには会ったんだ?」

 

零冶  「ま、まあ・・その・・・なんだ。正直、もう訳が分からなくて混乱している」

 

フェイト「ふふふ、照れてるんだ?」

 

零冶  「い、いや・・そうじゃなくてだな?」

 

シャリオ「・・・はいはいごちそうさま。取りあえずイチャイチャしてないで用件を済ませたいんですけど?」

 

     零冶とフェイトはシャリオのツッコミに慌てて否定するが端から見てもイチャイチャしているようにしか見えない。

 

 

フェイト「そ、それじゃあ本題に入ろっか!?」

 

     そしてやっと本題である。

 

フェイト「今日は零冶に見て欲しい資料があるの」

 

     フェイトはそう言い、シャリオが端末を操作する。

 

     そして、出てきたのはガジェットの動力部の映像だ。

 

     これだけで零冶はフェイトの用件が分かった。

 

フェイト「これ、ガジェットドローンの動力部の映像だけど・・・ここの部分を拡大するとこんな名前が書いてあったんだ」

 

零冶  「・・・これは?」

 

     勿論零冶は知らないフリをする。

 

シャリオ「ジェイル・スカリエッティ・・・数多くの罪で広域指名手配されている次元犯罪者です。その罪状をあげるとキリがありません」

 

     零冶はこの時シャリオの物言いに怒りを感じたが、シャリオ達は何も知らないので、怒りを抑えた。

 

フェイト「実はこの人・・・私が作られる元となった『プロジェクトF.A.T.E』の基礎を作った人なの。それで、零冶君の方で

     何か彼の居場所に心当たりとかないかな?」

 

零冶  「いや、無いな」

 

フェイト「そう・・・。私ね、彼が基礎理論を作ってくれたおかげでお母さんと出会えた事にはある意味感謝しているけど・・・やっぱり、

     私の様な思いをする人が出てきて欲しくないんだ。だから、私は彼を絶対に捕まえたいの。忙しいのは知っているけど、

     零冶の方でも手伝ってくれるかな?」

 

零冶  「ああ・・・俺に出来る事(・・・・)ならばな」

 

     零冶はフェイトとの約束をギリギリのラインで破ることないように少しはぐらかす感じで言った。

 

フェイト「ありがとう、零冶。用件っていうのはこれだけなんだ。忙しいとこ呼び出してゴメンね?」

 

零冶  「いや、構わない。それじゃあ俺は仕事があるから」

 

     零冶はそう言って部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

     この後零冶は一度ジェイルの所に戻り、全員を集めて今後起きるであろう事を伝えた。

 

     そして必然的に表で管理局に敵対することになる事も伝え、全員がそのことについても了承した。

 

     一通り話が終わって解散し、ロシーヌが零冶の部屋に来た。零冶はロシーヌをベッドに座らせて話を聞いた。

 

ロシーヌ「ねぇ、零冶・・・・・使徒って誰が来たのか分かる?」

 

零冶  「いや、詳細は分からない。だが、アーヴィンという奴が来ている可能性は大きい」

 

     零冶がアーヴィンという名を出した時、ロシーヌは驚いた。

 

ロシーヌ「アーヴィン!?そいつ、もの凄く強いやつじゃない!」

 

零冶  「ああ。だが、下手をすると使徒のトップ達が来ている可能性も大きい。しかも、軍団を率いて・・・な」

 

     ロシーヌは肩を震わせて怯えた

 

ロシーヌ「そ、それじゃあ・・・・・ゾッドやグルンベルド、ロクスなんかも・・・?」

 

零冶  「かもな。っていうか知っていたのか?」

 

ロシーヌ「ううん、見たことは無いよ。他の使徒達と話していたとき、そんな名前が出てきたんだ。でも、ゾッドなら見たことがある。

     私が使徒に成り立ての頃・・・一度だけ。その時は空から見ただけだったけど、見た瞬間背筋が凍ったわ。絶対にアイツには

     勝てないって思ったもの」

 

     ロシーヌは再び怯えた表情をする。

 

     零冶はそんなロシーヌの隣に座り、頭を撫でて落ち着かせた。

 

     そして、こう宣言する。

 

零冶  「そっか・・・。でも、俺はアイツを見つけたら戦わなければならない。もしかしたらロシーヌを狙ったり,俺の家族が

     巻き込まれる可能性も無いわけじゃない。」

 

ロシーヌ「で、でも!」

 

零冶  「大丈夫だ。俺は負けない。お前達を守る為だからな。折角ロシーヌが人として歩んでいこうとしているんだ。こんな所で

     死なせたくない」

 

     ロシーヌは零冶の言葉を聞き、真っ直ぐ見つめられて顔を赤くした。

 

ロシーヌ「・・・・うん・・・・ありがと・・・///」

 

     ロシーヌは零冶の事を好きになってしまった。

 

     最初はそんな事なかったが、自分の事を本当の家族として扱ってくれると言ってくれた時から不思議な気持ちが湧き上がってきた。

 

     そんな気持ちに疑問を感じながら過ごして行く内に、どんどん不思議な気持ちが大きくなってくる。

 

     そして、今日やっとその気持ちの正体に気づいた。

 

     ああ、自分は零冶を好きになってしまったと。

 

     こんな、人を捨てた自分の事を人として接し、家族としてくれている彼を―――愛してしまった。

 

     だが、零冶を狙う者は多い。

 

     彼女はどうやって零冶を勝ち取るか、今後の楽しみである。

 

 

     それからまた三日が過ぎた。ボースが言っていた作戦はもう公式で発表されており、零冶達DOG隊も今日、出撃することに

     なっている。

 

     そして零冶は出撃する前に六課に赴き、はやてに会いに行こうとしていた。

 

     実は作戦の前にはやてに来て欲しいと頼まれたからだ。

 

はやて 「あっ、零冶兄ぃ・・・・」

 

     すると、廊下ではやてにばったり出くわしてしまった。

 

零冶  「はやて・・・・」

 

     はやては見るからに元気が無く、疲れている様に見えた。

 

はやて 「零冶兄ぃ・・・ちょっとウチの部屋まで来てくれへん?内緒で話したいことがあるんや」

 

     零冶ははやての誘いを断る訳にもいかず、はやての部屋に向かった。

 

     そして部屋に入り、2人はソファに向かい合って座る。

 

     しばらくの沈黙が部屋を包み込み、重苦しい雰囲気となった。

 

     何分、何十分か分からないが時間が経った後にはやては零冶に訪ねた。

 

はやて 「なぁ・・・零冶兄ぃ。ルーちゃんと何処で知り合ったん?」

 

零冶  「・・・・」

 

     零冶は答えられない。嘘も吐けない。

 

     はやてがこう聞くのはルーの事を調べたからだ。

 

     ルーテシアは公式で何年も前に行方不明扱いされている。そして、母メガーヌも殉職している事になっていた。

 

はやて 「何で行方不明になってるルーちゃんが、この間零冶兄ぃと一緒におったん?零冶兄ぃ・・・何を隠してるん!?」

 

零冶  「・・・・」

 

     零冶はずっと黙っている。どう答えたら良いのか分からない。

 

     そんな零冶にはやては我慢できずに零冶の胸ぐらを掴み上げて声を荒げる。

 

はやて 「何で黙ってるんや!ウチ等・・・兄妹やろ?隠し事はしないって・・・言ったやろ?ちゃんと答えて!零冶兄ぃ!!」

 

     そしてやっと零冶が口を開いた。

 

零冶  「・・・・・・すまん、はやて。今は答えられない」 

 

はやて 「っ!」

 

     パンッ!―――と、はやては零冶の頬を張る。

 

     しかし零冶はそれも甘んじて受け、こう続けた。

 

零冶  「ごめんな。だけど、これだけは言っておく。はやて・・・・・俺は近い内、管理局から抜けるつもりだ」

 

     その言葉を聞いてはやてが掴んでいる手の力が抜ける

 

はやて 「・・・なんで・・・や?」

 

零冶  「俺は近い内に指名手配かもしれない、確証は無いが十中八九そうなる」

 

     零冶は確証こそ無いものの、確信はあった。

 

     この作戦の裏には必ず何かある、と。

 

はやて 「は・・・はは・・・・・・嘘やろ?零冶兄ぃ、冗談でも笑えんで・・・?」

 

     本当は分かっている。だが、頭が、心がそれを否定している。

 

     しかし、それでも零冶は言った。

 

零冶  「・・・冗談でも嘘でもない。俺はあと作戦が終わったら・・・管理局を抜ける」

 

はやて 「なんでや・・・?零冶兄ぃ・・・何か悪い事したん?何で指名手配されなあかんの!?ねぇ、零冶兄ぃ・・・・何処にも行かんって言ったやろ・・・?皆と・・・ウチと約束したやろ?」

 

     はやては目に涙を滲ませ、零冶に抱きついて懇願した。

 

     もう離れたくない、もう離さない、約束と決意が崩れ去ろうとしている。

 

     だが、そんなはやてに零冶は無情にも一言を告げて魔法を掛けた。

 

零冶  「・・・・ごめん」

 

     零冶が掛けた魔法は『眠りの霧』。エリスから教わった非殺傷の魔法。

 

     そしてはやてが気づいた時には効果が現れ始めた。

 

はやて 「なんっ・・・あれ?・・・・零冶・・・兄ぃ?」

 

     はやては急に眠気が襲ってきたことに驚き、それが零冶だとすぐに理解した。

 

零冶  「ごめんな、はやて・・・。また約束を破ってしまう。だけど、これだけは覚えていて欲しい。必ず、お前達の下に戻って来る。お前達にはこの醜い戦いや汚れを知らないでいて欲しい。」

 

はやて 「いや・・・や・・・。零冶・・・にぃ・・・」

 

     はやては必死に魔法に抗おうとするも、段々と力が抜けていく。

 

零冶  「はやて・・・またな。なのはやフェイトにもゴメンって言っておいてくれ」

 

はやて 「れい・・・じ・・・・に・・・・・」

 

     そしてはやては眠った。

 

     その寝顔はとても美しく、寂しい寝顔だった。

 

ロキ  『零冶・・・いいんだね?』

 

     零冶の頭にロキの声が響く。

 

     ここ最近は零冶の魔力を溜め、長期活動が出来るように温存していた。

 

零冶  「・・・ああ。前も今回も・・・俺は守る為に戦う」

 

ロキ  『そっか・・・。僕も戦うよ』

 

零冶  「ありがとう」

 

 

     零冶はそっとソファに寝かせてあげ、その部屋を後にする。

 

     隊舎を出るとヒュバインが着陸しており、DOG隊全員が待っていた。

 

零冶  「お前達・・・・」

 

エリス 「隊長・・・全てはボース本部長からお聞きしました」

 

バライカ「全ての責任を自らが負う事は私達が絶対に許しません」

 

キール 「へっ!水くさいこと言うなよ、隊長」

 

ヘンリー「我々は隊長に付いていきます」

 

キャシー「通信士がいないと不便なのですぅ♪」

 

ミュー 「ヒュバインの整備をする人も必要でしょ?隊長」

 

     本当なら彼等は零冶がDOG隊を去ることを知らずに作戦に参加するところだった。しかし、その可能性をボースは予測し、手遅れになる前にエリス達へと連絡した。

 

零冶  「お前等・・・・分かった。だが、この道は修羅の道。人の命の価値が限りなく低い。それでも来るか?」

 

エリス 「勿論です!」

バライカ「ええ!」

キール 「おう!」

ヘンリー「はい!」

キャシー「はいですぅ!」

ミュー 「は、はい!」

 

     全員が零冶と共に来ることを示した。

 

零冶  「ふっ・・・馬鹿共が。いいだろう・・・行くぞ!」

 

ロキ  『うん!』

 

     零冶達はヘリに乗り込み、次元航行艦が停泊している空港に向かった。

 

 


 
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