あの女性の事務所は、意外にも隣町だった。
しかし、ここにたどり着くまでは、意外に厄介だった。
このあたりは、碁盤の目のように道ができていて、
同じような十字路ばかりだ。
加えて、似たような白い家ばかり。
大きさこそ違うが基本的な形、色はそっくりだ。
歩きなれてなければ確実に迷うだろう。
時は、そろそろ正午になろうとしている。
しかし、いまだに見えてこない。
地図では、まっすぐになっているがいまだに見えてくる様子はない
「・・・・・おかしいな・・・・。」
一旦止まってあたりを見回した。
しかし、どっちを向いても似たような家ばかり
まるで、出口のない迷いの森をさまよってるかのようだ。
・・・・・・・どうにもふに落ちない。
ここのあたりに来てから何か違和感を感じていた。
あまりにも似すぎてる住宅、正午だというのにまったく人を見ない不自然さ
たしかに、住宅街であるわけだから不自然ではないと思うだろう。
しかし、建造物を見ても張りぼてを見てるかのような錯覚。
閑静だからという理由では、不自然すぎるほどの静寂。
すべてが不自然に感じてくる。
「ふむ・・・・」
僕は、足元に落ちていた石で近くの電柱に十字に傷をつけた。
「何やってるの?京」
肩に乗ってた怜夜がいってきた。
「目印を作ってるのさ」
「何でまた?ただの住宅街じゃない?」
「どうも、ただの住宅街じゃなさそうなんだ。」
怜夜は、不思議そうな顔でいった。
「どういうこと?」
目印を書き終えた僕は、おもむろに歩き出した。
まっすぐ進み、右に曲がり、左に曲がって電柱を見ると
・・・・・・やはりだ。
そこにはさっきつけた傷がある。
「あれ?どういうこと?さっきつけた傷がある。」
「簡単なことさ。」
どこからでもなく声が聞こえた。
その声は聞き覚えのある甲高い声・・・
僕は、思わず後ろを振り向いた。
そこには、はじめてあったときと寸分も違わずに立っている女性がいた。
「この十字路は、さっきお前がいた世界とは違う隔離されたところなのさ
それぞれの道の先の空間を逆の道につなげただけだ。
つまり出口のない迷宮ということだな。
ここから出るには、特定のルートで行かなければ私のところまでつけんぞ?」
タバコを口に運び、更に続けた。
「まぁ違和感に気づけたならいいか
ここでは、いっしょに行けないから行き方を教えてやろう。
右左右左と行きそこの道の真ん中でこれを書け」
そういって彼女は、手のひらに角ばったPのような文字を書いた。
「それじゃあな」
そういって彼女は、風とともに消えてった。
「とりあえずいってみるか。」
いわれたとおり行き、
そこでさっき教わった文字を書いた。
一瞬、僕の頭の中が真っ白になっていく感覚があった。
思考が停止し、全身の力が抜けてくのを感じた。
気がつくと、そこには廃ビルがあった。
高さは、およそ5階位だろう
最上階は、建設途中だ。
・・・ふと、なにか暖かいものを感じた。
この感じを僕は、知ってる気がする。
「ここ不思議なところね。
墓地でもないのにすごく暖かい感情が溢れてる。」
なるほどそういうことか。
ここは、こないだまで通ってたところと同じなのか。
しかし、墓地でもないのにこの感じがするのも初めてだ。
とりあえず、中に入ってみることにした。
中は、薄暗く、そこら中に工具が無造作に置かれている。
天井には、蜘蛛の巣が張り放題だ。
奥のほうに階段が見え、そこから光が漏れていた。
僕は、いわれるでもなく階段を上った。
「京様ですか?」
そこには、茶色いメイド服をきた女の人がいた。
赤い髪をおかっぱのように切っており
目は、翡翠のように緑色だ。
「あなたは?」
その女の人は、軽く会釈をすると
一息おいて口を開いた。
「わたしは、ここでマスターの補佐をしております響(ヒビキ)と申します。」
そういうと響は、すぐに後ろを向いた。
「これよりマスターのところまで案内いたしますのでついてきてください。」
不思議な人だ。こうやって話をしているが
まるで感情というものを感じない。
自我がないかのようにもとれる。
完全にロボットだ。
響につれられていくと、
そこには、木でできた扉が見えてきた。
周りには見たことのない装飾や模様がある。
「中でマスターがお待ちです。」
「あぁ、ありがとうございます。」
響は、また軽く会釈をし、きた道を戻っていった。
それを見た後、僕は扉に手をかけた。
中は、大きな空間になっていた。
しかし明らかに今までとは違った
今まで生活観というものを感じない
ただの廃ビルだった。
しかしここには、明らかに生活観が漂っている。
壁は、薄いオレンジで天井には、シャンデリアが存在する。
そしてそのほかにもドアがいくつかあった。
中央には大きなテーブルと黒いソファーが6つ
テーブルの四方を囲むようにおかれてる。
その一番奥のソファーにレベッカが座っていた。
「来たな まぁ座りなさい」
そういわれて手前のソファーに座った。
相変わらずタバコをふかして煙を漂わせている。
「とりあえず、覚悟ができたということでいいのかな?」
単刀直入に聞いてきた。
僕は、迷うことなくそうだといった。
「ふむ。いい度胸だ。」
そういうとレベッカはおもむろに立ち上がり
歩き出した。
「ではこれから修行だ。京
言っとくがきついからな?」
そして、修行が始まった。
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