僕は、走った。
ここから竹やぶまでは、直線距離で100mくらいだろう
しかしここの道は非常に入り組んでいる。
一種の迷路のようなものだ。
迷路といっても、せいぜい小学生がやる程度のものだが。
僕は、とにかく全速力で走っていた。
怜夜は、僕の肩に乗ったままだった。
落ちないようにしっかりとしがみついている。
だが、同時に震えているのがわかった。
当然だ。あれを見て、恐怖を抱かない方がどうかしてる。
そして僕たちは竹やぶに着いた。
「なん・・・・・・・で」
確かにここは竹やぶのある場所だ。
毎日、ここに来るのだから道を間違えるわけはない。
しかし、そこで見たものは、
変わり果てた土地
竹は、枯れはて、邪気が漂っている。
それどころか黒いもやがなおいっそう濃い・・・
「なんでだよ・・・」
そう思ったときは、もう遅かった。
すでにやつらは、僕たちを取り囲んでいた。
逃げ場は・・・・・・・なかった。
「あれ?なんでこんなところに人がいるんだ?」
そのとき、やつらの後ろで甲高い女の声がした。
全身を黒いコートに身を包み、浅いシルクハットをかぶっていた。
髪は白く肌も色白で常に煙草の煙を漂わせている。
その女の横には黒い猫がいた。
猫の目は、青く、吸い込まれそうな感じさえする。
「まぁいいや。汀(なぎさ)」
女がそういうと、黒猫は、跳んだ。
その瞬間、黒猫は黒い塊となった。
その塊はいくつもの黒い帯状の刃を放ち、
目にもとまらない速度でスライム状の物体を次々と貫いていった。
貫かれたスライムたちは白くなり砕け、塵となっていた。
「へぇ・・・光の精霊がいたんだ。ここ・・・」
そう言って、彼女は、近づいてきた。
あの黒い塊は、いつの間にかまた黒い猫にもどっていた
「君、さっきのもの見えてるのか?」
彼女は、そういって僕の目を見てきた。
彼女の目は右と左で目の色が違った。
右は碧眼、左は赤褐色
顔立ちは、TVで見るようなアイドルよりもずっときれいだった。
「ふむ・・・君、名前は?」
彼女は、顔に笑みを浮べながらそう言った。
しかし、口で言うよりも威圧感がある。
拒否は許さないとでも言うかのように
「神崎 京・・・」
神崎 京 それは、僕の本名だ。
僕の家は、代々続く名家のひとつだ。
普段は、普通の家庭だ。
父も母も普通の人間だった。
しかし、神崎の血は、時として不思議な力を宿すらしい。
以前、じっちゃんの家で文献を漁ってたときにそんなことが書かれていた。
実際、僕自身がそうだ。
普通の人間には、聞くことができないものが聞こえている。
「神崎・・・・か」
しばしの思案のあと彼女は、また口を開いた。
「京といったな。私は、レベッカ。この猫は汀だ。
私たちは獣使いというものだ。
そうだな・・・・・
君の知ってる言葉で言うと私は、ゴーストバスターみたいなものだ。
まぁ、正確には、違うがな。
獣(クリーチャー)と呼ばれる使い魔を行使して
さっきのような邪(じゃ)を抹殺するのが私たちの仕事だ。
そして、その獣というのがこの子、汀だ。」
彼女は、そういった
今度は、さっきのような威圧はない。
「・・・・・・・レベッカ
あんまり部外者に、しゃべらないほうがいいと思う。・・・」
黒猫が、突然しゃべった。少女の声にしてはやけに低い声だ。
っと突然、その猫は、形を変え一人の少女になった。
黒い着物を着ているが、かすかに猫の部分が残っているのがやけにマッチしてる。
簡単に言うと猫耳をつけた死神とでも言うか・・・
髪は黒く、墨をこぼしたようだ。
同様に猫耳も黒い。
「そうだったな。でもあながち部外者じゃないかも知れんぞ?」
「は?」
黒猫は、きょとんとした顔でそういった。
そこから少しの思案の後、口を開いた。
「適合者?」
そういった。
「おそらくな」
少し間をおいてから
「まぁいい。今のを信じるも信じないも君次第だ。
おそらく君は、自分の本質がわかってないだろうから
しかし、自分が本当は何者で何をすべきか知りたければ
私のところに来るといい
ただし、そのときには、君の存在自体が消えるのと同じことだ。
自分の家、家族、友人、友達と決別する覚悟でだ。
決して安易に出すなよ。
そうだな。期限は明日の夜までだ。」
そういって彼女は、僕に名刺を渡してきた。
そして、振り向きざまに歩いていった。
「あぁそうそう、そこの精霊は、つれてきてもいいぞ。
精霊とともに生きることと同じだから」
家に帰りさっき起きたことを振り返った。
自分の本質、自分の正体、自分のすべきこと。
いままでそんな哲学的なことを考えたことなどない。
それもそうだ。聞こえるという以外は、普通の人間なのだ。
そんなことなんて考えたこともない。
不意に横を見ると怜夜は、眠っていた。
あの場所があんなことになったため、怜夜は、うちに来た。
幸い、うちの家にも霊的な力が存在する。
古いものほどそういった霊気をもつとじっちゃんが口をすっぱくしていってた。
このときばかりは、じっちゃんに感謝した。
「とりあえず寝るか。」
その日、あんなものを見たせいか不思議な夢を見たのだ。
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