文化祭当日。
いちおう学校には来いということになっているが、出席の取りようもない。サボる連中も多い。俺はいつも通りに起きた。着替えて、ダイニングに下りていく。
「真菜は、もう出かけたわよ」
そう母さんが教えてくれる。トーストを焼いてブルーベリージャムを塗って、もしゃもしゃと食べる。ブルーベリージャムって、上の方はブルーベリーの実が入っているけど下の方になると入ってないんだよな。
それなりにゆっくりと紅茶を飲んで、家を出る。
ドアを開けると、玄関先に紺色のジャージが丸まっていた。
「真奈美さん。おはよ」
「…おは、よ」
きっと、ここまで来たけど呼び鈴を一人で押すのが怖かったんだな。
「ずっとここに座っていて、寒くなかった?」
十一月だ、そろそろ寒くなってきている。
「…ちょっと冷たかった。さすって…くれる?」
「どこ?」
危険な予感がする。
「お尻」
「そこはさすれない」
「…そう…だよね」
「汚いからとかじゃないよ」
「そうなの?」
「公共の場所で、女の子のお尻をさするのはたぶん『事案が発生』という感じだと思う」
「…じゃあ、今度部屋で…」
部屋でもさすらないと思う。そう思いつつ、立ち上がった真奈美さんのお尻に視線が自然と行ってしまうのは、自然な反応なのでお許しいただきたい。小さいな。ジャージ越しだからよくわからないけど。
真奈美さんと一緒に学校に到着すると、早くも相当な数の生徒で活気づいていた。公式の開始時刻は九時ということになっているが、出し物をする連中にとっては最後の仕上げタイミングで、駆け込みで準備に追われているところだ。どこの教室も出し物に使われるので、俺みたいな何もしない生徒はわりと居場所がない。
居場所のないことにかけてはスペシャリストの真奈美さんを頼ることにしよう。餅は餅屋だ。
「居場所ないね。どこにいたらいいんだろ」
「…体育倉庫」
専門家のアドバイスに従って校庭の隅にある体育倉庫に行くと、見事に誰もいなかった。普段、体育倉庫の近くでたむろしているガラの悪い連中は、当たり前に文化祭をサボっている。体育祭じゃないから、体育倉庫に用のある生徒もいない。さすがに真奈美さんは一人でいられる場所を良く知っている。
鍵のかかっていない扉をあける。ほんのりとかび臭い。
真奈美さんが、俺の左手を掴んで引っ張る。
「こっち…」
サッカーボールが沢山入ったかごを回って、奥に進む。真奈美さんが跳び箱に手をかける。
「一緒に、入ろう」
斬新な跳び箱の使い方を提案してくる。別に跳び箱の中に入るのを拒否する理由もない。上から二段目あたりを押し上げる。最初に真奈美さんが入る。つづいて俺も入る。
狭い。どうしても真奈美さんの肩と触れ合うくらいの距離になってしまう。その華奢な肩がこちら側に体重をかけてくる。抱きしめていいのかな。その温かさに、つい積極的に触ってしまいそうになる。まずい。しっかりしろ自分。真奈美さんだけど、高校生の女の子でもあるのだ。お気軽に触ったりしたら洒落にならない。俺にとって、真奈美さんは真奈美さんで、いわゆる女の子の分類に入っていないのだけど、周囲から見たら女の子だから、そう簡単に触っちゃいけないのだ。
狭くて薄暗い。ある種の恐怖症を持っている人には、パニックを起こさせるような環境だが、となりの呼吸音はいつもより落ち着いている。
「なおとくんは…」
真奈美さんがささやくような声で、俺の耳元に話しかける。いつもよりもずっとゆっくりとした、滑らかな声。リラックスした真奈美さんの声。珍しい。
「うん…」
俺も内緒話をするような声で答える。
「みんなといるの、好き?」
「そうだな。好きだよ。上野や橋本とつるむのも楽しいし、妹は…面倒くさいけど、まぁ楽しいし、三島や東雲さんたちといるのも楽しい。もちろん、真奈美さんや美沙ちゃんといるのも楽しい」
「わたしは、苦手」
みんなといるのが苦手か…、まぁ、そうだろうな。得意そうには見えない。
真奈美さんが、ゆっくりと滑らかな声で続ける。
「わたし、なおとくんと二人だけでいるのが、一番好き」
静かに、そんなことを言う。同じ年の女の子にそんなことを言われて、どきどきすべきなのだろうか。俺の心臓は、むしろゆっくりとリズムを刻む。肩に感じる温かさも、滑らかな声も、狭い空間に漂う真奈美さんの甘い香りも、全部がゆったりとさせる。
それっきり、真奈美さんは一言も話さない。
眠ってしまったのかな。
ちらりと横を見ると、ふわりと開けたまぶたの奥と目が合う。鳶色の瞳。長い睫。
遠くから、文化祭の開催を告げるアナウンスが流れてくる。遠い喧騒に跳び箱の中を別世界のように感じる。
気がつくと左手の上に真奈美さんの手が重なっていた。
……。
これは、いけないな。二人で跳び箱の中に入る奇行はともかく、手の甲を撫でられていると相手が真奈美さんでも変な感じになってきてしまう。
「真奈美さん」
「……」
無言。ますますいけない。
「三島の文芸部に行ってみよう」
絵本で手なずける作戦。なんだか、子供をあやす作戦のようだが、真奈美さんは妹属性なのだ。俺のリアル妹を想像しないでくれ。リアル妹は妹のようでいて、妹ではないのだ。あんなのが妹なわけがない。俺の妹が二次元妹なわけがない。
「…ん」
跳び箱の一番上だけ押し上げて立ち上がる。ごん。という音を立てて、一段目が地面に転がる。入るときは意外と簡単だったが出るときが大変だ。順番に輪を抜くようにして跳び箱を外し、またいで出られる高さにする。跳び箱をもとどおり戻して、体育用具倉庫から出る。鍵はかかっていない。閉じ込められて「私、おトイレ行きたくなっちゃった」というイベントは発生しない。
うちの学校は標準と比べると、やる気のない文化祭だと思う。それでも、文化祭の喧騒は大きい。祭りモードで若干ハイになっちゃっている生徒が元気に呼び込みをしていたり、奇声を挙げてダッシュしているバーサーカー系男子も散見される。ぎゃーっ!という演技一切抜きの悲鳴は、リアル妹プロデュースのデス屋敷だ。ゴスロリ衣装の小悪魔美沙ちゃんが受付をやっている。可愛いなんてもんじゃない。殺人だ。小悪魔ミサちゃん、男子を続々地獄送り。鼻の下を伸ばした男子がつぎつぎと列に並んでいる。自分たちが並んでいるのがマネキンの首を引っこ抜き、生首ふりそそぐ絶叫ライブとも知らずに並んでいる。
《じゃーじゃかじゃかじゃか!ぎゃーっ!》
階段を登る。まだ絶叫が下から聞こえてくる。
《でっでぎゅーん!ででんっ!ぎゃーっ!》
三階まで上がると、絶叫も地獄ライブの音も遠ざかった。三階は、まじめな研究発表とか、手芸部とかのおとなしい発表が配置されている。孫の文化祭を見に来たおじいさん、おばあさん、小さなお子様にも安心のフロアだ。一階には地獄がある。念のため。三階建てならぬ、三界建ての校舎だ。うまいこと言った。
ヴェロキラプトル三島の肉食文芸部も三階にある。
「よっ」
ドアを開けて、会場の教室に入る。
「に、二宮!?ど、どうしたの?」
「来ちゃ悪いか。いちおう、絵本の提供者だぞ」
「わ、悪く…ないわよ。ってか、朝から来なさいよ。絵本、持って来たんだから関係者でしょ。サボってんじゃないわ」
いつの間にそんなことになったんだろう。まぁ、いいや。お言葉に甘えて、ちょっと居座らせてもらおう。文芸部の展示教室は小さな子供に本の楽しさを教えるというコンセプトだけあって、床にはカラフルなスポンジのタイルが敷き詰めてある。なかなか快適だ。
真奈美さんは、早くも教室の隅に体育座りをして絵本を読んでる。「イワンはじめてのたび」わちふぃーるどだ。真奈美さんの行動は本当に小さな妹が出来たみたいだ。つい頬がゆるむ。
むぎゅぅー。いたたたたた。緩んだところをつねられた。
「なにすんだ三島!」
「気持ち悪い笑い方するのやめなさい。子供が怖がるわ。地域安心メールに二宮が笑うなどの事案が発生してるって出されるわよ」
安心ってなんだろうね。
教室には、他にも数人のリアル子供が思い思いに寝そべったり、座ったりしながら本を読んでいる。先日、本屋で遭遇した地味な一年生女子も読み聞かせをしてる。
「けっこう盛況だな」
「そうね。託児所みたいになっちゃったけど…」
「いいじゃないか。ひょっとしたら、あの子たち、ここであの本を読まなかったら、一生読まないかもしれないぞ」
絵本って、わりと内容が理解できるようになってから、読まなくなるまで数年しかない。あっという間に小学生になって、中学年になるころには絵本を読むのが気恥ずかしくなってしまう。そう思うともったいないよな。絵本、いいお話がたくさんあるからな。
「…二宮ってさ…」
三島が言いよどむ。
「……い、いいお父さんになりそうだよね。バカだから彼女も出来ないと思うけど」
彼女どころか嫁がいる。二次元の。そう抗議しようと思って、横に立つ三島を見ると、あさっての方向を向いていた。後ろ姿しか見えない。明快な聞く耳持ってないアピール。抗議受け入れ断固拒否姿勢だ。
三歳くらいの女の子が、真奈美さんの読んでる絵本の表紙に惹かれたのか、ちょこちょこと歩いていく。真奈美さんが縮こまる。あ、本を横取りされた。真奈美さん、三歳女児に敗北。お兄ちゃんとしては、ちょっと見過ごせない。
「三島。紙とハサミとマジック貸して。あとセロテープも」
「…?どうするの?」
そういいながら、三島は受付の机の中から要求のものを出してくれる。紙を二つ丸く切る。丸く切った紙に逆Uの字の線を描き入れる。それをセロテープで真奈美さんの前髪につけてやる。真奈美さんは前髪で顔が全部隠れているから、これだけでニコニコお目目のついた、ゆるキャラの出来上がりだ。子供も怖がらない。
ゆるキャラ化した真奈美さんに、さっきまでの勝者である三歳児がなついて一緒に絵本を読み始めた。一安心。真奈美さんがいつもの声で、絵本を読み聞かせる。真奈美さんは同年代から見るとじれったいほどゆっくりと話す。絵本を読むときそれはちょうどいいペースになっていた。
ぴろりん。
制服のポケットの中で携帯電話がメール着信を告げる。美沙ちゃんからお誘いだ。真奈美さんが落ち着いていることを確認して、いそいそと教室を出る。三島もいるし、大丈夫だろう。
一階に下りると、受付が美沙ちゃんから男子二人に代わっていた。行列の長さが明らかに短くなっている。現金なやつらめ…。
「お兄さんっ」
後ろから、制服姿の美沙ちゃんに肩を叩かれる。
「あれ…」
「どうしたんです?」
小首を傾げるしぐさも可愛い。
「…いや、さっきまで…」
「あ。ひょっとしてゴスロリの方が良かったですか?」
「…えっと、まぁ」
千分の一くらいまで薄めた控えめな返事をする。実際のところは、ゴスロリ美沙ちゃんを至近距離で見たくてしかたがない。
「…あれは女子の受付衣装なんで…また、今度。でも…街中じゃ着れませんよね。あれ」
秋葉原という町なら大丈夫だと思うよ。
ゴスロリ衣装のブラック美沙ちゃんも可愛かったが、制服姿も安定の可愛さだ。文化祭に浮かれる学校の廊下を並んで歩く。
「きゃ」
横の教室から、お祭りジャンキーになった男子がすっとんできて、危ういところで美沙ちゃんがよける。ふらふらっとしたところを、反射的に肩を掴んで支えた。
うわー。肩、細ぉー。
こんな華奢な肩なのにDカップとかいろいろバランスが間違ってる。かわいすぎる。
「…お、お兄さん?」
「うわ。ごめん」
あわてて手を放す。つい浮かれて忘れていた。エロゲバレ、エロ漫画バレして、変態認定されているのだった。せめてあれが姫騎士アンジェリカでさえなければ…。覆水盆に還らずとはこのことだ。
「な、並ぶと、ちょ、ちょっと歩きづらいですよね…。廊下、狭くなってるから」
さらさらのボブカットの髪からのぞく耳が赤い。変態に不意に触られて、怖かったのかもしれない。
「…そ、そうだね。ごめん」
信用を取り戻すというのは難しい。ことあるごとに謝ってしまう。
「あ、あの。歩きづらいし…て、てて、手、つなぎましょう」
美沙ちゃんの意外な提案に神に三度感謝をささげてから、おずおずと美沙ちゃんの手をとる。
手をつないで美沙ちゃんと二人で文化祭を回るとか、夢じゃなかろうか。
美沙ちゃんと一緒だとなにもかもが楽しい。真面目で人気のない『郷土の歴史の研究』みたいな出し物まで楽しい。
「へぇー。意外と、気がつかないところに歴史のあるものってあるんですね…」
美沙ちゃんがキラキラした垂れ目を向けてくる。指差す先は、なんてことのない橋の欄干の写真だ。この付近には川が流れている。今はコンクリートの土手が整備され、国道の大きな橋がかかっている。その川の土手の内側に今でも小さな橋があるらしい。外側の土手は水害に備えるための土手で、本来の川はもっと川幅が狭く、昔はその小さな橋のすぐそばまで畑が広がっていたらしい。大正時代にかけられたという、その橋が写真とともに紹介されていた。
「大正時代かぁ~」
美沙ちゃんがつぶやく。
「大正時代といえば、はかま姿の女学生だよね」
俺の中の大正時代は『ハイカラさんが通る』だ。
「じゃあ、お兄さんも詰襟の学生服に帽子をかぶらなくちゃ。二人でここに行って、そんな格好で写真を撮ったらタイムスリップしたみたいな写真が撮れますね」
くすくす笑う美沙ちゃんが可愛い。
「美沙ちゃんは、プラタナスの木陰で詩集とか読まなくちゃ」
「ちがいますよ。詩集を読むのはお兄さんで、私は木陰から覗いていて、お兄さんに気づかれると走り去っちゃうんです。それで、落ちてる手紙に気づかないと駄目です。あと、お兄さん今すぐ眼鏡買ってきてください」
なにやら美沙ちゃんの中でストーリーが出来上がりつつある。
「そ、そう?」
「それで、戦争が始まるとお兄さんは海軍の軍艦に乗って行っちゃうんです」
あまり望ましい展開じゃないストーリーが出来上がりつつある。
「ラストは、お兄さんの戦友だったという人がうちに訪ねてくるんです」
「どうみてもバッドエンドだ…」
「そうですね。昭和とか大正とかのラブストーリーって、たいてい悲劇ですよね」
「そういえば、そうだね」
「…あ、ちょっと待っててください」
美沙ちゃんが、そう言ってトイレに小走りに駆け込む。俺も行ってこよう。
用を済ませて、手を洗い廊下に出て少し待つと美沙ちゃんも出てきた。
「おまたせー」
どちらからともなく、元通りに手をつなぐ。校舎を出て、校庭の屋台でクレープを二つ買う。ストロベリーとバナナ。ベンチに腰掛けて食べる。
「お兄さんの、バナナ?」
「ん」
「ひとくち、ちょうだい」
「ほい」
何気なく美沙ちゃんが食べる。間接キスだな、と思ったが、あまりに美沙ちゃんが普通なので指摘するほうが自意識過剰すぎる。
「食べる?」
ストロベリーの方が差し出される。手を放す気配がない。そのままかぶりついていただく。
「ふふふ…」
美沙ちゃんの含み笑い。
「なに?」
「…なんでも、ありませーん」
そう言って、くすくすと笑いながら投げ出した足を遊ばせる。きれいなほっそりとした脚だ。あらためて、自分の隣に天使がいることに気づかされる。美沙ちゃん…。
「お兄さん…」
天使の笑顔を真顔に変えて、美沙ちゃんがまっすぐにこっちを見る。
「うん?」
「楽しいですか?」
「そりゃ、もう…最高にね」
美沙ちゃんと文化祭をまわるのが楽しくないわけがない。
「幸せですか?」
「…幸せだ…よ」
幸せってなんだろう。難しい質問だなと思いながら、今感じてる高揚感と小さな興奮を幸せという言葉で表す。
しばし、二人無言になる。
妙な気恥ずかしさに落ち着かなくなったとき、美沙ちゃんの携帯が鳴った。
「あ、ごめんなさい。真菜から…」
「いいよ。出て」
ぴっ。
《美沙っち!早く戻るっすー!交代っすー!》
隣に座る俺にも聞こえてるぞ。大声過ぎる。
「ごめーん。今、戻るねー」
そう言って、美沙ちゃんが電話を切る。
「時間かー。大変だね」
「はい。あ。ゴスロリ着ますよ。見ます?」
「もちろん」
ベンチから立ち上がって校舎に向かう。手はまたつながれていた。
「じゃん。どうです。お兄さん?」
教室に作られた更衣室から出てきた黒ゴスロリ美沙ちゃんがスカートをつまんで、くるりと一回転して見せる。最強に可愛い。絶対領域と、肘まである手袋と袋状になった袖の間の二の腕が威力絶大だ。
「うお…か、かわい…」
言葉が出ないレベルの可愛さだ。周りの男子も声をなくしてる。
「あ、そっか。この格好だと…えと…」
指を顎にあてて、美沙ちゃんが考え込む。
「『ふふふ。私の闇の装束はいかがかしら。我が魂の伴侶よ』…とか?」
小首を傾げて、ウインクする。くぁああいいいー。
「にーくんも、やるっすか?」
萌え悶える俺の背後から、同じくゴスロリ…こっちは真っ赤なゴスロリ衣装に白いバラがあしらってある衣装を着た妹が声をかけてくる。
「俺は、どういう衣装になるんだ?」
「真菜、やめて…」
美沙ちゃんが、心底嫌そうな声を出す。
「あれっす」
妹の指差す先には、ゆっくりと全身をヘビのようにくねらせる血まみれの男がいた。血はもちろん絵の具かなにかだろうけど…。それを差し引いても酷い。衣服は革のパンツ。それに素肌に直接つけたサスペンダーだけだ。口にボールギャグを嵌め、革のバンドを顔に何重にも巻いて目隠しをしている。顔が分からないのは本人のためにはいいことだろう。両手には爪のようにドラムスティックが縛り付けられている。
かほぉー。ぷはぁー。かほぉー。ぷはぁー。かほぉー。ぷはぁー。
規則正しい呼吸音が気持ち悪さを倍増させる。
うわ。西洋の貴族のようなうやうやしいお辞儀をした。キモチワルイ!
「絶対やらないからな」
「そーすか。そろそろ代わってやらないと、九条っちも可哀想っす」
九条くん。本当にうちの妹が申し訳ない…。
「ところで、あれも脅かし役で出てるのか?」
「出てますよ。クライマックスで天井から両足縛られて降ってきます。そのまま宙吊りで唸りながらドラムを滅多打ちするんです。目がふさがってるから、でたらめに手を振り回すんですけど…。迫力満点です!」
そりゃあ、迫力満点だろうよ。
「思いついたのは、お前だな」
妹を見る。
「もちろんっす!」
親指を立てるな。褒めてない。
(つづく)
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妄想劇場41話目。師走って忙しいですね。タイピングする時間もとれません…。今回からちょっと溜めの回です。
最初から読まれる場合は、こちらから↓
(第一話) http://www.tinami.com/view/402411
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