軽音部での演奏が終わり、一年一組の営業に戻ろうと教室の前に来た。一夏が一組に入ろうとしたとき
「じゃじゃ~ん、楯無お姉さんの登場で~す。」
「・・・・・・・・・・今度は何をするつもりですか、楯無さん。」
「相変わらず弄らせてくれないね。怒らないでよ~。」
「よく『怒らないからホントのこと言って』って言って結局怒る話ありますよね。」
「あるある・・・・て話逸らさない!一夏君にやってもらうのは演劇だよ!」
「演劇・・・・・」
なんだかまともそうに聞こえるけど嫌な予感するな。
「あの~、先輩?一夏を連れて行かれたらちょっと困るんですけど・・・・」
ん!シャル、聞いてたんか。でも・・・
「シャルロットちゃん、あなたも来なさい。」
「ふえ!?」
「おねーさんがきれーなドレス着せてあげるわよ~?」
「ド、ドレス・・・・」
・・・・たまにこの人、言霊使いじゃないかと思うのは気のせいか?
「じゃあ・・・・・・・ちょっとだけ・・」
あ、落とされた!
「ん~。素直で可愛い!じゃあ、箒ちゃんとセシリアちゃんとラウラちゃんもゴーね。」
「「はっ!?」」」
聞き耳を立てて様子を窺っていた三人が同時に驚きの声を上げた。
てか窺うんなら鏡使えよ。
「全員ドレス着せてあげるから。」
「そ、それなら・・・・」
「まあ、付き合っても・・・・」
「ふ、ふん。仕方がないな・・・・・」
この人は言霊使いの称号を得ているよ、絶対!
「ちなみに演目は何ですか?」
「ふふん。」
楯無はばっと扇子を片手で開く。『追撃』と扇子にでかでかと書かれていた。
「シンデレラよ。」
「一夏君、ちゃんと着た~?」
「・・・・・・・・・・」
「あれ~、返事がないね~。」
「・・・・・・・」
「入るよ~。じゃ~んぎゃあっ!」
突如楯無は驚きの声を上げる。そこには切り取られた腕、足、胴体が吊るされていた。
「驚きました?」
楯無は声のするほうを振りむっくとそのには王子様の服装をしている一夏が立っていた。
「も~、驚かさないでよ~。」
「お返しです、部屋に入ったときの。」
「恐すぎるよ!子供泣くよ!」
「すいません。インパクトとスパイスが必要と思って前々から作ってました。」
「これ何で作ったの!」
「新聞紙。」
「それにしてもすごいね。こんなもんまで作れるなんて。」
「それより時間は大丈夫なんですか?」
「おお!私としたことがついうっかり。そろそろ始まるよ。」
演劇の場所に使われているのは第四アリーナ。客席は満席だ。
「あの・・・・台本とか読んでないですけど大丈夫で?」
「大丈夫。基本的にはこっちからアナウンスするから、そのとおりに話を進めてくれたらいいわ。もちろんアドリブでね。」
まあ・・・・この人のことだからなんかするけど・・・行くか。
ブザーが鳴り響き、証明が落ちる。
するとセット全体にかけられた幕が上がりアリーナのライトが点灯した。
「むかしむかしあるところにシンデレラという少女がいました。」
よかった、まともだ。
一夏は安心して舞踏会エリアに向かう。
「否、それはもはや名前ではない。幾多の舞踏会を抜け、群がる敵兵をなぎ倒し、灰燼を纏うことさえいとわぬ地上の兵士たち。この序らを呼ぶにふさわしい称号・・・・・それが『灰破り姫』!」
それは舞踏会じゃなくて武闘会だ!て、ことは・・・・・・
「今宵もまた血に植えたシンデレラたちの夜がはじまる。王子の冠に隠された隣国の軍事機密を狙い、舞踏会と言う名の死地に少女達が舞い踊る!」
色々ツッコミ入れたいんだけど、どこからがいい?矛盾した点?それともこの演劇?それともあなた?
「とりゃあああああああああ!!!!」
「!」
いきなり雄叫びを上げ現れたのは白地に銀のあしらいが美しいシンデレラ・ドレスを身にまとった鈴だった。鈴は中国の手裏剣こと飛刀を一夏に投げつける。
「ふっ。」
「それをよこしなさい!」
「死んだらどうする。」
「死なない程度に殺すわよ!」
「矛盾!今矛盾を言った!」
鈴は再び飛刀お一夏に向けて突き刺せてくる。一夏はポケットに入っていた爪楊枝で鈴の攻撃を止める。
「なっ、バカな!」
一夏は鈴に足払いをする。
「きゃっ!」
そのとき、ふと赤い線がふよふよと泳いでいるのを見つけた。
「やばっ!」
一夏はすぐさま物陰に隠れた。
絶対セシリアだよな・・・・・困ったな。多分サイレンサー付けていることだ。こっちからじゃ・・・・
一夏は身を低くして移動した。
が・・・・・
「あはは、どうも。」
対弾シールドを持っているシャルロットがいた。
「・・・・・・・・・なんで武器持ってないんだ?」
「そこかな言うとこ。」
「で、なんで皆して俺に攻撃して来るんだ?」
「そ、それは・・・・・その・・・・・・」
「?まあいいけど・・・っ!借りる!」
一夏はシャルロットの持っていた対弾シールドを手に取り狙撃を凌ぐ。一夏はポケットからピンの刺さった小型の円柱状の物体を出す。
「一夏、何それ?」
「目を閉じてろ!」
一夏はピンを向き狙撃してきた大体のポイントにそれを投げる。一夏はしゃがむと同時に激しい閃光が舞台裏の闇を照らす。
「きゃあっ!」
一夏が投げたのは閃光弾だった。
「じゃ。」
「い、一夏~。」
脱兎の如く逃げ出す一夏。そこへ黒髪と銀髪のシンデレラが現れた。
「一夏、そこに直れ!」
「王冠は私がいただく!」
箒は日本刀、ラウラはタクティカルナイフを二本。二人は同時の両サイドから攻撃してくる。一夏は床に両手を突けそれを軸にし両足を横に広げ回転し凌ぐ。
「お前ら恐いな。」
「貴様が言うな!」
そのときのアナウンスが流れる。
「さあ!ただいまフリーエントリー組の登場です!みなさん、王子の王冠を目指して頑張ってください!」
「ヴぇ!」
地響きと共に数十人のシンデレラが出てきた。現在進行形で増えてきている。これ地味に恐いよ。子供もおじいちゃんおばあちゃんも泣くよ!
「織斑君、おとなしくしなさい!」
「私と幸せになりましょう、王子様!」
「薄い本の資料として一緒に!」
今なんか不女子の声が聞こえたぞ!
一夏はジャンプし、五メートル先の舞台のセットの上に立つ。
「見つけたぞ、一夏!」
箒は一夏に切りかかってくる。一夏は爪楊枝を使い止める。
「どうして止められる!」
「気にするな!」
「「「「気になるよ!」」」」
その時一夏は片足を引っ張られる。
「!」
「こちらへ。」
一夏は転げ落ちる演技をした。
「着きましたよ。」
「・・・・・・」
セットの下をくぐり抜け更衣室にやってきた。
「どうしてこんなことを、『亡国企業』さん。」
「っ!貴様、どうしてわかった!」
「あのパンフ、上手く偽造してたみたいだけど誤字脱字が結構あったよ。まあそれ以前にあのパンフ自体が問題だったけど。」
「どういうことだ?」
「だってそれ、三ヶ月前につぶれた会社だろ、事実上。」
「何を言っている。この会社はISの武器を専門とした会社だぞ。」
「だが経営上不利になり今はIS適正審査の方に移行してるよ!」
「ふっ。まあいい。名前と一緒にいいこと教えてやる。私の名はオータム様、ついでに貴様を誘拐したのは・・・・・『亡国企業』だよ!」
その言葉と同時にオータムはISを展開し一夏に接近する。
が、一夏は後ろに周り蹴りを入れる。
「ぐあっ!貴様!」
オータムは四本足状の機械を一夏のISの胸部につける!
「何だ!」
「喰らえ!」
とてつもない痛みが一夏を襲う。
「ぐああああああああああああ!!!!!!」
「あはっはははっはっは、いいこと教えてやる。こいつは〈剥離財〉って言ってな、ISを強制解除させるやつなんだよ。生きてるうちに見れて良かったな。
「!!」
なん・・・・・だと・・・・・俺が・・・・ISを・・・力を失う!
「・・・・・もんか・・」
「あん?」
「もう・・・・あんな悲劇を繰り返させるものか!」
その時白式のエナジーコアが光り輝く。
「なんだ!」
「これは!まさか!」
一夏もオータムも驚いた。〈剥離財〉がネクサスのエナジーコアの光により木端微塵に破壊された。
「貴様、一体何をした!」
「おれはただ願いを口にしただけだ。それにこいつが答えた。」
「くっ!ならもう一度!」
オータムは予備の〈剥離財〉を白式の胸部に当てるが反脱がない。
「まさか耐性が出来たとでも言うのか!」
「そう考えた方がいいわね!」
「・・・・見ていたなら助けてくださいよ。まあわかっていましたけど。」
そこには楯無の姿があった。
「けっ、一人増えたところで!」
「お前、バカか。」
「なに!」
オータムが一夏の方を振り向いた瞬間、一夏がオータムにパンチを喰らわす。
「ぐあ!」
「一気に方をつける!」
一夏は両手をクロスさせ上に広げる。
「それは降参の構えか?」
「いいや、お前が敗北する構えだ、はあっ!」
一夏は腕をL字型に作り、オーバーレイ・シュトロームを放つ。
「ぐああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
オータムのISはボロボロになった。
「降参しろ。」
「まだだ!」
プシュッっと圧縮空気の音を響かせオータムはISから離れる。
「まずい!」
一夏は楯無を庇う。オータムのISは光り輝き爆発する。
「大丈夫ですか?」
「ええ、でも逃げられたみたいね。」
「多分しばらくは来ないでしょう。」
「あら、わかっているのね。」
「ISのコアは慣れるまでに時間が掛かるのは常識ですし。」
「ふふ、ところでこれはな~んだ。」
「・・・・・勝者の景品。」
「わかってた?」
「王冠目当てなところだけは。で、景品はなんだったんですか?」
「織斑君と一緒に部屋で暮らせる権利。」
「不女子への生贄ですか!」
「まあまあ。でも私が手に入れたからしばらくよろしくね☆」
今日は疲れるな。
Tweet |
|
|
3
|
1
|
追加するフォルダを選択
ライブが終わり一難一組に戻ろうとする一夏を楯無が呼び止める。