ウルトラマン達の力を借りて、自分がいる宇宙から飛び出したゼロ。今彼がいるのは、宇宙の外に存在する超空間、マルチバース。マルチバースにはたくさんの宇宙が泡粒のように浮かんでおり、宇宙から宇宙へ移動するための特殊空間の役目を果たしている。
すると、ウルトラゼロブレスレットから一筋の光が発され、ある方向を示した。その方向には、今自分が飛び出してきた宇宙がある。セブンが言っていた帰る時の道しるべとは、このことだったのだ。
一方、ダークロプスの動力源からは、全く別の方角に向けてマイナスエネルギーが照射されている。
「あれだな。」
自分が目指すべき目的地を確認したゼロは、その宇宙に向かって突撃した。ゼロは余裕だったが、ダークロプスの動力源は宇宙の壁を越える途中で壊れてしまう。
そして、遂にゼロは宇宙の壁を抜けた。
「ここが…別の宇宙…」
一見自分がいた宇宙と変わらない宇宙。しかし、彼はたどり着いたのだ。もう一つの宇宙、アナザースペースへと。
一方、次元の穴を通り抜けた皇魔は、ダークロプスを送り込んできた元凶を叩くべく、アナザースペースを漂流していた。
「これだけ広くてはな…」
三日後には必ず戻ると大見栄をきったものの、宇宙全体を捜すとなれば時間がかかりすぎる。その上、この姿も長くはもたない。ヤプールとの戦いからさらに力を回復し、以前よりは強くなった。この姿を維持できる時間も六時間まで延びている。だがウルトラマンと違って、彼はどこにいてもエンペラ星人の姿を維持できる時間が変わらないのだ。地球では三分しか変身できないウルトラマンに比べて、それより長く戦えるという利点はあるが。まぁ、皇魔のエネルギーはプラズマスパークではないのだから仕方ない。
「む?」
と、皇魔は自分に近付いてくるものに気付いた。とてつもなく巨大な宇宙船である。
「何だ?」
少し気になった皇魔は、テレパシーを使って宇宙船の状態を調べてみた。皇魔もウルトラマンと同じで、この姿ならばテレパシーが使えるのだ。
で、宇宙船の様子はというと……。
「コンピューターが弾き出したデータによりますと、あれはかつて風都に現れたエンペラ星人ですじゃ。」
「何ぃ!?」
「もう駄目だ…おしまいだ…!!」
宇宙船にはブロリー達が乗っていた。皇魔に気付いたのは科学者で、次に気付いたブロリーは驚き、ベジータは早速ヘタレている。
「何を寝言いってる!」
「駄目だ!勝てるわけがない!」
ピッコロが怒るが、ベジータは態度を変えずに首を横に振るばかり。悟飯は悟空に尋ねた。
「どうしますお父さん?」
「…妙だ。あいつからはあの時のような悪意を感じねぇ…パラガス」
悟空はパラガスを呼び出す。
「カカロット。一体どうしたというのだ?」
「ちょっとあいつにコンタクトを取ってみたらどうだ?もしかしたら…」
「…よかろう。おい」
悟空の頼みを了承し、ならず者達を見るパラガス。そして見た方角では、
「クズ!うざいから黙れ!」
「ふおおっ!!」
「落ち着け化け物!」
「うるさい!」
「ぐわぁぁぁぁ!!」
ブロリーがベジータとピッコロを血祭りに上げていた。
「ブロリー!落ち着け!船が壊れる!」
「できぬぅ!!」
「どあっ!!」
ブロリーを止めようとして失敗するパラガス。
「こりゃてぇへんだ!悟飯、ブロリーを止めっぞ!」
「はい!」
「悟空さん!僕も!」
「行くぞ悟飯!」
「無視しないでください!」
悟空と悟飯はトランクスを無視しながら、ブロリーを止めに入る。
(…)
テレパシーを使ってこれらの行為を把握した皇魔は、関わり合いになりたくないと思ったので、速度を上げて引き続き探索を行う。
「待ってぇーっ!!話だけでも聞いてぇーっ!!」
ボロボロになったパラガスを無視して。
惑星アヌー。
アナザースペースに存在する惑星の一つで、現在開拓が進んでいる場所。
ここは今、襲撃を受けていた。
「レギオノイドだぁぁぁぁ!!!」
空には宇宙戦艦が飛び交い、戦艦の上にはダークロプス。そして地上には、両手に巨大なドリルを装備した、レギオノイドというロボットが徘徊している。レギオノイド達はドリルや、目から出る光線を使って、開拓キャラバンを攻撃していく。
「レギオノイドから襲撃を受けています!開拓キャラバンはもう駄目です!!」
「みんな逃げろぉぉぉ!!全ては終わりじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
救難通信を行う女性と、避難を促す老婆。レギオノイドの一体が、それらを無情にも踏み潰そうとする。
しかし、途中で攻撃を受けたため、レギオノイドは動きを止めてしまった。
蚊が刺す程度にも効いていない回転式ビーム咆の攻撃。それでも、レギオノイドの注意を反らすには十分。レギオノイドは自分を銃撃してきたホバー艇、ハスキーをホバー移動で追い回しながら光線で攻撃する。
ハスキーに乗っているのは、ランとナオの兄弟。
「追い付かれるぞナオ!」
レギオノイドを銃撃した兄、ランは、ギリギリの運転をする弟のナオにもっとスピードを上げるように言うが、
「わざとだよ兄貴!」
ナオには意図があった。
向かう先にはあったのは火山。ハスキーは切り立った崖から飛び降り、レギオノイドもぴったりとくっついて追いかける。これこそ、ナオの計画だった。
「おっちろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「マジかよぉぉぉぉぉぉ!!!」
ハスキーはマグマに落ちるスレスレで上昇し、レギオノイドは巨体ゆえに方向転換ができず、マグマに落ちて爆発した。火口の入り口に着陸したハスキーから、ナオとランが出てくる。
「やった!」
勝ち誇るナオ。
だがその直後、もう一体のレギオノイドがドリルを回転させ、地面から出てきた。
「「うわああああああああああ!!!」」
ランとナオはその余波に吹き飛ばされ、ナオが火口に落ちかける。だが、ギリギリでランがナオの手を掴み、最悪の事態だけは避けた。
「兄貴!血が!」
それでも長くはもたないだろう。飛ばされた際に、ランは負傷してしまったのだ。先にマグマに落ちていったハスキーが、派手に爆発する。
「大丈夫だ……すぐ引き上げてやるからな……!!」
ナオを勇気づけるランだったが、もうランにナオを引き上げる力は残っていない。次にレギオノイドが繰り出したドリルの一撃で、再び飛ばされる兄弟。空中を舞う間、どうにかランはナオを抱き締め、されど絶望的な状況に、心の中で叫んだ。
(誰かっ…!!!)
「はっ!?」
探索を続けるゼロは、宇宙の闇の彼方に一つの光を見た。
「呼んでいる…俺を!!」
ゼロは助けを求めるその声を聞き届け、速度を上げる。
どうにかこうにか皇魔と和解したブロリー達。皇魔はブロリー達もダークロプスを送り込んできた相手を捜していることを知り、協力を承諾した。
「!?」
そして、皇魔も一筋の光を見る。
「何だあの光は!?」
いても立ってもいられなくなった皇魔は、最大速度で光へと向かう。宇宙船より皇魔の方が遥かに速く、どんどん引き離される。
「もっとスピード出ないのか?」
ブロリーは科学者に尋ねた。
「無理ですじゃ。皇魔様は速すぎですじゃ」
「チッ!」
「うわへへ!!」
ブロリーは科学者を殴った。
「気をお静めください。」
「全速力で追え!」
パラガスが命令を出し、宇宙船は皇魔を追った。
「「うわああああああああああ!!!」」
マグマの中へと真っ逆さまに落ちていくランとナオの兄弟。
しかし次の瞬間、光が飛んできて二人を救い、安全な場所へ優しく置いた。
光へ向かって進撃するレギオノイド。だが、光は光線を放ち、レギオノイドを一撃で撃破。ランとナオが見守る中、光が消えて、正体を現す。
光の正体は、ゼロだった。
「ダークロプス!」
しかし、ナオはダークロプスとゼロの容姿がそっくりであるため、勘違いしてレーザーガンを構えてしまう。
「待てナオ!彼は助けてくれたんだ!」
ランはナオにレーザーガンを降ろさせる。ランには、ゼロがダークロプスと全く違う存在だということがわかっていた。ゼロが自分の呼び声に応えて来てくれたのも。
「ぐっ…!」
「兄貴!」
ランに駆け寄るナオ。ゼロもランを心配して、手を伸ばそうとする。
その時、ゼロのカラータイマーが赤く点滅を始めた。
「まさか…もうエネルギーが…!?」
エネルギー不足に陥り膝をつくゼロ。ウルトラマンのエネルギー、プラズマスパークの正体は太陽エネルギーだ。太陽さえあれば、ウルトラマンはエネルギーを補給することができる。しかし、このアナザースペースはゼロにとって未知の宇宙。この宇宙の太陽では、エネルギーの補給ができないのだ。
「兄貴!しっかりしろよ兄貴!」
ランを揺さぶるナオ。そんな弟に、兄は自分が着けていた首飾りを託す。
「…何やってんだよ!二人で探すって約束しただろ!?」
それは昔、兄弟二人で決めた、とある聖具を見つけるための鍵。
「…お前が見つけるんだ。ナオ」
自分の死期を悟ったランは、ゼロを見つめる。
「弟を……ナオを頼む……」
ゼロは無言で頷き、光となってランへと降り注ぐ。
ランはナオが顔を覆うほどの光に包まれ、やがて光が消えた時、怪我一つない元の姿を取り戻していた。
「兄貴!」
目を覚ましたランに抱きつくナオ。
「よかった!さっきの巨人が何かしてくれたんだよね。」
ナオは兄が無事であったことに、心底安堵する。
だがそれもつかの間、レギオノイドが三体現れた。
「レギオノイド!」
ナオは自分達の開拓キャラバンを襲った憎い敵を睨み付ける。
しかし、それさえもつかの間だった。
目の前に剣を持った黒い巨人が出現し、レギオノイドを三体とも、一刀両断に斬り捨てたのだ。
「何、あいつ…」
巨人の出現と強さに驚くナオ。ただ、ランだけは巨人を射殺さんばかりに睨んでいる。
やがて、黒い巨人がこちらに気付いた。そして、赤黒い炎に包まれたかと思った次の瞬間には、巨人が青年の姿に変身して、こちらに向かってきている。青年の正体は、無論、皇魔だ。
「あの…」
話しかけようとするナオ。だがランはナオを後ろへ隠し、皇魔に問い詰めた。
「貴様…何だ今のは!!なぜエンペラ星人に変身していた!?」
「変身していたも何も、今のが余の本来の姿だ。」
「生きていたのかエンペラ星人!!」
淡々と答える皇魔に、ランは怒る。ナオはランに尋ねた。
「ラン兄貴、この人知ってるの?」
「…俺は君の知っている兄貴じゃない。」
「えっ?」
「俺は光の国のウルトラ戦士、ウルトラマンゼロなんだ。」
「ウルトラマンゼロ?」
「さっきの巨人、あれが俺だ。黒いやつの前に出てきたな」
ラン、いや、ゼロは皇魔に注意を払いつつ、ナオに説明した。皇魔は納得する。
「ほう、貴様は光の国の者か。どうやら、その男と融合したらしいな?それなら余を知っているのも頷ける。」
「…なぜ俺達を助けるような真似をした?伝説では、人助けをするような性格じゃないって聞いてるぜ!」
皇魔はゼロの話を聞き、悟った。
(ああ、このゼロとかいうウルトラマンは、余が転生する前にいた世界とは別の世界から来たのか)
でなければ、ウルトラマンがここにいることに納得がいかない。彼が元いた宇宙では、ウルトラマンが滅んでいるのだから。それだけに、皇魔は自分がウルトラマンの滅亡について言わなくてよかった、と思う。言ったら間違いなく話がこじれていただろう。
「余は貴様が知っているエンペラ星人とは違う。余は別の世界から来たのだ」
「何だと!?」
ゼロは信じられなかった。何が信じられないかといえば、エンペラ星人がこんなに友好的なことにだ。
「こちらに敵意はない。信じろ、とは言わんがな。殴りたければ、殴っても構わん」
皇魔は両手を上げ、無防備になる。これは、ウルトラマンを滅ぼしてしまったことへの贖罪。自分自身への罰だ。
しかし、ゼロは殴らない。
「どうした?なぜ殴らんのだ?貴様の仲間を大勢殺した、仲間の仇だぞ?」
「…俺はお前を信じたわけじゃない。だが、俺にはわかる。お前は、何かのために戦っているってな。じゃなきゃ、わざわざ別の宇宙まで来るはずがない。」
「…保留、ということか。」
「とりあえずはな。」
互いにこの場では戦わないことを誓ったゼロと皇魔。ナオは、ゼロに一番聞きたいことを訊く。
「…ラン兄貴は…死んだの?」
ランの身体は今、ゼロが使っている。なぜゼロがランの身体を使えるのか?もしかしたらランは死んだのではないか?ナオはそう思っていたのだ。
「…君のお兄さんは今、ここで眠ってる。」
ゼロはしゃがんで、ナオと同じ目線まで合わせ、ナオの肩に手を乗せる。その上で、ゼロは自分の胸を親指で差した。
「全てが終わったら、きっと元に戻る。信じてくれ」
「…」
ナオは答えない。
「信じてやれ。」
皇魔はナオに言った。
「未知なる者との融合…それは互いの合意がなければできん。貴様の兄は、ゼロを信じて融合したのだ。貴様は兄が信用した相手を信じられんのか?」
「…」
ナオは考える。そして、答えを出した。
「…信じるよ。ラン兄貴が信じたんだもん」
「…ありがとう。」
ゼロは信用してもらえたことに礼を言う。
「名乗るのが遅れたな。余は皇魔。エンペラ星人では呼び辛かろう?」
「僕はナオ!よろしく、ゼロ、皇魔!」
皇魔の名乗りを聞き、二人と握手するナオ。と、ナオがランから託された首飾りが光った。
「あっ、光った。こんなこと初めてだ…」
「その石は?」
ゼロは訊く。
「バラージの盾の欠片だよ。『バラージの盾は宇宙を守る』…僕らの宇宙に伝わる伝説さ」
ナオはランと一緒に、バラージの盾と呼ばれる聖具を探す約束をしていたのだ。
「バラージの盾は、僕らの宇宙を守ってくれるはずなんだ。あの恐怖の皇帝、カイザーベリアルから…」
「…カイザー…ベリアル…」
ゼロにとって、ベリアルという名前は聞き覚えがある。
ウルトラマンベリアル。少し前にゼロが倒した、悪のウルトラマンだ。ウルトラマン達の力の源であり、光の国の象徴であるプラズマスパークエネルギーコア。その力を得ようとしたベリアルは失敗し、レイブラッド星人と強制融合させられ、悪の戦士となった。一時期エネルギーコアを奪って光の国を壊滅させたが、ゼロを始めとした生き残りのウルトラマン達が力を合わせ、打倒。そう、倒したはずなのだ。ゼロは嫌な予感を覚えた。
二人はレギオノイドとの戦いをやり過ごすため、ナオの誘導に従って近くにあった洞窟に隠れる。皇魔がこの宇宙に来た理由を聞きながら、洞窟を探索するナオとゼロ。
と、三人は巨大な緑色の鉱石を見つけた。少し色がくすんではいるが、ダークロプスの動力に使われていたものによく似ている。
「わぁ…すげぇ!」
ナオは感嘆した。どうやら、彼はこの鉱石が何なのかを知っているらしい。ゼロが訊く。
「この鉱石は?」
「エメラル鉱石だよ。僕らはこの鉱石からエネルギーを取り出して使ってるんだ。こんなに大きいのは珍しいよ」
それを聞いて、皇魔はエメラル鉱石というらしい鉱石に触れた。
「…ダークロプスに組み込まれていたのはこれだな。」
触ってエネルギーを感じたところ、感じられるエネルギーがダークロプスの動力と同質のものだったようだ。
その時、
ギュィィィィィィン!!!
巨大なドリルが天井を突き破ってきた。彼らを捜していたレギオノイドが、遂に三人を見つけたのだ。
「下がれ!ここは余が…」
ナオとゼロを下がらせる皇魔。だが、
「「うわっ!」」
二人の足元に穴が開き、落ちていってしまう。
「ナオ!ゼロ!」
驚き慌てて穴に飛び込む皇魔。
間もなくして穴は閉じ、三人が消えた場所から、何かが浮上した。
「これは…」
「宇宙船だ!」
レギオノイド達を強引に振り切って浮上した宇宙船の窓から、外の状況を見る三人。
宇宙船は、そのままどこかへワープした。
宇宙船がワープしたのは、アヌーから少し離れた宇宙。内部を探索することにした三人は、ゼロとナオ、皇魔の二手に別れる。
「あ、開いた。」
ゼロ、ナオグループが少し進むと、コックピットのような部屋に到着。中にいたのは、長めの座席に腰掛けてこちらに背を向けている一人の女性。ひどく怯えているらしく、荒い息継ぎをしていた。
「あんたが助けてくれたのか。」
「俺はナオ。こっちは兄貴のゼロだよ。ありがとう!」
自己紹介と礼を同時に言うゼロとナオ。だが女性は怯えたままで、こちらを向こうともしない。不審に思って近付く二人。
次の瞬間、部屋の入り口のすぐ近く、両脇に設置されていたポールから電撃が放たれ、それが枷となって二人を捕らえた。
「記憶消去、開始します。」
どこからか聞こえた、機械的な声。その直後、ゼロとナオに新たな光が浴びせられる。
「うああああ!!」
「うううう!!」
自分の中から何かが消えていく感覚。耐え難い苦痛に、
「ナオ!!」
「兄貴!!」
二人は互いの名を呼ぶことで耐えようとした。
「やめてジャンバード!!」
ずっと黙っていた女性は、何者かに向かって光の照射をやめるように言う。
「しかし…」
渋ったのは、先ほどの機械的な声。どうやら、声の主の名はジャンバードというらしい。
「命令です!!解除するのです!!」
女性は再度、記憶消去の解除を言い渡す。それが届いたのか、光が止まり、拘束も解除された。
「大丈夫ですか!?」
駆け寄る女性。
「てめぇ!!」
しかし、いきなり拘束されたうえに記憶まで消されそうになったこと、ナオまで巻き込んだことに怒りが治まらないゼロは、女性を突き飛ばす。女性は崩れ落ちながら、それでも座席に手をかけることで転倒を防ぎ、二人に謝った。
「ごめんなさい……ひどいことして……」
「ゼロ!ナオ!どうかしたのか!?」
そこへ飛び込んで来る皇魔。ゼロが説明した。
「こいつ、俺達の記憶を消そうとしやがった!」
「何だと!?」
警戒する皇魔。ジャンバードは女性に言う。
「助ける代わりに記憶を消し、どこかの星に置いてくるという約束です。今姫様の身に何かあれば…」
「わかっています。でも…」
ジャンバードに姫と呼ばれた女性。ゼロとナオが尋ねる。
「お前一体何者だ!?」
「さっきから変な声が姫様って言ってるけど!?」
「変な声とは何だ!!私はエスメラルダ王家に代々支えし鋼鉄の武人、ジャンバ「エスメラルダ!?じゃあ、エスメラルダ星のお姫様!?」人の話は最後まで聞け!!」
変な声と侮辱されたことに怒ったジャンバードは自分の名を名乗るが、女性の生い立ちに驚いたナオに邪魔されてまた怒る。
女性の名はエメラナ・ルルド・エスメラルダ。惑星エスメラルダの第二王女だ。
「…私の星もカイザーベリアルに襲われました。王宮を守っていたミラーナイトに、私一人このジャンバードに転送されて…」
エメラナはこれまでのいきさつを話す。
「もう誰もいない…父上も…姉様も…民達も…」
「じゃあ、今までずっと一人だったの?」
ナオが訊き、エメラナは頷いた。
「じゃあ、僕が友達になるよ!」
「…えっ…?」
ナオは記憶を消されそうになったにも関わらず、エメラナと友達になると言い出した。
「本当に…私とお友達に…?」
「うん!」
ずっと一人で絶望の中、怯えながらすごしていたエメラナ。そんな彼女に対し、ナオはその孤独を和らげる決意をしたのだ。ナオが差し出した手に、エメラナは初めて笑顔を見せる。
「兄貴と皇魔も!」
「おう!」
「うむ。」
四人で握手をする一同。
ナオの首から提げられたバラージの盾の欠片が、暖かい光を放っていた。
ゼロと皇魔が別の宇宙から来たと聞いたエメラナは、ジャンバードとともに映像を交えてカイザーベリアルの説明をすることにした。
モニターに映されたのは、エスメラルダの大地を踏み荒らして行進する、異形の軍団。
その先頭に、黒い巨人がいた。
「…間違いない。こいつはあの時のベリアルだ」
ゼロは映像を見て、巨人の正体がウルトラマンベリアルであると確信する。
「…黒いウルトラマン…?」
皇魔は我が目を疑っていた。ウルトラマンは基本的に赤、銀、青のいずれかの体色の者しかいないので、黒いウルトラマンなど聞いたこともなかったからだ。エメラナは説明する。
「惑星エスメラルダは、その全てが純度の高いエメラル鉱石でできた星。ベリアルはそれを使って、大軍団を結成しています。」
ベリアルはエスメラルダから大量のエメラル鉱石を搾取して軍団を作り、全宇宙を掌握するための略奪と殺戮を繰り返しているのだ。
「ベリアルの居場所を教えろ!今から行って倒してくる!」
ゼロはいても立ってもいられなくなり、ベリアルを倒しに行こうとする。
「落ち着け!」
皇魔がゼロを押さえ、ジャンバードとナオが言った。
「ベリアルの居場所を知ることは、我々にはできない。」
「相手はベリアルだけじゃないんだよ!ものすごい数の手下がいるんだ!モニター見てわかるだろ!?」
「…ベリアルは、俺と同じ種族だったんだ。」
ゼロが、自分が倒したベリアルについて説明する。それを聞いて皇魔は思った。
(まさか光の国から裏切り者が出るとは…)
光の国に、警察はない。それは、犯罪が起こらないからだ。それくらい国民達の心が一つに統一されているのである。ベリアルはそんな光の国の、ただ一つの例外なのだ。
しかし、過去を顧みても仕方ない。問題は、どうやって手下を全滅させ、ベリアルを倒すか。いかにゼロがかつてベリアルを倒したとはいえ、いかに皇魔が北斗神拳を使えるとはいえ、この数を一度に相手にするにはさすがに分が悪い。
そこで、ナオはその方法を思いついた。
「バラージの盾だ!バラージの盾を見つければ!」
バラージの盾。計り知れない力を秘めた聖なるアイテム。それを手に入れることができれば、あるいは……。
「さっき言ってた伝説?」
「同意できません!そんな不確かなものを…」
「やってみなきゃわからないだろ!?」
ナオは怒る。皇魔は、自分の意見を言った。
「…伝説。それに賭けてみるのも面白い」
「皇魔?」
エメラナは皇魔を見る。
「例え不確かであろうと、少しの可能性でもあれば実行するべきだ。」
「俺もそう思う。何より、俺はナオを信じたい。」
皇魔に同意するゼロ。
「兄貴、皇魔…」
ナオは二人を見た。
「…お願いジャンバード。私も彼らを信じてみたいのです」
「…」
ジャンバードに頼み込むエメラナ。ジャンバードは答えない。
やがて数秒後、宇宙船ジャンバードは加速した。
「ありがとうジャンバード!」
「…仕方ありません。姫様のご命令なら」
エメラナは礼を言う。
「おおそうだ。ジャンバード」
皇魔は思い出したようにジャンバードに頼む。
「何でしょうか?」
「通信をしたい相手がいる。今から言う周波数に合わせて欲しい」
周波数を伝える皇魔。モニターに現れたのは、
「おお、やっと連絡されましたか!」
パラガスだった。皇魔はパラガスから、連絡先を聞いていたのだ。
「誰?」
ナオは皇魔に訊く。
「連中もダークロプスを追って来たらしい。それより、この船に合流してもらいたい。」
「かしこまりました。」
パラガスが言った直後、
「わあっ!!」
「どあっ!!」
悟飯が飛んできて、彼は一緒に吹き飛んだ。
「うわあああああ!!!」
「ふおおっ!!!」
「ぐわああああああ!!!」
「があっ!!!」
その後も、悟空、ベジータ、ピッコロ、トランクスが吹き飛びながらモニターを横切る。
「血祭りだぁ!!」
最後にブロリーが走って横切った。
「…聞こえておらんかもしれんが、あとで合流地点を送る。」
皇魔は通信を終える。
「……大丈夫なのか?」
「……やる気はある連中だ。」
ゼロから訊かれ、目をそらす皇魔。と、皇魔はナオに尋ねた。
「ところで、バラージの盾についての情報はどこで手に入れるのだ?」
バラージの盾を探すために、少しでも多くの情報が必要だ。ナオは笑顔で答える。
「それを知ってるのは、炎の海賊さ!」
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次回、炎の死亡フラグブレイカー登場!!
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わかってると思いますが、しばらく皇魔はエンズに変身しません。ライダーなのに……。