No.512988

SAO~黒を冠する戦士たち~ 第百四十六技 あの時の返事

本郷 刃さん

第百四十六話です。
前回の後書きで甘いと書いておきながら、あまり甘くないことに気が付いた!?

どうぞ・・・。

2012-11-28 10:07:08 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:10248   閲覧ユーザー数:9425

 

 

 

 

 

 

 

 

第百四十六技 あの時の返事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

ボス戦が終わり、俺達はひとまずボス部屋の外に出た。

 

モンスターがポップしないところであり、結晶も使えるのでとりあえずは安心だ。

 

ちなみにこの場にいるのは俺、アスナ、リズ、エギル、黒衣衆、風林火山、黒猫団といった面々だ。

 

ハクヤは未だに眠っており、リズは膝枕をしたままだ。

 

「目を覚まさないな…」

 

「ホントに大丈夫なのかよ…」

 

「ギリギリ助かったとはいえ、死に直面したんだ。HPがレッドになることとは全然違うはずだ…」

 

心配そうに話すエギルとクラインに俺が言葉を掛ける。

 

みんなが不安そうな表情を浮かべている。俺も心配ではあるが、こればかりは信じることしかできない。

 

その時だった…、

 

「うっ……」

 

「っ、ハクヤ!」

 

「ぁ…リ、ズ……?」

 

ハクヤが目を覚まし、みんなから安堵の息が漏れる。

 

「気分はどうだ?」

 

「……微妙。生きているのが不思議に思えるよ…」

 

聞いてみると脱力しきったハクヤの返答。ボス戦の時の冷徹さはなくなり、いつものハクヤに戻っている。

 

からかって空気を和らげようと思ったが、やめておくか。

 

「でも、良かったよ。ちゃんと意識を取り戻して…」

 

「心臓に悪いんだよ…」

 

安堵するように言葉を漏らすアスナとシャイン。

 

特にシャインは俺達の兄貴分としての責任感もあったのだろう。かなりホッとした様子だ。

 

「ふぅ、それにしてもどうして俺達が戦っていることが分かったんだ?」

 

「実はね、迷宮でキリトくん達の探索をしていたフリックさんが知らせてくれたの」

 

気になっていたことを俺が訊ねてみるとアスナが答えてくれた。なるほど、彼が俺達を助けてくれたのか。

 

「今度会った時は礼を言わなきゃな」

 

「そうだぜ~。ま、ハクヤも目ぇ覚ましたことだし、俺達は先に街に戻るぜ」

 

「俺も戻らせてもらおう。店に戻らないといけないからな」

 

エギルとクラインは風林火山のメンツを連れて≪転移結晶≫で帰っていった。

 

「僕達も帰るよ。凄く疲れたし…」

 

「それじゃあね」

 

ケイタとサチも一声掛けて、黒猫団と結晶を使い帰っていった。

 

「さて、俺らも帰るわ。全員でここに居るのもあれだろ?」

 

「そうですね、疲れているかもしれませんが…キリト君。お願いできますか?」

 

「ええ、任せてください。アスナ、いいよな?」

 

「うん。わたしもリズが心配だし…」

 

シャインが帰る旨を伝えるとティアさんが頼んできたのでアスナ共々了承しておいた。

 

これで俺とアスナがハクヤとリズにつくことになった。

 

「……すまないな…」

 

「ごめんなさいね。お先に失礼するわ…」

 

「二人とも気にしないように、ゆっくり休んでくれ…」

 

「僕もシリカに伝えておきますね。皆さん無事だったって」

 

「ボクもそろそろ工房に戻ります。みんなの装備も整えないといけないっすから」

 

ハジメとカノンさんが申し訳なさそうに言ったので大丈夫だと声を掛け、

ヴァルも今回の件を心配していたシリカに伝えるため、ルナリオは表に戻ることを決めたようだ。

 

皆がそれぞれの帰るべき場所に帰っていった。

 

この場に残ったのは俺とアスナ、ハクヤとリズの四人だ。

 

俺とアスナは二人に気を遣い、少し離れた場所で休憩することにした。

 

「ふぅ……「良かった…(ぎゅっ…)」、アスナ…」

 

壁に背を預けた俺に、アスナが抱きついてきた。俺も彼女の背中に手を回して抱き締める。

 

俺達は触れ合えなかった二、三日の温もりを確かめ合うように抱き締め合った。

 

キリトSide Out

 

 

 

ハクヤSide

 

キリトとアスナはこちらに背を向けるようにして抱き締め合っている、当然だと思う。

 

キリトは死ぬ覚悟があっても、アスナを残して逝ってしまうということには不安があったはず。

 

アスナは大切な人の身を案じていたはずだ、二人とも不安で堪らなかったんだ。

 

少しずつクリアになっていく思考の中、リズの顔が上にあって、

自分の頭が柔らかいものの上に置かれていることに気付いた……リズの、膝枕…っ!?

 

「ご、ごめん、すぐに「(ぽたっ、ぽたっ…)」…リズ?」

 

リズに膝枕されていたことに気付いた俺はすぐに退こうとしたが、彼女の瞳から流れる涙を見て動けなくなった。

 

「バカ……心配、かけて…」

 

「ごめん…」

 

言い返せない。そうだ、心配を掛けてしまったんだ。自分が大切だと思うこの娘に。

 

「だけど…あたしも、心配……かけちゃった…」

 

「そうだね…」

 

今度は自分がモンスターに突っ込んだことに対して、そう言ってきた。

 

リズのレベルと今回のモンスターの能力を考えると、

もしクリティカルポイントに攻撃を受けていたら、リズは一撃でやられていたかもしれない。

 

それは彼女自身もわかっているんだろう。

 

「でもね……友達が目の前で、いなくなっちゃうほうが……怖かった…」

 

「うん、分かるよ…」

 

俺だってそうだ。最近まではみんなバラバラで行動していた、仲間の死を見たくないから。

 

それでも、キリトの一件があってやっぱりみんなで一緒に居た方がいいと思うようになった。

 

それならお互いに守り合えるから…。

 

「でも、それよりも……ハクヤが、死んじゃう、かも…って…おも…(グスッ)」

 

自分の馬鹿さ加減に呆れてしまう。大切だと思う人、好きな人をなんで泣かせているのか。

 

なにが不安だ、なにが時間をくれだ。そんなもの、ただの言い訳だ。

 

大切なら、最初から一緒に居ればよかったんだ。

 

「俺も、怖かった……自分が死ぬことよりも…リズが死んだらって思ったら、そっちの方が怖かった…。

 大切なものを守れないことの方が、よっぽど怖いんだ…」

 

「……うん…」

 

「だから、リズを護らせてほしいんだ。大切だから、好きだから、キミを側で守りたいんだ。

 あの時の返事……俺も好きだよ、リズベット…」

 

俺は想いの全てをリズにぶつけた。

 

「ぁ……あたしも、ハクヤが好き…大好き…」

 

俺の想いにリズは涙を浮かべながらも、満面の笑顔で応えてくれた。

 

ハクヤSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

少しばかりシリアス感があったと、自分で思います。

 

甘かったといえば甘かったのでしょうが・・・微妙ですねw

 

次回はまたシリアス感が出て、さらにその次は甘くなりますw

 

それでは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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