「今から十分後に任務を開始する」
隊長らしき男は険しい表情で部下達を見た。誰もが同じ様に口を真一文字に紡いでいる。
彼らはこれから重大な任務に取りかかる。それは一度経験した者なら誰もが口を揃えて「二度と受けたくない」と言ってしまうほどに苛烈で凄まじいものだ。
「………………」
男達の中で一人、怪訝な表情を浮かべている者がいる。
彼だけはこの任務に疑問を抱いていた。なぜ皆一様にこの任務を嫌うのだろうか。やる事といったらたかが――
「おい、新入り」
「何ですか」
隣に立っていた先輩の男が突然話しかけてきたため、思考が途切れてしまう。
「一人だけとぼけた顔しているが、甘く見ない方がいい」
「いや、しかしこれからやるのって――」
「お前が想像しているより遥かにこの任務は辛い。そうだな……広大な森の中に敵兵が一人隠れている。その敵兵は森の中だろうと素早く移動することができ、おまけにこちらの位置を大体だが把握できている。そんな相手をこれだけの人数で捕まえる。簡単に出来ると思うか」
「出来るんじゃないんですか。素人じゃないですし」
先輩が肩をすくめた。
「スペシャリストでも困難だ。この前の同じ任務で終了までにかかった時間は、三十六時間」
「そ、そんなにかかったんですか」
男の顔が引きつる。
「これでも早い方だ。最悪の場合、一週間はかかった」
男は先ほどまでとは違い、険しい表情で男を見つめた。
「甘い考えは捨て、常に最悪の状況を想定しろ。この任務はそれを容易く上回る」
「わ、わかりました」
返答と同時にアラームが鳴る。
「時間だ。それではこれより――」
「またしても脱走したお嬢様のハムスターの捜索を開始する! 範囲は『この街全て』だ!」
男はそれを聞いて絶望した。
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即興小説で作成しました。お題「哀れな任務」制限時間「30分」