No.509286

僕は天使と出会う 第二章

やる夫は天使と出会うのリメイク版
プロローグ
http://www.tinami.com/view/330614
第一章
http://www.tinami.com/view/366303

2012-11-17 18:57:00 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:497   閲覧ユーザー数:492

 僕が連れてこられた場所は、「麻倉道場」と書かれていた場所だった。

「あの……」

 と僕が戸惑いの顔を見せると彼女は悪戯っぽい笑顔で答えた。

「健全な身体に健全な精神は宿る……みたいなことは言わないよ。ただ、せめて少しは身体を鍛えておいた方がいいと思うからさ。焼け石に水かもしんないけど」

 なんでも、受け身を習っておいた方が、怪我をしにくいということらしい。後は、あまり期待してないことらしいが筋肉をつけるためとか。

「流石に短期間で筋肉をつけるのは無理があるから」

 と苦笑いしながら言った。

 と、こんな感じで緩やかな雰囲気で道場内に入って行った。

 道場の中はとても張りつめた空気が流れていた。さっきまでの緩やかな空気がどっか飛んで行ってしまい、僕はかなり緊張した。

 ただ、真穂ちゃんはそんな空気の中でもお構いなしでどこか緩かった。

 道場はとても大きく、幾つもの部屋に分かれていて、剣道やっている部屋もあれば柔道の部屋もある。空手もあれば、なんか良く分からないような格闘技もある。更には日本舞踊なんかもあるみたいだ。

 僕たちはそのどの部屋にも入らず、廊下の奥へと進んでいく。

 しばらくすると、他の部屋と比べると少し狭い部屋に行きあたった。

「ここよ」

 そう言って真穂ちゃんは僕を中へと促す。

 中に入ると、そこには一人の女性が正座していた。さっきまでもかなり空気は張りつめていたが、彼女の周りの空気はそれ以上に張りつめていた。その緊張感は、寒気を感じるくらいだ。

 ふと、彼女の前に目をやると、そこには丸太が置いてあった。良くテレビなんかであるのは藁をまとめたものだけれども、木を切っただけの丸太が置いてあるだけだ。

 僕がもう一歩踏み出そうとした、その瞬間だった。

 一瞬「ダン!!」という凄まじい音が部屋中に響いた。何が起こったのか一瞬分からなかったが、それは彼女の踏みこんだ音だったのだろう。彼女の右手には刀が握られており、そして丸太は見事に断ち切られていた。一連の動作が殆ど見えなかったのは、それだけ彼女の動作が凄まじい速度だったのだろう。

 しばらくすると、体中から汗が噴き出してきた。にもかかわらず身体の芯はどんどん冷えていく。身体は動かすことができない。

「ふぅ……」

 彼女がそう息を吐くと、緊張が一瞬にして解けた。

「相変わらず凄いわね、メイ」

 と彼女に真穂ちゃんは声をかけた。さっきまで緩い表情をしていた彼女も、どこか感心したような顔をしている。

「このくらい当然よ」

 とメイと呼ばれた少女が答えた。

「紹介するわ。この子が新堂進くん。メイに鍛えてもらいたいと思ってる子よ」

 そう言ってメイさんに僕を紹介した。

「それでこっちが麻倉明、とりあえず、あなたの師匠に当たる人間よ」

 そう言って、僕をメイさんに紹介した。

「麻倉明です、よろしく」

「新堂進です……よろしく……お願いします」

「今日から私が教えるのは、あくまで自分自身の身を守るための技よ。決して誰かと戦うための技じゃない。いいわね?」

 メイさんはそう言って、僕の顔を見た。

「大丈夫です。僕に誰かを殴る勇気なんてありませんから……」

 僕は弱弱しい声でそう言った。後ろでマホちゃんのあきれるような溜息が聞こえてきたけれども、しょうがない。僕はそういう人間なんだから。

「んじゃ、明。後はよろしく」

「あら、真穂は稽古していかないの?」

「私にはちょっとやらなくちゃならないことがあるの。進くんは稽古が終わったら私を待たないで帰っていいからね」

 そう言って彼女は道場から出て行ってしまった。いったい何を考えているんだろう? やらなくちゃいけないことってなんだろう?

 そう考えている間に、メイさんがニヤニヤしながら僕の方を見てきた。

「進くんだっけ? まったく色男ね。どうやって真穂を落としたんだか」

「べ……別に僕と真穂さんはそんな関係じゃ……」

「ふ~ん」

 メイさんは相変わらずニヤニヤしながら、それでいてすっと構えてきた。

「一応手加減するけど、それでも結構痛いから気を付けてね」

 


 
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