いつだったか。
列に並んだ。
先なんて見えない。
どこに並んでいるのかもわからない。
「いつまで並んでいるの?」
見知らぬ女の子が声をかけてきた。
まっ白いワンピースを着ている。
とてもかわいい。
「わからないよ、でも並んでいるんだ。」
僕は答えた。
「何で並んでいるの?」
女の子は首をかわいらしくかしげた。
「わからないよ、でもみんな並んでいるんだ。」
僕は答えた。
「みんな並んでいるから並ぶんだ。」
女の子は言った。
「わからないって言ってるだろう。そんなこと考えたら負けなんだ。」
僕は答えた。
「じゃあ、列をはずれてみたら?」
女の子は僕の手を引っ張る。
「ちょっと、やめろって、」
僕は焦った。ここで列をは離れたら負けだ。
負ける。
なにに?
世間に?
「別にいいでしょ。なら、わたしはまけてるの?なにに?」
彼女は言った。とてもきれいな笑顔で。
僕から見て彼女は負けているとは思えない。
「そうか、それは僕が決めることだ。」
僕は列を離れてみた。
そして一番前にあるものを見た。
それは僕から見て、とてもくだらないものだった。
横にいる彼女の笑顔のほうが、何倍いいかわからない。
横で彼女は笑っていた。
それだけで、僕は満足だった。
Fin
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五分小説です。
読みやすいように書いていますので、ぜひ読んでください。