「お、あれは?」
「どうしたの?」
「いや、前方から俺らの軍の馬が来ているな、と」
皆さんこんにちは蒼です。あの後、何も起こらずに進軍できており、もうそろそろ、此方の動きを察知され、迎撃の賊が出てくる頃だと思っていた矢先に、前方から俺らの軍の騎馬兵が来ました。あれは……
「「秋蘭からの伝令か(ね)」」
一応、前軍での総指揮者は春蘭なんだが、ここで副将としての秋蘭の名前がすぐに出てくるあたり、さすが春蘭というか、なんというか……
「申し上げます!!前方で義勇軍らしき集団が黄巾党と思われる賊と交戦中。前軍は現状確認のためその戦いに参戦するとのこと。尚援軍の必要なし。通常の行軍速度で来られたし。後、李高様の『依頼』はこの交戦で遂行できる。とのことです」
「そう、分かったわ。秋蘭がそう言うのなら大丈夫でしょう。アナタは少し休んだら前軍に合流するまで中軍に入りなさい」
「は」
「蒼、後軍に伝令を」
「あいよ」
と言いながら、近くにいた兵士に指示をだす。
うん、話を聞いていたからか、手で合図するだけで行動している。
「それにしても、その義勇軍には優秀な人材がいるのね」
「そうなのか?」
「ええ、今前軍がいる場所で出てくる迎撃の為に出てくる数はたかが知れているわ」
「ん、そうか?俺の記憶が正しけりゃ、少し無理すりゃそれなりの数が出せるし、その砦は重要拠点なんだからかなりの数がいるだろう。それを考えると、義勇軍の数にもよるが、かなり無理な戦になるんじゃねえか?」
「それは、一般の兵を基準として考えたらよ。賊ならそれほどの訓練も受けていない寄せ集め。そんな即時展開なんて芸当が出来る集まりではないでしょう。それに、もし多くても、この場所なら……」
そう言いながら、笑みを深める華琳。あの笑みは面白いモノが見ることが出来そうな笑みだ。
が、何が面白いのかが、分からない。口ぶりからして場所に関連してあるんだろうが……俺はどちらかというと感覚で戦を動かす方だからな。
そう思いながら、頭の中に地図を開き、場所を確認する。って、へえ。これはなかなか……
「あら、気づくのが遅かったわね」
「ふん、言ってろ。俺は感覚で動かすんだ。自分が戦に参加するっていう感覚がないと勘も働かん」
「相変わらず、暇さえあれば気を抜くわね。いい加減それを直しなさい」
「しっかりやるべきことはしてる。文句は言わせねえよ」
「まあ、いいわ。今のところは忙しくなればそれに比例してやってくれるしね……
それじゃあ、春蘭達に合流するわよ」
「あいよ」
こうして、俺たちは軍を進めた。目指すは交戦地帯付近にあり、なおかつ伏兵を潜めることが出来、寡兵でもって、多数の敵と戦える谷間へと。
SIDE 愛紗
「はあぁ!!」
「がっ」
「っち、何やってるテメエら!!こっちの方が数は多いんだ!!早いとこやっちまうぞ!!」
「そんなことはさせん!!」
そう言いながら士気を上げようと周りを鼓舞する者を優先的に倒し続ける。
作戦の内容は敵を少数で谷間に誘い込み、不意を衝いて谷間に潜んでいる伏兵と共に一気に倒す。
元々、数が少なく、実戦経験もままならない我々が、実績を上げ、名を売るための唯一と言っていい策。
「愛紗、このままじゃ保たないのだ」
「っく、諦めるな鈴々。もうすぐ、ご主人様たちが来る」
あの朱里と雛里の策ならばもうすぐ来るはずだ。それまでに耐える。それに……
「あの男を越えなければ……」
一瞬、脳裏に宿る、紅き槍を片手に不敵に笑いながら敵を蹂躙していく槍兵。あの男ならこの状況でも自分たちだけで敵を倒そうとしながらも、犠牲を抑えかつ、策の通りに行動するだろう。まあ、彼の部下もいるだろうからそう難しいことではないかもしれないが……
そして、一つ、確信に近い考えがある。あの男と話をした時に感じたこと、それは……
「桃香様と、ご主人様の理想が難しいものになってしまう」
あの男、李高は私たちの敵となる。いや、もしかしたらもうあの時に敵になるのは決まっていたのかもしれない。
だからこそ、この戦いに勝つ。
「愛紗、来たのだ!!」
鈴々の言葉と同時に周りから味方がなだれ込んでいる。
それを見て、周りの賊たちは浮足立っている。
「今だ!!皆の者反撃を開始しろ!!」
それを見計らい、囮の役目をになっていた部隊に反撃の命令を出す。
これで此方が有利になる。
一応、相手の退路を開けておくように、指示を出しつつ、私自身もそこで戦う。もし、退路がなく、やけくそになって此方に大きな被害が出れば駄目だからだ。
このように、被害を抑えながら、幾度か戦えば御主人様の「天の御使い」の肩書も相まって、名が売れるようになるだろう。それに朱里と雛里もいる。彼女たちに戦場全体を見てもらえれば、私と鈴々がより、戦場に集中できる。
そのような未来図を描きながら、終わりを向かいかけているこの戦いを終わらせるために……
「申し上げます、黄巾党に我々以外に攻撃を加えている一軍が出てきました」
「なに?」
「旗は、官軍の旗を揚げず、『曹』と『夏』です」
おそらく、この辺りを統治している領主の軍か。もしかして、我々の手柄を横取りするつもりなのか?いや、それよりも。
「全員に伝えろ。新しく参戦した軍は敵ではない。味方だ。……しかし、此方を攻撃した場合はそれは敵だ。いいな」
「は」
「あ、後、それはご主人様達は知っておられるのか?」
「いえ」
「ならば……おい、そこの者さっきの内容は聞いていたな。お前は此処を離れてそのままご主人様達に報告をしろ。残りの者は此処から移動し、参戦した軍の近くで戦う。いいな」
「「「応!!」」」
この戦いは勝つ。問題は参戦してきた軍。そこに手柄を盗られること。
だが、そんなことはさせん。ご主人様と桃香様の支えになる関雲長がいる限り、出来るだけのことはさせてもらおう。
SIDE END
SIDE 秋蘭
「秋蘭、まだ、駄目なのか?」
「ああ、もう少し待て姉者」
目の前で戦いが行われている。義勇軍と思われる一団は見たところ不利に見えるが、うまく谷間に誘い込んでいるように思える。
今、ここで我らが加勢すれば、義勇軍を助け、我らの手柄になるが、そのようなこと華琳様が望まない。
ここが我らの主戦場ではない。それなのにここでいたずらに兵を消費するわけにはいかない。だが、ここに参戦しなければならない。
「夏侯淵将軍、紅蓮団全20名、準備が完了いたしました」
「そうか、参戦はもう少し後になるが、何時でもいい心構えをしておいてくれ」
「御意」
そう言いながら、元の位置にもどる黄巾党の姿をした紅蓮団の兵を見る。
あの戦に参加して、どさくさに紛れて、紅蓮団を黄巾党に潜入させる。これを為すために。
個人的に蒼が華琳様に頼まれたのだろう。
「おい、秋蘭、向こうは戦いの佳境に入ってしまったぞ」
さっきまでの思考を片隅に押しやり、少し焦りながら言う姉者に反応しつつ、戦場を見ると義勇軍と思われる軍が、谷間に誘い込んだ黄巾党をそこに隠してあった伏兵と共に攻め立てていく様子があった。
これで、この戦いはあの義勇軍の勝利という形で終わるだろう。
「秋蘭」
「ああ、そろそろ我等も行こうか。ただし、姉者……」
「相手の手柄を取らぬように、だろう。それぐらいは分かっている」
「ふ、ならいい」
「全軍、今から義勇軍の助太刀を行う!!我ら曹軍の強さを敵味方問わず、見せつけてやれ!!」
「「「おおーーーー!!」」」
姉者の叫びと共に一気に退却を始めている黄巾党に突撃をかける。数を減らすというのもあるが、潜入しやすいように混乱させるためにも。
それにしても、義勇軍の旗なのだが『劉』はいいのだがもう一つはなんだ?丸の中に十字。そのような旗は見たことがない。
まあ、この戦いが終わり、華琳様たちと合流できたら義勇軍の将たちと会うことになるだろう。その時に分かればいい。
そう思いながら、姉者の子守……もとい、背中を守るために弓を引いた。
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いやー、身内だけといってもTRPGは時間がかかりますね。おかげで先週言っていたペースがさっそく崩れました。やっぱり、クトゥルフ関係の神にお願いはしないようにします。お願いした結果は衝動的に書いたISの小説を一話を一日で書き上げてしまいました。まあ、出すかどうかはまた落ち着いたら決めるつもりです。
それよりも恋姫を書きたい!!今の悩みです。ホントorz