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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第二十九話 長谷川家の末娘

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-11-14 06:56:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:42891   閲覧ユーザー数:38136

 ユサユサ…

 

 ん?

 

 ユサユサ…

 

 何だろう?

 

 ユサユサ…

 

 誰かに揺すられている様な……

 

 ユサユサ…

 

 「……ん………」

 

 俺は身体を誰かに揺さぶられているのを感じ、静かに眠りから目覚める。

 上半身を起こし、『ふわあ~』と大きく欠伸をひとつかいて身体を『ん~~っ』と伸ばし完全に意識を覚醒させてから俺を揺さぶっていた犯人を捜す。が、すぐベッドの横に犯人は居た。

 

 「……………………」

 

 薄紫色の長髪に紅い瞳で、俺やシュテル達よりどう見ても年下の幼い女の子が俺の顔を見てはにかんだ笑顔になる。

 

 「おはよー」

 

 そして目覚めた俺に朝の挨拶をしてくれる。

 

 「うん、おはようルー」

 

 俺を起こしてくれたのは同居人であり、現在さくらさんの代わりに保護者代理人になってくれているメガーヌさんの一人娘、ルーテシアだ。

 時計の方を見ると目覚ましが鳴る少し前。起きるには少し早いが問題は無いか。

 パジャマの裾が引っ張られる。

 

 「おにーちゃん」

 

 「ん?どうした?」

 

 「だっこ」

 

 両手を広げて俺に抱っこをせがんでくる。

 

 「いいけどお兄ちゃん、先に服を着替えたいから少し待っててくれるかな?」

 

 「うん」

 

 俺の言葉に大きく頷き、ベッドから少し離れてこっちをジーっと見る。

 さて、着替えますかね。

 俺はタンスの中から半袖、半ズボンを出してパジャマを脱いでいく。

 ルーテシアがこっちを見ているが気にしない。幼女相手に恥ずかしがる事なんて無いし。

 パパッと着替えてパジャマは洗濯籠の中に入れておく。

 

 「お待たせルー」

 

 「わたし、ちゃんとまってたよ」

 

 「うん、ルーは良い子だね」

 

 しゃがんで目線を合わせながら頭を撫でてやるとルーテシアは『えへへ』と笑いながら俺の手を堪能している様だった。

 少しの間、撫でてあげてからルーテシアが再び両手を広げ

 

 「だっこして、だっこ」

 

 と言ってきたので俺はルーテシアの両脇に手を入れて優しく持ち上げる。

 抱き上げたルーテシアは俺にギュウッと抱き着いてくる。

 

 「じゃあ、リビングに行くからなー」

 

 「はーい」

 

 元気良く返事したのを確認して俺は部屋を出た………。

 

 

 

 ルーテシアを抱き抱えたままリビングに向かう途中でキッチンの方から物音が聞こえてきた。

 

 「???もう誰か起きてたのか?」

 

 いつもは俺が一番早起きなんだが誰かがキッチンにいるようだ。

 リビングに行く前にキッチンに顔を出すとメガーヌさんが食材を使って朝食を作っている最中だった。

 

 「ママ!」

 

 メガーヌさんの姿を確認したルーテシアがメガーヌさんを呼び、メガーヌさんは一旦手を止めてこちらに向く。

 

 「あらルーテシアに勇紀君。おはよう、二人共早いのね」

 

 「おはよーママ」

 

 「おはようございます。俺、いつもはこのぐらいの時間に起きてますから」

 

 「そうなの?」

 

 「はい。メガーヌさんこそ今日は早いですね」

 

 「ええ、自分でも意外なくらいに早く起きちゃって。それでたまには私が朝食を作ろうと思ってね」

 

 『シュテルちゃんやディアーチェちゃんばかりに任せる訳にはいかないもの』と言って再び朝食を作り始める。

 ここに居て邪魔になってはいけないので俺とルーテシアはリビングの方へ移動した。

 抱っこしていたルーテシアをゆっくりと下ろし玄関のポストに新聞を取りに行こうとする。

 

 「おにーちゃん、どこいくの?」

 

 「ん?新聞を取りに行くだけだよ。すぐ戻るから」

 

 玄関のドアを開けポストの中にある新聞紙を手に持ってリビングに戻る。

 ソファーに座り、新聞紙を広げて読み始める。

 

 「おもしろいの?」

 

 新聞を読んでる俺にルーテシアが聞いてきたので俺は視線を動かさずに答える。

 

 「んー、面白い事なんてほとんど載ってないぞ。世間の情報を知るために呼んでるだけだから」

 

 「へー」

 

 感心してる様な返事に聞こえるがおそらくルーテシアは意味が分かってないと思う。まあ2歳前なんだから当たり前だよな。

 一通り新聞の内容を読み終えると俺はテレビの電源を入れる。チャンネルを適当に変えていくがまだ朝なのでニュース番組しかやってない。

 そんなニュース番組をただボーっと眺めている俺の太ももの上にルーテシアの頭が乗っかってきた。

 

 「えへへ~♪」

 

 ルーテシアはソファーの上で仰向けで寝転がり、自分の頭を俺の太ももに乗せたまま何かを期待する様にキラキラした瞳で俺を見る。

 

 「よしよし」

 

 ルーテシアの意図を察している俺は頭を撫でてやる。

 

 「にゅ~~♪」

 

 満足そうに眼を細めるルーテシア。そんなルーテシアを撫でていると今起きたらしいシュテルとユーリがリビングにやってきた。

 

 「「おはようございます」」

 

 「シュテルにユーリか。おはよ」

 

 「しゅてるおねーちゃん、ゆーりおねーちゃん、おはよー」

 

 俺とルーテシアは二人に挨拶する。

 

 「…二人共、本当に仲が良いですね」

 

 「ルーは初対面の頃からユウキに凄く懐いてましたよね」

 

 シュテルとユーリが口々に言う。ユーリの言う通り、この家でメガーヌさんとルーテシアが住むと決まった日にルーテシアと自己紹介を済ませたが何故かメッチャ懐かれてしまった。

 まあ別に嫌な気はしないし、むしろ妹が出来たみたいで少し嬉しかったりする。

 シュテル達も可愛がっているし、もう長谷川家の末娘と言っても過言ではない。

 

 「わたし、おにーちゃんだいすきだもん」

 

 「ありがとうなルー」

 

 ルーテシアの頭を撫でてやりながら返事する。

 

 「~~~♪」

 

 大層ご満悦そうなルーテシア。そんな俺とルーテシアの姿をジーっと見る二人。

 

 「「(膝枕してもらいながら撫でてもらえるなんて…ルーが羨ましいです)」」

 

 シュテルもユーリもこっちを見たまま動こうとしない。

 

 「二人共、座らないのか?」

 

 俺が言ってからようやく二人は動き出した。俺の左にシュテル、右向きに寝転がっているルーテシアの隣にユーリが腰を下ろす。

 あれ?シュテルの髪の毛…

 

 「???どうかしましたか?」

 

 俺が見つめているのを不思議に思ったのかシュテルが尋ねてくる。

 

 「シュテル、後ろ向きで俺の前に座ってくれるか?」

 

 「何故です?」

 

 「髪の毛、少し寝癖がついてる」

 

 シュテルの後頭部に若干寝癖が残っていて髪の毛がやや乱れている。俺は王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から櫛を取り出す。

 

 「何故王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から櫛が出て来るのですか?」

 

 「レヴィも髪の毛がボサボサな状態でリビングに来る時があるんでな。その時は梳いてやってるんだよ。いちいち部屋に櫛取りに行くのも面倒だからこっちに収納してる」

 

 アイツがシュテル達よりも早起きする時は何故か髪の毛がボサボサなんだよな。いつもは寝癖なんてつかないのに。

 

 「折角だしシュテルの髪も梳いてやるけど、どうする?自分で髪を整えるか?」

 

 「いえ、梳いて下さい。お願いします」

 

 シュテルは俺の指示通り、ちょこんと俺の前に座り出す。

 俺はそのまま手を伸ばしシュテルの髪を梳き始め、寝癖を直していく。

 

 「~~♪」

 

 何か機嫌が良さそうなシュテル。ここ最近良い事でもあったのか?

 

 「…こんなもんかな。シュテル、もういいぞ」

 

 「え!?もうですか?」

 

 「元々寝癖があるっていってもそこまで酷くはなかったし少し梳いたらすぐ綺麗に直ったからな」

 

 「そうですか…」

 

 今度は少し気落ちしてションボリしてる。テンションの差が激しいなシュテルさん。

 

 「あ、あのユウキ!私の髪も梳いてもらえませんか?」

 

 今度はユーリが『梳いてほしい』と詰め寄ってきたが、別に寝癖がある訳ではない。

 

 「わざわざ梳くほど髪は乱れてないぞユーリ」

 

 「そんな事はありません!私の髪も何処かボサボサです!!」

 

 「そんな事あるよ!?ちゃんと髪、整ってるからね!?」

 

 どっからどう見てもちゃんと手入れされてる。

 

 「うう…どうして私の髪は寝癖が立ってないんですか?」

 

 知らんがな。俺に聞くなよ。そもそも寝癖なんて無い方が良いだろうに。

 

 「おはよう」

 

 そこへ新たな声がリビングに響く。

 

 「あ、ディアーチェも起きたのか。おはよう」

 

 「でぃあーちぇおねーちゃん、おはよー」

 

 「おはようルーテシア。ちゃんと挨拶が出来るなんて偉いな」

 

 「えへへー。おねーちゃんにほめられたー」

 

 寝転がったまま、ますます上機嫌になるルーテシア。

 

 「それでユウキよ。シュテルは若干、ユーリはかなり落ち込んでおるがお前は一体何をした?」

 

 「俺がやったと犯人扱いするのは酷くね?」

 

 「ルーテシアが何かするとは思わんだろう。ならこの部屋にいるお前しか可能性が無い」

 

 「そりゃ仰る通りだけど俺はマジで何もしてねえよ」

 

 シュテルは髪を梳いてやっただけだしユーリとは少し会話しただけだし。

 あの二人を落ち込ませる要素が何一つ思い当たらない。

 

 「お前が気付かぬ内に何かしたのではないのか?(むしろそれしか可能性が考えられん)」

 

 「そう…なのか?」

 

 ディアーチェの言う通りなら二人には悪い事をしたな。

 

 「おふぁよぉ~」

 

 ディアーチェがリビングに来てから間もなく、大きく欠伸をしながら眠そうな表情でレヴィがリビングにやってくる。

 というかまだ意識がちゃんと覚醒してないな。目はうっすらとしか明いておらず、足元がフラフラして身体が揺れている。服もまだパジャマのままだし寝てる時はリボンを外しているのであろう、普段のツインテールではなく髪をおろしたままだ。

 

 「レヴィ、起きぬか」

 

 「…ぅん~……」

 

 ディアーチェの言葉に返事はしつつもフラフラしながらこっちに近付いてくる。酔っ払いみたいだ。

 そして先程までシュテルが座っていた場所に座ったかと思うと

 

 「zzz」

 

 人の太ももに頭を乗せ寝てしまった。

 

 「「「なっ!?」」」

 

 「れびぃおねーちゃん、またねてるー」

 

 気落ちしていたシュテルとユーリ、リビングの入り口付近で立ってこっちを見ているディアーチェが突然声を上げ、ルーテシアは身体の向きをうつぶせに変えてレヴィを見ている。

 

 「…まったく」

 

 起こしてやろうとも思うがあまりにも気持ち良さそうな表情なので起こすのが憚られる。

 まあ、メガーヌさんが朝食を作り終えるまでまだ少し時間があるだろうから、もう少し寝かせといてやろう。

 

 「「「……………………」」」

 

 そんなレヴィをまるで親の仇を見る様な目で睨むシュテル、ディアーチェ、ユーリ。いきなりどうしたのさ?

 

 「おねーちゃんのほっぺやわらかいー」

 

 シュテル達の視線に気付いていないルーテシアがレヴィの頬をルーテシアは指でつついている。

 

 「…にゅ~……」

 

 つつかれたレヴィの方は若干反応している。眠りは浅いのだろうか?

 

 「ぷにぷにーぐりぐりー」

 

 何度も指でつついたり指をほっぺにつけたままグリグリしたりと寝ているレヴィで遊ぶルーテシア。最初は気持ち良さそうに寝ていたレヴィの表情も少しずつ歪み始めている。

 

 「ん……ふぁ?」

 

 ルーテシアにほっぺを弄られ約二分後、再び目をゆっくりと開けるレヴィ。

 

 「起きたか?」

 

 レヴィの顔を上から見下ろしながら聞いてみる。

 

 「……………………」

 

 目が開き切ったレヴィはジーっと俺を見たまま微動だにしない。

 

 「れびぃおねーちゃん、おはよー」

 

 「……………………」

 

 ルーテシアの声にも反応しない。

 

 「おい、まさか目を開けたまま寝てr「わひゃあっ!?」うおっ!?」

 

 突然声を上げて起き上がり俺の太ももから離れるレヴィ。顔は真っ赤になっている。

 レヴィが飛び起きた際に俺の顔とレヴィの顔がぶつかりそうになったので咄嗟に俺は顔を後ろにずらす。少しでも反応が遅れてたらレヴィの頭突きを食らう所だったので上手く躱せた自分を褒めてやりたい。

 

 「ななな!?何でユウが僕を膝枕してるのさ!?////」

 

 「何でも何もお前が俺の太ももに頭を乗せて二度寝したんだよ」

 

 「そうなの!?」

 

 『そうなんだよ』と言葉で返しておく。

 

 「そうだったんだ…ゴメンね(うう…勿体無い事したなー。もう少し寝ておけばよかった)//」

 

 「気にすんな」

 

 「きにすんなー」

 

 俺の言葉をルーテシアも真似る。

 

 「あらあら、もう皆起きてたのね」

 

 そんな時にメガーヌさんがリビングにやってきた。朝食が出来たんだろう。

 

 「シュテルちゃん、レヴィちゃん、ディアーチェちゃん、ユーリちゃん、おはよう」

 

 「「「「おはよう(おはようございます)メガーヌ」」」」

 

 「ママー、ごはんできたのー?」

 

 「そうよルーテシア。今持ってくるから待っててね」

 

 「はーい」

 

 元気良く返事をし、起き上がるルーテシア。

 

 「メガーヌ、朝食を運ぶのなら我も手伝おう」

 

 「そう?ならお願い出来るかしら」

 

 「うむ」

 

 メガーヌさんの後をディアーチェがついて行き、残った俺達は朝食が運ばれてくるのを待つ。

 その後朝食が運ばれ、皆揃ったところで

 

 「「「「「「「いただきます」」」」」」」

 

 朝食を食べ始めるのだった………。

 

 

 

 「皆、今日から夏休みなのよね?」

 

 朝食後、後片付けも終えたメガーヌさんがリビングにいる全員に聞く。

 俺、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリは頷く。

 そう、昨日で終業式を終え、今日から8月の末まで俺達は夏休みに入った。

 

 「夏休みをどう過ごすか予定はもう立ててるの?」

 

 「特にないですね」

 

 「僕も」

 

 「我も普段通りに過ごすだけだな」

 

 「私もです」

 

 「わたしもー」

 

 シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、ルーテシアが順に答える。というかルーテシア、お前はまだ幼稚園にすら通っていないのに夏休みも何もないだろう。

 

 「勇紀君は?」

 

 「午前中は宿題をしようと思っているので家にはいますね。外出するなら昼からって一応決めてるんで」

 

 「宿題…」

 

 苦い表情になったレヴィが呟く。思い出したくなかったって感じだな。

 

 「あ、それとメガーヌさんにこれ渡しておきます」

 

 俺が王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から取り出したのは黄色い宝石をはめ込んだペンダント。

 

 「これは?」

 

 「認識阻害専用の特殊デバイスです。これを身に着けている間は認識阻害がかかるんでこの街にいる魔導師や管理局員にメガーヌさんが生きている事は気付かれない筈です。外出する時は必ず身に着けておいて下さい」

 

 「綺麗な宝石ねこれ。高価な物じゃないの?」

 

 「どうなんでしょう?その宝石は昔、無人世界で訓練してた際に落ちていたのを拾ったやつですから」

 

 拾った時は綺麗な宝石だなと思って宝物庫に仕舞い込んで以来、すっかり今まで忘れてたからな。

 

 「宝石の価値なんて俺には分かりませんから。それにペンダント自体も俺の手作りなんで店で売ってるような物に比べたら価値なんて無いも同然ですから」

 

 「「「「手作り!?」」」」

 

 俺の言葉、特に『手作り』の部分に過剰反応するシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ。

 

 「どうした?」

 

 「いえ、何でもありません(手作り…)」

 

 「うん、何でもないよ(ユウの手作り…)」

 

 「少し驚いただけだ(羨ましいぞ…メガーヌ)」

 

 「そうです。驚いただけです(うう…しかもかなり凝って作ってます)」

 

 「ごめんなさいねシュテルちゃん、レヴィちゃん、ディアーチェちゃん、ユーリちゃん」

 

 何故メガーヌさんが四人に謝るんだろうか?

 

 「おにーちゃん」

 

 「ん?」

 

 「わたしもなにかほしい」

 

 ルーテシアが期待に満ちた目で見ながら俺に言う。

 

 「何か…ねえ。じゃあ今度何か用意しておくからそれまで待っていてくれるか?」

 

 「うん!やくそくだよ!!」

 

 ルーテシアの言葉に頷く。

 

 「「「「ジーー……」」」」

 

 「で、皆さんは何故に俺を睨むので?」

 

 「ユウキは忘れていませんよね?」

 

 何がだよ?

 

 「僕達にも手作りのプレゼントくれるっていう約束」

 

 ああ、あれの事か。

 

 「覚えてるけどお前等の『誕生日』にって約束だった筈だし…そもそも誕生日いつなんだ?」

 

 「私はなのはと同じ日で良いです」

 

 「僕もフェイトと同じ日だよ」

 

 「不本意だが小鴉と同じ日に決めた」

 

 「私はその…自分の誕生日を知らないのでユウキと同じ日で」

 

 シュテルはなのは、レヴィはフェイト(あとアリシア)、ディアーチェははやて、ユーリは俺と同じ日を誕生日にするとの事。

 

 「了解。じゃあ誕生日にはちゃんと手作りでプレゼント用意するけど…あまり期待するなよ?」

 

 そう言っておく。

 

 「「「「分かりました(分かった)(分かっておる)。期待しないで待ってます(待っておくよ)(待っておいてやる)」」」」

 

 四人共そう言うが瞳はキラキラと輝いている。この上ないぐらいに。

 ……メッチャ期待してるじゃねーか。これは本当に半端な物は作れないな。

 溜め息を吐く俺を見てメガーヌさんは苦笑している。

 

 「まあプレゼントの話はこれぐらいにして俺は部屋に戻るぞ。宿題やらないといけないからな」

 

 「お昼ご飯が出来たら呼びに行くから宿題頑張ってね」

 

 『頑張ってきます』とメガーヌさんに告げ、俺は自室に戻るのだった………。

 

 

 

 「「「「「「ご馳走様でした」」」」」」

 

 「お粗末様です」

 

 昼食を食べ終え、皆がそれぞれリビングで自由に過ごす中、俺は水筒に麦茶を入れてからリビングに顔を出し

 

 「じゃあ俺は神社に行ってくるから」

 

 それだけ言ってリビングを去ろうとする。

 

 「ユウ、最近よく神社に行くけど何してんの?」

 

 レヴィの声に俺は振り返って

 

 「友達と遊ぶだけだが?」

 

 「それは以前言ってた輩の事か?」

 

 「ああ、久遠っつってな」

 

 「その子は女の子ですか?」

 

 女の子?うーん…久遠は狐だからどっちかといえば雌っていった方が正しいよな。

 いや、人型にもなれるんだから女の子でも間違っちゃいないか。

 でも人型になれるのは基本内緒にしてるからここは

 

 「女の子というよりは雌だな。久遠って子狐のことだから」

 

 「「「「子狐?」」」」

 

 「そうだけど…」

 

 「動物だったのですか(また新しい女の子かと思いましたが…)」

 

 「子狐かあ(動物なら安心だね)」

 

 何やらホッとした様子の四人。

 

 「おにーちゃん!」

 

 「どうした?ルー」

 

 「きつねさん、みたい」

 

 どうやら久遠に興味を持ったらしいルーテシア。でも久遠は人見知り激しいからルーテシアを見て逃げそうだなあ。

 

 「…まあ俺が抱き抱えてれば見る事ぐらいは出来るか。メガーヌさん、ルーも連れて行くけどいいですか?」

 

 「別に良いわよ」

 

 「お母さんの許可も得られたぞルー。じゃあ一緒に神社行くか」

 

 「わーい、ママありがとー」

 

 喜ぶルーテシア。そしてこっちに来たかと思うと俺の手を引っ張り

 

 「おにーちゃん!はやくはやく!!」

 

 早く行こうと急かしてくる。

 

 「はいはい」

 

 俺は苦笑しながらルーテシアに引っ張られるまま玄関の方へ向かい、家を出る前に認識阻害の魔法をルーテシアにかけてから靴を履いて家の外に出るのだった………。

 

 

 

 「この石段を上れば神社だぞルー」

 

 「たかいー」

 

 俺とルーテシアは手を繋いで神社の下にきている。ルーテシアは石段の上を見上げてそう言う。

 今日は日差しもそこそこで結構暑い。まだ小さいルーテシアがこの石段を上り切るのはかなり体力を消耗するだろう。俺はルーテシアを抱き上げる。

 

 「ルー、お兄ちゃんが石段を上り切るまで大人しくしておいてね」

 

 「はーい」

 

 ルーテシアがちゃんとしがみついたのを確認し、俺は石段を上り始める。

 身体強化の魔法を使い、石段を素早く上っていく。

 石段を上り切り鳥居をくぐって神社を見渡すと箒を持って境内を掃除している巫女さんの後ろ姿が目に付いた。

 

 「那美さーん」

 

 俺が呼ぶと巫女さんは振り返って俺の方を向く。間違い無く那美さんだ。

 

 「勇紀君、こんにちわ」

 

 「こんにちわ那美さん」

 

 お互いに挨拶を交わす。その後那美さんの視線はルーテシアに向けられる。

 

 「その子は?」

 

 「俺の知り合いの人の娘さんでルーって言います。ルー、挨拶は?」

 

 俺はルーテシアを地面に下ろす。ルーテシアは

 

 「はじめまして、るーてしあっていいます。るーってよんでください」

 

 きちんと自己紹介する事が出来た。

 

 「初めましてルーちゃん、私は神咲那美っていいます。那美って呼んでね」

 

 「なみおねーちゃん?」

 

 呼び返すルーテシアの言葉に微笑む那美さん。

 

 「那美さん久遠は?今日は久遠と遊ぶついでにルーを紹介しようと思って」

 

 「久遠なら森の中を散歩してるんじゃないかしら?それなりに時間が経ってるからそろそろ戻ってくると思うけど…」

 

 那美さんがそう言うと同時に草むらがガサガサと音を立てて揺れ、一匹の子狐が草を掻き分けて姿を見せる。

 久遠が帰ってきた。

 

 「久遠ー、勇紀君が遊びにきてくれたわよー」

 

 那美さんの声に反応しこっちを見る久遠。いつもなら走ってに来ようとするのだが

 

 「……………………」

 

 今日はこっちに近付かずジーっと見ているだけだ。

 …ルーテシアを警戒してるなこれは。久遠の人見知りは相変わらずだ。

 逆にルーテシアは久遠の姿を見て瞳をキラキラと輝かせている。

 

 「きつねさんだー!」

 

 「っ!!」(ビクッ)

 

 ルーテシアがいきなり声をあげたのに驚き、草むらに隠れる久遠。

 

 「あらあら…」

 

 そんな久遠の行動をみた那美さんは苦笑している。

 

 「おにーちゃん、きつねさんどっかいっちゃった」

 

 「ルーは狐さんの事もっと見たかったんだよな?」

 

 「うん…」

 

 「じゃあお兄ちゃんが狐さん連れてきてあげようか?」

 

 「ほんと!?」

 

 「ホントだよ。だからここで待っててくれる?」

 

 「うん!わたし、まってる!」

 

 「那美さん、ルーの事少しお願いしてもいいですか?」

 

 「いいよ。私に任せておいて」

 

 ルーテシアを那美さんにお願いして俺は久遠を探しに神社裏手の森に入る。

 

 森に少し入った所で『くーおーんー!』と叫んでみると程無くして久遠がやってきた。俺は久遠を抱き抱える。

 

 「久遠、さっき俺と一緒にいた女の子は俺の妹みたいな子なんだ。仲良くなりたいって言ってるから友達になってやってくれないか?」

 

 「くぅ~…」

 

 …やっぱり初対面の人には警戒心持つよなー。ルーテシアが久遠と仲良くなるには俺みたいに時間をかけないと駄目か。

 

 「悪い子じゃないからさ。とりあえず、久遠をもっと見たいって言ってるからこのまま連れて行くけどいいか?」

 

 しばらくは考え込んでいるみたいだったけどとりあえず首を縦に振ってくれる。

 俺は久遠を連れて神社に戻ると神社の側に腰を下ろし座っている那美さんの膝の上にルーテシアが座っていた。

 

 「ルー、狐さん連れてきたぞー」

 

 那美さんに頭を撫でられて気持ち良さそうに目を細めているルーテシアに声を掛けるとルーテシアはこちらを向く。俺が抱き抱えている久遠を見るや否や再び目をキラキラ輝かせる。

 那美さんの隣に腰を下ろし久遠を膝の上に置く。ルーテシアの目は完全に久遠をロックオンしている。久遠は久遠で逃げ出しはしないもののルーテシアの事を少し警戒している。

 

 「きつねさん、はじめまして。るーてしあっていいます」

 

 「くぅ…」

 

 「わたしとおともだちになってください」

 

 笑顔で自己紹介をするルーテシア。

 

 「久遠、ルーちゃんは良い子だからお友達になってあげれば?」

 

 「俺としても久遠がルーと友達になってくれたら嬉しいな」

 

 久遠を片手で撫でながら持ってきた油揚げを久遠の前に差し出す。久遠は油揚げを食べながらもつぶらな瞳はジーっとルーテシアを見ている。

 でも油揚げを食べ終えると俺の膝の上からピョンと飛び下り、また草むらの奥に潜り込んでしまった。

 

 「あっ、きつねさん…」

 

 「…ルーちゃんが久遠と仲良くなるにはまだ時間がかかりそうね」

 

 「ですね」

 

 俺と那美さんは苦笑しながら草むらの方を向いていた。

 

 「それよりルー、汗いっぱいかいてるな。喉渇いてるだろ?」

 

 「うん。のどかわいた」

 

 俺は王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から水筒と団扇を取り出し、中に入ってる麦茶をコップに入れルーテシアに渡す。ルーテシアがゴクゴクと喉を鳴らして麦茶を飲む中、団扇でパタパタと扇ぎ、ルーテシアを涼しませてやる。脱水症状や熱中症を起こしたら大変だからな。

 

 「勇紀君のその能力(チカラ)、便利だね」

 

 「そうですね。買い物なんかには特に重宝してます」

 

 「私、今でもドジっ子だから買い物中にコケて卵を割るのなんてしょっちゅうだし…。その能力(チカラ)で収納しておけば転んでも卵割るなんて事無いのに」

 

 空間から水筒と団扇が出てきたのを見た那美さんが羨ましそうな表情を浮かべながら言う。

 那美さんと薫さん、そして久遠は俺が魔法やレアスキルを使える事を知っている。

 何でも霊力とは違う俺の力(魔力)を感知したらしい。退魔師っていう仕事はそういう異端の力を敏感に感じ取れるとか。

 ……それにしても那美さん、今もドジっ子は健在なのか。

 

 「おにーちゃん、おかわり」

 

 「はいはい」

 

 コップに二杯目の麦茶を注ぐ。

 

 「そういえば勇紀君、ルーちゃんって何歳なの?」

 

 麦茶を飲んでるルーテシアを見た那美さんが不意に尋ねてきた。

 

 「もうすぐ2歳になるってルーのお母さんからは聞きましたけど」

 

 「えっ?」

 

 那美さんが固まった。まあ、気持ちは分かる。

 

 「…えっと、それって冗談だよね?」

 

 「残念だけど事実だよ那美さん」

 

 「最近の子供って2歳前の時点でもう喋れるんだ」

 

 「成長の速さが半端無いですよね」

 

 子供は普通2歳~3歳辺りで会話が出来始めるんだがルーテシアはもう会話が出来る。精神的な成長が普通の子供よりも遥かに速い。

 それともミッドで生まれた子は皆この年で普通に喋れるんだろうか?

 家に帰ったらその辺りの事をメガーヌさんに聞いてみよう。

 それから俺と那美さんは他愛無い世間話をしてのんびりと時間を過ごすのだった………。

 

 

 

 「勇紀君、ルーちゃん、また遊びにきてね」

 

 手を振ってくれる那美さんに俺とルーテシアは手を振り返してから石段を下り神社を後にする。

 あれから久遠が戻って来なかったので俺とルーテシアは予定より早いが家に帰る事にした。

 

 「ルー、狐さんに会えてどうだった?」

 

 「かわいかった!」

 

 手を繋ぎながら帰る途中でルーテシアに聞いてみたが当の本人は久遠の事を大層気に入った様だ。

 

 「そっか、じゃあ狐さんとお友達になれる様に頑張らないとな」

 

 「うん!!」

 

 今度はルーテシアに油揚げを持たせてあげよう。俺も仲良くなる為に油揚げをひたすら久遠に与えて警戒心を解いていったからな。

 

 「おにーちゃん」

 

 「どうした?」

 

 「あしたもきつねさんにあいたい」

 

 「そうか…。朝はお兄ちゃん無理だから明日も昼から狐さんに会いに行くか?」

 

 「ホント!?」

 

 「約束するよ」

 

 「わーい!!」

 

 …早速、油揚げ作戦を使う事になりそうだな。

 

 「じゃあ明日は狐さんの好きな食べ物を持って行ってあげようか?ルーからのプレゼントって事で」

 

 「きつねさんのすきなたべもの?」

 

 「そうだよ。ルーだって狐さんに餌をあげたいと思わないか?」

 

 「うん!わたしきつねさんにたべものあげたい」

 

 「じゃあちょっと寄り道しようか?狐さんの好きな食べ物買ってあげないとな」

 

 「うん!はやくいこおにーちゃん!!」

 

 「じゃあスーパーにレッツゴー!」

 

 「ごー!」

 

 俺とルーテシアは仲良くスーパーに買い物に行くのだった。

 …これからしばらくはルーテシアの付き添いで神社に通う事になるだろうと思うが我が家の末娘のお願いだからな。

 久遠とルーテシアが友達になれる様に俺も手伝ってあげようと心の中で自分自身に誓うのだった………。

 


 
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