「・・・」
寝起きは悪くない
いや、逆に清々しい
俺・・・柄澤 拓馬は毎回同じ朝を迎える
俺はこの時間が大好きだ
変人だと思うか?
思うなら思ってろ
俺は布団から抜け出し、一階のリビングに向かった
「おはよう、お兄ちゃん」
そこには妹・・・柄澤 志帆がいた
柄澤 志帆・・・我が妹は、学力は常に1位をキープしており、運動神経抜群、才色兼備で、毎回と言っていいほど告白を受けている(らしい)
さらにこいつは、この世で1位、2位を争う『魔法使い』なのだ
いきなりぶっ飛んだ話だと思うが仕方ない
俺たちの世界は『魔法』で社会が成り立っているのだ
生活するのにも魔法、戦うときも魔法
なんでもかんでも『魔法』ばっかだ
それと異なって、俺は全然ダメだ
『魔法』事態が使えない
基礎の魔法も使えない
いわゆる『出来損ない』だ
そんな『出来損ない』は今、一般の学校に行っている
両親からは了承を得たのだが、志帆は今でも認めてくれない
「お兄ちゃんは私と同じ学校に行かなきゃいけないの!」と今でも言い張る
ちなみに志帆が通っている学校は【聖・イクリア学園】という学校だ
その学校は主に『魔法』などの勉強をしているらしい
そんな所に行って、俺は何を学べというのか?
「ところでお兄ちゃん」
「ん?」
味噌汁を飲みながら応える
「いつお兄ちゃんはボクの学園に転入してくるのかな?」
来ました、この拷問
「俺は行く気もないし、転入するきもない。今の生活で充分だ」
俺がそう言うと、志帆は―――
「お兄ちゃんには拒否権はない。あるのはボクの言うことを守る権利だけ」
相変わらずの物言いだ
「俺にも『自由』を手に入れる権利はあるはずだが?」
そう言うと志帆は鼻で笑った
「お兄ちゃんで『自由』を得る権利?あるわけないじゃん。ただでさえ【魔法】も使えない人がさ」
「あぁそうだな。だが、魔法が使えなくてなんだって言うんだ?」
「お兄ちゃんは忘れてないよね?この【家】の方針を」
方針・・・
それは現代語で訳せば『ルール』という言葉だ
この家・・・神社ではある『ルール』作られている
【下】の人間は【上】の人間の言い付けを守るべからず
これは『弱い人間は、強い人間の言うことを聞け』というものである
つまりは『弱肉強食』なのだ
もちろん俺は今まで志帆の言うことを聞いてきた
しかし、これだけは譲れない
「志帆・・・何回も言うが、俺は―――」
「『俺は』なに?」
その言葉は深叡の闇から喋ったような感じがした
―――ドクン―――
俺の心臓が鐘のように鳴り響く
この時の志帆はまずい・・・
俺がなにか弁解の言葉を探していた時に『ソイツ』はやって来た
「おはよー。志帆ちゃーん、向かいに来たよ」
『その子』は志帆の友達で、龍宮 真奈という
この子はかなりの元気やで少し天然というどこか抜けた子だ
「おろ?なに?またお兄さんを虐めてるの?」
「虐めてない。ただボクはお兄ちゃんに言い聞かせているだけ」
「志帆も懲りないね~。そんなことよりも、そのまま続けていると遅刻するよ?」
「!!」
志帆は『しまった』という顔をし、急いで自室に駆け込んでいった
「毎度ながら助かるよ・・・」
「あはは、お兄さんも大変だね~」
真奈は笑いながら言う
そしてふと真顔に戻る
「お兄さんは本当に学校に戻ってこないの?」
「お前もか・・・」
「そりゃあそうだよ!誰だって『あんな』伝説を残して転校していくんだもん!!誰だって聞くよ」
俺は今通っている学校に入る前、俺は志帆たちが通っている学園にいた
学園にいたときも俺は魔法なぞ使えなかった
だが俺は優秀クラスに在学していた
それはなぜか?
それは―――
「なんだって『剣』だけで魔女を倒してったんだよ!そんな人が―――」
「あぁ、ハイハイ。さっさと行かないと遅刻するぜ?」
「―――だから、ってしまったー!!」
「真奈ー、早くー!!」
「志帆!?いつの間に!!って、待ってよ~!」
そう言って真奈も玄関から出ていった
俺は呑気に飯を食い、テレビを見ていた
『昨晩、また通り魔が現れました。奇跡的に被害者は―――』
「また通り魔か・・・」
俺はため息をつきながら呟いた
これで通り魔事件は10件・・・
殺された人は8人、助かった人は2人
物騒な世の中だな・・・
「さてっと・・・」
俺はテレビを消して、大学の支度をした
大学1年生の講義はまだ比較的に簡単だから、俺は真面目に講義を受けている
後々に面倒くさくなるので最初に稼いでしまおうという考えだ
「さて、行きますか・・・」
俺は神社から出て、鍵をしめ、大学に向かった
自宅から出て約30分
俺が通う大学、『大日大学』に着いた
ちなみに俺は自転車で通っている
「拓馬ぁあああああああああ!!貴様、昨日はよくもぉおおおおおお!!」
朝からやかましいやつだ
俺は俺の名を叫んでいる奴の方に向く
「よう。雄二」
「おう、おはよう・・・じゃねぇえええええええ!!」
相変わらずノリは良いやつだ
こいつは桐ヶ谷 雄二
いちよう俺の親友にあたるやつだ
「テメェ・・・よくも昨日、ぶち壊してくれたもんだな。えぇ?」
「昨日・・・あぁ、あれか」
「『あれか』とはなんだ!!」
いちよう説明しておく
なぜこいつがこんなにもキレているかというと―――
『拓馬~、今日暇か?』
『ん・・・まぁ、暇だな』
『おっしゃぁあああああああああ!!これで数は間に合ったぜぇえええええ!!』
『何をたくらんでいる?』
『いや~、これから合コンやるんだよ~。んで人数が足りないから、お前を誘ったんだ』
『ふーん』
『『やっぱ、止める』とか言うなよ?』
『別に言わねーよ』
『珍しいことも起きるもんだな~』
『何が?』
『いや、お前が本当に来るなんて・・・』
『止めてもいいぞ?』
『ごめんなさい、冗談です』
いわば昨日は【合コン】というものに行ってきたのだ
いちよう俺も興味があったので行ってみた
だがあまりにもつまらなかったので―――
「なんで途中で帰るんだよ!?」
「あまりにもつまらなかったから」
「それだけで帰ったのか!?」
「あぁ」
俺がそう言うと雄二は頭を抱え込んだ
「お前・・・せめて何か行ってから帰れよ」
「いや、何か邪魔しちゃいかん雰囲気だったから」
「・・・昔から【そこ】は変わらんな、お前」
「・・・否定はしない」
「ハァ・・・まぁ、そろそろ講義だから行くか」
「あぁ」
そう言って俺たちは講義室に向かった
「結構遅くなちっまたか・・・」
俺はサークルを終え、自転車に乗って、自宅に帰っている途中だ
ちなみにサークルはテニスサークルをやっている
「志帆のやつ、怒ってんだろうな・・・」
苦笑いをしながら住宅街に入った瞬間だった
―――ドクン!―――
心臓が鳴り響いた
なんだ・・・この胸騒ぎは
俺は自転車を止め、辺りを見渡す
・・・おかしな所はない
しかし―――
―――膨大の魔力を感じる―――
・・・
しかも―――俺の後ろから
俺は自転車を蹴っ飛ばし、後ろを振り向く
「・・・いない?」
いや・・・
後ろからだ!!
俺は瞬時的に後ろを振り向き、両手を頭上に構え、振りかざしてきた【ソレ】を受け止める
・・・なんつー、魔力を込めて振ってくるんだ!!
真剣・白羽取りをしながらも思い、質問する
「お前が『通り魔』の犯人か?」
「・・・」
「無視か・・・よ!!」
俺はがら空きだった足に、蹴りを入れようとした
しかし、避けられた
そいつは一旦俺から距離を開け、間合いを空ける
そいつは全身真っ黒のコートを羽織っており、フードもしていた
そして一番目につくのが、そいつの持っている剣
その剣は漆黒で所々に紅色に染まっていた
「もう一度聞く。お前が通り魔の犯人か?」
「・・・」
無視か・・・
と思っていたら―――
「ここで違うといったらあなたは信じるの?」
「まったく信じない」
「なら答える義務もないと思う。それにあなたも私の【力】を求めにきたんでしょ?」
透き通るような可憐な声
声からすると若い女と見た
「【力】?なんのことだ?第一、お前から襲ってきたんだろうが」
「・・・あなたはどこか違うようね」
「なんのことだ?」
「でも・・・一般人なら魔力で潰されていた」
「おい・・・」
あれ?
スルーってやつか、これ?
俺、さっきまで襲われてたよな?
あいつ、完璧に自分の世界に入っちゃたよ
なんかチャンスか?
俺はそう思いながら自転車を起き上がらせて逃げようとした
「どこに行こうとするのかしら?」
「!!」
これは・・・『言霊』!?
なぜこんなものが!!
こいつ、一般の魔女じゃない!?
「お前は一体・・・?」
「私?そうねぇ・・・あえて言うなら、【シャングリラ】とでも名乗っておこうかしら?」
「【シャングリラ】だと!?バカな!!」
【シャングリラ】・・・それは全ての魔法の原点
現代の魔法は全てシャングリラからの派生で、元を辿れば全てシャングリラに繋がる
そして全ての魔法の原点のためどれも危険なものだ
だが現代で【シャングリラ】と名乗れるやつはいない
まず第一に、身体が持たない
シャングリラ自体に膨大な魔力を蓄えるために身体が絶対に持たない
そして次に、魔法を放つときに膨大な魔力を消費する
これはまだいい
だが、また膨大な魔力を瞬時的に蓄えるために身体が絶対に持たない
「おちょくるな!【シャングリラ】なんざこの世界にいるはずがない!!」
「ならあなたはさっきの私の攻撃を受け止めて、どう思った?」
「・・・」
俺は言い返せなかった
確かに・・・確かに今まで感じたことのない魔力だった
志帆でも、あそこまで魔力を持ってない
「思いあたる節があるって顔ね」
「・・・その【シャングリラ】さんは、俺の動きを停めてどうする気だ?」
「そうね・・・」
【シャングリラ】は手を顎にあて暫く考え出した
そしてやつは―――
「私のアジトに来てもらおうかしら」
「は?」
「ということで暫く眠ってもらいわ」
そう言い、【シャングリラ】は俺の頬に手をあて―――
「『グラン・デグラ』」
静かに呪文を唱えた
そして俺の意識は闇に墜ちた
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第一話『始まりの日』を更新します