分かりきっていたが、補習なしだと分かり。そそくさと帰ろうと下駄箱に向かい靴を取りだそうとしたとき
「二人とも~」
「どうした?」
「今日暇?」
「別に俺たちは特に用事はないが……」
「だったら翠屋に行かない?」
どうするか一瞬なやむ。そしてチラッと彼女たちを見ると不安そうに見つめている……
「まあ、いいけど。」
「本当!?」
「まあ暇だしね」
俺たちが了承すると三人の顔が明るくなった。現金な奴らだ。
「じゃあ行こう」
この日俺たちは珍しく……というより初めてバスに乗った。その際後ろを見たらアイツ等のものすごく悔しそうな顔をしていたのが印象的だった。地団駄踏んでいたし……
「いらっしゃ……あら?」
「「お邪魔します』」
「アリサちゃんにすずかちゃん、それに伸君に刃君も」
「どうも……」
翠屋の中はピークを過ぎているのか人は疎らだった。
「席は……」
「「「いつものところで(なの)!」」」
「「?」」
いつものところ?と疑問が沸いたが案内された席は外の窓からは死角になっている場所だった。この時点で代替想像できる。
「成る程……」
「あ、わかってくれた?」
「大方あのバカ二人対策だろう?」
「「「正解(なの)」」」
「お母さんに頼んでわざわざ無理やりこの席造ってもらったの」
どんだけ嫌われているんだアイツ等?まあ無理もないか……男子には敵意と殺気(特に俺たちは後者)、女子にはいやらしい視線、そして世界が自分中心に回っていると思い込んでいるくらいの自己中……嫌われないほうがおかしい
「メニューは決まったかい?」
声をかけてきたのは、高町の父親である士郎さんだ。
「えーと、じゃあフルーツタルトとエスプレッソで」
「俺はティラミスとアイスコーヒー砂糖ミルク無しで」
「ずいぶんとアレだね……」
「僕はこれくらいがちょうど、コイツに至ってはさらに拍車がかかっていますから」
「まあ、今回はただ単に甘すぎるものを食う気分じゃないだけなんだがな。」
「了解した。すぐ持ってくるから。それとあの時は息子が済まなかったね。」
「いやいや、俺達も大体あんな行動に出た理由が何となくわかりますから……少なくとも心当たりが二人いますし。」
「解るのかい?」
「いつもストレスの種ですから……」
「ははは」
そういって士郎さんはカウンターの方へ向かっていった。
Side:刃
「それにしても今日はあいつらが補習のおかげで助かったわ」
「それってどういう意味だ?」
どうやら伸は分かっていないみたいだ。
「言葉通りの意味よ。アイツ等いつもついてくるし家の中に入ってもしばらくは家の周りウロウロしてるのよ……」
「……もう警察に届けていいんじゃねーか?」
間違いなく出していいだろうね。少なくとも俺なら出すよ?
「そういえば、男友達ができたのも二人が初めてだよね?」
「それもそうね」
「………一応聞くが理由は?」
「アイツ等が学校で私達に話し掛けようとする男子に『三人に近づくな』とか『コイツ等が困ってるだろ』とか言うせいで、男子が私達と距離を取ってるのよ。おかげで一年の時からまともな男子友達できてないのよ。」
「なのはちゃん最初の頃はかなり傷ついていたよね。」
「うん……『君と話すとアイツ等に何されるかわからない』て言われたの。思わず泣いちゃったの…」
「そ、それはなんというかドンマイだね。」
「その姿を見た恭也さんの反応が容易に想像できるな……それで転校したての俺達に声をかけていたというわけか……距離を取られる前に……」
「うん…しかも、店に来たとき私のお母さんとお姉ちゃんにもアプローチしてたの……すずかちゃんのお家の方もだよね?」
そう言うとすずかはコクコクと頷いた
あの戦闘狂民族を束ねるトップに声かけるってすごいな……そしてそのとばっちりがアレか……この分だと管理局の女性局員の人にも声かけてそう……
「その後お父さんに連れて行かれちゃったの。」
「当然だな、自分の妻を口説こうとしたんだからな。」
「というよりむしろ彼等のストライクゾーンはいくつなんだろうね?」
「さあな、多分胎児から死体までじゃないか?」
「伸君、流石にそれは無いと思うよ……」
「いや、アイツ等ならあり得るわ。全く、結局アイツ等は何がしたいのかしら?」
彼女たちは解らないみたいだけど、俺には分かる。そう言えば、伸も最初は分かっていなかったな。まあ、アイツの性格からして二次小説とか読まなかっただろうし……
「お前等全員囲ってハーレムとか作りたいんじゃない?」
俺がそういうと全員が一瞬で苦い表情になったな。
「あんな男と付き合うぐらいなら死んだ方がマシよ!全く、何で他の女子はアイツみたいなのが好きになれるのかしら?」
それは多分ネットで言うニコポナデポだね。最も伸から聞かされたけど、そのリスクがアレだからね……元の性格が良ければよかったんだろうけど……ん?俺は貰わなかったのかって?だってアレは持ち主の一種の天然要素であって能力で得たらそれはもう洗脳だからね。そんなことをしてまでモテようとは思わなかったし……そもそも、そうゆう候補は完璧に頭に入ってなかったな……特典の数限られていてしかも死ぬ可能性のある世界だし……まあ結局神頼みにしたけど。
Side:伸
「はい、ケーキとコーヒー、それからシュークリームとジュース」
「あ、どうも」
「すみません」
「いやいや……それにしてもなのは達にまともな男友達が出来てよかったよ。このままいったら下手をすれば男性恐怖症とかになりかねないと思っていたからね。」
「まあ、普段あれだけ付き纏われたらな……」
「心配するのも無理ないよな。」
「それじゃあ、ごゆっくり」
そう言って士郎さんはまた厨房のほうへと向かった。その後も他愛ない雑談もとい不満を聞いていたが、ここで携帯の着信音がなった。刃のだった。
「げ……マジかよ」
「どうしたの?」
「今日仕事で海外行ってた親が帰ってくるんだよ。今までは国内を転々だったんだけど、海外転勤のときに親に「せっかくだから俺等の故郷で勉学を習え」って言われたからここに来たんだけど………」
「そりゃ大変だな。」
「そうゆうわけだ。じゃあ……」
「バイバイ、刃君」
そう言って刃は翠屋から出て行った。
「そうえば、アンタは?」
「ん?」
「アンタの親よ」
「そう言えば見たことないよね。伸君の両親、この前の授業参観にも来てなかったし」
いつの間にか桃子さんと士郎さんまで話に入ってきた。よく見るともう客も俺たち以外いない
「………い」
「「「え?」」」
「親はもういない。母は俺を産んで死に、親父は5歳の時に」
「ごめんなさい……」
「いや良いです。もう済んだことですし俺が話したことですから」
「でも刃君みたいに親戚とかはいなかったの?」
月村が質問してきた。
「ああ…」
「あれ?じゃあ、あの時の手紙はなんなの?」
「あれは養子申請書だ」
「え?」
「つまり俺を養子にしたいという輩がいるんだよ。」
「あ~、伸君頭いいもんね。」
「ちげえよ……」
「え?」
「見た目や外見だけで頭の良さがわかるわけねぇだろ。」
「それってどういう意味?」
「言葉通りの意味だ。俺の親は死んだあと莫大な財産を俺に残してな。それが目的だよ。実際親が死んでからの数か月はそんなもの一通たりとも送られてこなかったし、俺に財産があると分かってからあの類の手紙が山ほど来た。……下心見え見えで反吐が出るから全部処分したがな。」
「そんな……」
「他人なんてほとんどがそんなものだ。口では他人のことを尊重やらなんやらそれっぽいことをいって取り繕うが所詮中身は自分自身の保身や利益のための口実さ。養子申請なんて受けたら、金むしりとられて俺は捨てられるのがオチさ。何時かの道徳の授業で『騙すやつが悪い』とか言っていたが実際の世の中は、『騙される方が悪い』からな。見ず知らずの他人の無償の善意ほど恐ろしいものは無い。特に自分の人生を決定しかねないもの程な…」
それっきりみんな黙ってしまった。
「――――もうこんな時間か……俺も帰る―――御代はここに置いておきますね。」
その後、翠屋ではしばらく沈黙が続いた。
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第十二話:世の中は疑いを持たなきゃ・・・・