No.507909

真・恋姫†無双 外伝:幼なじみは双子+α

一郎太さん

幼なじみシリーズのメイド話の※見て思いついた。

某氏のリクエスト。

……が、オチが弱い。

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2012-11-13 22:53:35 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6886   閲覧ユーザー数:5002

 

 

幼なじみは双子+α

 

 

pppppp……―――。

 

「うぅ……」

 

毎朝耳にする電子音が鳴り響いている。もぞもぞと身体の向きを変え、その音源へと腕を伸ばした。

 

「…………朝、か」

 

時計を見れば、短針は時計盤の5を指している。窓へと顔を向ければ、まだ陽も射していない。これは別に、今朝だけ早起きをしたという訳ではない。毎朝の恒例行事だ。

いつものように着替える為に立ち上がる――――――

 

「……ぐぅ」

「二度寝するなぁ!」

「――――ぐぼぁっ!?」

 

――――――事が出来ずに、毎朝恒例の威勢の良い声を聞くと同時に、これまた恒例のボディプレスを体感した。

 

 

 

 

 

 

「いってぇ……起こすなら優しく起こしてくれって言ってるだろ」

「目覚まし鳴ってるのに起きない一刀が悪いんでしょ!」

 

キャンキャンと朝っぱらから元気なこの娘は、俺の幼なじみのうちの1人である。名前は小喬。

 

「もっかい鳴ったら起きるつもりだったんだよー」

「いつもそう言うじゃない。ホラ!ちゃっちゃと起きる!そして準備する!」

 

言いながら、小喬は勝手知ったる俺の部屋の箪笥を開き、トレーニングウェアを取り出す。黒地に赤のラインが入ったシンプルなものだ。

 

「というか、お前も相変わらず朝早いな。ちゃんと寝てるのか?」

「当然じゃない!」

 

元気よく答える少女は、俺とは対照的に、白地にピンクのラインが入ったウェアを見に纏っている。コイツも元気だな。

 

「――――髪型良し!ウェアも良し!ついでに天気も良し!」

「天気は見れば分か――」

「無駄口を叩かない!さ、レッツゴー!」

「うぃーす」

 

ぽんぽんぽんっ、とテンポよく言葉を発し、小喬は走り出す。俺もまた、そのお団子頭を追って走り出した。

 

 

 

 

 

 

「ふぃー、ただいまー」

「応っ!おかえり、一刀!」

 

ランニングを終えて道場に面した縁側に回れば、いつもの熱苦しい声が応じた。そいつは紅髪に朝日を反射させながら、縁側に座って分厚い本を読んでいる。

 

「おかえりなさい、一刀さん……あら、小喬ちゃんったら、またバテちゃったんだ」

「う…うるさぃ……」

 

次いで掛かるのは、背中の少女に見た目も声もよく似た少女の声。紅髪の男――華佗の隣に座り、おそらく婆ちゃんの入れたお茶を飲みながら、華佗の本を覗き込んでいるところだった。名前は大喬。小喬の姉だ。

 

「そりゃ、一刀の走る距離についていこうとしてるんだろう?折り返すまでが限界だろうな、小喬の体力だと」

「うるさいって、言ってるでしょ……」

 

華佗の言う通り。俺に先んじて走る小喬も、折り返しの河原の辺りではバテバテだ。背中に乗ったまま、息も絶え絶えに返している。結局俺が背負って復路を走るのは、これまたいつもの事である。

 

「ほら、小喬。1回家に帰ろう?シャワー浴びないと」

「う、うん……」

 

姉に連れられて、白ジャージの少女は一旦姿を消した。

 

「お前は相変わらず医学の書か?朝っぱらからよくやるよ」

「そういうお前は相変わらず鍛錬か?朝っぱらからよくやるよ」

「うるせぇ」

「互いにな」

 

軽口を叩きながらも、華佗は本に目を戻し、俺もまた木刀で素振りを始める。これもまた、いつもの光景。

 

 

 

 

 

 

***

 

俺と華佗が初めて出会ったのは、0歳の時らしい。『らしい』と伝聞形なのは、文字通り婆ちゃんや華佗の母さんから聞いたからだ。覚えている筈もない。同年同日に生まれた俺たちの母親は、病室が隣同士だった。俺達のベッドも隣、家に戻ればお向かいさん。婆ちゃんは知っていたが、母さんはその頃既に父さんと一緒に県外に出ており、里帰り出産という形で戻って来ていた為、知らなかったらしい。

 

「一刀!遊びに行こうぜ!」

「おう!」

 

そんな俺達が仲良くなるのは、当然の流れだったと言える。いつも一緒に遊び、一緒に幼稚園に行き、一緒に帰ってまた一緒に遊ぶ。そんな幼き日を過ごしていた。

その生活に、3度ほど大きな転機が訪れる。

 

「一刀、遊ぼうぜ!……って、何やってんだ?」

「素振りだよ。俺、爺ちゃんに剣術を習う事にしたんだ」

「へぇー…見ててもいいか?」

「いいよ」

 

俺が剣術を修めると決めた日。

 

「……よろしくお願いします。いい子にするんだぞ?」

「うん…」

「うむ、しっかり稼いで来い。こやつの為にな」

 

華佗の母親が亡くなり、彼の日常の世話を爺ちゃんと婆ちゃんが請負う事になった日。

 

「うわぁ!小っちぇーな!」

「そりゃ、赤ちゃんだからな」

 

うちの向かいの家、華佗の家の隣家に、双子の赤ん坊が生まれた時。

 

「一刀お兄ちゃん!一緒におままごとしよ!」

「華佗お兄ちゃんもー」

 

それからというもの、俺達4人はいつも共にいた。

 

 

 

 

 

 

***

 

爺ちゃんとの鍛錬を終えて――華佗は相変わらず縁側で本を読み、大喬はその隣に、小喬は道場の隅で見学している――食事の時間となる。

 

「駄目だよ、小喬ちゃん。ちゃんとお野菜も食べないと」

「お姉ちゃん厳しいよぉ」

「そんなんだから小さいままなんだよ」

「健康の源は食だぞ!我慢して食べろ!」

 

朝と晩、ウチの食卓は賑やかになる。爺ちゃん婆ちゃんに加え、育ち盛りの高校生男子2人と小学生女子が2人、計6人の人間が一堂に会しているのだ。

 

「一刀うるさい!華佗も……間違ってないけどうるさい!」

「かっかっか!相変わらず小喬は元気じゃな!」

「当ったり前でしょ!」

「大喬も可愛いのぅ」

「えへへ…」

「はいはい、おかわりもありますよ」

 

華佗がいる理由は、父子家庭である上に、父親が医者として忙しく駆けまわっている為である。この辺りでは有名な鍼治療を専門とする医者で、休みなど、ほとんど無いに等しい。その事情を汲んで、爺ちゃんがウチで生活の面倒を見ると申し出た。

また大小姉妹がいる理由は、こちらは両親が共働きの上、かなり忙しい職種だからという理由である。

 

「「「「ごちそうさまー」」」」

「はい、お粗末様。じゃ、お茶でも入れるからね」

「あ、お手伝いします」

「私も!」

 

朝食の準備を手伝うとまではいかないが、大喬も小喬も、食後のお茶や食器の片づけなど、出来る範囲で手伝っている。華佗の家は言うに及ばず、大小たちの家も、少なくない生活費を爺ちゃんに払っているらしい。が、彼女たちは自分自身でも何かをしたいのだろう。

 

「お前はくつろぎ過ぎだがな」

「ん?」

 

隣に座る幼なじみに声を掛ければ、爺ちゃんの読み終わった新聞に目を通していた。

 

 

 

 

 

 

「――――全員いるか!番号!」

「1!」

「2!」

「……3」

 

上から華佗・小喬・大喬・俺だ。見れば分かるのにする意味はあるのか問いたくなる点呼が行われている場所は、俺達の家の間の道路。それぞれフランチェスカの制服を着ている。

 

「じゃ、行くぞ!」

「「おぉー!」」

「うぃー」

 

朝から熱苦しいコイツだが、お子さまの2人には合っているらしい。元気の良い返事を返している。

 

「そしたらですね、先生が――」

「なに!?それは――」

「隣の席の男子がムカつくったら――」

「そういう年頃なんだよ――」

 

俺の左には小喬、右には華佗、さらにその隣には大喬。4人並んで通学路を進む。これもまたいつもの風景で、近所のお婆さんなど、『いつも仲が良いわねぇ』などと顔を綻ばせている。

 

「じゃ、またね!」

「バイバーイ」

「応!」

「おー」

 

そうしているうちにフランチェスカに到着する。俺と華佗は高等部の校舎に、大小姉妹は初等部の校舎へと向かう。

 

「結局アイツら喋りっ放しだったな」

「女は子どもの頃から話好きだからな」

 

そんな登校。

 

 

 

 

 

 

授業も終わり、放課後となる。華佗は元々部活に入っていないし、俺の剣道部も今日は休みだ。という訳でさっさと帰ろうとしていたのだが――――。

 

「一刀君!これからカラオケに行くんだけど、一緒に来ない?」

「華佗君もどう?」

「2人が来るならカラオケじゃなくてもいいよ!」

 

帰りのHRが終了し、担任が教室を出た瞬間、クラスの女子に囲まれてしまった。華佗はイケメンだし頭もいいし、モテるのは分かる。だが、何故そこに俺を入れる。

 

「一刀がモテるのは分かるが、なんで俺まで誘われてるんだ?」

「そりゃ俺の台詞だ」

 

この朴念仁めが。

 

ちなみに、クラスの男女比率は2:38だ。助け舟を出してくれる級友も、恨みの視線を放つ野郎もいない。

 

「どうやって断る?」

「……断れるのか?」

 

小声でそんな会話を交わす俺達のもとに、救世主が現れる。

 

「お兄ちゃん!授業終わった!?」

「きょ、今日は買い物に連れて行ってくれるって約束だよ!」

 

声の方を振り向けば、小豆色の髪に中華風のヘアコサージュを2つ付けたお団子頭が2つ、教室の入口を覗いていた。

 

「(ここしか――)」

「(――ないっ!)」

 

俺と華佗は、無言でアイコンタクトを計る。十数年共にいた俺達にとって、この程度の事は造作もない。という訳で。

 

「ごめんな、皆。今日は妹たちとの約束があるから、また今度にしてくれ」

「そういう訳だ。すまんな!」

 

勢いよく捲し立て、呆気に取られる女子生徒たちの合間をすり抜け、俺達は教室のドアへと向かう。

 

「よく来たな!」

「偉いぞ!」

「うわ、うわっ!頭を撫でないでよ!髪型が崩れるじゃない!」

「あぅぅ……恥ずかしいです、華佗お兄ちゃん……」

 

それぞれ小喬と大喬の頭を撫でまわし、功を労う。

 

「ひゃぅ!?」

「な、ちょ、放しなさい!」

 

 

そのまま担ぎ上げ、俺たちは廊下を駆け出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「――――それにしても、よく高等部の校舎に入ってこれたな」

「恥ずかしかったです……」

 

校門を駆け抜け、商店街にやって来た俺達は、適当にブラついている。

 

「いいじゃない。そのおかげで助かったんでしょ?」

「まぁな。だからこうして、アイスを買ってやったんじゃないか」

 

いまだ顔を紅くしている大喬の手にはバニラのアイス。対して、生意気な口調ながらも顔を綻ばせている小喬の手には、チョコのアイス。今回の報酬だ。

 

「それにしても、一刀も華佗も、やっぱりモテモテだよねー」

「あぅ……彼女とか、いるんですか?」

「いる訳ないじゃない。モテはしてもヘタレなんだから」

「ヘタレだとさ、一刀」

「お前の事だよ、華佗」

「2人共に決まってるでしょ!」

「しょ、小喬ちゃん……」

 

相変わらず生意気な娘だ。……ふむ。

 

「でもさ、小喬」

「なによ?」

「もし俺に、本当に彼女がいたらどうするんだ?」

「……へっ?」

「大喬は、華佗に彼女がいたらどうする?」

「えぇっ!?」

 

俺の言葉に小喬は固まり、大喬は驚きの声を上げた直後、眼に涙を浮かべる。

 

「華佗お兄ちゃん……彼女、いるの……?」

 

大喬は分かりやすいな。

 

「う、嘘、よね……?ねぇ、一刀……嘘だよね?」

 

小喬も分かりやすかった。

 

「じゃ、華佗。大喬は任せたぞ」

「はいはい。お前もたまにSになるよな」

「たまにだからいいだろ?」

「わかったから。さっさと行け。んで、小喬をなんとかしろ」

 

困ったような、呆れたような笑みを浮かべながら、華佗は大喬の手を引いて去る。

さて、俺は俺で対処しないとな。

 

「ねぇ、一刀……嘘だよね?彼女がいるなんて、嘘だよね!?」

 

こんな状態だからな。

 

「あぁ、嘘だよ」

「ホントに?ホントに嘘?」

「どっちだよ……あぁ、すまんすまん。そんな眼で見るな」

「だって……」

 

気の強い釣り目がちな瞳も、今では眉尻を下げて、捨てられた子犬のような眼になっている。可愛いなぁ、もう。

 

「俺にはお前がいるだろ?」

「一刀…?」

「華佗にも、大喬がいる。俺達は、ちゃんとお前達の気持ちには気づいてるよ」

 

 

告げて、ぽんぽんと頭を撫でてやる。

 

「……バカ」

「はいはい」

 

小喬はさらに涙を零しつつも、俺の腰に抱き着いて来るのだった。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「はい、華佗お兄ちゃん。あーん」

「おう、ありがとう!あー」

 

夕食時。食卓にはかつてない光景が広がっていた。

 

「ねぇ、一刀」

「んぁ?」

「アレ、どういう事?」

「そりゃ、アレだ。俺がお前に言ったような事を、華佗も大喬に言ったんだろうさ」

「いや、それはわかるんだけど……」

 

大喬が箸でおかずを摘まみ、華佗の口元に運ぶ。華佗は華佗で、それを遠慮なく受けている。

 

「ま、アイツは頭がいいけど馬鹿だからな。言葉が真っ直ぐ過ぎて、傍から見たらロリコン的な立ち位置に収まってしまったのかもしれない」

「うっわぁ……そりゃお姉ちゃんも落ちるに決まってるじゃない……」

「はい、あーん」

「あー」

 

少しだけ雰囲気の変わった、そんな幼なじみたち。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

バイトのシフトがずれて二連休になったので、書いてみた!

 

 

一丸氏のリクエストです。

 

 

というか読み直したら、華佗or大小とかって意味だった。

 

 

3人全部出せとかって意味かと思ってたぜorz

 

 

ま、いいや。

 

 

次はいつになるかわかんないけど、気長に待っててください。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 


 
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