狩りは夜まで続き、キリトたちが気づいたときにはもう8時を過ぎていた。
キリト「そろそろ帰るか。」
アスナ「そうね。もう遅いし。」
デュオ「賛成。」
シリカ「あたしもそうしたほうがいいと思います。」
リズベット「じゃあ帰りましょうか。」
ガッシュ「よし!じゃあ帰るか。」
キリトたちは帰るために来た道を戻り始めてた。
その途中、ガッシュがトレジャーボックスを発見した。
デュオ「フィールドにトレジャーボックスってのも珍しいな。」
リズベット「どうする?」
ガッシュ「大丈夫なんじゃないか。トラップだって決まったわけじゃないし。」
リズベット「そうね。じゃあ、開けるわよ。」
リズベットが手をかけて、ボックスを開いた。
すると、それはトラップだった。それも最悪のアラームトラップである。
街への道が通れなくなり、やがて大量のモンスターが出現しはじめる。
出てきたのは、右手にランス、左手にラウンズシールドを持つモンスターだ。
中世の騎士のような鎧を身に着けているが、顔からはイカの触手のようなものが生えている。
ガッシュ「げっ・・・こいつは・・・」
デュオ「知ってんのか?」
アラームを発していたボックスを破壊するとデュオが言う。
ガッシュは小さく頷いて答える
ガッシュ「ああ、こいつはシェルメタル。攻撃力はそうでもないけど防御力がやたらと高いんだ。」
キリト「俺の苦手なタイプだ。」
デュオ「得意な奴も少ないと思うぞ。だけど・・・」
デュオはシリカたちのほうを見ると言う。
デュオ「シリカ、結晶は使ってみて。」
シリカ「は、はい・・・」
シリカはポーチから転移結晶を取り出して掲げる。
シリカ「転移!コラル!」
シリカの声が空しく響いた。
デュオ「よりにもよって結晶無効空間かよ・・・」
デュオは面倒そうな顔をして呟くと、隣にいるキリトに声をかける。
デュオ「キリト、大丈夫か?」
キリト「あ、ああ・・・」
キリトはハッとした様子で顔を上げると、答える。
キリトは何かに怯えているかのように、顔が青ざめている。
そんなキリトを見たデュオが他のメンバーに伝える。
デュオ「みんな、どうもキリトは不調みたいだ。俺たちで片付けるぞ。」
ガッシュ「おう!任せとけ!」
リズベット「しょうがないわね!」
ガッシュとリズベットが賛成の意を見せるとキリトはそれを止めようとする。
だが、キリトが言う前にデュオがアスナに言った。
デュオ「アスナ、お前はキリトについててやって。」
アスナ「えっ!?でも・・・」
デュオ「今のキリトじゃ、戦力どころか邪魔にしかならない。それに婿のメンタルケアは嫁の特技だろ。」
デュオはふざけ半分に言ってみせると、アスナは頬を少しだけ赤くして頷いた。
デュオたちのやり取りが終わると、シェルメタルが蛇のような声を上げて襲い掛かってきた。
デュオ「シリカは俺の後ろを頼む。」
シリカ「はい!!」
デュオが指示すると、シリカはデュオと背中合わせの状態になる。
デュオ「行くぞ!ガッシュ!リズ!」
リズベット「OK!」
ガッシュ「よっしゃ!!」
デュオ、シリカ、ガッシュ、リズベットは一斉に武器を構えると、襲い掛かってくるモンスターを迎撃する。
デュオは自分の大剣を四方八方に振り回して敵の接近を許さず、ピナのブレスでスタンしたモンスターをデュオの大剣が薙ぎ、シリカが止めをさす。
ガッシュとリズベットの二人はリズベットがガードを崩し、ガッシュが仕留めるという戦法で戦う。
アスナも、不調のキリトと一緒に牽制を行う。
時折受けるダメージは、キリト、デュオ、ガッシュはバトルヒーリング、シリカはピナのブレス、アスナ、リズベットはポーションで回復する。
その時、一体のシェルメタルがアスナを弾いた。
慌てて体勢を立て直そうとするアスナだが、逆にそれが裏目に出て倒れてしまう。
アスナ「きゃっ・・・!!」
キリト「アスナ!!ぐわっ・・・!?」
アスナを助けようとしたキリトも、別のシェルメタルの攻撃を受けて倒れる。
そしてシェルメタルの槍がアスナの体を貫く。
クリティカルヒットが入り、アスナのHPが一気に削り取られる。
アスナ「うっ・・・!!」
アスナは苦悶の表情を浮かべる。
すると、数体のシェルメタルがアスナに襲い掛かった。
リズベット「アスナ!!」
リズベットはアスナとシェルメタルの間に入り、アスナを庇う。
ガッシュ「リズ!!」
それを見たガッシュが今度はリズベットを庇って攻撃を防いだ。
しかし、それと同時に槍の柄を斬られてしまった。
二つに斬られた槍が、ポリゴン片となって砕け散る。
ガッシュ「あっちゃ~・・・俺手製の槍が・・・」
デュオ「バカ!!」
間一髪のところで間に入ったデュオは、襲ってくるシェルメタルを大剣で弾き返した。
デュオ「ガッシュ、あまり強要したくないんだけど・・・」
ガッシュ「ああ、わかってるよ。」
ガッシュはデュオの言葉を遮ると、ストレージから新しい槍を呼び出す。
ガッシュ「バイカ、お前の槍使うぜ。」
槍のオブジェクト化が始まるが、それは他のアイテムとは異なった実体化をする。
レモンイエローの光を放つ球体が集まり、中央の刃が短くなった三又の槍へと変化する。
黒い柄の両端には赤い竜鱗のような材質の補強が施され、そこから後ろ向きに竜の角のような装飾が出ている。
補強装飾の先からは銀の針状の刃が突き出し、その脇から長い鉤状になった同じく銀製の二股の刃が伸びている。
(石突も似たような作りになっているが、槍頭の方とは違って左右の鉤刃が突き出ていない。)
オブジェクトの生成が完了すると、ガッシュはそれを頭の上で回転させてから
後ろに引き絞るように構える。
ガッシュ「サラマンダーバーニング!!」
ガッシュは呼び出したサラマンダーバーニングを振り被る。
すると、槍頭が炎に包まれる。
ガッシュ「ハアアアア!!おりやあああ・・・!!」
ガッシュは炎を纏った槍を、思い切り敵に投げつける。
主によって空中に放たれた槍は矢のごとくまっすぐに飛び、一体のシェルメタルを貫く。
肉体を貫かれたシェルメタルは勢いよく燃え上がると、その炎は他のシェルメタルたちにも燃え移り、残っていたシェルメタルをすべて燃やし尽くした。
街への道が通行可能になるとともに、戦いを終えたサラマンダーバーニングは落下してきて地面に突き刺さった。
ガッシュは歩いていって、サラマンダーバーニングを引き抜くと、肩に担ぐようにして持つ。
ガッシュ「ふう~。終わった終わった。」
ガッシュが槍を戻ってくると、キリトが訊く。
キリト「何で、お前がバイカの武器を持ってるんだ?」
ガッシュ「バイカのこと、知ってるのか!?」
ガッシュは嬉しそうに返すと、アスナが答える。
アスナ「元攻略組で最強のギルド【バスターズ】の一員で槍の達人。攻略組プレイヤーならみんな知っている人だわ。」
ガッシュ「そっか、さすがバスターズ。有名なんだな。」
キリト「どうして、お前がサラマンダーバーニングを?」
キリトの言葉に、ガッシュは感慨深そうにサラマンダーバーニングを見て答える。
ガッシュ「もらったんだ。バイカにさ。」
キリトは、ガッシュの言っていることがいまいち飲み込めていない
キリト「どういうことなんだ?」
さらに、質問を続けようとするキリトにデュオが咳払いしてから言った。
デュオ「とりあえず、俺の家まで戻らないか?そろそろモンスターが出てきそうだし。」
リズベット「デュオの言う通りね。じゃあデュオの家で続きを聞かせてもらいましょ。」
デュオ「よし。そうと決まれば早いとこ行こう。」
デュオはそう言って転移結晶を掲げる。
デュオ「転移!コラル!」
デュオたちの体が光に包まれて、その場から消えた。
デュオのホームに戻ってくると、デュオは人数分のお茶を出してから自分も席につく。
ガッシュ「じゃあ、話すけど、その前にひとつ教えてくれ。何でキリトはバスターズのことを知りたがってんだ?」
ガッシュがキリトに訊くと、キリトの表情が暗くなる。
そして、少し間をおいてからキリトは口を開いた。
キリト「あいつらは俺の命の恩人なんだ。」
デュオ「お前がいいと思うならでいい、詳しく聞かせてくれないか?」
デュオがそう言うと、キリトは考えてから、語り始めた。
あとがき
次回はキリトとガッシュの回想編です。
2人の過去、そしてバスターズのプレイヤーに何があったのか。
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ガッシュの隠し武器が早くも登場です。