No.504509

ストライクウィッチーズ 12人目のウィッチは少年? 序章、異世界少年

都零紫さん

高校に行く途中の電車でうっかり眠ってしまった少年、篠原湊は目が覚めるとストライクウィッチーズの世界にいた。
そして本来少年には魔法力がないはずが強力な魔法力を有していることが分かった湊。
少しでもウィッチたちの力になりたいと考えた湊は戦いに身を投じることを決意する……。

2012-11-04 21:49:34 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5927   閲覧ユーザー数:5793

 
 

 主人公のプロフィール

【名前/読み】篠原湊/しのはらみなと

【年齢/誕生日】17歳/5月13日

【体格】175cm/56kg

【容姿のイメージ】

17歳の割にかなり若く見えるあどけない容姿ため、サーニャや芳佳と同じくらいの世代に見られる。髪の色は黒で長さは女性のセミロングくらいまである。

パッチリとした碧眼が特徴的で、顔立ちは整っている。そのため女装しても似合うと思われている。

イメージとしてははがないの幸村をもう少し大人っぽくした感じ。

【声のイメージ】喜多村英梨

 

 この作品では作者の想像で書いている部分もあります(整備班や魔法力の検査等)

 あくまでも二次創作と思って読んでくださるとありがたいです。

 目を開けると、まったく知らない天井が視界に広がった。

「ここは、どこだ?」 

 高校2年生の少年、篠原湊は呟く。

 制服を着たまま寝かされ、傍らに自分のメッセンジャーバッグがあるだけで、こんな場所に覚えはない。

 それにさっきから独特の薬品のような匂いがする……戦争映画のワンシーンに出てくる野戦病院みたいだと思った。

「なんでこんな所に、居るんだろう?」

 とりあえず、知らない場所に居るということを把握した湊は、今度は何故こんな場所に居るのかを考え始める。

 ……しかし間もなくそれも止めた。

「朝の電車で寝落ちしたところまでしか覚えてねぇ…………」 

 そう、どれだけ記憶を遡っても、湊は通学の電車の中で眠ってしまったところまでしか思い出せないのだ。これではこの場所にいる理由など、到底分かるはずがない。

 

「あら? 目が覚めたみたいね」

 

 どうしたものかと思っている湊に、聞き覚えのない歌手顔負けの美声が掛けられる。 

 反射的に振り向くと、緑色の軍服を着て、下はどう見ても女性の下着という出で立ちの赤毛で白人の美人が柔和な笑顔で立っていた。

「ええ、まあ。あの、1つお訊きしたいんですが」

 何故自分とあまり変わらない女性が軍服を着ているのか、何故下はパンツだけなのか。疑問はたくさんあるものの、今はそれより優先することがある。

「俺は何故ここに寝かされているのでしょうか?」

 女性は不思議そうな顔をして湊を一瞥した。

「あなたはこの基地内で倒れているところを保護されました。記憶にないかしら?」

「全くないです。俺には今朝学校に行こうとして電車に乗って、その中で眠ってしまった記憶しか」

 湊の答えに女性は溜息を吐いた。

「そうですか。ではあなたに幾つかお訊きしたいことがありますから、私に付いてきてください」

女性に付いていった湊は、執務室とやらに連れてこられた。

 目の前には先程の赤毛の女性に加え、東洋系の美形で黒髪をポニーテールに結った眼帯の女性が居る。

 この女性も軍服を着ていることといい、基地という単語が飛び出したことといい、ここはどうやら軍隊関係の施設で間違いなさそうだった。

「私はカールスラント空軍でストライクウィッチーズの隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です。こちらは戦闘隊長の坂本美緒少佐です。あなたは?」

「俺は……篠原湊といいます」

「では、篠原さんの年齢と国籍を教えてください」

「17歳です。国籍は日本です」

 湊がそう答えると、眼帯の女性……坂本少佐が怪訝そうな顔をした。

「日本とはどこの国のことだ? 少なくともこの世界に、日本という国はないぞ」

 言葉にならない間抜けな声が出た気がした。日本がない? そんなのありえないだろう。

「……世界地図はありますかね?」

「ええ、ここに」 

 机の上に世界地図を広げてみる。

 見事に、湊にとってちんぷんかんぷんな国名ばかりで、形は一致しても国は合致しない。仕方ないから湊は形と地理の条件が見事に一致している扶桑皇国を指差した。

「ほう。見た目からなんとなく予想はついていたが、やはり扶桑の者だったか」

 坂本は感心したような様子だ。

「あの、ちなみに今の西暦は何年でしょうか?」

「今は1944年です」

 なるほどなと湊は溜息を吐いた。もう、間違いなかった。

「俺は多分、異世界から来たようです」

 

 ミーナと坂本は顔を見合わせた。

「2012年の5月。俺は学校に行くために電車に乗りました。運悪く目覚ましが故障していて走ったから、疲れていたんでしょう。電車の中で寝ちゃって起きれば、ここに居ました」

 我ながらなんて馬鹿げた話だろうと思いながら、また本当のことなんだからこう話すしかないだろうと思いながら、湊は言う。

「貴方が異世界から来たという理由はほかにはあるのかしら?」

「具体的に述べれば、貴女方のような若い女性が軍隊に入る、しかも佐官というのは、こちらの世界では聞いたことがありません。それに……」

 とにかくどうにか上手く説明できる術はないかと、湊は先程から脳みそをフル稼働させていた。すると自分のバッグの存在を思い出した時、ある方法を思いつく。

バッグをごそごそと探り始めた湊。

 中にはいつも使うノートパソコンや教科書にノート、昼食になるはずだったサンドイッチに、部活動で使うジャージなどもあった。

 考えた通りに湊は机の上に、パソコンを置く。

「これは……?」

 興味津々といった様子のミーナ。

「俺の私物です」

 言いながら、スイッチをワンプッシュしてパソコンを起動させる。

 SSD搭載の割かし新しいそれは、OSの起動音以外は全く鳴らさずにデスクトップを表示した。

「コンピュータという計算機器を発展させた代物です。これを使えばメールをしたり、動画を見たり、音楽を聴いたりできます。1944年にはまだ、コンピュータはないはずです」

 MP3ファイルを起動させ、適当なJーROCKの曲を再生してみせた。

「おお……確かに機械から音楽が再生されているな」

「確かに今そんな機械を作る技術はどの国も持っていないわ」

 未来から来たということが証明がついて、湊は一先ず安堵した。

 

「次は、こちらの世界のことを教えてもらえませんか?」

 湊はさっきからずっと気になっていたことをついに訊いた。何故彼女たちが軍隊に身を置くのか、気になったから。

「良いだろう。人類は昔から異形の敵を魔法力を持った10代の少女たち、ウィッチが追い払うことによって平和を保ってきた。しかし今、世界はネウロイという新たな異形の敵が侵略をしている。奴らは遥かに強大で、人々は生まれ育った故郷を追われて行ったんだ」

 坂本の口から告げられたぶっ飛んだ事実に唖然とする湊。

「しかし、そこで扶桑の宮藤博士を始めとする科学者たちが、ストライカーユニットを完成させたんだ。これはウィッチの魔法力を増大させる新たな魔法のホウキと言えるものだった。そして連合軍は各国から優秀なエースウィッチを集結した対ネウロイ用の精鋭部隊、ストライクウィッチーズを結成したんだ」

「なるほど、よくわかりました。解説ありがとうございます」

「なに、安いものだ。はっはっは!」

 高笑いする坂本には悪く思うが、実のところ湊の頭は現在絶賛混乱中である。

 魔女だのネウロイだの、とにかく意味がわからないし平和ボケした高校生の湊には想像を絶するものに違いなかった。

 しかし当の湊はと言うと、そのうち嫌でも慣れてくるだろうと案外楽観的に考えていた。

 

「一先ず、篠原さんはしばらくウィッチーズで保護します」

「あ、ありがとうございます」

「異世界から来たということもあって何があるか分からないし、一度魔法力の検査を受けてもらうわね」

「もしかしたら魔法力を持っているということもありえるからな。もし魔法力があれば、私がビシビシ鍛えてやるぞ!」

 それは嫌だなと思いつつ、湊はよろしくお願いしますと頭を下げた。

 

 

「検査はもう少し後になるから、その頃になれば呼びに来るわね。それまでは整備班の方でお世話になってもらえるかしら」

 ミーナにそう言われ、湊はハンガーまでやって来た。見たことのない羽のついた円柱のものが、坂本が教えてくれたストライカーユニットなのだろうか? 国ごとに違う作業着を着た整備兵たちがせっせと整備していた。

「おう、話題の坊主じゃねえか」

 野太い声のおじさんが湊を見るなり声を掛けてきた。すると、整備兵たちは皆手を止め、好奇の視線を湊に注ぐ。恐らく、このおじさんが整備班長なのだろう。

「もう大丈夫なのか? 海岸で倒れていたと聞いたが」

「まあちと深刻な状況ではありますが、大丈夫です。ってか、話題になってたんですか、俺?」

「まあな、少なくとも不審な少年が海岸で倒れてたってのは昨日かなり出回ってたぞ。で、深刻って言うと、具体的にどんな状況だ?」

「俺、ネウロイとか魔法とか、全く関係ない世界に居たんですよ」

 色々世話になるなら先に打ち明けておいたほうが都合が良さそうだと思った湊はサラリと告げる。

 班長を始め、皆ポカンとしてから。

 

『ワハハハハハハハハ!!!!』

 

 ハンガーに響くくらい大声で爆笑し始めた。

「ははっ、こりゃ傑作だ、坊主はジョークが上手いな!」

「嘘じゃないですよ!」

 お腹が痛くなるくらい笑う班長に、むっとした湊は語調を強める。

「じゃあ、その根拠を教えてくれよ」

「根拠ならありますよ」

 ミーナと坂本に見せたのと同じようにして、またノートパソコンを取り出す。

「坊主。なんだ、この機械は?」

 流石整備班。全員好奇の熱視線をパソコンに送っている。

「これはパソコン……パーソナルコンピュータと呼ばれる機械です。この機械は――――」

 さっきと同じ説明を今度は整備班に行う。

 

「す、すげえぞこりゃ。こんな高性能な機械、見たことねえ!」

「こんな機械何処探してもねえよ!」

 などなど、整備班は感心の声を漏らし始める。

「これで俺が異世界の未来から来たということ、納得していただけましたか?」

 溜息を吐きながら訊くと、全員が頷いてくれた。

 

 整備班との邂逅の後、どこからともなく現れたミーナに連れられて、湊は検査に向かった。

 見たこともないような機械で魔法力があるのかどうかを検査するのには抵抗があった。

 が、検査を受けて結果がはっきりしない限りは湊はただの不審者に違いない。魔法力なんてあるわけない、むしろあってほしくないと何処かで思いながら、湊は検査を受けた……。

検査は数十分ほど掛けて行われたようだった。

 結果をまとめるまで少し掛かるので、またハンガーなどで時間を潰して欲しいと言われた湊は、結果が出るまで整備班の連中とパソコンの話、未来の話などをした。

 整備班は皆良い人が多いなというのが湊の印象だった。もしかするとあの人の良さそうなおじさん――整備班長からのこの全体の明るさなのかもしれない。皆胡散臭いであろう自分の話を、目を輝かせて聴いてくれた。

 そんな整備班が仕事中の時は地図や本を借りて、この世界のことについても勉強をする。

 湊は第二次大戦に関する基本的な知識はあったので、それに結びつけて覚えることに苦労はしなかった。

 やはり一番興味があったのはウィッチについて。どうやら魔法力というのは基本的に20歳になればシールドと呼ばれる障壁が作れないほどに減衰してしまうらしい。だからこそウィッチの素質を持った少女たちを育成するのが急務なようだ。

 階級も男性隊員に指揮できるよう、軍曹から始まるらしい。そういう点ではミーナや坂本のような女性が佐官になるのも分かる。

 それにウィッチーズと呼ばれる統合戦闘航空団は501から508まで8つあるらしい。

 フィンランドに当たる――スオムスで結成された通称“スオムスいらん子中隊”(現在では508になっている)がその先駆けだったらしい。国籍は違えど団結して強大な敵相手に戦うことの重要さをこの時世界中に知らしめたのだろう。

 これがきっかけで世界の最前線各地に統合戦闘航空団が配置されたようだ。

 次にまた別の本を読んだ。

 『来た、飛んだ、落っこちた』というタイトルの本は扶桑陸軍のウィッチ、加東圭子という女性が執筆したようだ。

 ネウロイとの緒戦について深く触れられていて、仲間との共闘や苦労なども書かれていて、最終的に記念式典での飛行で彼女が墜落してしまう事故についても記されていた。

 

 …………ウィッチについて調べて、湊はこの世界について大体理解することができた。

 ウィッチが何故少女たちの夢となり、人々の希望となるのかを。ウィッチが前線で戦うことがどれだけ大変且つ重要なことなのかを。

 異世界から来た湊は、この世界の男性以上に思ったことがある。

 何故少女たちが銃を持ち、最前線で戦っているのだろうか…………?

 彼女たちの力になりたい。

 出来ることならば、彼女たちの傷つくことがないように……。 

「篠原さん、検査結果が出たから、執務室へ来てくれるかしら」

 昼過ぎ頃、そう言って呼ばれた湊は執務室に着いてから、ミーナに1枚の紙を渡された。

「えっと……具体的に言うと、どういうことでしょうか?」

 よく分からない数値が羅列していてまさにちんぷんかんぷんだった。

「わっはっは! まさか本当に魔法力を持っているとは思わなかったぞ!」

 興奮気味の坂本の言葉に、湊は全身が粟立った気がした。

「え、俺、魔法力があったんですか?」

「ええ、どうもそうらしいの。かなり強力な魔法力を持っているみたいね」

「男の場合、その紙に記される数値はゼロのはずなんだがな。異世界の不思議な力かもしれんな!」

 そんな適当で良いのか……。

「えと、この場合、どうすれば良いんでしょうか?」

 あなたには男性ながら魔法力がありました。なんて言われても、先程知識を叩き込んだばかりの湊にはどうすれば良いか分からない。

「そうね……篠原さんが良ければ、ウィッチになる素質があるのだから、軍に志願するという手があるわ」

「そうだな。ウィッチとしての戦力は多いほうが良い。扶桑海軍ならば、私が面倒を見てやれるのだが」

「俺みたいな国籍不明の人間、軍に志願できるんですかね?」

 唯一の疑問を口にする。

「わっはっは! なんとかなるだろう。ウィッチに不可能はない!」

(……大丈夫なのかな?)

 不安を感じる湊ではあったが、その反面これはチャンスではないかと思った。

(俺は男なのに彼女たちと共闘できるかもしれないのか)

「篠原さんさえ良ければの話だから、嫌なら嫌と言って構わないのよ?」

「いえ、大丈夫です」

 覚悟は、決まった。この世界について知ったとき、確かに思ったのだから。

 出来ることならば、彼女たちの力になりたいと、傷つかないように守りたいと。

 

「まだ右も左もわかりませんが、自分に力があるならばその力を活かしたいです」

 

「では、早速扶桑の方に手続きを済ませてくる」

 執務室から何処かへと立ち去った坂本をミーナと湊は呆然と見やる。

「大丈夫なんですか? 諸々の手続きって……?」

「ふふっ。気にしないで。まったく、これだから扶桑の魔女は……」

 ミーナの苦笑が全てを物語っていた。

 

 今、世にも珍しい男性ウィッチが誕生した。

 篠原湊は一体、魔女とネウロイの戦いの中で何を見るのだろうか…………。

 誰もこの時には知り得なかった――――

 

 序章 おわり

 
 

 
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