No.504209

Masked Rider in Nanoha 四十一話 解禁! ダブルアギトと光る杖

MRZさん

マリアージュを生み出す事が出来る存在を探して海底遺跡へ足を踏み入れる光太郎達。そこで彼らを待っていたのは、予想外の出来事だった。
怪人に奇襲される翔一達と邪眼と相対する光太郎達。互いに相手の能力に苦しめられる中、遂に二人のライダーがその力の一部を解放する……

2012-11-04 08:33:51 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2762   閲覧ユーザー数:2084

「海底遺跡かぁ……行ってみたかったなぁ」

 

 食堂での仕込み中、突然そんな事を呟いた五代へ真司が不思議そうな視線を向ける。彼は光太郎から聞いていたのだ。五代が留守番を頼まれた際、あっさりと承諾した事を。

 

「あれ? でも五代さんすんなり留守番を引き受けたって聞きましたけど?」

「いや、だって光太郎さんが残ってくれって言ったからさ。ライダーの先輩が信頼してくれたなら応えたいって思うじゃん。それと、俺が行ったら……調査しないで冒険しちゃうし」

 

 五代の笑みと共に告げられた言葉に真司も納得して苦笑。今、光太郎と翔一はライドロンを使ってミッド湾岸地区にある海底遺跡に調査に向かっている。更にアギトとツヴァイもそれに同行し、現地に到着次第、転送魔法の座標を送信するなどの連絡役をする事になっていた。

 五代は真司と共に六課に留守番。ヴァルキリーズは希望する者だけが海底遺跡の調査班に加わる事になっている。実は六課に残る事が確定しているのはスターズだけ。ライトニングは転送準備が出来次第、遺跡へ向かう事となっている。

 

 そんな二人とは違い、チンクとセインはリインと共に忙しく働いている。とはいえそれはいつもの仕込みなので慣れたもの。リインとチンクは互いに食材を刻んでいて、セインは五代の代わりにカレーの番だ。

 そしてセッテはヴィヴィオの世話をしていて二人してどこか楽しそうに笑っている。あの休暇騒動から既に二日が経過し、もうヴィヴィオはすっかり明るくなっていた。今はここ食堂で六課の新しいマスコットキャラとしての位置を確立しつつある程に。

 

「ねぇねぇ、セッテはどうして五代さん達のお手伝いしないの?」

「ヴィヴィオが退屈しないように相手をするためだ」

「え? ヴィヴィオはみんなが働いてるところを見てるだけで楽しいよ?」

「そうなのか? なら、私も姉上達を手伝ってくるとしよう。ヴィヴィオはここで大人しくしていてくれ」

「は~い」

 

 ヴィヴィオの言葉に意外そうな表情を見せるも、それならばとセッテは厨房の方へ歩いて行く。その背中を見送るヴィヴィオはにこにこと笑っている。彼女は当然のようになのはと共に寝る事になり、基本昼間は五代達の目の届く場所である食堂にいる事になった。

 もし外に行きたいと言い出した時はザフィーラが相手をする事になっている。そのため彼も昨日から食堂に常駐していた。そんな彼の仕事はヴィヴィオの監督役だけではなく必要に応じての力仕事だ。

 

 セッテを加え活気付く厨房。ヴィヴィオはそれを眺め、本当に嬉しそうに笑っている。そんな食堂へ思わぬ客人が現れた。

 

「こんにちは」

「真司、久しぶり」

「メガーヌさん! ルーちゃんも!」

 

 アルビーノ親子の来訪。それに真司だけでなくチンク達も驚いた。五代やリイン達はメガーヌはともかくルーテシアと会った事はない。だが外見から娘である事は悟った。そして、二人は厨房へ近付いて笑みを見せる。

 メガーヌに促されてルーテシアが初対面の者達へ挨拶を兼ねた自己紹介をし、それに五代達が同じように返す。そこへザフィーラがヴィヴィオを連れて近付いた。それに全員の視線が向く。ザフィーラは、ルーテシアとヴィヴィオが歳が近いので友人になってもらおうと考えたのだ。

 

 六課にはエリオとキャロぐらいしか幼い者がいない。しかし二人はもう局員として働いているため、あまり子供らしくない部分が多いのも事実。なので学生をしているルーテシアならばいい相手になると思ったのだ。

 五代達もザフィーラの考えが何となく分かったのかルーテシアへヴィヴィオを紹介した。そして、それを受けてヴィヴィオが笑顔で元気良く名前を名乗り、その活発さにルーテシアが微笑んだ。

 

「私はルーテシア。呼びにくかったら、ルーでいいよ。よろしくね、ヴィヴィオ」

「うん。よろしく、ルー」

 

 微笑み合う二人。それを見て誰もが笑顔になる。と、そこへタイミングを計ったのかのようにエリオとキャロがやってきた。遺跡への転送準備が整った事を受け、これから出発する事を五代達へ伝えるのと遺跡調査へ加わるセッテを呼びに来たのだ。

 戦闘向きであるセッテが遺跡調査へ向かうのには訳がある。それは光太郎の勘が告げたものが意味する事にあった。邪眼がイクスヴェリアを狙っているのは間違いない。故に遺跡では確実に怪人との戦闘になるだろうと予想したのだ。

 

 代わりに留守番するヴァルキリーズは基本的に戦闘に不向きな者達だが、ノーヴェとウェンディは残る事にしているしディエチも残る。そのため、ヴァルキリーズもそこまで戦力を失う訳ではなかった。

 そして当然ながらエリオとキャロもルーテシアと出会い、軽い自己紹介をする。特にキャロとルーテシアは共に召喚魔導師。その共通点に二人は喜び、機会があればゆっくり話をしようと約束しエリオ達はセッテと共に食堂を後にする。

 

 ルーテシアはそれを手を振って見送り、同い歳の友人を得た事を喜んでいた。それだけではない。キャロもエリオも局員。自分もその気になれば今にでも局員になれるという事を確認させてくれる存在でもあったのだから。

 メガーヌはそれに気付いてやや困り顔をするも、ルーテシアはそれを分かっているのかこう告げる。ある意味で母親を安心させつつ諦めさせるような内容を。

 

「大丈夫。局員になるのはまだ先だから」

「まだって……もう、なる事は決まってるのね」

 

 ルーテシアの言い方にメガーヌは苦笑する。同じように五代達も苦笑した。何故ルーテシアが局員を目指すかを知っている真司達。一方五代達はそれを知らないが、おおよその見当はついたのだ。

 そう、母であるメガーヌに憧れてだろうと。どこでも子は親を見て育つのだなと、五代は思った。彼も父の背を見て冒険家になったような節がある。やはり血は争えないのだろう。知らず子は親の影響を受けるものなのだ。

 

 そんな事を五代が考えている横では真司がルーテシアへアギトが今はいない事を伝えていた。それに少し残念そうな表情を見せるも、なら帰ってくるまで待っていると返しルーテシアはメガーヌへ視線を向ける。

 それにメガーヌも笑みを見せて頷いた。ただし、はやての許可が下りなければ駄目だと告げて。それを聞いたルーテシアはなら問題ないと笑った。それに全員が不思議顔。だが、リインはその理由を悟った。

 

「もう主に許可を取ったのか?」

「はい。始めは驚かれましたけど、お母さんの返事と同時に許しをもらいました」

「マルチタスク、か。ルーお嬢さんも大した物だ」

 

 チンクの言葉にルーテシアは小さく笑い、真司が抜け目ないと言って笑った。こうしてアルビーノ親子は六課に滞在する事になり、ヴィヴィオはルーテシアから魔法学校の話などを聞いて学校への興味を持つ事となる。

 

 一方、なのは達チームスターズはいつものようにデスクワークを片付けていた。しかし、そこにチームライトニングの姿は当然ながらない。スバルとティアナは空席となっている向かい側を見つめ、揃って同じ事を思っていた。

 

(確かに場所が場所だから、私達も六課を離れちゃ不味いって分かってるけど……)

(海底、か。何かあっても、もしかしたらすぐに援護に行けない可能性もあるし……)

 

 ヴィヴィオという邪眼が狙うだろう存在。それがいる今、六課の防備は一層気を配らないといけない。その事は分かる。だが、やはり不安があるのだ。今回の戦場になるかもしれない場所には。

 そうやってスバルとティアナが不安を微かに抱く中、なのはとヴィータはそこまで不安を抱いていなかった。その理由は当然信じているからだ。RXを、アギトを、そしてライトニングの者達をだ。特になのはとヴィータは、自分達隊長陣四人を相手に五分以上の戦いをしたRXの力を知っている。故にそこまで不安はない。

 

「……いざとなったらリインかアギトがシグナムとユニゾン出来る。戦力的にはかなりマシだ」

「そうだね。それに、万が一の時には、ね」

 

 なのはの言い方にヴィータは何かを思い出したのかどこか不安そうにではあるが頷いた。そう、今回アギトが参加する事になったのには訳がある。それは翔一との関係での話。あの四つ巴の模擬戦で判明した事実。

 それがある種での翔一とアギトの奥の手。ただし、実戦で使った事はないため未だにその力は未知数。そして体に掛かる負担も同様に。故にヴィータには若干の不安がある。だから彼女は出来るならそれを使う事のない事を願うのみだった。

 

「ああ……でも、出来れば使わないで済んで欲しいけどな」

「ふふっ、翔一さんが心配なんだよね? ヴィータちゃん」

「ばっ!? ちげ~よ!」

 

 なのはの指摘に顔を真っ赤にして反論しようとするヴィータ。それをなのはは笑みを浮かべて聞いている。そんな二人を見てスバルとティアナは揃って苦笑した。やはり隊長陣も人の子だと思って。そして一度だけ顔を見合わせると彼女達は小さく頷いて顔をなのは達へと向けた。

 

「「なのは隊長、ヴィータ副隊長、仕事してください」」

 

 そのどこか事務的な声に二人は動きを止め、咳払いをすると何事も無かったかのようにデスクワークを再開した。それを見て起きそうになる笑いを押し殺しながらスバルとティアナも努めて真面目な表情で仕事を続ける。そんなどこか和やかな雰囲気の中、スターズは平和に過ごすのだった……

 

 

 ミッドチルダの湾岸地区。そこのとある海底にそれはあった。古代遺跡。それはこれより少し先の時代に発見されるはずのもの。とはいえ、それはここでは語るまい。ライドロンはその強固な顎の部分を使い、そこの一部に穴を開ける。そこへその車体を入り込ませ海水が浸入しないよう食い止めた。

 そしてRXとアギトがまず降り立ち、その環境が常人でも平気なものかを確認する。それを確かめ、二人がライドロンへ視線を向けるとそこからツヴァイとアギトが現れた。四人は周囲を見渡して崩壊の可能性がない事を確認し、早速とばかりに転送魔法の準備に入る。前回遠距離通信が妨害された事を受け、今回は念のために通信手段を電波に頼らないものにした。それは……

 

<アクロバッター、こちらは無事到着した。そう、ノーヴェちゃん達へ伝えてくれ>

<リョウカイダ>

 

 キングストーンを使った連絡。これならば大抵の妨害手段では邪魔されない。格納庫には整備員達と共にノーヴェ達もいる。後はそこから報告してもらえばいいだけ。RXが連絡を終えたと同時に光太郎へと戻る。それに呼応し、アギトも翔一へと戻った。

 その間にもツヴァイとアギトが転送魔法の準備を進めてそれを終える。最初にここへ来るのはライトニングになっていた。その後、ヴァルキリーズの希望者達となるのだ。

 

「凄いな……これ、本当に昔の人の手で作ったんですよね」

「ああ。ここの世界の人達も、古代には想像も出来ない超技術を有していたのかもしれない」

 

 通路の壁に手を当て翔一はしみじみと呟く。光太郎もその凄さに感じるものがあるのかやや感動するように答えた。すると、そんな二人へツヴァイがやや自慢げに胸を張って告げた。

 

「そうなのですよ。古代には、アルハザードと呼ばれる超技術の世界があったのです」

「何でも、下手すりゃ死人さえ生き返らせる事も出来たんじゃないかってな」

 

 ツヴァイの言葉に続いて告げられたアギトの言葉に翔一と光太郎が揃って息を呑んだ。人の蘇生。それは確かに超技術だ。だが、それは翔一にはあの神のような青年を思い起こさせるものがあったし、光太郎には歴代ライダーから聞いた改造人間技術の大本を思い起こさせた。

 どちらにも共通するのは、実在すれば人の手に余る技術だという事。そして、命の尊厳にも大きく関る事だと思った。簡単に死人が生き返る。それは、命の尊さを軽視する事になりかねない。命は一つ。だからこそ重く儚い。故に守るのだから。

 

 そんな風に考える二人に気付かず、ツヴァイはアルハザードが今は滅んでしまった事を話していた。アギトもある程度は知っているのかそれに相槌を返している。そこへ転送魔法陣を使ってフェイト達チームライトニングが現れた。

 

「到着、だね」

「ここが……海底遺跡」

「凄いです……」

「翔一、南、怪人の気配はあるか?」

 

 軽く笑みを見せるフェイト。エリオとキャロはそれに頷くも子供らしく周囲の光景にやや驚きを見せた。シグナムはすぐにライダー二人へ敵の事を尋ねるところがらしい。それに光太郎達は首を横に振るもその表情が緩む事はない。

 そう、光太郎の勘が、翔一の何かが告げているのだ。ここで何かが起きると。それを二人の表情から察し、シグナムも表情を引き締める。そして後から来るヴァルキリーズと翔一、アギトが行動を共にし、ライトニングと光太郎、ツヴァイが共に行動する事で一致し先に光太郎達がその場を後にした。

 

 それを見送り、アギトは翔一を見つめる。実は彼女にはある考えがあり、それを彼へ伝えておこうと思っていたのだ。

 

「な、実は翔一に相談があるんだけど」

「何?」

 

 アギトは翔一へある事を耳打ちする。それに翔一は頷いて真剣な表情でその時はお願いすると返した。それにアギトは凛々しい表情で頷いた。そこへ丁度よくトーレ達が現れる。ヴァルキリーズの参加者はギンガ、ドゥーエ、トーレ、セッテ、オットー、ディードの六人だ。

 残りは六課に残り有事に備えている。指揮官役のオットー、前線役のギンガにトーレとセッテ。護衛役のドゥーエとディードという考えの編成だ。彼女達はその場に残っていた翔一達を見てどういう事かを察した。

 

「翔一さんとアギトが私達と行動、ですね?」

「うん。よろしくね、ギンガちゃん」

 

 ギンガの確認に頷く翔一。それを聞いてセッテが少し困った顔をして告げる。

 

「……変身したらややこしいですね」

「またそれか。だが確かにそうだな。オットー、その時はどうする?」

 

 その発言に苦笑しつつも意見を聞こうとトーレは指揮官役の妹へ問いかけた。それにオットーは僅かに考え、簡単に解決策を思いつく。

 

「その際はライダーと呼びましょう。それなら混乱せずにすみます」

「単純だけど、いい案だわ。それでいきましょ」

 

 ドゥーエが誉めるようにオットーへ視線を向ける。それに恐縮ですと苦笑を返すオットー。翔一はその呼び方にやや嬉しそうな笑みを浮かべた。ライダーと呼ばれる事を少しだけ誇りに思ったからだ。

 今の翔一にとって仮面ライダーの名は憧れでもある。名乗る事に躊躇いはないが呼ばれる事はあまりない。故に、嬉しく思うも気持ちを引き締めた。その名に恥じないようにしなければと。こうして翔一達も歩き出す。向かうは光太郎達とは逆方向。冥王イクスヴェリア。その存在を捜すために……

 

 

 周囲に気を配りながら慎重に歩く光太郎。古代の遺跡には罠などがある可能性もある。そう考えての事だ。魔法などで探査する事も出来るが、何よりも確実なのは己の感覚。そのため、光太郎は鋭い眼光で辺りを見回していた。

 フェイト達もその後ろを歩きながらなるべく下手な事をしないように壁から離れて歩いている。先程から会話はない。ツヴァイもシグナムの肩に乗りながら真剣な表情で周囲を見渡していた。

 

「……妙だ」

 

 そんな時、ふと光太郎が呟いた。それに全員が視線を向ける。光太郎は足を止めフェイト達へ振り向く。

 

「さっきから風が流れているんだけど、ここにきてそれが俺達の来た方にじゃなく違う方向に流れている。どこかに通風孔があるのか……もしくは……」

「他の場所から侵入した者がいる。そう言いたいのか?」

 

 シグナムの言葉に光太郎は無言で頷いた。それに全員の表情が険しくなる。その可能性がある者はただ一つ。故に、先程よりも気を引き締めて歩き出す。風の流れる方向へと。しばらく進み、光太郎達は大きな広場のような場所へ出た。

 そこにはあるものがあった。それは少女が入ったポッドらしきもの。それを見た光太郎達は直感で悟る。それがイクスヴェリアだと。しかし、周囲にはそれを操作するような物さえなく、どうやって目覚めさせるかが分からなかった。

 

 全員で隈なく周囲を調べるもそれらしい物は見つからず、光太郎達は困り果てた。無理矢理出そうとすればどうなるか分からない。しかし、グズグズしていたら怪人達がやってくる可能性もある。

 どうするかと六人で考え始めたその時だ。遠くの方で爆発音らしきものが聞こえたのは。それに全員が頷き合い、戦闘態勢を取る。ここにも敵が来るとそう感じたからだ。ポッドを守るようにその前に陣取り、フェイト達の視線が光太郎へ注がれる。

 

「変……身っ!」

 

 RXへ変わり、その能力を以って周囲を探る。するとその聴覚が複数の足音を捉えた。しかも、その足音のほとんどは同じ存在の物だ。それが意味する事を理解しRXは告げる。マリアージュ達が来る、と。

 それを聞いてツヴァイがシグナムとユニゾンする。怪人も相手する可能性がある事を考え、出来るだけ準備をしておくに越した事はないと判断したのだ。それにツヴァイ単身ではマリアージュ達を相手にするには力不足が否めないのだから。

 

 だが、その時RXは妙な感覚を覚えた。それはあの発電所で感じたもの。それが意味する事を理解しRXはまさかと思いながらもフェイト達へ呼びかける。

 

「みんな、気をつけるんだ。何か嫌な感じがする」

「分かった。前線はRXと私がする。エリオ、お前はキャロの護衛をしろ」

「了解ですっ!」

「キャロは支援をお願い。私はRXとシグナムの援護に回るから」

「はいっ!」

 

 それぞれに勇ましく返事を返し、エリオもキャロも身構える。それに三人も頷き、視線を前方へと向けた。やがてそこへ複数の足音と共に複数のマリアージュと、フェイト達が予想だにしなかった相手が現れる。

 唯一その存在を予想していたRXは強く拳を握り締めた。だがその相手を知るフェイトとシグナムは息を呑み、初めて見るエリオとキャロは表情を恐怖に染めた。そこにいたのは……

 

「まさかと思った。だが、本当に貴様が出てくるとはな、邪眼っ!」

「その威勢。姿が変わったのは知っていたが態度は変わらんようだな世紀王よ」

 

 邪眼の言葉にRXは一歩だけ前に出る。そして、視線を少しだけシグナムへ向けた。その意味を理解し彼女は頷いてみせる。それを合図にRXは一人邪眼へと向かっていく。同時にシグナムもマリアージュ達へと向かって走り出した。

 フェイトもそれに呼応しマリアージュへ攻撃を開始。エリオは邪眼の威圧感を振り払るように頭を振る。そして彼はキャロを守るように構えてシグナムやフェイトの攻撃を避けて向かってくるマリアージュを睨みつけた。キャロはまだ恐怖に飲まれていたが、エリオ達の様子やRXが邪眼と戦う姿を見て何とか立ち直る。

 

「ハーケンセイバー!」

「はぁぁぁぁっ!」

 

 フェイトの放つ魔力の刃をかわしたマリアージュの一体をシグナムが胴薙ぎにする。そのまま彼女は即座に別のマリアージュへと向かう。それとほぼ同じくして起きる爆発。フェイトはそれを横目に、また別のマリアージュの相手をし始める。

 エリオはキャロのブースト魔法を受けながら単身マリアージュ相手に奮戦していた。それは、シグナムとフェイトが大半を抑えているために彼が相手するのは一体か二体で済んでいた事もあるが、それでも安全に対処出来ているのは彼自身の成長と言える。

 

「ストラーダ!」

”どうぞ”

 

 マリアージュは身動き出来なくなると自爆する事。それを理解しているエリオはその動きを制限するように動く。その狙いはしっかりと彼が守っている少女に理解されていた。故に、キャロはそれを見て力強く告げる。

 

「そこっ! アルケミックチェーン!」

 

 バインドの一種であるそれがエリオの相手をしていたマリアージュの動きを完全に抑える。それが振り解けない事を悟り、マリアージュは自爆する。エリオはそれを察知し、高速移動魔法で即座に離脱すると同時にもう一体へと槍を振るう。

 マリアージュをチームライトニングが完全抑える横でRXは一人邪眼と戦っていた。あの発電所ではいいようにやられた相手。それを相手にRXはある確信を抱いていた。

 

(いける……RXとなった今なら、俺だけでも邪眼を倒せる)

 

 そう思うも油断はしない。そう、警戒すべきは相手の強さではなくその数。ジェイルが六課に告げた邪眼の復活方法に関る情報。それによれば、まだ邪眼は十一体いるのだから。

 つまり、この邪眼さえ捨て駒に出来る。おそらく本体となるのは最後まで残った個体なのだろう。故に、この邪眼は自分のデータ取りに利用する可能性が高い。そこまで考え、RXは吼えた。

 

「邪眼っ! 貴様が何を考え、何を企てようとしても無駄だ! 俺達仮面ライダーがいる限り、悪が、闇が栄える事はないっ!」

「ほざけ!」

 

 互いの手を押さえ合っていたRXと邪眼だったが、その声をキッカケに離れる。その際RXへ邪眼が電撃を放つ。それを彼は間一髪避け地を蹴った。そして邪眼の体を押さえるようにしながらその巨体を投げる。

 そして更に追い打ちとして再び地を蹴り、立ち上がる邪眼へ勢い良く拳を繰り出す。そう、RXパンチを。それは彼がこれまで怪人を倒してきた流れ。それに気付き、エリオ達三人には期待が浮かぶ。だがフェイトとシグナムには不安しかない。

 

 そんなシグナムの反応をユニゾンしているツヴァイが疑問を感じた。

 

”どうしたですかシグナム。これでRXが勝ったですよ?”

「いや、おそらくあれでは終わらん」

「そう……あの時だって、私達にクウガやアギトが何度も攻撃を決めてやっとだったんだ」

 

 シグナムの言葉を聞いてフェイトが噛み締めるようにそう続く。それを聞いたエリオとキャロが信じられないという表情を浮かべた。丁度その時RXがその蹴りを邪眼へ叩き込んだ。捻りを加え、繰り出される両足によるライダーキック、RXキックが邪眼に見事直撃する。

 その衝撃に邪眼は地面を滑るように飛ばされた。その勢いが終わると同時に邪眼が膝を地面につける。しかし、それだけだ。邪眼は何事も無かったように立ち上がったのだ。

 

 それを見てエリオ達三人に戦慄が走る。一方、RX達はどこかでやはりと思っていた。だからだろう。RXはもう一つの自分の必殺技を使うしかないと感じていた。それは、多くのクライシス怪人を倒してきたもの。破られた事はあるが、それでも彼が絶対の自信を持って使える技、

 しかし、それを使う前に邪眼が再び攻撃を開始する。それにRXは対処するために動くしかない。電撃を駆使しながら接近されれば格闘戦もこなす邪眼にRXも中々それを使う隙を見出す事が出来ない。

 

 シグナムとフェイトは残ったマリアージュを早く片付けRXの援護に向かおうとする。だが、焦りが大きな痛手を生じる可能性がある事を彼女達も知っている。それ故、二人は急ぎつつも冷静に対処しようと心掛けた。エリオとキャロもRXの技が邪眼を倒せなかった事に受けた衝撃を何とか振り払い、フェイト達の援護にシフトしつつあった。

 

 周囲が奮戦する中、RXは邪眼に苦戦しながらも何とか隙を作り出そうとしていた。全ては邪眼を倒すために。

 

 

 光太郎達とは逆を進んでいた翔一達も罠を警戒し周囲に気を配りながら歩いていた。ヴァルキリーズは戦闘機人としての能力を最大限活用しながら周囲を調査し、翔一はアギトを肩に乗せ警戒するように歩いている。

 すると、翔一が突然立ち止まった。アンノウンを察知する時と似た感覚。そう、発電所での感覚を感じたために。そんな時、ディードが何かに気付いて足を止めた。そこにあったのは巨大な蜘蛛の巣。正確には大きな穴が糸で塞がっている光景だ。それを見て誰もが悟る。既に怪人がここへ侵入していると。そう、フュンフの糸だと思ったからだ。

 

「みんな、気をつけて! ここには……」

 

 翔一が自分の感じた事から警戒を呼びかけようとしたその時だ。何かが翔一達へ迫っていた。それをいち早く察知したのはオットー。彼女は全員が視線を穴へ向けている間も周囲の索敵などを怠らなかった。司令塔として常に現状を把握し、どんな事態にも対処する事が出来てこそ指揮と言える。そう彼女はシャマルやグリフィスから教わっていたのだ。

 

「IS、レイストーム!」

 

 迫り来る閃光を同じ閃光で迎え撃つオットー。それを見て、全員が身構える。翔一も即座に変身の構えを取った。

 

「変身!」

 

 ライダーへと変わった彼は視線を前方の相手―――黒髪のオットーであるアハトへ向けた。やや押され気味だったレイストームを見たギンガがリボルバーシュートを加えたのはその時だ。相殺される閃光と閃光。それに少しだけ視線を動かし、アハトは無機質に呟いた。

 

「さすがに気付く……か。少しはダメージを与えたかったんだけど」

「オットーのコピーか。たった一人ではないだろう。早くフュンフを呼んだらどうだ?」

 

 トーレの言葉にアハトは呆れたような表情を見せる。まるで彼女を馬鹿にするかのように。その反応にライダー達は疑問を抱いた。

 

「フュンフ? ああ、その糸を見たからか。残念ながらあの役立たずはいないよ。二回も失敗したからね。今はラボで大人しくしているさ」

「何だと? では、あの糸は一体……」

「セッテ、可能性は二つよ。一つは別の怪人がいてそいつの能力。そしてもう一つは……」

 

 そこでドゥーエは視線をアハトへ向ける。それにアハトが邪悪な笑みを返した。それに全員の緊張感が増す。

 

「そう、あれは僕がやったのさ。創世王様に頂いた……この姿で!」

 

 アギト達の目の前でおぞましい姿へ変化するアハト。その変貌に誰もが嫌悪感を抱く。もう何度となく見てきた怪人達の姿。だが、それでもそれに対する生理的嫌悪感は消えない。むしろ強くなるぐらいだった。生命を弄ぶかのような存在を作り出す邪眼や、その姿や力に対し何ら疑問も悲しみも抱かぬ怪人達に。

 

―――覚悟しろ。僕はフュンフのような失態はしない。

 

 そこにいたのは蜘蛛の怪人。だが、それはフュンフとは違う。そう、猛毒で知られるタランチュラだ。かつてゴルゴム怪人にもハチ怪人とツルギバチ怪人という親戚関係の怪人がいた。邪眼は元々世紀王。故に、その事を知っていたのかもしれない。似た様なモチーフから生まれた怪人の事を。

 

 アハトはそのおぞましい顔にある口から何回も糸を吐く。それを回避するライダー達。糸は網のように展開し接着した部分を軽く腐食させる。毒が混ざっているのだ。それを横目で確認し、警戒すると共に誰もが攻撃に移ろうとするのだが、アハトがその手足から閃光を放った。レイストームだ。

 

「チッ!」

「手足からね……でも!」

「……遅い」

 

 トーレにドゥーエ、セッテは軽々とかわしてアハトへ視線を向け、反撃に転じようと動き出す。

 

「相殺する必要もないね……」

「ええ。これなら……」

「目を閉じてでも避けられるわ!」

 

 その狙いの甘さを訝しむオットー。同じような印象を抱いたのだろうディードも彼女の意見に同意し、ギンガは疑問を抱く事なくトーレ達に遅れるなと走り出した。

 

「おっと!」

「はっ!」

 

 やや余裕さえ見せるアギト。それにライダーも続くようにそれをかわす。そんなライダー達を見つめ、アハトは何もしようとはしない。トーレ達が揃って攻撃に転じるのを見ても、だ。ただ悠然とそこに立っているだけ。それに気付いてオットーとライダーは同時に嫌な感覚を覚える。

 そして、オットーが何かに気付いたように表情を変えて後方を振り向いた。それにライダーもつられるように顔を動かし言葉を失う。そこには先程吐かれた糸が網のように展開していたのだ。放たれた閃光はそこへ向かっている。

 

「しまったっ!? あの糸にはこういう意図があったのか!」

 

 閃光は網に当たってその角度を変えたのだ。それらは計算されたかのように後方からライダー達を襲う。その速度を初撃よりも速めて向かっていく閃光。それは完全にアハトへ攻撃しようとするトーレ達を狙っている。それを瞬時に理解したオットーは慌てて振り向きながら叫んだ。

 

「姉様達っ! 回避をっ!」

「もう遅い……」

 

 オットーの叫びに重なるアハトの声。そしてその前方に同時に着弾する幾筋もの閃光。それらはアハトに攻撃しようとしていたトーレ達へ殺到し、轟音を響かせる。オットーにディード、それに二人のアギトは攻撃に転じようとしていなかったため何とか回避出来た。

 しかし、それでも何とかだ。おそらく攻撃しようとしていたトーレ達は避ける事が出来なかっただろう。そう思い、ライダーは拳を握り締める。オットーも同じように拳を握り、自分が気付く事が出来なかった事を責めるように唇をかみ締めた。

 

 だがその時、一瞬だが彼女の表情に驚きが浮かぶ。しかしそれをすぐに消し悔しそうなものへ戻した。そんな二人とは違い、アギトは糸が相手なら自分の出番とばかりに後方で網を作る糸へ向かった。

 

「アタシが全部焼き尽くしてやる!」

 

 その声と共に生まれる炎が糸を包む。これで無力化出来た。そう彼女が思ったのを嘲笑うかのような光景がそこにはあった。

 

「なっ!?」

「フュンフの物と同じ手段が通用するなんて思わない事だ。言ったはずだ。僕はフュンフとは違うと」

 

 アハトの糸はアギトの炎では燃えなかった。それに衝撃を隠せない彼女を小馬鹿にするようにアハトはそう告げた。それに悔しそうに表情を歪めるアギトだったが、何を思いついてライダーの傍へと移動する。

 それを見つめながらもアハトは攻撃しようとはしない。ただ、トーレ達がいた場所を踏みつけながら前に出る。そう、今アハトの前にライダーが立ちはだかっているのだ。下手に動けば痛手を受ける。レイストームを使っても、ライダーはそれを完全に見切り反撃を繰り出す。反射させて当てようとしても、その時間だけでライダーには十分な時間となるだろう。

 

 そこまで分かっているからこそアハトは迂闊な動きはしない。自分は他の者達とは違う。その思いからアハトは比較的慎重に行動していた。しかし、そこへ閃光が襲い掛かる。オットーの攻撃だった。

 オットーは冷静さを欠いたような表情でアハトへレイストームを放っていた。ディードはそれを止めようとしているが、聞く耳持たないとばかりにオットーは感情のままアハトへ攻撃を続けた。

 

「よくも姉様達をっ!」

「オットー、落ち着いて!」

 

 そんなディードへオットーは微かにだが視線を向けた。それを見ただけでディードは双子故に何かを悟る。だが、それを表情に出さぬように努め、必死にオットーを止めようとした。

 

「……ふん。怒り、というものか……くだらない」

 

 攻撃を受け止めながらアハトは二人の事を吐き捨てるように呟いた。ライダーはオットーの様子を見て攻撃に参加しようと動きを見せたが、それはアギトのある提案によって止められる。

 

「ライダー、アレを試してみようぜ。アレならもしかしたら……」

 

 アギトの告げる予想を聞きライダーは頷いた。そして、視線を一度だけオットー達へ向ける。するとディードが少しだけ彼へ視線を向けた。その視線が託すようなものだった事にライダーは軽く驚くも、それに応えようとばかりに小さく頷き返して動き出す。

 目指すは先程アギトが燃やせなかった糸の網。そしてその前に立つとライダーは片手でベルトの側面を叩く。それがその体を赤く変える。炎を司るフレイムフォームだ。更に、二人のアギトは声を揃えた。

 

「「ユニゾン・イン」」

「何だとっ?!」

 

 アハトの動揺を見たオットーはちらりと視線を相手から外し、その後方の瓦礫へ動かした。それを相手に気付かれないように戻すと彼女はディードへ目配せをする。それに互いしか分からないぐらいに頷きを返し、ディードは静かに時期を窺う。

 ダブルアギトはユニゾンを成功させた。そう、あの模擬戦で彼女は感じ取ったのだ。フレイムフォームにも自分との適正があると。とはいえ龍騎程の完璧さはない。だが、それでもシグナムと同程度の融合係数はある。フレイムフォームは炎を司る姿。更にその姿は剣士。烈火の剣精であるアギトにとって、これまたとない相手といえたのだ。

 

 ユニゾンしたライダーは体の周囲に炎を猛らせながらベルトからフレイムセイバーを取り出す。すると、それを手にした瞬間刀身が激しい炎で燃え盛った。アギトの炎熱魔法が火をつけたのだ。

 それを構え、網目掛けて振り下ろすライダー。その一撃が燃えなかった網を斬り裂き、燃やす。それに確信を得たライダーは居合いのような構えを取る。その鍔が展開すると同時にフレイムセイバーの炎が一層激しくなった。

 

”行くぜ、翔一!”

「分かったっ!」

 

 互いの気持ちを一つにするように声を掛けあう二人。そのまま二人は声を揃えて叫ぶ。

 

―――轟火! 一閃っ!!

 

 横薙ぎの剣閃はそこにあった網を全て綺麗に焼き払う。それにアハトが驚愕して僅かにだが攻撃の勢いが弱まった。それを感じ取り、オットーはここぞとばかりにレイストームを最大にし攻撃を相殺させて叫ぶ。

 

「今ですっ!」

「「「「「あぁぁぁぁっ!!」」」」」

 

 アハトの後方にある瓦礫を軽く吹き飛ばすため、再びオットーがレイストームを放つ。すると、そこからトーレ達が飛び出した。それと呼吸を合わせアハトへ立ち向かうディード。そう、あの瞬間オットーにギンガから念話が聞こえたのだ。全員何とか生きている。だが、ダメージも酷いため、何とか反撃するために上の瓦礫をどうにかして欲しいと。

 それを実行するため、オットーは賭けに出た。激情からレイストームを使ったように見せかけ、双子故の相互理解を利用してディードにも協力してもらい、アハトが周囲に意識を向ける事のないようにしようと。そこに丁度良くアギト同士のユニゾンが起き、これ以上無い援護となったのだ。

 

 後方と前方から同時に、しかも一方はもう倒せたと思った者達に襲われアハトは混乱した。そこへトーレ達の一撃が炸裂していく。

 

「もらったわ!」

 

 ドゥーエの爪がアハトの足を一本切断する。彼女はそのまま隣を駆け抜けた。それに続くようにトーレがブレードを構えて襲い掛かる。

 

「油断したな!」

 

 見事な攻撃は相手の足を二本斬り落とし続くセッテへ弾みをつける。負けてなるかと彼女も吼えたのだ。

 

「そこだっ!」

 

 セッテのブレードが二本を切り裂く。その視線は前方から向かって来る妹への期待を宿している。それに応えるようにディードは凛々しく叫ぶ。

 

「これでっ!」

 

 ツインブレイズが僅かとなった足を斬り落とし、最後の一本をギンガへと託す。ディードの言葉を受け、ギンガは残る力の全てを拳へ込めた。

 

「ラストっ!」

 

 最後の一本をその拳で打ち砕く。それを見届け、オットーがライダーへ視線を向けた。この中で一番攻撃力が高い存在であり、怪人の天敵である頼れるヒーローへ。

 

「ライダー、トドメをっ!」

 

 その声に応えるようにライダーはアギトとのユニゾンを解除し、グランドフォームへ変わって構えた。その頭部の角―――グランドホーンが展開し両足にその力が集約していく。それを感じ取り、ライダーは跳び上がった。そして失った脚部から火花を噴き出しているアハトへその必殺の蹴りを放つ。

 

「ライダーキックっ!!」

 

 その言葉と共に放たれた蹴りはアハトの体を完全に捉えてその体を吹き飛ばす。アハトが地面に激突するのから微かに遅れてライダーは着地した。彼はアハトへ体を横向きにしたまま、静かに蹴る前の姿勢で構えていた。そこへ聞こえてくる声がある。

 

「無駄じゃない……僕の死は……無駄じゃないっ!」

 

 ライダーの新しい力。それを見る事が出来た。そう思って叫ぶアハト。その叫びと共にライダーが体の向きを変え、アハトへ背を向けると展開していた角が元に戻る。するとそれを合図にするかのようにアハトは爆発し散った。

 

 その断末魔に誰もが思う。確かに無駄ではないと。そこに込めた意味は、これでまた平和へ一歩近付いてみせるからという強い想いだ。その時、戦いを終えたからかライダーは翔一へ戻るとすぐ倒れこんだ。

 それを咄嗟に支えるオットーとディード。おそらくユニゾンのせいだろうと誰もが結論付け、ギンガ達もダメージが酷いため六課へ連絡し誰かに迎えに来てもらう事にし、彼らはそのまま待機する事となるのだった。

 

 

 アギト達がアハトとの戦いを終えようとしていた頃、RXはフェイト達と協力しながら邪眼と対峙していた。しかし状況は劣勢といえた。その理由はRX達の後方にあるポッド。邪眼はそれを射線上に入れて電撃を放つために。

 RX達はそれからポッドを守るために動かざるを得なくなり、必然的に防戦一方となっていた。更にエリオとキャロ、ツヴァイは邪眼の威圧感からの疲れが出始めていて、フェイトとシグナムはそれに軽い焦りを感じていたのだ。

 

 RXも周囲の様子を見て、改めて自分の奥の手を出すしかないと決意を固め、邪眼へ飛び掛る。それは邪眼の電撃を誘うためのもの。案の定邪眼はRXへ電撃を放つ。それを受けて彼が落下するのを見て鼻で笑う邪眼。それ自体が彼の狙いと知らないためだ。

 

「「「「RXっ!」」」」

「どうやらここまでのようだな」

 

 急いで駆け寄るフェイト達。彼女達も邪眼同様RXの狙いを知らない。一人余裕の言葉を発する邪眼に構わず、RXは小声である事をフェイト達へ告げると再び立ち上がる。そして、その右手を高く上げ左手を腰に添えた。

 その直後RXから眩しい光が放たれる。それに邪眼は目を逸らした。その隙を突いてフェイト達が一斉にバインドを施す。狙いはその脚部。動きを封じるためだ。そしてそれを見届け、RXは左手をベルトへ回す。

 

「リボルケインっ!」

 

 ベルトから出現する輝く剣のようにも見える武器。それがRXの必殺武器、リボルケインだ。彼はそれを回すようにして右手に持ち替えるとその場から跳び上がる。邪眼はそれに気付いたのか目が眩み狙いがおぼつかないまま攻撃を放つ。それをRXはかわしながら邪眼へリボルケインを突き立てた。

 邪眼の体を貫くリボルケイン。それは邪眼の体から火花を噴き出させる。そのダメージに耐えながらRXへ電撃を放とうとする邪眼。しかし、その動きをRXは左腕で撥ね退けるように阻止して、更に残した右手で強くリボルケインを押した。

 

「グオォォォォッ!」

「邪眼、覚えておけ! 例え何度甦ろうと、俺達仮面ライダーがいる限り、平和の灯は消えんっ!」

「お、おのれぇぇぇぇっ!!」

 

 悔しげな声に力がない事を感じ取り、RXは邪眼から離れるとリボルケインで己の名を書くように動かす。その背後で全身から火花を散らしながら邪眼は仰向けで倒れこんだ。その瞬間、RXの動きが止まり、若干遅れて爆発が起きる。

 

 こうしてRX達も邪眼の襲撃を退けた。するとポッドが急に動き出したのだ。それに困惑するRX達の前で一人の少女が目を覚ます。

 

―――……何でしょう? 何か暖かな光を浴びたような……?

 

 少女―――イクスはそう不思議そうに呟くとすぐに悲しそうに目を伏せた。自分が目覚める事が何を意味するかを思い出したのだ。だが周囲にいるRX達に気付いた彼女はその顔を上げる。最初に目にしたRXの姿に驚いたイクスだったが、何かを察したのか特に何か言う事もなく周囲を見渡してマリアージュの残骸を見つけてこう尋ねた。

 

「貴方達の目的もマリアージュなのですか?」

「ああ、俺達はそれを利用する悪い奴らと戦っている。だからマリアージュを止める手段を教えてくれないか?」

 

 RXの優しく暖かな声にイクスも嘘ではないと感じたのだろう。分かりましたと頷いて歩こうとしたのだ。だが、その体は長きに渡る眠りのため弱っていたためふらついた。それを見たRXが咄嗟にその体を支え、そのまま抱き上げた。

 

「あ、その、申し訳ありません」

「気にしないでいい。さ、行こう」

 

 静かに立ち去るRX達。その後翔一達とそれを助けにきたスターズと合流し、光太郎はライドロンで、残りは転送魔法で海底遺跡を後にする。隊舎に戻った光太郎達はそこであった戦いを語り、邪眼自身も遂に動き出した事を知ってそろそろ決戦は近いと感じ取った。

 故に、今後はより一層の激戦を覚悟しなければと誰もが思う。翔一はイクスと共に精密検査のために医務室へ。ギンガ達も負傷が酷いため、念のためにジェイルがシャマルに協力する形で治療に参加する事になった。

 

 アギトは待っていたルーテシアと久しぶりの再会を果たし喜ぶと共に、彼女へ友人としてツヴァイを紹介した。その事にツヴァイは密かに喜び、ルーテシアもアギトに似た存在との出会いに笑みを浮かべる。

 ヴィヴィオは似たような境遇のイクスとの出会いに何か因縁めいたものを感じ、エリオやキャロへどういう子なのかをしきりに尋ねて二人を困らせる。そんな光景に周囲は笑顔になっていく。

 

 一方、光太郎は邪眼の行動からある推測を立ててそれをはやて達へ伝えた。それは、あの決戦が予想される日の事。そう、邪眼は自分の体を一つ残して全て投入する可能性があると。それに五代と真司は最悪一人でも邪眼と戦い倒してみせると覚悟を決める。はやて達も決して挫けないと誓い、その心構えを固めた。

 

 こうして六課はまた新たに決意する。複数の邪眼との戦いへの思いを固め、その心に火を灯す。希望という名の強き火を。

 

 

 見事邪眼とアハトを退けた六課。しかし、その代償としていくつかの情報を明かしてしまう事になってしまう。それでも、彼らに迷いはない。

 イクスを守り抜き、邪眼の手に残る切っていない手札はもう多くはない。そんな有利な状況だが、楽観視する者はいない。

 運命の日である公開意見陳述会。その日が、もう近くまで迫ってきているのだから……

 

 

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色々とやりたい事だらけだった今回の戦闘、いかがでしたでしょうか?龍騎よりも先にお披露目のダブルアギト。でも、おそらく出番はこれっきり。なので、豪華(轟火)一閃なんです。

 

自分としては、これでやりたかった事の半分ぐらいを消化出来たかなと思います。


 
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