No.503282 【デジナミ】楽しい場所は同じで【ハロウィン】秋水とさかさん 2012-11-01 23:52:55 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:896 閲覧ユーザー数:860 |
仕事もひと段落、とは言ったもののまだまだこれからが本番だった。
朝からの緊急企画参戦の準備が終わったのは昼をとっくに回った頃。ハロウィン企画にてクレセントゾーンへ移動するユーザーが多いので、仕事はそれだけでなく微細なデバックまでとは行かないメンテナンスを必要とする。それがピークに達するのは恐らく、夕方から夜の時間帯が多いと予想される。
嫌でもクレセントゾーンを拠点としている三谷は、その仕事を放棄する権利はなかった。休憩、と言ってもほんのささやかなコーヒーブレイクタイムを取った三谷が再びPCの前に座ったのは午後5時になる頃だ。
「さて……神代くんには予定通り緊急企画の進行役になってもらうけど……」
さながら後輩の企画に手を出す気はなかった三谷だったが、総責任者、真宮創佑に頼み事をされてはどうも手を引けなかったらしい。
【極秘イベント情報★吸血鬼出現!】という緊急企画を準備し、頑張る後輩へのプレゼント代わりに楽しく盛り上がってもらおうという事だ。
「お疲れ様です、三谷さん!」
こんなに働いても元気な姿が変わらない総責任者こと、真宮創佑が顔を出す。どうやらハロウィン企画の様子を見て目を輝かせているようだった。
「あぁ、お疲れ様。いつも楽しそうだな君は」
ふふっと三谷が笑みを零すと、真宮はそれ以上の笑顔で返してくる。
「そりゃぁもう! こんなにいっぱい人とデジモンが集まって、楽しくない訳がないでしょう! あぁー皆楽しそうで良かったぁ~」
「ふふ……」
疲れも吹き飛ぶほどの元気をもらう気がした三谷は思わずクスリと笑った。
そして気にかけていた企画の様子を聞いてみる。
「神代くんにプレゼントした企画だが、上手くいきそうか?」
「それそれ、暁良張り切ってたから楽しみなんですよー!」
「そうか。なら上手くいきそうだな」
クールそうに見えて案外熱くなるのが後輩の神代暁良という人物だ。
もう直ぐデジナミオンラインにてその緊急企画が始まる。その為、神代は既にこの場には居なくデジナミにログインしている。
神代とそのパートナーのギギモンに用意したハロウィン衣装は「吸血鬼」と「パタモン」の衣装。その衣装は実に神代に似合っている。クールな風貌には打って付けの役だった。
「真宮君は行かないのかい? やることは全て終わった筈だろ。イン出来る時に楽しんどかないとね」
「現場抜けても大丈夫かな……」
きょろきょろと周りを見渡す真宮に、デジヴァイスが鳴った。
『兄貴ィ! 少しっくらいは遊びに行こうぜー。オイラも行きてぇよ』
音だけを拾った三谷はその内容までは分からない。しかしなんとなく、その音は楽しそうな音色だった。
「あぁ……大丈夫だ。行ってくるといい」
「ありがとうございます三谷さん! ちょっと様子見がてら遊んできます!」
決まればすぐに実行。嬉しそうな背中を見送り、三谷は微笑んだ。
「まぁ……俺もすぐにそっちに行くんだがな」
今度は三谷のデジヴァイスからの声。
『スグイク、スグ』
クレセントゾーン、本場所での仕事が始まる。
勿論、仮装という条件付きで。
「これだけの人数がいれば……1/70の割合でハッカーがいそうなもんだな」
三谷とパートナーのルシーがログインしたのは真宮がログインして30分も経たない間。
すでにハロウィンパーティーの会場には様々なコスプレをしたユーザーとデジモンが集まり、談話や力試しなどが行われていた。
「個人の趣味も面白いものだな…… そろそろ時間か?」
「ジカン、ジカン」
そう言うと会場の照明が全て消された。そして舞台に現れたのはヴァンデモンやその他デビモン系のデジモン達、その中心には吸血鬼の姿をした神代と抱えられたパタモンの姿に似たギギモンがいる。
「レディースアンドジェントルマン! 善良な参加者の諸君、今宵は楽しいパーティーというのに、私に声を掛けないとはどういうことかね?」
盛大に盛り上がった舞台の様子をしばらく見てから、成功は間違いないだろうと確信した際には三谷は会場の中心から出た。
「真宮君や他の職員の仮装も見たかったけど……仕事の時間だな」
この時間帯の仕事というのは、ハッカーによりウィルスが仕込まれないか、ハッカーの動きがないかを見回る事だ。
緊急イベントのピコデビモンと間違われないよう、きっちりそれらしい仮装を施したルシー。それに合わせるように三谷も仮装している。それは「邪」と「善」のケルビモンの仮装だった。
「一大イベントにトラブルは付き物。ほら……さっそく怪しい人発見、だな」
ハタハタと忙しく羽ばたくピコデビモンを横に、会場の中にひときわ危ない雰囲気を見つける。
パートナーはブイモンのようだが、仮装はゴクウモンとガムドラモン。
視線を感じたのか、その1組はこちらに向かい歩いてきた。
「楽しい企画ですね。本当に、デジナミって凄いや」
「え……あ、あぁ。そうだな、楽しい夢の中のようだな」
思いがけない言葉に三谷は驚いた。
仮装を楽しんで、デジナミを楽しいと思えるこの大事な存在を。三谷は疑う事を止める。
「今夜はごゆっくり、楽しんで行くといい」
これ以上用もない、とあっさり横を通り去っていくと見回りを続けた。
そして騒がしいクレセントゾーンで見回るその間、考える事が2・3増えた三谷にルシーが飾りっ気のない言葉で聞いた。
「セイヤ、オシエロ、カンガエ」
「ん? ああ……」
相変わず知恵があるのかないのか分からないパートナーに苦笑しながら三谷は答えた。
「ユーザーとハッカーの違いについてだよ。結局は皆、デジナミが好きなんだろうなぁってさ」
「スキ、ミンナデジナミスキ」
「ふふっ、そうなんだろうな」
皆が楽しく夢を持てる場所を。
この企画が何事もなく終わることを信じて。
end.
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当日に間に合わなかったっ
遅れまして初めての交流です!
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