「な、なんでこのおチビちゃんを連れて来てるんだい!?」
「ノワールさん?」
「気が付く前に手当てを済ませて返すさ・・・」
傷を手当する様子から高町なのはのデバイス。レイジングハートもバリアジャケットをパージしてくれたので。
切り傷など怪我をした場所を次々と消毒して包帯を巻き。手当てを進めていく。
処置が終わると完全にバリアジャケットは解除され。元々来ていたオレンジの私服が光に包まれて現れた。
元の服に血が付かないように気をつかっていたのだろう。賢いデバイスだ。
それから再び高町なのはを横抱きに抱える。あのフェレットや高町士郎達も心配しているだろう。
「すまないがフェイトさん。ちょっと今晩か明日くらいまで帰れないと思う。俺の行動はプレシア・テスタロッサに報告して構わない。なんならエングレイブ傭兵団に連絡を入れてもらっても...」
最悪、俺は首だろうが。それも悪くない。
「いいえ、大丈夫です。構わず行って来てくださいノワールさん」
心でも読まれているのか。フェイトは全てを分かっているように優しく微笑んでくれた。
「・・・すまない」
そして俺は高町なのはを抱きかかえたまま再び夜の町に出る。
そして喫茶店 翠屋まで行ってから高町なのはの携帯で高町士郎に連絡を入れて迎えに来てもらい。
その場で事情を話そうとしたが家の方に招かれ。お邪魔することとなった。
「そうか、君がなのはを・・・・」
高町なのはを部屋に寝かせ。フェレットが補助系魔法が得意らしいのでに診察をしてもらい。
俺は高町家のリビングで高町家全員に高町なのはと戦ったことを伝える。
「すいません」
「いや・・対立した同士で「お前ッ!!」待ちなさい恭也」
「でも父さん!」
胸倉を掴まれ、高町なのはのお兄さんに殴られそうになったところを高町士郎が止める。
「君がなのはと戦ったのには訳があるんだろう?」
その言葉に頷いて。口を開く。
「俺の今回の仕事はジュエルシードを集めること。理由は雇われたからで、もちろん雇い主の事は言えない。俺達が集めているジュエルシードを封印するには高度な封印魔法と膨大な魔力が必要になります。俺は二つめの条件はクリアしてますが封印魔法の類は全然適正が無くて同じくジュエルシードを集めている仲間のフェイトが一人でこなす為に消耗が激しく。もう彼女が戦わなくていいように自分が戦い。
もう高町なのはが来ないようにと・・・フェイト・・・フェイト・テスタロッサは優しい子で。戦闘も出来る限り自分でなんでもしようとするので・・・・」
俺は戦わなければ本当にただの役立たずだ・・・。
「それでなのはに今日も警告していたんだね?」
「今日会ったのは偶然です・・・ですが「従ってはくれなかった?」結果から行って・・そうですね」
「戦いは一方的だったのかい?」
「はい・・・自分は魔導師の中でもベルカ式の魔導師。対人戦で強い特に一対一などでは最強の魔導師です。高町なのはは魔力こそ自分よりやや上回っていますが。技能などで自分が圧倒的に上回っています。なのに・・・最後まで・・諦めずに向かってきて・・・・俺は・・・」
「根気強さに負けてしまった?」
「ええ・・まあ・・・自分のデバイスが反抗したのが原因でもありますが」
「デバイス?なのはが持っている杖のようなものかい?」
「はい、自分のは少し特殊で【私のこと呼んだかにゃん?】こいつです・・・」
胸元からペンダントを取り出し指で弾く。
【あ、扱いが乱暴にゃん!子猫を触るかのごとく優しくしてほしいにゃん!】
「五月蝿いこの不燃物・・・というか音声制御のロックいつの間にか壊したろ」
【いいにゃん!いいにゃん!喋るのは時と場所を選んで控えているにゃん!】
「随分とお喋りなんだね」
「腹話術ではなさそうね~」
のんびりと高町桃子も会話に加わる。
「兎に角・・・こいつの所為で俺は高町なのはを仕留めそこなった訳です」
【もっと褒めてもいいにゃよ?】
「はぁ・・・アリガトウ」
【やっぱり扱いが酷いにゃん!?】
「そうかい。でもノワールの仕事的に君は良かったのかい?」
「はい、今ではそれが間違ってないと思います・・・」
【わ、私はう、嬉しいけどにゃんだかスルーされたにゃー!】
騒がしいクローシュを無視しつつ正座のまま床に手を付いて深く頭を下げる。
「本当に高町なのははもとい、高町家の家族の人には本当に申し訳ない事をした。すみません・・でした」
土下座まで行かないのは傭兵団の一員としての最低限残したプライドだ。
一方的な戦いとなったが魔法を放ちあった魔導師同士の戦い。謝罪を過ぎれば戦った相手への侮辱となる。団長から教えられた戦い上での心得だ。
「頭を上げなさいノワール」
「しかし・・俺はもう・・・」
優しくしてくれた彼等に俺は、どういう顔をしていいかわからない・・・。
「ノワールちゃん?私達は別に・・まあ、怒ってないといえば嘘になるわね。だけどお互いに合意の下で戦ったんでしょ?それにねぇ?美由希」
「うん、なのはもちゃんと手当てして送ってくれたしね。私はノワールちゃんを許すよ。恭ちゃんは?」
「俺は、正直言ってまだこいつを許せない・・・でも、悪い奴って訳でもなさそうだし・・・・」
「とか言って恭ちゃん?お父さんから聞いていた通りの子でちょっと気にいったんじゃない?」
「ば、馬鹿いうな!だ、誰がッ!」
「そういう訳だから、ノワール?」
どう言われてもやってしまった事には変わりはない。
「ですが・・・「よし!なら実力行使だ!」・・えっ?」
《ぎゅ》
「くぁすぇdrftgyふ!!?」
突然、肩を掴まれたかと思えば高町士郎に抱きしめられてしまった。
子供の俺に大人の力に逆らえず。その大きな胸板に顔を埋める結果となった。ちょっと苦しい・・・
「あー!士郎さんばかりずるい!わたしも~」
《むぎゅ!》
さらに背中から高町桃子に高町士郎と俺を挟むように抱きしめられ。
「あっ!お父さんも母さんもずるい!私も私も!」
《ミギュギュ!》
さらに横から高町美由希が来て。更に強く抱きしめられた。
三人分の体温が直に伝わってきて。それが心地よくて・・・・。
「うんっ♪ノワールちゃんは中々の抱き心地ねぇ~」
「そうだね~。あっ、ほっぺもしっとりフニフニだよ~母さん」
「あらあら~それはいけないわね~」
「わっ!ちょ、ちょっと!!や、やめてッ///」
左右の頬を二人に頬ずりされて。思わず逃げようとするがしっかりと3人に捕まえられ逃げられない。
「やめてと言うわりに嬉しそうだねノワール?」
「そ、それは!!・・・ううっ///」
高町士郎の言葉で最後には抵抗できなくなり。なすがままされるまま、その身を委ねてしまう。
「ほ、ほどほどにしなよ・・みんな」
一人離れて、高町家の長男が家族の横暴に呆れながら呟いていた。
「出てってくださいッ!!」
「・・・すまない」
そうだ、高町家の人とは和解できたが。まだフェレットのユーノという魔導師(?)が残っていた事を忘れていた。
高町なのはが寝ているなのはの自室に入ると同時に叫ばれ。思わず足を止めてしまう。
「ユーノ君?彼も...」
「分かってます!でも!僕は、本を正せば僕がッ!なのはを巻き込んだからッ!!」
高町士郎に返したユーノの言葉からどうやら自分に責任を感じてしまっているようだ。
この場に居ても彼(?)の神経を逆なでしてしまうだけだろう。
「・・・・俺は外で高町なのはの目が覚めるのを待ちます」
「ノワール・・・わかった。ユーノ君、あとはお願いするよ」
「はい・・・」
部屋にユーノを残して高町士郎と廊下に出て。俺は部屋の扉横に腰を下ろした。
「おいおいもう5月に入ってるけど。まだ夜は肌寒いよ?こんなところで居たら風邪を引くと思うんだが?」
「大丈夫ですよ。俺にとって暖かな家の中で生活という方が経験少ないですから、これくらいで風邪なんて引きません。それに今も着ている服は魔力で作ったバリアジャケットです。耐熱、耐寒、耐弾、耐刃、なんでもござれな便利な服です。雪山に居ても凍死もしませんよ」
「そうかい?・・まあ君がそれでいいなら其処に居て構わないけど。もう夜だしちゃんと寝るんだよ?」
「保障しかねます」
待つと言って寝てしまうのはどうかと思うので起きているつもりだ。
「はぁ・・・困った子だ」
そう言うと高町士郎は立ち去るが。しばらくして高町桃子と共に毛布を手に戻り。
徐に二人は俺を挟んで座り。俺と同じように壁に背を預け。さらに毛布を寒くないように体に被せてきた。
「なんの真似だ?」
「君が寝ずに待ってて親の僕達がゆっくり寝るというのもね?なあ桃子?」
「そうね~。ノワールちゃんと士郎さんが待つならわたしも一緒よ♪」
熱いものが目元に集まり体に掛かった毛布に顔を埋めて気取られないように声を出す。
「フンッ・・・勝手にしろ」
「「うん、勝手にするよ(するわ)」」
お互いにそれ以上言葉無かったが。二人とも体をこちらに寄せたまま。
フローリングの床の上だというのに暖かなままその日の夜は深けていった。
「んっ・・・寝てしまったか・・・・」
座って毛布に包まれたまま壁に背を預けてそのまま寝てしまったらしい。
既に廊下の窓から見える外は薄っすらと明るく。まだ早朝というくらいだろうか?
横を見ると高町士郎と高町桃子の二人は居らず。代わりに...
「むにゃ・・・ん~♪」
なぜか高町なのはが毛布に入り込んでおり。胡坐を掻いて座っている俺に抱きつくようにして気持ち良さげに眠っていた。
恐らくだがそれほど入り込んでから時間は立っていないだろう。
こんな事になっているのに起きる素振りも見せなかった自分に少し戦士としての自信を無くしてしまう。
「こんな姿を団長に見られたら笑われそうだな・・・」
「んんっ?・・・にゃ?」
俺の呟きに高町なのはが反応してゆっくりと目を開けた。
「ああ、起こしてしまったか?高町なのは」
「あ・・・あー!夢じゃなかったんだ!」
《ぎゅうぎゅう!》
なにが夢じゃなかったのか知らないが、突然、元気よく騒ぎ始め。
俺の首を絞めるかの如く抱きついている腕を締めてきた。
「お、おい・・そんなに動くと怪我に...」
「平気!ユーノ君が目立った怪我は治してくれたから!」
「それでも魔力ダメージは消えない。すこしは大人しくしろ・・・・というか俺が怖くはないのか?」
「うん?なんで?」
なんでってそりゃ・・・。
「いや・・あんなに・・・したのは俺なんだが・・・・それに最初会った時は殺そうとも」
「それは話したり、お互いの気持ちを伝え逢えなかったから仕方ないよ。にゃはは♪」
まるでそれが何でもない事のように笑い跳ばしてしまう高町なのは。
戦った相手と分かり合えないという俺の価値観を笑い飛ばされ。怒りも呆れも出ずに笑がこみ上げる。
「・・・・変な奴だお前は・・いや、お前達家族は、か?(フッ)」
「あー!笑わないでよ!なのはは真剣にそう思ってるんだよ!?」
「はいはい、そうだね~立派立派」
「む~!」
頬を膨らませてやや不機嫌な高町なのはの頭を手でポンポンと撫でてから真面目に言葉を続ける
「悪かったな・・・」
「え?」
「その・・これまでいろいろとさ。俺はずっと殺伐とした世界で生きてきたから、敵は殺せ、情けを掛けるな!ってさ」
「・・・うん」
「正直、俺は家族とか暖かな物を知らなかった。いや・・忘れていた
俺にとって傭兵団の仲間は家族みたいなものだけど。やっぱりどこか血生臭いし別物だ
だから平和な家族の営みとかそう言う物を全部置いてきてたんだと思う。
じゃないと俺の居たところじゃ生きていけないから」
「・・・そうなんだ」
「だからな?高町なのは。俺はこの仕事が片付いたらちょっと自分の生き方を考えてみようと思う。例えどんな形になっても」
「・・・・うん」
「でもまた、ジュエルシードが発動したら敵同士だ。だけど、前みたいな真似はもうしないと約束するよ
まあ、高町なのはがもうジュエルシード集めをやめて「それはできないの♪」だと思った」
「ユーノ君と約束したし。それにね?」
「うん?」
「フェイトちゃんともお話したいし。あっ!そうだった!名前!」
「名前?名前がどうかしたか?高町なの「それ!」?」
これまで何度も彼女の名前は言っているが。間違えていたのか?
「わたし高町なのは。親しい子はなのはって呼ぶよ?」
「なんだ、別に間違ってないじゃないか高町なの「なのは!」む?」
「わたし、ノワールさんと友達になりたい。だから名前で呼んで?」
「そういう事か。でも別に間違えている訳じゃ「なのはだよ!」・・・」
なんだろう・・俺が名前で呼ばないのが悪いのか?フルネームはダメ?
呼び名を強要するとは見た目と違って強引な性格だ
「わかったよ・・・。なのは」
「う、うんっ!ノワールさん!・・・そういえばノワールさんって何歳なの?」
「俺か?俺は・・大体8歳から9歳ほどかな?正確な誕生日は知らないからね」
「ええっ!?同い年だったの!?」
「俺を幾つに見てたんだよ・・・背も変わらないだろうが」
まあ、精神年齢はずっとそれより上ではあるが・・・
「え、えっと!ノワールさんは・・さん付けは変かな?・・・ノワールちゃんってしっかりしてたからもっと年上かと思ってた!」
ちゃん?もしかしてこいつ・・・
「なあ?年齢についてはもういいんだが」
「にゃ?」
「俺の性別言ってくれるか?なのは」
「えっ?ノワールちゃんは女の子でしょ?」
ああ・・・やっぱり・・・・
「高町士郎め、養子にしたいとか家族に言い振らしている割りに肝心なところ伝えてないな」
「?」
頭に?を浮かべるなのはに衝撃の事実を伝える前に。予測して両耳に軽く手を当てて予想される障害に備える。
「なのは・・・俺はこう見えても男だ」
「・・・・男?」
「そう、男だ」
「え・・えっと・・・お父さんに付いているようなのもあるの?」
「そりゃもちろん「ふ」ふ?」
「ふぇエエえええええええええええッ!!!!??おとこー!?!」
ずっと抱きついて首に回していた腕を放して。顔を真っ赤にして叫びながらなのはが離れる。
その声に家の高町家全員+ユーノが集まり。騒ぎになったのは言うまでも無い。
「ノワール、そこの醤油とってくれ」
「ほらよ」
「・・・・」
「ノワールちゃん、ご飯のお代わりは?」
「いらん」
「・・・・」
「あ、ノワール君まだ魚の身が残ってるよ」
「む・・・ありがとう」
「・・・・」
「ノワール、食後に緑茶を入れるけど飲むか?」
「いただきます」
「・・・・」
「あっ冷蔵庫にヨーグルトがあるんだけど。ノワールくんもいる?」
「いや、もう十分だよ。なのは一人で食べて」
「・・・ッんで」
「「「「「「?」」」」」」
「なんで!皆さんそんなに普通に食事取ってるんですかッ!!?こ、こいつはなのはを傷つけて!おまけに有名な犯罪組織の構成員なんですよ!?危険人物なんですよッ!!?」
和気あいあいと高町家の人と朝食を取っているとフェレットがテーブルで騒ぎ始めた。名前はユーノ・スクライア。
「と、言われてもねぇ・・・僕は魔法の世界の事は分からないし。なぁ?桃子」
「そうねぇ。わたしもなのはちゃんやユーノ君が言うまで知らなかったし。どう思う?三人は」
「俺も魔法世界の事なんて分からないし。でも、悪い奴ではないと思うぞ」
「私も恭ちゃんと同じ意見だよ。見た目も可愛いし。口が悪かったりするのが偶に傷だけど、なのはは?」
「ノワールくんとはもうお友達だし。ユーノくん?怪我のことはもうなのは気にしてないよ?」
「だとしてもですねぇ!もっといろいろ思うところがあるでしょ!普通ッ!!」
「「「「「う~ん・・・」」」」」
高町家 暫しの沈黙の結果....
「「「「「ない!」」」」」
高町家族が一斉にそう宣言してしまって。それに俺は苦笑いし、ユーノ・スクライアはテーブルの上でひっくり返ってしまった
「な、なんて家族だ・・・」
「諦めろユーノ。俺はもう諦めた」
「気安く僕の名前を呼ばないでくださいッ!」
怒られてしまった。まあ無理も無いな・・嫌われてるだろうし。
「ダメだよユーノくん。もっと仲良くしないと」
「だけどなのは!まだジュエルシード集めは終わってないんだよ?つまりッ!この人は敵なんだ!」
「そのことならもう話してあるよ?」
なのはの言葉でユーノ・スクライアの目が喜びに輝く。
「ほ、本当ッ!?もしかしてこれからは集めるのを止め「またジュエルシード集めで出会ったら戦うの♪」あ、ああ~・・・・」
今度はユーノがテーブルの上で真っ白な灰になってしまった。
「芸が多彩なフェレットだな~」
「誰の所為ですか!誰のッ!」
復活が早いフェレットだった。
「まあ安心しろ。前みたいな戦闘はしない。というよりなのはの狙いはフェイトらしいからな。今度はそっちと友達になりたいんだと。戦いじゃないが俺が負けたんだ、フェイトにも勝てるだろうぜ。なのはなら」
「うんっ!ありがとう!」
「ま、戦闘で勝てるようにならないとお話にもならないだろうがな。フェイトのデバイスは俺のと違って忠誠心高いし」
【にゃにゃ!?それはどういう意味かニャ?!クローシュはご主人さま第一にゃよ!?】
「第一って事は第二が存在するのか?」
【そ、それは言葉のあやにゃん!揚げ足を取るのはよくないニャン!】
「にゃはは・・・わたしも、もっと沢山訓練してフェイトちゃんに勝てるように頑張らないと」
「本当にノワールちゃんのデバイスさんはお喋りねぇ~・・・ッ!?」
「はっ!もしかしたお母さん!?」
「今ビビッと来たわ!美由紀!手伝って!」
「うんっ任せて!」
なにか電波でも感じたのか慌しく高町桃子と高町美由希の二人がどこかへ行ってしまう。
「なんだあれ」
「気にするな、ほらお茶が入ったぞ」
「あ、どうもありがとうございます」
「僕に対しては敬語ってことはまだ僕には打ち解けてないってことかな?」
「え、あ~えっと・・・」
なぜか、なのはのお兄さんの高町恭也から俺に意外な攻めが行われた。
「う~ん、恭也も昨日のイベントに参加してたら違ってたんじゃないか?」
「と、父さん!いくらなんでもこの年になってあれ(ハグ)は」
「なーに言ってるんだ。恭也はこの前、月村さんところの忍ちゃんと抱きついてたじゃないか」
「父さんッ!!それとこれとは話が違うだろ!」
どうやらこの話題は彼にとってやぶ蛇だったらしい。
「ノワールくんノワールくん♪」
「んっ?」
高町親子のじゃれ合いを見ていると横からなのはに声を掛けられた。
すでに冷蔵庫から取り出したヨーグルトを器に盛り。
徐にヨーグルトが載ったスプーンをなのはが差し出していた。俺は、頼んでないんだが・・・。
「はい、あ~ん♪」
「え~と?」
「・・・食べないの?」
目をパチクリと瞬きしながら上目使いで見つめてくる。食えと言うのか。
「あ、あ~ん・・・」
「はい♪あ~ん」
スプーンを咥えるとやや甘い酸味が口に広がる。しかしなんだろう...味は変ではない。
いや、むしろ美味しいのだが。どこか普通のヨーグルトと違う。
「美味しかった?」
「あ、ああ。美味しかった・・・」
「実はね~そのヨーグルト、なのなの手作りなんだぁ~♪」
なるほど、それなら市販とは一味違う訳だ。ただ...
《ズズッ・・・》
「美味しいけど。緑茶とは流石に合わないな」
口に残った酸味を飛ばすために高町恭也が入れてくれた熱い緑茶を啜っていた。後味はなんとも言えない。
「それは当たり前なのッ!」
なのはからツッコミを受けながらゆっくりと時間は過ぎていく。
この楽しい朝の出来事を忘れないように心に刻みながら。
そしてその日の朝、俺は高町家に人々と別れを告げてフェイト達の待つセーフハウスへと戻った。
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神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。