No.502298 【デジナミハロウィン】ハロウィン騒動ふたたび【小月暁夜】七月一夜さん 2012-10-30 23:32:26 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:599 閲覧ユーザー数:579 |
「いい加減に目を覚まさんかい、この阿呆!」
「っ!?!?
何だ何が起こったバグか?トラブルか?今何時だ?
ここはリアルか?デジナミ内か?」
相棒の怒鳴り声で飛び起きた俺は、辺りを見回して首をかしげた。
枕元にデジヴァイスが置いてある。
先ほどの相棒の声はここから聞こえてきたものらしい。
……枕元?
ここは見覚えのある仮眠室。
俺も時々お世話になっている場所ではあるが、
いつの間に移動したんだ。
何だか身体の節々が痛い気がするけど、何でだ。
というか、俺はデバッグをしていたんじゃなかったか。
何でここで目が覚めるんだ?
まだ寝起きで回らない頭を整理するために、
枕元に置いてあったデジヴァイスを操作する。
緊急呼び出しの場合、ここにメッセージが表示されるのだが、
今のところそれは無いようだ。
デジヴァイスは、機能拡張すれば時計や簡単なカレンダーとして使うことも出来る。
何を忘れてもこれだけは忘れないと核心しているから、俺は重要事項、
例えば仕事のスケジュールなどはここから見えるようにしている。
一番最近の仕事の進捗を確認して、ほっと一息。
直前に修正したPGの進捗は100%、つまり完了したということだ。
三谷さんに手伝ってもらったから、何とか間に合った……んだろう。
前後の記憶が飛んでいるので、定かでは無いんだが。
「いつまで惚けておるつもりじゃ、早う準備をせんか!
今日が何日か忘れたのか!?」
再び相棒に怒鳴られて、耳を押さえながら
デジヴァイスを時計モードにする。
『10月31日 AM10:59』
表示された時間と日付を眺める。随分寝坊したな。
嫌違う。何か大事なところを見落として……今日は31日?って、31日!?
「遅刻じゃないか、何で起こしてくれなかったんだ、ギル!」
「じゃから早うせいと言ったのじゃ」
ジト目でこちらを睨む相棒の機嫌はすごぶる悪い、ようだ。
俺はあわてて仮眠室を飛び出して、仕事場へ向かう。
今日は俺の活動拠点、クレセントゾーンで開催するイベントの日だ。
そう、俺が企画した、ハロウィンパーティーの。
「あ、おはよう暁良。もう大丈夫?」
「おはようございます、間宮さん。
遅れてすいませんでした」
少し心配そうに声を掛けて来た創佑に、仕事モードで返事をする。
一応上司だし、ここは仕事場で他のGMも沢山いる。
仕事時間内の公私混合は良くない、と俺は思っているからだ。
……そう、仕事時間内は。
ハロウィンイベントのメインイベント、パーティーの開催は夜なので、
俺含め、多くのGMの勤務時間が変則シフトで夜中心になっている。
そのために、個人的な作業は仕事時間外、つまり今のうちにやっておく必要がある。
PCを起動しつつ、視線を入り口に向けると、
休憩中らしい星也さんがコーヒー片手に部屋に入ってきた。
「三谷さん、昨日はお手伝いありがとうございました。」
俺一人でデバッグしていたら、きっと今日には間に合わなかっただろう確信がある。
なにしろ俺はプログラムが得意ではないからだ。
「例なら不要だ。後輩の手伝いも仕事の内だからな。
……それよりも、お前たちの着る服は準備ができているのか?」
「あ、俺も気になる。
暁良のことだから、去年みたいにすっごいゴージャスな服とか準備してるのかな??」
星也さんと創佑の言葉に、去年のことを思い出す。
確かに去年は電極が大量に付いた服を悪ふざけで作った。
けれど、あれは先取りクリスマスツリーのコスチュームだったから、
別にゴージャスではなかったはず。多分。
今年もそっち系で行こうと思っていた、けど。
「残念ながら、今年は無しです。
仕様変更やバグ修正で、作成する時間が無かったですから」
「え~、折角楽しみにしてたのに……残念」
心底残念そうな創佑に、俺だって時間が合ったら作りたかったさ、と心の中で呟く。
今からでも作るだけなら出来なくも無いが、それが原因で他の所に不具合が発生したら意味が無い。
去年もテストと実装で3日かかったのだから、今年はもう無理だから地味に楽しむさ、と思っていた。
……この瞬間まで。
「なるほど、それでは問題無いな、間宮くん」
「そうだね、俺はやっぱり暁良が適任だと思うよ」
頷き合って何か納得している様子の二人を横目に、
俺は立ち上がったPCでメールを一通作成した。
1ヶ月前に作成していたコードを添付し、手早く送信。
これで俺のやりたかったことは全部完了だ。
新しく来たメッセージを一つずつ確認して、
一番下に表示されたメッセージに目を見張る。
創佑からのメッセージに、添付されたファイルの作成者は星也さん。
「間宮さん、三谷さん、これは……」
「暁良が忙しそうだったから、三谷さんに頼んで前から準備してもらってたんだ」
表示されていたメッセージには、【極秘イベント情報★吸血鬼出現!】とタイトルが記載されていた。
内容としては、パーティー中にサプライズイベントとして、ヴァンデモンやピコデビモン達による妨害を行う。
そいつらは親玉を倒せば消える、というものだった。
親玉を倒した場合、参加した全てのプレイヤーに限定プレゼントを進呈。
ただし、親玉は善良なデジモンを人質に取って逃走する、といういわゆる鬼ごっこもどきな要素も入るイベントらしい。
そして、添付されていたファイルを開くと、衣装データが展開される。
「お前が既に衣装を準備していれば、俺がそれを使う予定だったが……お前の方が適任だろう。
頑張れよ」
さわやかに伝えられたその言葉に、俺は絶句するしかなかった。
……ああ、妹の可愛いコスプレ姿を堪能するつもりだったのに。
「レディースアンドジェントルマン!
善良な参加者の諸君、今宵は楽しいパーティーというのに、
私に声を掛けないとはどういうことかね?」
時刻はパーティーの真っ最中。
突如として会場の電気が全て切られ、辺りが騒然とする中朗々と声が響いた。
私はりゅーちゃんのてをしっかり握って、声の聞こえた方向を見る。
スポットライトの当てられたその場には、ヴァンデモンを筆頭に、様々なデジモンたち。
そしてその中心には。
「あれは兄さん?
パーティー中なのに、また人様にご迷惑を……」
「私は人が楽しくしているのが大嫌いだ。
このパーティーは私が乗っ取った。
このデジモンの命が惜しければ、皆家に帰るが良い!」
高らかに笑い声を響かせるその声に、ふつふつと怒りがこみ上げる。
折角みんな楽しんでいたのに。よりにもよってこんな時に!
しかも、腕の中には小さなデジモンが抱えられている。
「りゅーちゃん、兄さんが抱えている子が誰なのか解る?」
「あれは……ギギモンであります!
どうやら、パタモンの格好をしているようであります!
何か食べている様でありますが、あんな高いところにいては危ないであります」
ぷちっと音を立てて、私のなかで何かが切れる音がした。
私に迷惑を掛けるくらいならともかくとして、今日は沢山人が集まるお祭りの日。
それに加えて……。
「小さい子を捕まえていじめるなんて、最っ低!
今日こそは捕まえて、皆さんに謝らせないと。
いくよ、りゅーちゃん!」
「了解であります!」
私は兄さんを捕まえるべく、りゅーちゃんを抱き上げて地面を蹴った。
待ってなさい、兄さん。今日こそは捕まえてやるんだから!
○月×日 ギルの回想録より抜粋
デバッグ後に倒れたアキラは、仮眠室で目覚めたのじゃが、
今日が何の日かすっかり忘れておったらしい。
パートナーとして情け無い……。
その後、仕事部屋で創佑と星也から衣装を受け取り、頭を抱えておった。
その結果、その数時間後、ハロウィンの宴の真っ最中に乱入することになり、
いつものように妹御から逃げ回っておったわ。
まあ、一般参加者からも追い掛け回されるのは普段と違ったがのう。
そうそう、ハロウィンの衣装じゃが、アキラは吸血鬼。
わしは……気が進まんかったが、パタモンの着ぐるみじゃった。
何故その衣装で納得したかじゃと?
そんな理由、天竜亭のあんぱん10個で手を打ったからに決まっておるじゃろう。
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ハッピーハロウィン!
ちょっとフライング気味ですが、今年もハロウィンの準備は……何とか間に合ったみたいです。
ご無沙汰してばかりですみません・・・。
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