No.501857

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ六


 お待たせしました!と言っても今回はちょっと早かったですが。

 完全に追いつめられた曹操は、劉備は、姜維はどうするのか?

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2012-10-29 21:46:46 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:8371   閲覧ユーザー数:6291

 

 「諸葛亮を参軍にねぇ…でも私の家臣が不審な行動をしていたとはどう

 

 いう事かしら?さっきも言った通り、彼女達には洛陽が無用の混乱を

 

 招かぬように置いていただけ。そのように捕縛される謂れはないわ」

 

 曹操は朱里を睨みつけながらそう答える。

 

「これを見ても同じ事が言えますか?」

 

 朱里は懐から一通の書状を見せる。そこには荀彧と姜維の名前で劉備を

 

 皇帝に祭り上げた後、洛陽の各所を制圧して支配下に入れるという計画

 

 が書かれていた。

 

 それを見た曹操は狼狽した様子で否定する。

 

「なっ…そんなもの私は知らないわよ!」

 

「曹操さんが知らないという事はこれは荀彧さんと姜維さんの独断という

 

 事ですか?」

 

 そう言われて曹操は言葉に詰まる。実を言えばそれは曹操自ら立案した

 

 計画であるからだ。しかし、

 

(どういう事?桂花と姜維にはこれが証拠として残るような形にはするな

 

 と言っておいたのに…)

 

 何故そんなものがあるのか曹操には疑問であった。

 

 

 

 ―その理由―

 

 それは洛陽に入る前に荀彧から各将へ作戦を通達した時の事。

 

「以上が華琳様の計画よ。質問はある?」

 

「あの~…」

 

 于禁がおずおずと手を挙げる。

 

「何?これ以上ない位、丁寧に説明したのに何が分からないの?」

 

 荀彧のとげのある言葉に怯みながらも于禁は言葉を続ける。

 

「半分位分からないの~」

 

「半分って何!?どうやったらそんなに理解出来なくなるのよ!?」

 

「昔はこういうんは凪が理解して、ウチらは凪の言う通りに動くだけやった

 

 からな~」

 

 李典がそうしみじみと呟く。

 

「それって北郷の所にいる楽進の事でしょう!とっくの昔に敵方になっている

 

 のだから、いい加減自分で理解しなさいよ!!」

 

「そう言われても分からないものは分からないの~」

 

「分かったわよ!それじゃ書面に書いておくからもう一回ちゃんと読んで理解

 

 しておきなさい!但し、華琳様からは形として計画の内容が分かる物は作る

 

 なと言われてるから徹底的に頭に叩き込んだらすぐに焼き捨てるのよ!」

 

「分かったの~」

 

 そして関羽達に捕まった後。

 

「おや?徐庶殿、この者の懐にこんな書簡が」

 

「ああ!それダメなの~!!華琳様からの大事な計画が書かれているから見ちゃ

 

 いけないの~!!桂花ちゃんから捨てるように言われているの~!!」

 

「沙和、それ言うたらあかん!!」

 

「しまったの~、お願いだから今のは忘れてほしいの~!」

 

 そして書簡は朱里の手に渡る。

 

 

 

「ふむ、どうやら曹操の計画である事は間違いないようじゃの」

 

 劉弁様は曹操を睨んだままそう言った。

 

「えっ、いや、その、これは…」

 

「何じゃ、それとも家臣の独断でお主は知らんとでも言うつもりか?」

 

 その質問に答えたのは荀彧であった。

 

「その通りです!その計画はこの荀彧が姜維と共に独断で進めた物。曹操様に

 

 罪はございません!それを証拠にそこに書かれた名は荀彧と姜維のみでござ

 

 います!!」

 

 荀彧がそう言うと、隣にいた姜維は一瞬目を伏せたが、続けて言葉を発する。

 

「荀彧殿の仰られた通り、これは我々二人が独断で進めたのです。曹操殿も劉備

 

 殿もご存知の事ではありません」

 

「桂花!?」

 

「姜維ちゃん!?」

 

 曹操も劉備も驚きを隠さずに二人を見つめる。

 

「それで良いのか?主をかばう姿は立派ではあるが、それはお主達の死を意味

 

 する事になるのはわかっておろう?」

 

 劉弁様のその言葉に荀彧と姜維はうつむき、曹操と劉備は顔を凍りつかせる。

 

 まあ、確かに主が権力を握ると同時に洛陽を制圧するなどという計画を立てた

 

 主謀者であるならば、斬首が相当という事になるが。

 

「「…それは既に覚悟の事にございます」」

 

 二人は一瞬躊躇を見せたが、はっきりとそう言ったのであった。

 

 

 

「そうか、そこまでの覚悟があるのか、ならばお主達二人に斬『待ってくださ

 

 い!』何じゃ、劉備?まだ何かあるのか?」

 

 劉弁様が荀彧と姜維に処刑を宣告しようとしたその時、劉備が口を挿む。

 

「私を処刑してください!その代わり荀彧さんと姜維ちゃんの命は何とぞ…」

 

 そう言って劉備は平伏する。

 

「ほう、そなたが代わりに処刑されると言うのか?しかし、今荀彧と姜維が言っ

 

 た事が本当ならば、お主は知らなかった事なのだろう?」

 

「…例え知らなかった事とはいえ、むしろ知らなかった事こそが私の罪です!

 

 私は姜維ちゃんの主君です。姜維ちゃんの罪は私の罪です。私が責任を取り

 

 ます。ですからここは私一人の命で事を収めていただくようお願いします!」

 

 劉備は劉弁様の目を見つめたまま、はっきりと言い切る。先程までのおどおど

 

 した感じが全く無くなっていた。

 

「そうか、ならば北郷、後はそなたに任す。劉備を引っ立てよ」

 

 劉弁様はそう言って俺を見つめる…なるほど。

 

「わかりました。それでは劉備殿、こちらへ」

 

「お待ちください、北郷殿!桃香様をどうするのですか!!」

 

 その声に振り向くと関羽さんが今にも泣きそうな顔でこっちを見ている。

 

 それを横目に俺は劉弁様に話しかける。

 

「劉弁様、そこにいる張飛殿も劉備殿の義妹なればこちらへ引き渡し願いたく」

 

「良かろう、好きにせよ。姜維は如何するのじゃ?」

 

「姜維殿が同行を望むのであれば」

 

 俺はそう言って姜維さんの顔を見るが、姜維さんはうつむいたままピクリ

 

 ともしなかったので俺は姜維さんの事は放っておき、劉弁様に乞い白蓮を

 

 伴って玉座の間を後にした。

 

 

 

 俺は劉備さんと張飛さんを引っ立てて城外へと移動する。

 

「北郷殿!!」

 

 見ると関羽さんが追いかけて来ていた。

 

「どうされました、関羽さん?これから起こる事はあまりあなたにお見せ出来

 

 るようなものではありませんよ」

 

「何故、桃香様が処刑されねばならないのです!?桃香様は曹操に利用された

 

 だけで、決して漢王朝に弓引くおつもりがあったわけでは…」

 

「これは劉備さん本人が望んだ事だ。それ以上もそれ以下も無い」

 

「だからと言って『いいんだよ、愛紗ちゃん』…桃香様?」

 

 尚も食い下がろうとした関羽さんを止めたのは劉備さんだった。

 

「確かに私は曹操さんに利用されただけなのかもしれないけど、次期皇帝候補

 

 としてここに来た以上、責任は私が取らないとね。だけど北郷さん、鈴々ちゃ

 

 んは解放してあげていただけませんか?鈴々ちゃんは本当に言われてあの場に

 

 いただけなんです。鈴々ちゃんに責任があるというのならその分も私が負いま

 

 す。だからどうか妹だけは…」

 

「鈴々一人だけ助かるなんて嫌なのだ!北郷のお兄ちゃん、桃香お姉ちゃんの代

 

 わりに鈴々を処刑というわけにはいかないのか?お姉ちゃんが助かるなら鈴々

 

 は喜んで処刑されるのだ!」

 

 劉備さんと張飛さんがお互いを庇いあっていた。麗しき姉妹愛ではある。

 

「申し訳ないが、張飛さんの提案は却下だ。悪いけどあなたでは劉備さんの代

 

 わりにはならないのでね。劉備さん、あなたの提案は受け入れる事は出来る。

 

 しかし張飛さんの分の罪も被るなら、あなたの処刑はかなり重たいものにな

 

 りますよ?」

 

「鈴々ちゃんが助かるのなら、喜んで」

 

 俺の提案を劉備さんは笑顔で受け入れる。

 

 

 

「…分かりました。白蓮、張飛さんを関羽さんへ」

 

「分かった。愛紗、悪いが鈴々の縛めはお前が解いてくれ。縛めを解いた瞬間に

 

 暴れられたら私じゃ止められないのでな」

 

 白蓮はそう言いながら張飛さんを関羽さんに渡す。

 

「愛紗!鈴々と一緒に桃香お姉ちゃんを奪い返すのだ!!」

 

 張飛さんは関羽さんにそう訴えるが、

 

「鈴々、それをしてもお前達がそのまま討ち取られるだけだぞ」

 

 駆けつけてきた趙雲さんがそれを止める。

 

「星までそんな事言うのか!?何でなのだ!!桃香お姉ちゃんと愛紗と鈴々は

 

 今までもこれからもずっと一緒なのだ!!」

 

 張飛さんは泣きながらそう叫ぶ。

 

「ありがとう、鈴々ちゃん。でもね、誰かが責任を取らなくちゃダメなんだよ。

 

 ここで私が取らなかったら劉弁様は荀彧さんと姜維ちゃんを殺さなきゃならな

 

 くなっちゃうしね。あの二人はきっとこれからのこの世界に必要になるはず。

 

 だからここで死ぬのは私一人で十分なんだよ」

 

 劉備さんは張飛さんに諭すようにそう語りかける。

 

「そんな難しい事、鈴々には分からないのだ!!鈴々はただ桃香お姉ちゃんや

 

 愛紗や星とずっと一緒にいたかっただけなのだ!!」

 

 それでも張飛さんはそう泣き叫ぶままであった。

 

 とはいえ、いつまでもこのままでは埒があかないので、

 

「劉備殿、そろそろよろしいか?」

 

 俺はそう淡々と問いかける。

 

「はい、お待たせしました…愛紗ちゃん、最期に会えて良かった。鈴々ちゃんを

 

 お願いね」

 

「……………桃香様……………」

 

 関羽さんはそれだけ言うのが精一杯であった。

 

「星ちゃんも元気でね」

 

「…はっ、桃香様も…」

 

 趙雲さんも言葉に詰まっていた。

 

「それじゃね。短い間だけど、楽しかったよ」

 

 劉備さんはそう言って最高の笑顔を見せ、俺の方へと歩を進めた。

 

 

 

 

 その頃、城内では。

 

「さて、それでは曹操、お主達への裁きを申し渡す」

 

 劉弁から曹操達への裁きを下す所であった。

 

「待ってください!先程も申しました通り、罪はこの『いいのよ、桂花』華琳様?」

 

 荀彧は再び自分が罪を被ろうとしたが、曹操がそれを止める。

 

「ここまで来て家臣に罪を被せる真似は出来ないわ」

 

「華琳様…」

 

「そろそろ良いかの、曹操?」

 

「はい、お待たせして申し訳ありません」

 

 劉弁は一息ついてから曹操へ言い渡す。

 

「曹操、そちには知行の召し上げの上、幽州・楽浪郡への流罪を申し渡す。そなた

 

 の家臣の内もし同行を望む者あれば申し出よ、こちらで詮議いたす。但し、兵は

 

 二十人までしか認めぬ」

 

 その裁定に曹操達は驚きを隠せなかった。

 

「どうした?妾の裁定に不満があるのか?」

 

「い、いいえ、そうではなく…少なくとも私自身は処刑されるものと覚悟してました

 

 もので…」

 

「確かに本来であればそなたは斬首じゃがな。しかしそうするには惜しいと思ってし

 

 まう自分がおるのも確かでな。とはいえ、普通に謹慎させるわけにもいかぬ故お主

 

 を流罪に処するのじゃ。妹が与えたように、妾もそなたに機会を与えよう」

 

 

 

 劉弁のその言葉に曹操は劉協の言った『漢に害する者がいる限り、それに立ちふさ

 

 がる』という言葉を再び思い出す。

 

(もし、私が再び野心を持てば今度は劉弁様も容赦しないという事ね…それならば)

 

「わかりました。それで何時私は幽州へ?」

 

「準備が出来次第ではあるが、数日中には護送の準備が整うじゃろう。もしついていき

 

 たい者がいるなら、明日中に董卓へ申し出よ。董卓、詮議はそちに任せる。しかるべき

 

 者を選び、詮議させよ」

 

「はっ!」

 

 劉弁は董卓にそう言うと席を立ち、奥へと消えた。

 

「それでは曹操殿、申し訳ないですがあなた達には牢へと入っていただきます。華雄、

 

 呂布、陳宮、この者達を地下牢へ」

 

「「「はっ!!」」」

 

 こうして曹操達は牢へと連れていかれた。洛陽に入った時はまさか自分達がこのような

 

 処遇になるなど夢にも思っていなかった曹操達は一様に憔悴した表情になっていたので

 

 あった。

 

 

 

 曹操達が連れていかれた後、残ったのは董卓と賈駆だけとなった。

 

「ふう、これで一段落かな」

 

「詠ちゃんもご苦労様」

 

「別にボクは大して何もしてないわよ。月の方こそ劉協陛下が崩御されてからここまで大変

 

 だったじゃない。これが終わったら少しは休みなさいよね」

 

「そんなに疲れてなんか『いいから休むの!』…へぅ」

 

「さて、後は北郷の方ね」

 

「…うまくやってくれてるかな?」

 

「大丈夫よ」

 

 賈駆が自信ありげに語る。それを見た董卓はちょっと意地悪く言ってみる。

 

「へぇ、詠ちゃんって随分と一刀さんの事を…」

 

「ち、違うわよ!ボクが言ってるのは朱里の事よ!朱里がいるから大丈夫だって言ってるの!」

 

「ふふ、そういう事にしてあげる」

 

「…月~~!!」

 

 先程までのシリアスさは何処へ行ったのかと思う位に姦しい二人であった。

 

 

 

 

                             続く(事はほぼ確定事項)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 少しモチベさんが帰って来てくれたので意外と早く投稿出来ました。

 

 次回は関係者のその後…というかいろいろ人間模様を絡めていきたい

 

 と思っております。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ七にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 追伸 やっと白蓮さんの台詞が書けたぞー!!次回も書けるといいな…。

 

 

 

 


 
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